JPH05317944A - 圧延機の板厚制御方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 上下各バックアップロールの偏芯に起因する
板厚変動を防止する。 【構成】 圧延に先だって、キスロール状態でロールを
回転させて、ロール偏芯検出を開始した時点での上下各
バックアップロールの回転角度におけるロール偏芯量お
よび圧延荷重を基準とし、上下各バックアップロールの
回転角度に応じて圧延荷重を記憶して、その記憶値か
ら、上下各バックアップロールのロール偏芯に起因する
圧延荷重成分を求めるとともに、それらの両圧延荷重成
分をミル剛性係数で除してそれぞれのバックアップロー
ルのロール偏芯量を求め、圧延作業に当り、上下各バッ
クアップロールの回転角度に対応する偏芯量をロールギ
ャップ修正量から取り除いてロールギャップを調整す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、圧延機における上下各
バックアップロールの偏芯に起因する板厚変動を防止す
るのに有効な圧延機の板厚制御方法および装置に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】熱間圧延および冷間圧延では、一組のワ
ークロールに一組のバックアップロールを組み合わせた
いわゆる四重式圧延機が多く用いられている。ところ
が、バックアップロールを併用したこのような圧延機で
は、バックアップロールの偏芯に起因して板の長手方向
に一定周期の板厚変動が生じ、この板厚変動は従来のゲ
ージメータＡＧＣによって防止することができない。

【０００３】すなわち、熱間圧延、冷間圧延といった圧
延作業では、板厚を一定に制御するため、ゲージメータ
ＡＧＣが広く一般に行われており、この制御は、周知の
如く(1) 式で示す板厚偏差Δｈが零となるように圧下位
置Ｓを制御するものである。 Δｈ＝ΔＳ＋ΔＰ／Ｍ (1) ΔＳ＝Ｓ−ＳＬ (2) ΔＰ＝Ｐ−ＰＬ (3) Δｈ：板厚偏差 Ｓ：圧下位置 ＳＬ：ロック
オン時の圧下位置 Ｍ：ミル剛性係数 Ｐ：圧延荷重 ＰＬ：ロック
オン時の圧延荷重 ところで、この制御によれば、圧延荷重Ｐの変動、すな
わち、スキッドマーク等の圧延材の特性変動に起因する
板厚偏差Δｈは解消されることになるも、その制御に
は、バックアップロールの偏芯に起因する板厚偏差は考
慮されていないことから、ロールの偏芯による板厚変動
がそのまま発生するという欠点があった。

【０００４】しかも、上下のバックアップロールの合成
偏芯量は、上下バックアップロールの直径が異なる場合
や、圧延機への負荷外乱があった場合などに、上下バッ
クアップロールの相対回転角位相の変化につれて変化す
るため、変化する位相角に追従して板厚を制御できるこ
とが必要である。

【０００５】そこで、特公平３−62484 号公報に開示さ
れた板厚制御方法では、上下のバックアップロールに周
長差を付与した圧延機において、キスロール状態におけ
る荷重変動量を、上下のバックアップロールの位相角の
一周期、すなわち360 ゜分について測定するとともに、
測定した荷重変動量をミル剛性係数で除して上下バック
アップロールの合成偏芯量に換算し、この合成偏芯量を
上下バックアップロールの位相角の一周期分について、
当該ロールの回転位相角および、上下いずれかの基準バ
ックアップロールの回転角に対応させて記憶しておき、
圧延中に前記ロールの回転位相角および基準バックアッ
プロールの回転角を連続的に検出して、該検出回転位相
角および基準ロール回転角に対応する前記記憶合成偏芯
量に基づいて板厚制御信号を補正することにより、上下
のバックアップロールの偏芯に起因する板厚変動を防止
することとしている。

【０００６】また、特開昭59−150612号公報に開示され
た偏芯検出方法では、圧延ロールの回転中に上および下
バックアップロールの一定回転角度毎または一定時間毎
の圧延荷重と、上および下バックアップロールの回転角
度とを検出記憶しておき、ある回転角度からの圧延荷重
の記憶値と、その回転角度から上および下バックアップ
ロール１回転の整数倍回転した角度からの圧延荷重の記
憶値との差を演算することにより、上下バックアップロ
ールの各偏芯量をそれぞれ別々に検出することとしてい
る。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、特公平３−
62484 号公報に開示された前者の従来技術では、上下バ
ックアップロールの径差が小さい場合、例えばそれが１
％の場合では、バックアップロールの合成偏芯量を記憶
するために、ロールを100 回転させねばならず、記憶に
長時間を必要とするという問題があり、加えて、厳密な
ロール径差管理を行わなければならないという問題があ
った。。

【０００８】また、特開昭59−150612号公報に開示され
た、後者の従来技術では、上記合成偏芯量に相当する量
を介在させずに、上下一方のバックアップロール偏芯量
から、他方のバックアップロール偏芯量成分を除去する
直接的な方法のため、ノイズに対して収束性が保証され
ない欠点がある。

【０００９】本発明は、従来技術のこれらの問題をこと
ごとく解決するものであり、上下バックアップロールの
各ロール偏芯量を、圧延荷重の変化に基づいて短時間の
うちに高い精度で求め、それらの各ロール偏芯量を消去
すべくロールギャップを調整することによって、バック
アップロールのロール偏芯の影響を極めて効果的に取り
除くことができる圧延機の板厚制御方法および装置を提
供することを目的とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】ロール偏芯量は上下の各
バックアップロールのロールの回転角度に依存した量で
あり、各ロールの回転角度に応じた合成ロール偏芯量に
は再現性がある。従って、その合成ロール偏芯量と、上
下各バックアップロールの回転角度とを対応させること
により、上下バックアップロールの各々の偏芯量を検出
することが可能となる。

【００１１】そこで、本発明の、圧延機の板厚制御方法
では、圧延作業に先だって、キスロール状態でロールを
回転させて、ロール偏芯検出を開始した時点の上下各バ
ックアップロールの回転角度におけるロール偏芯量およ
び圧延荷重を基準として、上下各バックアップロールの
回転角度に応じて圧延荷重を記憶し、該記憶値から、上
下各バックアップロールのロール偏芯に起因する圧延荷
重成分を求めるとともに、各々の圧延荷重成分をミル剛
性係数で除してそれぞれのバックアップロールのロール
偏芯量を求め、そして、圧延作業に当っては、上下各バ
ックアップロールの回転角度に対応する偏芯量を除去す
べくロールギャップを調整するものである。

【００１２】また、本発明の、圧延機の板厚制御装置
は、圧延荷重検出器、ロールギャップ調整器および、上
下のバックアップロールの回転角度を検出するそれぞれ
の回転角度検出器を具えるとともに、キスロール状態で
のロール回転中に、バックアップロールの偏芯検出を開
始した時点を基準とし、上下各バックアップロールの回
転角度に応じて圧延荷重を記憶するとともに、その記憶
値をもとに上下のバックアップロールの各ロール偏芯量
を、それらの回転角度に応じて演算して、記憶するロー
ル偏芯検出装置を具え、また、圧延時において、板厚修
正装置からのロールギャップ修正量に対し、上下各バッ
クアップロールの回転角度に対応する各ロール偏芯量を
打ち消すロールギャップ補正量を加算してロールギャッ
プ量を調整するロール偏芯補正装置を具えるものであ
る。

【００１３】

【作用】本発明の板厚制御方法では、上下の各バックア
ップロールの回転角度に応じた圧延荷重から、ロール偏
芯に起因する圧延荷重成分を求めることにより、ミル剛
性係数との関連において、各ロール偏芯量を、短時間の
うちに高い精度で求めることができる。

【００１４】しかも、ここではバックアップロールの合
成偏芯量に相当する、圧延荷重の変動量から他方のロー
ルの、ロール偏芯に起因する圧延荷重成分、ひいては、
ロール偏芯量を間接的に求めていることから、ロール偏
芯量の、ノイズに対する収束を十分に保証することがで
きる。

【００１５】そして、圧延作業に当っては、上下各バッ
クアップロールの回転角度に対応する各ロール偏芯量を
打ち消すロールギャップ補正量を、板厚修正装置からの
ロールギャップ修正量に加算してロールギャップを調節
することにより、バックアップロールの偏芯に起因する
板厚変動を極めて効果的に取り除くことができる。

【００１６】さらに、本発明の板厚制御方法では、キス
ロール状態でのロールの回転中に、ロール偏芯検出装置
によって、予め測定された圧延荷重から、上下各バック
アップロールの回転角度に応じた各ロール偏芯量を演算
して記憶することにより、各バックアップロールの回転
角度に応じた各ロール偏芯量を、短時間のうちに正確に
求めることができるとともに、ロール偏芯量からノイズ
の影響を十分に取り除くことができる。

【００１７】また圧延時には、求められた各ロール偏芯
量をもとに、ロール偏芯補正装置の作用下で、各ロール
偏芯量を打ち消すロールギャップ補正量をロールギャッ
プ修正量に加算してロールギャップ調整装置へ出力する
ことにより、前述した板厚評価式(1) からロール偏芯量
の影響を除去して、上下各バックアップロールの偏芯に
起因する板厚変動を十分に防止した高精度の板厚制御を
行うことができる。

【００１８】

【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１は本発明の板厚制御装置を例示する概略構成
図であり、図中1a, 1bは、上下に対を一組のワークロー
ルを、2a, 2bは、これも上下一組のバックアップロール
をそれぞれ示し、３は圧延荷重検出器を、そして４はロ
ールギャップ調整器をそれぞれ示す。また、5a, 5bは、
上下それぞれのバックアップロール2a, 2bのためのそれ
ぞれの回転角度検出器を示す。

【００１９】そして６は、圧延荷重検出器３からの検出
信号に基づいて各バックアップロールの回転角度に応じ
た各ロール偏芯量を演算し、記憶するロール偏芯検出装
置を示す。すなわち、このロール偏芯検出装置６は、図
示のようなキスロール状態の下で、上下の各バックアッ
プロール2a, 2bの回転角度に応じて、圧延荷重検出器３
によって検出された圧延荷重を記憶し、そして、その圧
延荷重の記憶値から、上下各バックアップロールのロー
ル偏芯に起因する圧延荷重成分を求め、また、それらの
各々の圧延荷重成分をミル剛性係数で除することによ
り、上下各バックアップロール2a, 2bの回転角度に対応
したそれらの各ロールのロール偏芯量を演算するととも
に記憶する。

【００２０】ここでは、かかるロール偏芯検出装置６を
ロール偏芯補正７に信号接続し、このロール偏芯補正装
置７により、実際の圧延作業に当り、板厚修正装置９か
らの出力信号としてのロールギャップ修正量に、上下各
バックアップロール2a, 2bの回転角度に対応する各ロー
ル偏芯量を打ち消すロールギャップ補正量を加算し、そ
して、その加算終了後のロールギャップ修正量をロール
ギャップ調整器４へ出力する。

【００２１】このことにより、ロールギャップ調整器４
は、バックアップロール2a, 2bの偏芯に影響されること
のないロールギャップ調整を行い、それらのロール2a,
2bの偏芯に起因する板厚変動を効果的に防止する。

【００２２】次に、本発明装置の作用を、図２および図
３に基づいて説明する。図２は、バックアップロール角
度を列とし、下バックアップロール角度を行とする二次
元配列Ｒ（ｉ，ｊ）を表わすグラフであり、ロールの回
転に伴う上下各バックアップロール角度の軌跡を、上バ
ックアップロール角度と同期させて示している。図中●
は上バックアップロール2aの一回転目であり、○はそれ
の二回転目である。なお同図では、縦横各々の軸をＮ分
割しているが、分割個数は任意に選択し得ることもちろ
んである。

【００２３】ロール偏芯量の検出開始時点を基準とし
て、キスロール状態での圧延荷重を、上下各バックアッ
プロールの回転に合わせて上記二次元配列の該当位置へ
代入する。たとえば、上下バックアップロール角度の組
み合わせが同一のデータを平均化することにより、ノイ
ズを除去することができる。

【００２４】また、ロール偏芯量記憶部は、上記二次元
配列の行および列の各々の個数に対応する２個の一次元
配列Ｘ，Ｙを持つ。この時、各ロール偏芯に起因する圧
延荷重成分Ｘ(i) ，Ｙ(j) と圧延荷重Ｒ（ｉ，ｊ）の間
には、次式の関係が成立する。 Ｒ（ｉ，ｊ）＝Ｘ(i) ＋Ｙ(j) (4) ロール偏芯推定の開始時点からの圧延荷重変化量を記憶
した上記二次元配列Ｒについて、Ｒ（ｉ，ｊ），Ｒ（i+
1,ｊ）（ｊ＝1-l)のうち、ともに上下バックアップロー
ル軌跡上にある要素列Ｒ（ｉ，ｋ），Ｒ（i+1,ｋ）につ
いて、下記 (5)式；

【数１】 を計算することにより、下バックアップロールの角度刻
みｉ＋１とｉにおけるロール偏芯量に起因する荷重差Ｔ
(i) を求めることができる。従って、下バックアップロ
ール偏芯量に起因する荷重成分は、下記 (6)式；

【数２】 により求められる。また、上バックアップロール偏芯量
に起因する荷重成分は、Ｒ（ｉ，ｊ）｛ｉ＝１〜Ｎ｝の
うち、上記軌跡上に位置する要素列Ｒ（ｌ，ｊ）を用い
て、下記 (7)式；

【数３】 により求めることができる。このようにして求めたロー
ル偏芯に起因する圧延荷重成分Ｘ(i) , Ｙ(j) を各々ミ
ル剛性係数で除すれば、ロール偏芯量が検出できる。な
お、本例では、下バックアップロールから算出したが、
上バックアップロールから算出しても問題はない。

【００２５】図３はこのことを示すフローチャートであ
り、このフローチャートに従って、上下各バックアップ
ロール2a, 2bの回転角度に応じた各ロール偏芯量を求め
た後は、実際の圧延に当って、それらの各ロール偏芯量
と対応する補正量をもってロールギャップ修正量を(8)
式により補正することにより、ロールの偏芯に起因する
板厚変動を十分に取除くことができる。 Δｈｒ＝ΔＳ−ΔＲｅ＋ΔＰ／Ｍ (8) Δｈｒ：補正後の出側板厚 ΔＲｅ：上下バックアップロールの合成ロール偏芯量

【００２６】以上のように、本方法によれば、上下バッ
クアップロールの位相差が360 ゜になるまでデータを記
憶する必要がなく、位相差の発生が少ない場合でも効率
よく各ロール偏芯量の検出が可能であることがわかるた
め、精度の高いロール偏芯制御を実施することができ
る。

【００２７】しかもここでは、上下各バックアップロー
ル2a, 2bの各ロール偏芯量の検出を、キスロール状態で
のロール回転中の圧延荷重をもとに、上下各バックアッ
プロールの回転角度に応じたロール偏芯量を、短時間で
正確に求めることができるとともに、ノイズに対してロ
ール偏芯量を十分に収束させることができる。

【００２８】ちなみに、上下バックアップロール2a, 2b
の偏芯を同じ量の正弦波で与え、ロール回転速度を１％
異ならせた場合における、本発明方法の試験結果を図４
に示す。図示のグラフによれば、いずれの試験において
も上下バックアップロールの各ロール偏芯量をともに精
度良く検出している。

【００２９】

【発明の効果】かくして、本発明によれば、上下バック
アップロールの回転速度が異なる場合においても、短時
間で精度良く上下バックアップロールの各ロール偏芯量
を別々に検出することが可能となり、高い板厚精度を実
現することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の板厚制御装置を例示する概略構成図で
ある。

【図２】本発明におけるロール偏芯量検出作業手順の一
例を示す図である。

【図３】本発明の作業手順の一例を示す図である。

【図４】ロール偏芯量の検出結果を例示する図である。

【符号の説明】

1a, 1b ワークロール 2a, 2b バックアップロール ３ 圧延荷重検出器 ４ ロールギャップ調整器 5a, 5b 回転角度検出器 ６ ロール偏芯検出装置 ７ ロール偏芯補正装置 ８ 板厚修正装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 段木 亮一 千葉県千葉市中央区川崎町１番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 潮海 弘資 岡山県倉敷市水島川崎通１丁目（番地な し） 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 浦野 朗 岡山県倉敷市水島川崎通１丁目（番地な し） 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 圧延に先だって、キスロール状態でロー
   ルを回転させて、ロール偏芯検出を開始した時点での上
   下各バックアップロールの回転角度におけるロール偏芯
   量および圧延荷重を基準とし、上下各バックアップロー
   ルの回転角度に応じて圧延荷重を記憶して、その記憶値
   から、上下各バックアップロールのロール偏芯に起因す
   る圧延荷重成分を求めるとともに、それらの両圧延荷重
   成分をミル剛性係数で除してそれぞれのバックアップロ
   ールのロール偏芯量を求め、 圧延作業に当り、上下各バックアップロールの回転角度
   に対応する偏芯量をロールギャップ修正量から取り除い
   てロールギャップを調整することを特徴とする圧延機の
   板厚制御方法。
2. 【請求項２】 圧延荷重検出器、ロールギャップ調整器
   および、上下のバックアップロールの回転角度を検出す
   るそれぞれの回転角度検出器を具えるとともに、 キスロール状態でのロール回転中に、 バックアップロールの偏芯検出を開始した時点を基準と
   し、上下各バックアップロールの回転角度に応じて圧延
   荷重を記憶するとともに、その記憶値をもとに上下のバ
   ックアップロールの各ロール偏芯量を、それらの回転角
   度に応じて演算して、記憶するロール偏芯検出装置を具
   え、 また、圧延時において、 板厚修正装置からのロールギャップ修正量に対し、上下
   各バックアップロールの回転角度に対応する各ロール偏
   芯量を打ち消すロールギャップ補正量を加算してロール
   ギャップ量を調整するロール偏芯補正装置を具えること
   を特徴とする圧延機の板厚制御装置。