JPH05292986A - トレハロースの製造法 - Google Patents

トレハロースの製造法

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JPH05292986A
JPH05292986A JP5023960A JP2396093A JPH05292986A JP H05292986 A JPH05292986 A JP H05292986A JP 5023960 A JP5023960 A JP 5023960A JP 2396093 A JP2396093 A JP 2396093A JP H05292986 A JPH05292986 A JP H05292986A
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JP
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trehalose
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yeast
floriforme
culture
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JP5023960A
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Junichi Miyazaki
純一 宮崎
Kenichiro Miyagawa
権一郎 宮川
Yoshio Sugiyama
良雄 杉山
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
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    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/12Disaccharides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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Abstract

(57)【要約】 【目的】トレハロースを大量かつ安価に製造する方法の
提供。 【構成】フィロバシディウム属に属しトレハロースを生
産する能力を有する酵母を培地に培養し、培養物中にト
レハロースを生成蓄積せしめ、該培養物からトレハロー
スを採取することを特徴とするトレハロースの製造法。 【効果】本法を用いればトレハロース蓄積量が極めて高
く、また、トレハロースを単離精製することが容易であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は微生物を用いた発酵法に
よるトレハロース(O-α-D-glucopyranosyl-(1→1)-α
-D-glucopyranoside)の新規な製造法に関する。トレハ
ロースは、微生物、藻類、植物、動物(昆虫)等広く自然
界に存在し、これらの生物にとって、エネルギー貯蔵物
質としての役割を果たしていることが知られている。近
年、これとは別に、凍結あるいは乾燥時に細胞や細胞内
高分子物質を保護するトレハロースの作用が見いださ
れ、これを契機に、食品、医薬品、化粧品等広い分野
で、保存剤としての応用が始まっている。したがって、
トレハロースを大量かつ安価に製造することは、産業上
きわめて意義深い。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】トレ
ハロースの製造法としては、パン酵母からの抽出法[ジ
ャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアテイ
(J. Amer. Chem. Soc.),72,2059(195
0)]、ハンセヌラ属に属する子のう菌酵母を用いる方
法[ドイツ特許、第266584号]、リゾクトニアお
よびスクレロチウム属に属するかびからの抽出法[特開
平3−130084]、アースロバクター属に属する細
菌を用いる発酵法[アグリカルチュラル・アンド・バイ
オロジカル・ケミストリー(Agr. Biol. Chem.),
,190(1969)]等が知られているが、いずれ
の場合も菌体内外のトレハロース蓄積量が低く、工業的
に有利な方法とはいえない。また、マルトースを原料と
して、二種類の酵素(マルトースホスホリラーゼおよび
トレハロースホスホリラーゼ)を用いてトレハロースに
転換する方法[特公昭63−60998]も知られてい
るが、酵素の調製にコストがかかる等の難点があり、現
在トレハロースを安価にしかも大量に生産する方法は確
立されていない。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な事情に鑑み、工業的に有利なトレハロースの製造法を
確立すべく種々検討を重ねたところ、フィロバシディウ
ム(Filobasidium)属に属する担子菌酵母が菌体内に著
量のトレハロースを選択的に蓄積することを見いだし
た。フィロバシディウム(Filobasidium)属に属する酵
母がトレハロースを蓄積することはこれまで知られてお
らず、本発明はこの新知見に基づき鋭意検討を重ねた結
果完成されたものである。
【0004】すなわち本発明は、フィロバシディウム
(Filobasidium)属に属しトレハロースを生産する能力
を有する酵母を培地に培養し、培養物中にトレハロース
を生成蓄積せしめ、該培養物からトレハロースを採取す
ることを特徴とするトレハロースの製造法である。本発
明方法によれば、サッカロミセス(Saccharomyces)属
に属する子のう菌酵母やハンセヌラ(Hansenula)属に
属する子のう菌酵母を用いる従来法に比べ、より効率的
にトレハロースを製造することができる。すなわち、フ
ィロバシディウム(Filobasidium)属に属する担子菌酵
母は、子のう菌酵母に比べ、炭素源からの菌体収率、菌
体内トレハロース含量ともに高いため、培養液中のトレ
ハロースの蓄積量が大幅に向上する。トレハロースの蓄
積量を高める目的で培地の炭素源濃度を高くした場合、
この差はより顕著となり、フィロバシディウム(Filoba
sidium)属に属する担子菌酵母は子のう菌酵母の3〜5
倍のトレハロースを蓄積することができる。また、同じ
目的で培養の途中で炭素源を追添加すると、子のう菌酵
母では、菌体内トレハロース含量が一度速やかに低下す
る現象が認められ、その後含量は回復するものの、たか
だか追添加前のレベルに止まるに過ぎない。これに反
し、上記担子菌酵母では、トレハロース含量の低下がほ
とんど認められず、高い菌体収率を伴って菌体の増殖が
起こる。結果として、培養液あたりのトレハロース収量
には、両者の間に著しい差が生ずる。また、培養終了
後、フィロバシディウム(Filobasidium)属に属する担
子菌酵母の菌体からトレハロースを抽出・精製する工程
においても、トレハロースの抽出が容易であり、菌体内
に糖としてトレハロースを選択的に蓄積しているため、
精製操作が簡単である。
【0005】本発明に用いられる酵母は、フィロバシデ
ィウム(Filobasidium)属に属し、トレハロースを生産
する能力を有する酵母であればいずれでもよく、フィロ
バシディウム・フロリフォルメ、フィロバシディウム・
カプスリゲナムなどが挙げられる。好ましい菌株の具体
例としては、フィロバシディウム・フロリフォルメ(Fi
lobasidium floriforme)IFO 1603、フィロバシディウ
ム・フロリフォルメ(Filobasidium floriforme)IFO 1
915、フィロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasid
ium floriforme)IFO 1916、フィロバシディウム・カプ
スリゲナム(Filobasidium capsuligenum)IFO 1119 お
よび フィロバシディウム・カプスリゲナム(Filobasid
ium capsuligenum)IFO 1185 などが挙げられる。本発
明においてはフィロバシディウム・フロリフォルメがよ
り好ましい。具体例として挙げた上記の菌株はいずれも
財団法人発酵研究所(IFO)発行の「リスト・オブ・カ
ルチャーズ(LIST OF CULTURES)第8版、1988」に
掲載されている公知菌株であり、同所より容易に入手で
きる。また、上記菌株に人為的に変異を誘起させた株
や、新たに土壌、植物等から分離した菌株であっても、
それがフィロバシディウム(Filobasidium)属に属し、
トレハロースを生産する能力を有するものであれば、本
発明の製造法に使用できる。トレハロース生成能力は、
自体公知の方法、例えば実施例記載の方法によってチェ
ックできる。変異株の具体例としては、フィロバシディ
ウム・フロリフォルメ(Filobasidium floriforme)IFO
1916 を親株として例えば、紫外線照射によって誘導さ
れたフィロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasidi
um floriforme) P87 (IFO 10614, FERMBP 4168) フィ
ロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasidium flori
forme)T12(IFO 10615, FERMBP 4167) が挙げられる。P
87株は菌体外多糖生産低下変異株であり、また、T12株
は、トレハロース非資化性変異株である。
【0006】本発明の製造法を実施するには、まず、こ
れらの酵母菌株を培養する。培養は、通常の振盪培養や
通気撹拌培養などにより好気条件下で回分式、流加式あ
るいは連続式に行うことができる。用いる培地は使用す
る酵母が生育しうる通常の組成のものでよく、種々の炭
素源、窒素源を選択することができ、また、これらの他
に無機塩類、アミノ酸類あるいはビタミン類等の生育必
須因子や生育促進物質を添加するのがよい。炭素源とし
ては、グルコース、マルトース、シュクロース、フラク
トース、澱粉、粗糖、廃糖蜜等の糖類、グリセロール、
ソルビトール等の糖アルコール類、および各種有機酸類
等がそれぞれ単独または混合して用いられる。これらの
炭素源は、所定の濃度になるように、初めから培地に添
加してもよいし、培養中に分割添加してもよい。糖濃度
は特に限定されないが通常約1.0〜30v/v%程度
である。実施例に示すように、フィロバシディウム属酵
母においては炭素源濃度を通常よりも高くした方が、ま
た、炭素源を追添加した方がよりよい結果が得られる。
【0007】窒素源としては、ペプトン、大豆粉、コー
ンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、尿素等の
有機窒素源の他、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等のアンモニ
ウム塩、アンモニア水、アンモニアガスなどの無機窒素
源がそれぞれ単独または混合して用いられる。
【0008】無機塩類としては、カルシウム、カリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜
鉛等の硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢
酸塩等を、必要に応じてそれぞれ単独あるいは適宜組み
合わせて用いられる。
【0009】本発明に用いられるフィロバシディウム
(Filobasidium)属酵母は、その生育にチアミンを要求
するので、チアミンは培地成分として必須である。この
ため、培地にはチアミン塩酸塩をはじめとする各種のチ
アミン塩類、あるいはチアミンを含有する微生物菌体や
その抽出物、肉エキス等の天然有機物が添加される。培
地中のチアミン濃度は、通常0.1〜5mg/l好ましくは
0.2〜2mg/lの範囲でよい。この他に、生育を促進す
る目的で、各種のビタミンやアミノ酸を所望により添加
してもよい。さらに、培養開始時あるいは培養中に、消
泡を目的として培地にシリコンオイル等の消泡剤を添加
するのも効果的である。
【0010】培養液のpHは通常2〜9の範囲がよく、
とりわけ3〜7の範囲が好ましい。pHをこの範囲に保
つために、予め培地にリン酸緩衝液や炭酸カルシウムを
加えておいてもよいし、培養中にpHが所定の値を下回
った時、水酸化アルカリ、アンモニア水、アンモニアガ
ス等を添加して、逆にpHが所定の値を上回った時は、
塩酸、硫酸等の鉱酸または酢酸、クエン酸等の有機酸を
添加してpHを修正してもよい。
【0011】培養の温度は、18〜35℃の範囲(より
好ましくは24〜32℃の範囲)から使用する酵母菌株
の生育ならびにトレハロースの菌体内蓄積に好適な温度
が選択される。通常は上記範囲内の一定温度で培養を行
うが、培養の途中で、上記範囲内で低温または高温へシ
フトするのが効果的な場合もある。
【0012】培養時間は、単位培養液量あたりのトレハ
ロースの蓄積量が最大に達するまで培養すればよく、通
常24〜120時間でその目的は達成される。
【0013】以上の方法によって培養を行ったのち、酵
母菌体内に生成したトレハロースは通常の公知の菌体分
離、抽出、クロマトグラフィー、晶出等の精製方法を組
み合わせることにより、容易に回収、採取することがで
きる。すなわち、培養終了後の培養液からの菌体分離
は、イーストセパレーターによる遠心分離や、フィルタ
ープレス、限外濾過、セラミック濾過器等による濾過分
離によって行えばよい。得られた菌体からのトレハロー
スの抽出に用いる溶媒は、(i)水、(ii)過塩素酸または
トリクロロ酢酸の希薄溶液、または、(iii)エタノー
ル、メタノール、アセトン等の親水性溶媒あるいはそれ
らの水溶液がよい。抽出は菌体を上記の溶媒に懸濁して
行われる。抽出の際には必要に応じて加温してもよい。
なかでも50〜90V/V%エタノール水溶液に菌体を懸
濁して加温抽出する方法や過塩素酸またはトリクロロ酢
酸の希薄溶液に懸濁して抽出する方法が好ましい。次
に、このようにして得た抽出液を、要すれば濃縮したの
ち、活性炭や陽イオンおよび/または陰イオン交換樹脂
によるカラムクロマトグラフィーに付し、トレハロース
画分を集める。この画分をトレハロースの濃度が40〜
60W/V%になるまで濃縮したのち、エタノール濃度に
よるトレハロースの溶解度差を利用して、エタノールの
終濃度が70〜90V/V%になるようにエタノールを添
加して晶出する。晶出はまた、温度による溶解度の差を
利用して水から行うこともできる。得られた粗結晶が、
品質的に不十分な場合は、粗結晶を再び水に溶解したの
ち、上記と同様にして再晶出を行い、精結晶を得ればよ
い。このようにして、トレハロースの二水和物の白色結
晶を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下に実施例をもって本発明をより具体的に
説明するが、これらはいずれも本発明の内容を例示する
ものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。 実施例1 〔表1〕に示す種培地20mlを含む200ml容ヒダ付
三角フラスコに、寒天斜面培地(麦芽エキス0.3W/V
%、酵母エキス0.3W/V%、ペプトン0.5W/V%、グル
コース1.0W/V%および寒天1.5W/V%)上に生育した
フィロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasidium f
loriforme)IFO 1603 の一白金耳を接種し、ロータリー
シェーカー(200rpm)上で24℃、24時間培養し
た。この種培養液の1mlを,表1に示す主培地A20m
lを含む200ml容ヒダ付三角フラスコに移植し、ロ
ータリーシェーカー(200rpm)上で28℃、24時
間培養した。この時点で、18W/V%グルコース水溶液
を2ml追添加して、28℃でさらに24時間培養を継
続した。この間経時的に試料を採取して、培養液中の乾
燥菌体量と培養液1mlあたりのトレハロース蓄積量を
後述する方法によってそれぞれ測定した。結果を〔表
2〕に示す。トレハロース蓄積量は培養36時間目で最
高値(3.5mg/ml)に達した。このときの乾燥菌体量
は17.5mg/mlであったので、乾燥菌体あたりのトレ
ハロース含量は20.0W/W%と計算された。一方、同様
の方法でパン酵母[Gist-brocades(Holland)製乾燥パ
ン酵母 "Fermipan"(商品名)より分離]および子のう
菌酵母に属するクリュベロミセス・サーモトレランス
(Kluyveromyces thermotolerans)IFO 662を培養した
ところ、〔表3〕および〔表4〕に示すように、いずれ
の場合もトレハロース蓄積量はフィロバシディウム・フ
ロリフォルメ(Filobasidium floriforme)のそれに比
べて半分以下の低い値であった。なお、乾燥菌体量なら
びにトレハロースの測定は以下のように行った。すなわ
ち培養液(5ml)から遠心分離によって菌体を集め
た。菌体を蒸留水(5ml)で2回遠心洗浄したのち8
0℃で乾燥した。恒量に達した時点で秤量し、得られた
値を乾燥菌体量とした。一方、同様にして得た洗浄菌体
に70V/V%エタノール(4ml)を加え、よく撹拌した
のち、密栓して沸騰水浴中に15分間保持した。室温ま
で冷却したのち、遠心分離により菌体残渣を除去し、得
られた上澄液中のトレハロース含量を高速液体クロマト
グラフィー[カラム、Shodex Sugar SZ5532;溶離液、ア
セトニトリル:水=80:20(V/V);流速、1ml/min
;温度、50℃;検出器、示差屈折計]で測定した。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】 (Filobasidium floriforme IFO 1603)
【0017】
【表3】 (パン酵母)
【0018】
【表4】 (Kluyveromyces thermotolerans IFO 66
2)
【0019】実施例2 フィロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasidium fl
oriforme)IFO 1603、IFO 1915 および IFO 1916 の種
培養液を実施例1に記載の方法に従って調製した。
【0020】その各1mlを、表1に示す主培地B20m
lを含む200ml容ヒダ付三角フラスコにそれぞれ移
植し、ロータリーシェーカー(200rpm)上で28
℃、48時間培養した。培養終了後、実施例1に記載し
た方法で、乾燥菌体量とトレハロースを測定した。結果
を、同様の方法で得たパン酵母、酒酵母(Sake yeast IF
O 2376)およびクリュベロミセスサーモトレランス(Klu
yveromyces thermotolerans)IFO 662 の結果と合わせ
て、〔表5〕に示す。〔表5〕から明らかなように、フ
ィロバシディウム(Filobasidium)属の酵母は他の子の
う菌酵母に比べ、4〜10倍量のトレハロースを蓄積し
た。
【0021】
【表5】
【0022】実施例3 実施例2で得られたフィロバシディウム・フロリフォル
メ(Filobasidium floriforme)IFO 1916 の培養液(1
0ml)から遠心分離によって菌体を集め、蒸留水(5m
l)で2回洗浄後、10mlの70V/V%エタノールを加
えてよく撹拌したのち、密栓して沸騰水浴中に15分間
保持した。次いで遠心分離により上澄液と菌体残渣を分
離し、沈殿部に6mlの70V/V%エタノールを加え、沈
殿を洗浄後、再度 遠心分離を行い、上澄液を得、前の
上澄液と合わせ全量20mlとした。この溶液のトレハロ
ース量は2.10mg/mlであった。一方、70V/V%エタ
ノールのかわりに蒸留水を用いて、上記と同様の実験を
行ったところ、抽出液のトレハロース量は2.04mg/m
lであった。これは70V/V%エタノールを用いたとき
の97%であった。
【0023】実施例4 実施例1の方法に従って調製したフィロバシディウム・
フロリフォルメ(Filobasidium floriforme)IFO 1916
の種培養液125mlを、表1に示す主培地C2.5lを
含む5l容ジャーファーメンターに移植し、通気量1.
25l/min、 撹拌数800rpm、温度28℃の条件で通
気撹拌培養した。培養中、pHが5.0を下回ったとき
は、15W/V%苛性ソーダ液を添加することによって、
pHを5.0に調整した。培養開始後27時間目でグル
コースは完全に消費しつくされ、このときの乾燥菌体量
とトレハロース蓄積量を実施例1に記載した方法によっ
て測定したところ、それぞれ49.5mg/ml および1
0.0mg/ml であった。したがって、菌体内トレハロー
ス含量は20.2W/W%であった。
【0024】次に、この培養終了液から以下の手順でト
レハロースを精製、採取した。すなわち、培養終了液1
l を遠心分離(5000×g、15分)して菌体を集
め、蒸留水500mlで洗浄した。洗浄菌体に70V/V%
エタノール1l を加え、沸騰水浴中に撹拌しながら1
5分間保持した。この懸濁液を遠心分離して菌体残渣を
除き、澄明な上澄液を得た。
【0025】減圧下でエタノールを留去したのち、この
抽出液(320ml)を活性炭(LH2C炭、武田薬品製)
のカラム(3×30cm)に負荷した。カラムを蒸留水約
300mlで洗浄したのち、10V/V%エタノールで溶
出を行った。トレハロースを含む画分(550ml)を
集め、減圧蒸留により12mlに濃縮した。この濃縮液
に、エタノールを終濃度が80V/V%になるように撹拌
しながら徐々に加えたのち、4℃で一夜放置した。析出
した結晶を濾過によって集め、少量のエタノールで洗浄
し、60℃で5時間乾燥した。このようにして、最終的
に7.9gの白色結晶を得た。
【0026】本結晶の比旋光度を測定したところ、
[α]D 29・1=+176.3であり、また熱天秤示差熱分
析の結果、水分含量9.24%,融点213.2℃であっ
た。これらの値は,対照として用いたシグマ社(US
A)製トレハロース・二水和物[D(+)Trehalose dihy
drate、crystalline、Product Number T5251] の値とよ
く一致した。また、本品の赤外線吸収スペクトルもシグ
マ社製トレハロースのそれと極めてよく一致した。以上
の結果から、本結晶がトレハロースの二水和物であるこ
とが確認された。
【0027】実施例5 実施例1の方法に従って調製したフィロバシディウム・
フロリフォルメ(Filobasidium floriforme)IFO 1916
の種培養液125mlを、表1に示す主培地C2.5lを
含む5l容ジャーファーメンターに移植し、通気量1.
25l/min、 撹拌数800rpm、温度28℃の条件で通
気撹拌培養した。培養中、pHが5.0を下回ったとき
は、15W/V%苛性ソーダ液を添加することによって、
pHを5.0に調整した。培養開始後16時間目に温度
を32℃に変更し培養を続けたところ、培養開始後33
時間目で グルコースは完全に消費しつくされ、このと
きの乾燥菌体量とトレハロース蓄積量を実施例1に記載
した方法によって測定したところ、それぞれ42.3mg/
ml および11.0mg/ml であった。したがって、菌体
内トレハロース含量は26.0W/W%であった。
【0028】実施例6 表1に示す種培地20mlを含む200ml容ヒダ付三角
フラスコに、寒天斜面培地(麦芽エキス0.3W/V%、酵
母エキス0.3W/V%、ペプトン0.5W/V%、グルコース
1.0W/V%および寒天1.5W/V%)上に生育したフィロ
バシディウム・フロリフォルメ(Filobasidium florifo
rme)IFO 1916 の一白金耳を接種し、ロータリーシェー
カー(200rpm)上で24℃、24時間培養した。
【0029】ついで、この菌体を遠心により集め、0.1
M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)で1回洗浄後、同
じ緩衝液に約4×106/mlとなるように懸濁した。この細
胞懸濁液10mlを滅菌シャーレに入れ、殺菌灯(東芝,15
W)を用いて約30cmの距離から、生菌数が約1%になる
ように(約5.5分間)UV照射後、102,103および1
4に希釈してそれぞれをYMG寒天平板培地(麦芽エキス
0.3W/V%、酵母エキス0.3W/V%、ペプトン0.5W/V
%、グルコース2.0W/V%および寒天2.0W/V%)に塗
沫し、24℃,3日間培養した。生じたコロニーの大部
分は、その形態において親株と同様高粘性で光沢のある
ものであったが、親株とは明らかに形態の異なる低粘性
で光沢のないコロニーが低頻度ながら出現した。これら
を釣菌してその性質を親株と比較したところ、共通の性
質として後述する方法で測定した菌体外多糖生成量が減
少し菌体内トレハロース蓄積量が増加していることがわ
かった。そのうちの代表株をP87株と命名した。 つ
ぎに、P87株の種培養液を実施例1に記載の方法で調
製し、実施例4の方法に従ってジャーファーメンターを
用いて培養した。培養終了後、実施例1に記載した方法
で、乾燥菌体量とトレハロース量を測定した。また同時
に、培養上清液に蓄積された菌体外多糖生成量の測定を
行なった。すなわち、培養上清液(5ml)に4倍量のエ
タノールを加えて生じた白色沈澱物を遠心により回収
し、これを80%エタノール(5ml)で1回洗浄後に5mlの
蒸留水に溶解した。これについてグルコースを標準とし
てフェノール硫酸法により全糖量を測定し、培地1ml当
りの量として示した。〔表6〕に測定結果を示す。
【0030】
【表6】
【0031】これからも明らかなように、P87株は親
株に比べ、菌体外多糖生成量が 1/5に低下しトレハロー
ス蓄積量が26%向上していた。
【0032】実施例7 実施例4に記載の方法に従って、実施例6で得られた培
養終了液からトレハロースを精製取得したところ培養終
了液1lから最終的に10.0gの白色結晶を得た。親
株を用いた場合(実施例4)と比べ27%の収量増加で
あった。なお、本菌を用いた場合には、乾燥菌体量にほ
とんど差がないにもかかわらず、培養液の粘性が低下し
ており、遠心分離後の菌体の占める容積も、親株に比し
て約1/2に減少していた。これによって、培養後の菌体
の回収が容易になるばかりでなく、菌体からトレハロー
スを抽出する際に必要なエタノールの量が大幅に減少す
るなど精製工程が著しく改善された。
【0033】実施例8 フィロバシディウム・フロリフォルメ(Filobasidium f
loriforme)IFO 1916を親株として、実施例6と同様の
方法で変異処理を行なった菌体を、102,103および
104に希釈してそれぞれをYMG寒天平板培地(麦芽
エキス0.3W/V%、酵母エキス0.3W/V%、ペプトン
0.5W/V%、グルコース2.0W/V%および寒天2.0W/V
%)に塗沫し、24℃,2日間培養し、コロニーを生じ
させた。ついで、このコロニーをレプリカプレーティン
グ法を用いて、YNBPT寒天平板培地(YNB 0.
67W/V%,KH2PO4 1.37W/V%,K2HPO4
1.73W/V%,トレハロース 0.5W/V%, 寒天1.
5W/V%;pH6.0)およびYNBPG寒天平板培地
(YNB 0.67W/V%,KH2PO4 1.37W/V%,
2HPO4 1.73W/V%グルコース 0.5W/V%,寒
天 1.5W/V%;pH6.0)に写し、24℃で2日培
養した。このようにして、YNBPG寒天平板培地には
生育できるが、YNBPT寒天平板培地には生育できな
い株を数株取得した。 これらの一白金耳をYNBPT
液体培地、YNBPG液体培地(各々上述寒天平板培地
から寒天を除いたもの)にそれぞれ接種し24℃で48
時間振盪培養後、その生育度を調べ、YNBPG液体培
地では親株と同程度に生育するが、YNBPT液体培地
ではほとんど生育できない株のなかから代表株一株選び
出しT12株と命名した。T12株の生育度測定の結果
を〔表7〕に示す。T12株は、実質的にトレハロース
の資化能を欠失した変異株であった。また、実施例4に
記載の方法でトレハロース生産量を調べた所、〔表8〕
に示すように親株に比べ36%向上していた。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
【発明の効果】本発明の方法によれば、産業上有用な物
質であるトレハロースを、工業的に安価に製造すること
ができる。すなわち、フィロバシディウム(Filobasidi
um)属に属する担子菌酵母を培地に培養することによっ
て、トレハロースを選択的かつ著量含有する菌体を極め
て収率よく得ることができる。そのうえ、菌体からのト
レハロースの抽出が容易であり、また菌体内にはトレハ
ロース以外の糖、糖アルコール類はほとんど認められな
いことから、精製操作が簡単であり、トレハロースを収
率よく安定的に生産することができる。さらに該酵母か
ら誘導された変異株を用いることによりいっそう効率的
にトレハロースを生産させることができる。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母を培地に培養し、培養物中
    にトレハロースを生成蓄積せしめ、該培養物からトレハ
    ロースを採取することを特徴とするトレハロースの製造
    法。
  2. 【請求項2】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母がフィロバシディウム・フ
    ロリフォルメ種に属するトレハロース生産能を有する酵
    母である請求項1記載の製造法。
  3. 【請求項3】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母がフィロバシディウム・フ
    ロリフォルメIFO1603である請求項1記載の製造
    法。
  4. 【請求項4】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母がフィロバシディウム・フ
    ロリフォルメIFO1915である請求項1記載の製造
    法。
  5. 【請求項5】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母がフィロバシディウム・フ
    ロリフォルメIFO1916である請求項1記載の製造
    法。
  6. 【請求項6】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母が菌体外多糖生産低下変異
    株である請求項1記載のトレハロースの製造法。
  7. 【請求項7】菌体外多糖生産低下変異株がフィロバシデ
    ィウム・フロリフォルメP87である請求項6記載のト
    レハロースの製造法。
  8. 【請求項8】フィロバシディウム属に属しトレハロース
    を生産する能力を有する酵母がトレハロース非資化性変
    異株である請求項1記載のトレハロースの製造法。
  9. 【請求項9】トレハロース非資化性変異株がフィロバシ
    ディウム・フロリフォルメT12である請求項1記載の
    トレハロースの製造法。
  10. 【請求項10】トレハロース非資化性変異株がフィロバ
    シディウム・フロリフォルメP87である請求項1記載
    のトレハロースの製造法。
  11. 【請求項11】トレハロース非資化性変異株がフィロバ
    シディウム・フロリフォルメT12である請求項1記載
    のトレハロースの製造法。
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