JPH0530445U - エンジンのピストン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目 的】 ピストン頂部の中心から燃焼室がオフセッ
トしたタイプのエンジンにおいて、エンジンの運転時に
燃焼熱によって熱膨脹する楕円状ピストンにカーボンが
局部的に付着することを防止して、シリンダライナーの
偏摩耗を防ぎ、ピストンとシリンダの間のシール性を長
期間保持できるエンジンのピストンを提供する。 【構 成】 ピストン頂部の中心から燃焼室に位置がオ
フセットしているエンジンに設けられる常温時に楕円形
状であるピストンにおいて、この燃焼室のピストン頂部
の中心からのオフセット方向を前記楕円状ピストンの短
径方向とし、ピストン頂部からピストン裾部に向かって
拡大するピストンランド部は、エンジン運転時にピスト
ンの全周でシリンダライナとのクリアランスが均一にな
るように、そのテーパー角は燃焼室に近い側を遠い側よ
りも大きくして、ピストン頂部の中心をシリンダボアの
中心からオフセットした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案はピストン頂部の中心から燃焼室がオフセットしているエンジンに設け られる楕円状ピストンの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

エンジンの外寸はエンジンルームの容積が限られている関係で、できるだけ小 さくする必要があり、更に重量の面においても燃費や操縦性を向上するために、 できるだけ軽量化する必要がある。このようなことから、通常のエンジンは列状 に並んだシリンダ相互間の間隔を詰めて、シリンダ列の長さを短縮して小型化や 軽量化を達成している。

【０００３】 しかし、このようにすると、シリンダブロックの肉厚はシリンダ相互間の部分 が薄くなり、隣合うシリンダ同士の間にはオイルギャラリを設けるだけの肉厚を 確保することが難しいため、この部位は比較的に冷却され難く高温になりがちで 、エンジンの焼付等の問題が生じる恐れがある。そこで、図７に示すように常温 時にはシリンダ列の長手方向を短径Ｓとする楕円状のピストン１を使用して、エ ンジン運転時には、ピストン１の熱膨脹の偏りによってこの楕円状のピストン１ が、ほぼ真円になってピストン１とシリンダ２との間のクリアランスをピストン １の全周でほぼ均一になるように構成したものが、使用されている。通常、この タイプの楕円状ピストン１の長径Ｌは、短径Ｓよりも 0.1〜 0.5mm程度長いもの である。

【０００４】 一方、別の観点からピストンを楕円状としたものが、特開昭55− 60641号公報 に提案されている。これは、エンジンの吸気温度と排気温度に大きな温度差があ り、吸気ポート側のピストン頂部と排気ポート側のピストン頂部の間に20〜40度 程度の温度差が生じるため、ピストンの熱膨脹の偏りによって、大きく膨脹した 部位に焼付が発生する恐れがあり、それを防止する目的で、高温である排気ポー ト側に当たるピストンの半分を楕円形として、排気ポート側のピストンとシリン ダの間のクリアランスが常温で大きくなるようにしておき、エンジン運転時には 、上記した温度差によってピストンが偏って熱膨脹し、このピストンがほぼ真円 になるようにしたものである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上記したような構成の従来のタイプの楕円状ピストンは、燃焼室の位置がピス トン頂部の中心と一致している場合には、ピストンランド部の温度はその全周で 大きな温度差は生じず、燃焼熱によるピストンの熱膨脹がほぼ均一であるため、 問題はない。しかし、通常のエンジンでは燃焼室をピストンの中心から多少なり ともオフセットしているのが実情である。これは、吸排気バルブや、点火プラグ の取り付け位置の関係からオフセットされたり、或いは、燃焼室の壁面に向かっ て噴射された燃料が気化し易いように燃焼室の形状を工夫しているためであって 、燃焼室の位置をピストン頂部の中心と無理に一致させることは、燃焼効率を向 上させる上で好ましくないためである。

【０００６】 本考案者は燃焼室がピストン頂部の中心からオフセットした一般的なエンジン で、従来の楕円状ピストンを使用した場合に、シリンダライナに局部的な偏摩耗 が発生し、ブローバイガス量やオイル上がりによる潤滑油の消費量が増加するの を発見した。そこで、燃焼室のオフセット量を換えて実験を繰り返し、原因を調 査したところ次のことが判明した。

【０００７】 即ち、従来のピストンの構成では、図７に示すように燃焼室３のオフセット方 向つまり、燃焼室３に近いピストン頂部1aの周縁部1bやピストンランド部1cの温 度に比して、燃焼室３から遠い側のピストン頂部1aの周縁部1bやピストンランド 部1cの温度は低く、ピストン１の熱膨脹は不均一になるので、この低温側のピス トンランド部1aとシリンダライナ2aとの間のクリアランスが局部的大きくなり、 そこにカーボンＣが付着し、更にこのカーボンＣはピストン１のスラッピングに よって押圧されハードカーボンＣとなり、このハードカーボンＣによってシリン ダライナ2aが摩耗するので、この部位のシール性が低下してブローバイガス量が 増加したり、オイル上がりによる潤滑油の消費量が増加するのである。

【０００８】 従って、オイルギャラリの配置によるシリンダボディの冷却効果の偏りや、吸 気温度と排気温度との差だけでなく、ピストンヘッドに対する燃焼室の位置をも 考慮しなければ、エンジン運転時におけるピストンとシリンダライナとの間のク リアランスがピストンの全周で均一にはならず、エンジンの焼付やシリンダライ ナの偏摩耗を防止することが困難なのであり、特に燃焼室のオフセット量が大き くなる程、これがエンジンの焼付やシリンダライナの偏摩耗の主要因となるので ある。

【０００９】 本考案は以上の問題点に鑑みて、ピストン頂部の中心から燃焼室がオフセット したタイプのエンジンにおいて、エンジンの運転時に燃焼熱によって熱膨脹する 楕円状ピストンにカーボンが局部的に付着することを防止して、シリンダライナ の偏摩耗を防ぎ、ピストンとシリンダの間のシール性を長期間保持できるエンジ ンのピストンを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

前記目的を達成するための本考案に係るエンジンのピストンは、ピストン頂部 の中心から燃焼室の位置がオフセットしているエンジンに設けられる常温時に楕 円形状であるピストンにおいて、この燃焼室のピストン頂部の中心からのオフセ ット方向を前記楕円状ピストンの短径方向とし、ピストン頂部からピストン裾部 に向かって拡大するピストンランド部は、エンジン運転時にピストンの全周でシ リンダライナとのクリアランスが均一になるように、そのテーパー角は燃焼室に 近い側を遠い側よりも大きくして、ピストン頂部の中心をシリンダボアの中心か らオフセットした構成である。

【００１１】

【作 用】

本考案のエンジンのピストンは以上の構成を有しており、燃焼室の位置がピス トン頂部の中心からオフセットしているエンジンにおいて、この燃焼室のピスト ン頂部からのオフセット方向を前記楕円状ピストンの短径方向としているため、 燃焼室から発生する熱をピストン頂部に最大限に均一に伝導させることができ、 更に、ピストン頂部の中心をシリンダボアの中心からオフセットして燃焼室のオ フセット方向の燃焼室に近い側のピストンランド部とシリンダとのクリアランス を、燃焼室から遠い側のピストンランド部とシリンダとのクリアランスよりも大 きくしているので、エンジン運転時の熱によるピストン頂部の熱膨脹の偏りによ って、ピストンの長径方向の先端部がシリンダライナに干渉することなく、ピス トンの全周でシリンダとの間のクリアランスが均一となるため、ピストンランド 部にカーボンが局部的に付着するようなことがなく、その結果、エンジンの焼付 を防止しながら、シリンダライナの偏摩耗を防止して、長期間シリンダとピスト ンの間のシール性を保持することができる。

【００１２】

【実 施 例】

次に図面を参照して本考案の実施例を説明する。図１〜３に示すように本考案 のピストン１は列状に並んだシリンダ２相互間の間隔が、シリンダ列の長手方向 に詰まっており、シリンダ２同士で挟まれた部位にはオイルギャラリを設けるだ けの肉厚が不足しているため、シリンダボディ2bの温度は比較的に高くなる。こ のため、この部位に近いピストンランド部1cの温度が局部的に高くなり、熱膨脹 の偏りによって、この部位に焼付を生じることがあるため、エンジン運転時にほ ぼ真円となるように、常温時には長径Ｌ、短径Ｓの楕円状のピストン１としてい る。

【００１３】 本実施例のピストン１は、図４に示すように燃焼室３の中心位置がピストン頂 部1aの中心から図中に示すように斜め方向にΔｍだけオフセットしている場合に 、燃焼室３の中心位置が楕円状のピストン１の短径Ｓ上に配置されるようにして 、燃焼室３からピストン頂部1aの周縁部1bまでの距離がピストンの全周で、でき るだけ均一になるようにしており、これによって燃焼室３から発生する熱が、ピ ストン頂部1aの全面にできる限り均一に伝導するようにしている。

【００１４】 また、ピストン頂部1aからピストン裾部に向かってテーパーを付けて拡大して いるピストン１のピストンランド部1cは、そのテーパー角を燃焼室３に近い側で 大きくしてピストンランド部1cとシリンダライナ2aとの間のクリアランスを大き くし、燃焼室３から遠い側では小さくしてそのクリアランスを小さくしている。 このテーパー角は燃焼室３のオフセット位置によって異なり、シリンダボアの中 心と燃焼室３の中心を結ぶ線の延長が楕円状ピストン１の短径Ｓとなるようにし ている。

【００１５】 本考案のピストン１は図５及び図６に示すように、ピストン頂部1aからピスト ン裾部に向かってピストンランド部1cを裾拡がりに拡大し、更に、そのテーパー 角を燃焼室３に近い側を遠い側よりも大きくして、エンジン運転時にピストン１ の全周でシリンダライナ2aとのクリアランスが均一になるようにしている。 このようにピストンランド部1cのテーパー角を設定することによって、このピ ストン１は、燃焼室３のオフセット方向と反対方向にピストン頂部1aの中心をシ リンダの中心位置からΔｎだけオフセットしていることになり、エンジン運転時 に熱膨脹によって燃焼室３に近い部位のピストン頂部1aが偏って大きく膨脹した 時に、このピストン頂部1aはほぼ真円になり、ピストン１の全周でシリンダライ ナ2aとの間のクリアランスはほぼ均一になり、局部的なカーボンの付着を防止す ることができるので、ピストン１の焼付やシリンダライナー2aの偏摩耗を防止す ることができるのである。

【００１６】

【考案の効果】

本考案のエンジンのピストンは、ピストン頂部の中心から燃焼室の位置がオフ セットしているエンジンに設けられる常温時に楕円形状であるピストンにおいて 、この燃焼室のピストン頂部の中心からのオフセット方向を前記楕円状ピストン の短径方向とし、ピストン頂部からピストン裾部に向かって拡大するピストンラ ンド部は、エンジン運転時にピストンの全周でシリンダライナとのクリアランス が均一になるように、そのテーパー角は燃焼室に近い側を遠い側よりも大きくし て、ピストン頂部の中心をシリンダボアの中心からオフセットしたので以下の効 果を奏することができる。

【００１７】 燃焼室のピストン頂部からのオフセット方向をこの楕円状ピストンの短径方向 としているため、燃焼室から発生する熱をピストン頂部に最大限に均一に伝導さ せることができ、更に、ピストン頂部の中心をシリンダボアの中心からオフセッ トして燃焼室のオフセット方向の燃焼室に近い側のピストンランド部とシリンダ とのクリアランスを、燃焼室から遠い側のピストンランド部とシリンダとのクリ アランスよりも大きくしているので、エンジン運転時の熱によるピストン頂部の 熱膨脹の偏りによって、ピストンの長径の先端部がシリンダライナに干渉するこ とを防止し、エンジン運転時にはピストン頂部をほぼ真円とすることができる。

【００１８】 そして、上記したことからピストンの全周でシリンダとの間のクリアランスを ほぼ均一とすることができ、ピストンランド部にカーボンが局部的に付着するこ とを防止することができるので、エンジンの焼付を防止しながら、シリンダライ ナの偏摩耗を防止して、長期間シリンダとピストンの間のシール性を保持するこ とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例の楕円状ピストンの平面図
である。

【図２】本考案の第２実施例の楕円状ピストンの平面図
である。

【図３】本考案の第３実施例の楕円状ピストンの平面図
である。

【図４】図１の要部拡大図である。

【図５】図１のＡ−Ａ線縦断面図である。

【図６】図１のＢ−Ｂ線縦断面図である。

【図７】従来の楕円状ピストンの平面図である。

【符号の説明】

１ ピストン 1a ピストン頂部 1c ピストンラ
ンド部 2a シリンダライナ ３ 燃焼室。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストン頂部の中心から燃焼室の位置が
   オフセットしているエンジンに設けられる常温時に楕円
   形状であるピストンにおいて、この燃焼室のピストン頂
   部の中心からのオフセット方向を前記楕円状ピストンの
   短径方向とし、ピストン頂部からピストン裾部に向かっ
   て拡大するピストンランド部は、エンジン運転時にピス
   トンの全周でシリンダライナとのクリアランスが均一に
   なるように、そのテーパー角は燃焼室に近い側を遠い側
   よりも大きくして、ピストン頂部の中心をシリンダボア
   の中心からオフセットしたエンジンのピストン。