JPH05289369A - 電子写真感光体の基体の洗浄方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 電子写真感光体の基体を超音波洗浄する場合
に発生していたキャビテーションが原因での基体表面の
ピンホールの生成を防止して、良好な洗浄効果をもたら
す洗浄方法を提供すること。 【構成】 電子写真感光体の基体の洗浄に当たり、該基
体をノニオン及び／又はアニオン系界面活性剤含有純水
中に浸漬した状態で回転させて洗浄を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、複写機やプリンタ等の
電子写真装置などに用いられる電子写真感光体の製造に
関する。

【０００２】

【従来の技術】一般的に電子写真感光体は、ドラム状導
電性基体上に感光層を形成したものである。このドラム
状導電性基体は円筒状のアルミニウムを鏡面加工又は板
状のアルミニウムをインパクト成形することにより作成
される。鏡面加工又はインパクト成形中に基体表面に
は、切削油のミスト、空気中のダスト、切粉等が付着す
るため、基体表面を洗浄処理して除去した後に、縮合多
環顔料、アゾ顔料等の電荷発生物質、樹脂の結着剤等か
ら成る電荷発生層及びヒドラゾン系又はアリールアミン
系電荷輸送物質、樹脂の結着剤、酸化防止剤等の添加剤
などから成る電荷輸送層を順次塗布・積層し、乾燥して
感光層を形成する。

【０００３】電荷発生層及び電荷輸送層は、上述した電
荷発生層及び電荷輸送層を構成する物質をそれぞれ含有
する塗工液にドラム状導電性基体を公知の方法で浸漬す
ることによって該基体の表面に形成される。ここでおこ
なう浸漬塗布方法としては、特に制限はなく公知の方法
が使用し得るが、例えば特開昭49-130736 、特開昭57-5
047 及び特開昭59-46171に開示される方法が挙げられ
る。

【０００４】浸漬塗布法において、導電性基体表面の洗
浄が不十分であると、その表面に油、ダスト等が残り、
塗布の際にハジキ、シミ等の塗布欠陥の原因となる。こ
のような電子写真感光体上に発生した欠陥は、コピー画
像に黒ポチ、白ポチ、ハーフトーン画像のムラ等となっ
て現われ、画像品質に悪影響を及ぼし、かような電子写
真感光体は実用に適さないものである。

【０００５】基体表面の洗浄としては、通常有機溶媒
中、必要に応じて加温された有機溶媒中で及び／又は超
音波の作用下で基体を浸漬処理する浸漬洗浄；基体を溶
媒に浸漬中又は基体に溶媒をシャワーリングしながらブ
ラシ、スポンジ等により物理的に擦る接触洗浄；溶媒を
高圧下でスリットより基体表面に噴出するジェット洗浄
及び溶媒蒸気中に基体を挿入する蒸気洗浄が挙げられ、
これらを単独又は組合せて基体表面の洗浄が行なわれて
いる。

【０００６】ここで使用される溶媒としては、メチレン
クロライド、エチレンクロライド、１．１．１−トリク
ロルエタン、トリクロルエチレン、パークロルエチレン
等の塩素系溶剤、フロン−112 、フロン−113 等のフッ
素系溶剤、該フッ素系溶剤とメタノール、メチレンクロ
ライド等の混合溶剤、ベンゼン、トルエン、メタノー
ル、エタノール、イソプロピルアルコール、石油系炭化
水素等及びそれらの混合物が挙げられる。これらの溶剤
中には引火性、発火性を有するもの、人体に有害である
ので使用許容濃度が低いもの、洗浄能力が低いものが含
まれており、最も一般的に使用されている溶剤は、１．
１．１−トリクロルエタンである。

【０００７】しかしながら、１．１．１−トリクロルエ
タンは、洗浄能力が高い、取扱いが容易である等の長所
があるものの、地球温暖化、オゾン層の破壊等を引き起
す物質の一つであると推認され、フロンとともに全世界
でその削減が決定されており、１．１．１−トリクロル
エタンの代替洗浄液の提供又は代替洗浄法の開発が切望
されている。

【０００８】前記の課題に対応すべく最近では界面活性
剤含有純水による洗浄や純水によるすすぎ（いわゆる水
洗浄）が行なわれている。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】電子写真感光体の基体
として用いられている材料は、低価格、加工し易さ、強
度及び重量等の観点から、主にアルミニウムである。ア
ルミニウムは、反応性が高く柔らかいという性質を有し
ており、アルミニウム純度が高くなるにつれてこの傾向
は強くなる。感光体の基体としては、加工しやすさ、感
光層との接合状態等の点からアルミニウム純度の高いも
のが用いられることが多い。

【００１０】このような高純度のアルミニウムからなる
基体の表面を洗浄する場合は、基体材料であるアルミニ
ウムの反応性と柔らかさを考慮して、有機溶媒による洗
浄が行なわれるのが通常である。

【００１１】しかしながら、超音波の作用下で浸漬洗浄
を行う場合、従来の１．１．１−トリクロルエタンによ
る洗浄は超音波発振装置により発生するキャビテーショ
ンが弱くアルミニウムの表面を浸食することはなかった
が、水は有機溶媒に比べ蒸気圧が高い、粘度が高い、表
面張力が高い等の点によりキャビテーションが強くなる
ため、洗浄時、特にすすぎ（水）洗浄の工程において超
音波のキャビテーションによりアルミニウム表面に多く
のピンホールが生じてしまう。

【００１２】ピンホールの生じた基体を塗布液中に浸漬
し塗布を行なうと、ピンホール部分より塗布液中に微細
な気泡が生じこれがアルミニウム表面を伝わって上昇す
る際に均一塗布を妨げる。これにより筋状の塗布又は、
塗布ムラを生じることがわかっている。このような欠陥
は、画像に白ポチ、黒ポチ、画像アレ、画像ムラといっ
た現象を生じさせる。

【００１３】ピンホールの生成を防止するためにはすす
ぎ時間を短かくすればよいが、そうすれば洗浄効果が悪
くなり、塗布後、ハジキ、シミ等の塗布欠陥を生じる。

【００１４】もう一つの方法として超音波を付与しなけ
ればピンホールは生成しないが、この場合も洗浄不充分
となり基体表面に切削時の切削ミストや界面活性剤等が
残り感光液塗布時にハジキ、シミ等の欠陥を生じる原因
となる。

【００１５】そこで本発明では、電子写真感光体の基体
を超音波洗浄する場合に発生していたキャビテーション
が原因での基体表面のピンホールの生成を防止して、良
好な洗浄効果をもたらす洗浄方法を提供することを目的
としている。

【００１６】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明では、電子写真感光体の基体の洗浄に当た
り、該基体を界面活性剤含有純水中に浸漬した状態で回
転させ、基体表面との摩擦により洗浄を行うものであ
る。界面活性剤としては、ノニオン及び／又はアニオン
系界面活性剤が使用できる。また、洗浄する際の基体の
回転速度は、500 〜5,000rpmで、好ましくは1,000 〜2,
000rpmである。

【００１７】

【作用】図を用いて本発明の作用を説明する。図１は、
本発明の洗浄方法の工程を示す概略図である。切削加工
又はインパクト成形された基体１は、レール３に配置さ
れたスライダー４に設けられた基体クランパ２によって
保持され、かつ、ベルト６を介して回転シャフト７に伝
えられたモータ５の回転に従って回転する。シリンダ８
が下降し基体１が洗浄槽及びすすぎ槽（後述する）中で
高速回転することにより基体の洗浄が達せられる。

【００１８】第１の洗浄槽10は界面活性剤が溶解した純
水の洗浄液11で満たされている。15はオーバーフローパ
イプで洗浄液11が定量以上になると排出されるようにな
っている。

【００１９】第２の洗浄槽20は、第１の洗浄槽10と同様
に界面活性剤が溶解した純水の洗浄液21が満たされてい
る。25は洗浄液21を供給するパイプである。第２の洗浄
槽20内に洗浄液21が満杯になると第１の洗浄槽10へオー
バーフローするようになっている。

【００２０】第３の洗浄槽30から第５の洗浄槽50までは
純水によるすすぎを行なうためのすすぎ槽である。パイ
プ55から純水が第５の洗浄槽50に入り、順に第４の洗浄
槽40、第３の洗浄槽30とオーバーフローするしくみにな
っている。35は廃液パイプで第３の洗浄槽30の水を回収
し再生装置（図示しない）へ送り込むようになってい
る。 各洗浄槽の洗浄液はそれぞれ配管12、22、32、4
2、52からポンプ13、23、33、43、53を経て循環し、フ
ィルター14、24、34、44、54によってダスト、切粉等が
除去される。

【００２１】第１の洗浄槽の洗浄液の_ＰＨは６．０〜
９．０、好ましくは６．５〜８．０が好ましい。該洗浄
液の_ＰＨを６．０〜９．０に制御すると、アルミニウム
基体表面の水酸化物、酸化物、酸水和物の生成が抑制さ
れ、該反応生成物による塗れ性等の物理的特性の変化が
生ずることがないので、塗布の際のハジキ、シミ、塗布
ヌケ等の塗布欠陥の発生を防止し得る。又、洗浄液の廃
水処理設備等の負担も小さくなり、設備コスト、廃水処
理コストを低下させることができるので、製造コスト・
ダウンにつながる。

【００２２】本発明で使用する界面活性剤としては、基
体を腐食することのないノニオン系界面活性剤及び／又
はアニオン系界面活性剤を使用することができ、その具
体例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・
ブロックコポリマー型及びノニルフェノールポリオキシ
エチンエーテルなどのノニオン系界面活性剤、及びアル
キルベンゼン、高級アルコール、α−オレフィンなどの
硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩又はリン酸塩などのアニオン
系界面活性剤が挙げられ、特に_ＰＨ６．０〜９．０の洗
浄液を形成するものが好ましい。

【００２３】本発明の洗浄液の界面活性剤の濃度は0.5
〜30％、好ましくは４〜15％である。

【００２４】本発明における第１の洗浄槽の洗浄液によ
る洗浄時間（浸漬時間）は、0.5 〜10分間、好ましく
は、1.5 〜５分間で、第２乃至第５の洗浄槽における浸
漬時間もそれぞれ0.5 〜10分間、好ましくは1.5 〜５分
間である。

【００２５】洗浄処理された基体は、公知の方法、例え
ばクリーン度100 に保たれたクリーンブース60内で70℃
〜80℃のクリーンエアーを吹きつけて乾燥する。

【００２６】得られた基体表面に公知の方法で感光層を
形成する。例えば、縮合多環顔料又はアゾ系顔料等の電
荷発生材料、ブチラール樹脂等の結着剤、可塑剤、増感
剤をシクロヘキサン等の溶剤に分散した塗工液を用い浸
漬塗布法又はリング方式塗布法によって、洗浄処理され
た円筒基体表面に電荷発生層（乾燥膜厚：0.1 〜1.0μ
ｍ）を形成する。次いで、ヒドラゾン系化合物又はアリ
ールアミン系化合物の電荷輸送材料、ポリカーボネート
樹脂等の結着剤、可塑剤、増感剤をジクロロエタン等の
溶剤に溶解した塗工液を用いて浸漬塗布法で電荷輸送層
（乾燥膜厚：５〜70μｍ）を形成する。

【００２７】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。

【００２８】実施例１ 図１に示した工程により、切削加工したアルミニウム製
円筒状基体を洗浄処理した。

【００２９】第１、第２の洗浄槽の洗浄液として、ライ
オミックス−Ｈ（ライオン（株）製）の５％純水溶液を
用い、第３乃至第５の洗浄槽の洗浄液として純水を用い
た。第１、第２の洗浄槽の洗浄液は50℃に加温されてお
り、第３乃至第５の洗浄槽の洗浄液の温度は25℃であっ
た。第１乃至第５の洗浄槽への浸漬時間はそれぞれ２分
間であった。

【００３０】基体の回転数を1,000rpmに設定し第１の洗
浄槽から第５の洗浄槽まで共通して行なった。

【００３１】洗浄処理した基体をクリーン乾燥ブース内
にて80℃のクリーンエアーをかけて水切り乾燥させた。

【００３２】得られた円筒状基体の表面に、下記Ａ液を
乾燥後0.5 μｍの膜厚になるように公知の浸漬塗布方法
により浸漬塗布し80℃の温度で10分間乾燥し、Ａ液を塗
布した表面に、更に下記Ｂ液を乾燥後の膜厚20μｍにな
るように浸漬塗布し、75℃の温度で１時間乾燥した。

【００３３】Ａ液 ジブロムアンスアンスロン２重量部、ブチラール樹脂
［エスレックＢＭ−２、セキスイ化学（株）製］２重量
部、シクロヘキサノン 230重量部をボールミルにて８時
間分散処理して得られた液。

【００３４】Ｂ液 ヒドラゾン系電荷輸送材［ＡＢＰＨ、日本化薬（株）
製］１重量部、ポリカーボネート樹脂［パンライトＬ−
1250、帝人化成（株）製］１重量部をジクロロエタン８
重量部で溶解して得られた液。

【００３５】得られた電子写真感光体それぞれ30本を回
転用治具に装着し複写機［ＳＦ−8100、シャープ（株）
製］に搭載してコピーを取り画像評価を行なった。結果
を表１に示す。

【００３６】比較例１ 切削加工したアルミニウム製円筒状基体を、有機溶剤と
して60℃の１．１．１−トリクロルエタンを用いた超音
波・温浴洗浄処理を30秒間行なった。20℃の１．１．１
−トリクロルエタンで30秒間冷浴した後、１．１．１−
トリクロルエタンを用いた蒸気洗浄を30秒間行ない、ク
リーンルームで20分間放冷した。得られた円筒状基体の
表面に実施例と同様の方法で感光体層を形成した。得ら
れた電子写真感光体30本を実施例と同様の方法で画像評
価を行なった。結果を表１に示す。

【００３７】比較例２ 洗浄槽の洗浄液としてライオミックス−Ｈ［ライオン
（株）製）の５％純水溶液を用い２分間超音波洗浄を行
ない、つづいて純水を入れたすすぎ槽にて２分間超音波
洗浄を行ない得られた円筒状基体に実施例と同様の方法
で感光体層を形成し、30本の電子写真感光体を作成し実
施例と同様の方法で画像評価を行なった。結果を表１に
示す。

【００３８】比較例３ 洗浄処理を施さない円筒状基体の表面に実施例と同様の
方法で感光体層を形成した。得られた電子写真感光体30
本を実施例と同様の方法で画像評価を行なった。結果を
表１に示す。

【００３９】

【表１】

【００４０】比較例４ 本発明による槽内の液をクリーンにしながら行なう洗浄
方式と、従来のジェット洗浄方式とによる使用水量を比
較した。結果を表２に示す。

【００４１】

【表２】

【００４２】

【発明の効果】本発明の方法により、洗浄不良によるハ
ジキ、シミ、超音波洗浄がもたらすキャビテーションに
よる白ポチ、黒ポチ等の発生が防止され、良品率におい
ても、従来の１．１．１−トリクロルエタン洗浄液を使
用する場合とほぼ同等の良品率を維持することができ、
実用可能な高収率で電子写真感光体が得られる。更に洗
浄液として有機溶剤を使用しないので、有機溶剤の使用
による大気汚染、人体への影響、高い引火性及び高い発
火性による爆発の危険、特に１．１．１−トリクロルエ
タン、フロンの洗浄液としての使用による地球温暖化及
びオゾン層の破壊等の問題が解消される。

【００４３】また、基体に洗浄液を吹きつけて洗浄する
ジェット洗浄方式では、洗浄本数と水の使用量がほぼ比
例するのに対して、本発明では、槽内の液をクリーンに
しながら洗浄するので洗浄本数が増えても使用量はそれ
ほど変らず、１本当たりに使用する水の量が極めて少な
くてすむ。その結果、全体的な生産コストの低下が図れ
るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の洗浄方法の工程を示す概略図である。

【符号の説明】

１ 基体 ２ クランパ ３ レール ４ スライダー ５ モータ 10、20、30、40、50 洗浄槽 11、21、31、41、51 洗浄液 14、24、34、44、55 フィルタ 15 オーバフローパイプ 60 クリーンブース

フロントページの続き (72)発明者 松本 雅則 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 松本 浩史 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 忍 充弘 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電子写真感光体の基体の洗浄に当たり、
   該基体を界面活性剤含有純水中に浸漬した状態で回転さ
   せることにより洗浄を行なうことを特徴とする電子写真
   感光体の基体の洗浄方法。
2. 【請求項２】 電子写真感光体の基体が、アルミニウム
   製であることを特徴とする請求項１記載の洗浄方法。
3. 【請求項３】 界面活性剤として、ノニオン及び／又は
   アニオン系界面活性剤を使用することを特徴とする請求
   項１又は２記載の洗浄方法。
4. 【請求項４】 洗浄液中の界面活性剤の濃度が、0.5 〜
   30％であることを特徴とする請求項３記載の洗浄方法。
5. 【請求項５】 洗浄液中の界面活性剤の濃度が、４〜15
   ％であることを特徴とする請求項３記載の洗浄方法。
6. 【請求項６】 洗浄される際の基体の回転速度が、500
   〜5,000rpmであることを特徴とする請求項１〜５のいず
   れか１項に記載の洗浄方法。
7. 【請求項７】 洗浄される際の基体の回転速度が、1,00
   0 〜2,000rpmであることを特徴とする請求項１〜５のい
   ずれか１項に記載の洗浄方法。