JPH05284992A - 神経成長因子産生促進剤及びその製造法 - Google Patents

神経成長因子産生促進剤及びその製造法

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JPH05284992A
JPH05284992A JP4119532A JP11953292A JPH05284992A JP H05284992 A JPH05284992 A JP H05284992A JP 4119532 A JP4119532 A JP 4119532A JP 11953292 A JP11953292 A JP 11953292A JP H05284992 A JPH05284992 A JP H05284992A
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JP
Japan
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tripeptide
production
methanol
growth factor
ngf
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JP4119532A
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Tomoko Tsuji
智子 辻
Koji Yamaguchi
宏二 山口
Sei Kondo
聖 近藤
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Sagami Chemical Research Institute
Original Assignee
Sagami Chemical Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 式(I) 【化1】 で示されるトリペプチドを有効成分とする神経成長因子
(NGF)産生促進剤。 【効果】 該トリペプチドは脳内および末梢でのNGF
の分泌を促進し、痴呆症、各種末梢神経障害等の予防治
療等に有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、神経成長因子(以下、
NGFと称す。)産生促進剤及びその製造法に関する。
【0002】
【従来技術】NGFは、試験管内で神経細胞を分化させ
て神経突起の伸長を促したり、神経細胞の生存を維持す
るほか、動物実験においてNGFを脳内に投与すると、
記憶や学習能力が高まり、また脳虚血によってニューロ
ンが死滅するのを防ぐ効果があることが知られている
〔J. Neurosci., 6, 2155(1986)、 Brain Res., 293,30
5(1985) 、 Science, 235, 214(1986) 、 Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 83,9231(1986)、 Annals of Neurolog
y, 120, 275(1986)〕。
【0003】また、アルツハイマー型老年性痴呆症にお
いては、記憶や思考を司る神経細胞であるマイネルト核
のコリン作動性ニューロンの殆どが死滅し失われている
ことが多くの症例で確認されているが、この神経細胞の
生存や分化に、NGFが必須であることが最近多くの研
究者らによって明らかにされている。〔ファルマシア,
22, 147(1986)、老年精神医学, 3, 751(1986)〕。ま
た、ランス・オルソンらの報告(1991年アルツハイマー
病治療のシンポジウム) では、実際にアルツハイマー病
で痴呆症状の出ている患者の脳にネズミから取ったNG
Fを3ヶ月で計6.6mg直接注入したところ、症状が改
善されたことが確認されている。
【0004】また、ハンチントン舞踏症患者の脳の線条
体では、GABA作動性神経細胞の脱落と共にコリン作
動性神経細胞の脱落が著しく、NGFが線条体の内因性
コリン作動性神経細胞にも作用することが知られている
〔Science, 234, 1341(1986)〕。
【0005】さらに、NGFは中枢神経のみならず末梢
の知覚、交感神経系の栄養因子として働き神経の再生に
必須の因子である。すなわち、脊髄損傷、末梢神経損
傷、糖尿病性神経障害および筋萎縮性側索硬化症等の治
療に使用できると考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、NGF
を実際にヒトの治療に用いるには、NGFの大量生産手
段が確立されておらず、また、NGFは分子量が大きい
ために、血管を通して脳内に送り込みがたく、蛋白分解
酵素により分解されるなどの問題点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、NG
Fを産生する細胞を活性化し、脳内および末梢でNGF
の産生を促がす物質を探索した結果、ペニシリウム・フ
ェルタナムより生産される後記式(I)で表わされるト
リペプチドがNGFの産生を促進することを見出し、本
発明を完成するに至った。
【0008】本発明は、式(I)
【0009】
【化2】
【0010】で示されるトリペプチドを有効成分とする
NGF産生促進剤である。上記式(I)で示されるトリ
ペプチドは、ペニシリウム・フェルタナム菌が生産する
物質〔Tetrahedron, 47, 8529(1991) 〕であり、癌細胞
に対して増殖抑制作用を有することが知られている。
【0011】本発明者は、上記式(I)のトリペプチド
をペニシリウム・フェルタナム(Penicillium fellutan
um)SCRC−f25の培養により得た。該菌株は、微
生物寄託番号「微工研菌寄第12385号」として、工
業技術院微生物工業技術研究所に寄託されている。
【0012】以下に式(I)のトリペプチドの製造法に
ついて述べるが、一般的に醗酵生産物を生産する場合に
準じ、各種の栄養物質を含む培地でペニシリウム・フェ
ルタナムSCRC−f25を好気的条件下で培養するこ
とができる。この培養においては、静置条件、すなわち
振盪培養による菌体の分散がおこらないよう留意するこ
とが必須であり、又空気との接触面積を大きくする積極
的な好気的培養を行う事により、後記式(II)のNo.1
0位炭素原子に結合する水酸基が水素原子となった化合
物の生産を抑え、式(I)のトリペプチドを選択的に生
産することができる。
【0013】培地は主として液体培地を用い、炭素源と
してはグルコース、廃糖蜜、スターチなどを単独または
混合して用いることができる。窒素源としてはペプト
ン、大豆粉、酵母エキスなどを単独か又は混合して用い
ることができる。その他、菌株の成育を助け、式(I)
のトリペプチドの生産を促進する有機物及び無機塩を必
要により添加することができる。
【0014】培養は、静置培養により、25℃で7〜1
4日間行う。
【0015】この培養液中に生産された式(I)のトリ
ペプチドを単離するには、醗酵生産物を採取する一般的
な方法に準じて行えば良い。すなわち培養終了後、遠心
分離又は濾過により分離した菌体を、低級アルコール、
クロロホルム、n−ヘキサン、酢酸エチル、エーテル、
アセトン、好ましくはメタノールで抽出する。
【0016】これを再度濾過し、濃縮後、90%メタノ
ール等に再溶解し、続いて、n−ヘキサン抽出を行い、
ヘキサン層を除去する。メタノール層を減圧乾固し、水
に懸濁後、酢酸エチルエステル、クロロホルムなどの非
水溶媒に転溶し、濃縮する。これをセファデックスLH
−20(ファルマシア)を用いたゲル濾過、マイクロボ
ンダパックC−18(Waters)を用いたカラムクロマト
グラフ、及び/又はTSK gel ODS−TM(東
ソー)を用いた高速液体クロマトグラフを繰り返すこと
により精製することができる。
【0017】この活性物質について各種のスペクトルを
測定し、式(I)の公知のトリペプチドであることを確
認した。
【0018】
【実施例】以下、実施例、試験例、参考例を挙げて本発
明を具体的に説明する。 実施例 ペプトン10g、酵母エキス5g、グルコース20g、
人工海水500ml及び水500mlよりなる無菌液体
培地(pH7.0)を細胞培養用フラスコ(容量800
ml、培養面積175cm2、NUNCLON)に20
0mlづつ分注し、各々にポテトデキストロース寒天上
で生育したペニシリウム・フェルタナム(Penicillium
fellutanum)SCRC−f25を適量植菌した。25℃
で11日間静置培養した後、三重にしたガーゼで培養液
を濾過し、菌糸体と培養上清を分離した。菌糸体は鋏で
切断し小断片とし適当量のメタノール中で、室温で約3
時間振盪し、抽出した。これを濾過した後、溶媒を減圧
除去し、90%メタノールに再溶解した。これを等量の
n−ヘキサンで抽出し、ヘキサン層を除去した後90%
メタノール層を減圧乾固した。これを水に懸濁し、さら
に等量の酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を濃縮乾固
した。これをメタノールに溶解し、あらかじめメタノー
ルで平衡化しておいたセファデックスLH−20(ファ
ルマシア)を用いて、メタノール中でゲル濾過した。活
性画分を集め、次にマイクロボンダパックC18(Wate
rs)を用い、70%メタノール溶液中で逆相カラムクロ
マトグラフィーを行った。活性画分を集め、TSK g
el ODS−TM(東ソー)を用いて、0.1%トリ
フルオロ酢酸含有70%メタノール液中で高速液体クロ
マトグラフィーを行い、活性成分が単一になるまで精製
した。
【0019】この活性成分は式(II)で表わされる物
質であり
【化3】 そのNMRスペクトルは表1の通りである。
【表1】 表1 活性成分のNMRスペクトル1 H-NMRδ(DMSO-d6); Leucinal 9.38(s, CHO), 8.15(d, J=7.1Hz, NH), 4.04(m, α),1.
49(t, J=7.3Hz, β), 1.65(m, γ), 0.86(CH3). β-Hydroxyglutamine 7.74(d, J=7.3Hz, NH), 4.24(m, α), 4.38(m, β),5.1
1(m, β-OH), 2.22(m, γ), 7.12(br s, CONH2), 6.79
(br s). Asparagine 8.15(d, J=7.7Hz, NH), 4.58(m, α), 2.58(m, β),7.4
4(br s, CONH2), 6.91(br s). 3-Hydroxydodecanoic acid 2.22(m, No.22), 3.79(m, No.23), 1.2〜1.4(m, No.24
〜No.31),0.86(No.32).13 C-NMR δ(DMSO-d6); Leucinal 201.8(d, CHO), 57.0(d, α), 36.4(t, β), 23.7(m,
γ),22.9(q, CH3), 21.3(q). β-Hydroxyglutamine 171.7(s, CO), 56.7(d, α), 67.5(d, β), 39.6(t,
γ),172.3(s, CONH2) Asparagine 171.0(s, NH), 49.8(d, α), 36.9(t, β), 171.8(s, C
ONH2) 3-Hydroxydodecanoic acid 171.2(s, CO), 43.3(t, No.22), 67.4(d, No.23), 36.8
(t, No.24),31.2(2C, t, No.25〜No.26), 29.0(2C, t,
No.27〜No.28),28.9(t, No.29), 28.6(t, No.30), 22.0
(t, No.31), 13.8(q, No.32).
【0020】本発明の化合物(I)は経口的にも非経口
的にも投与することができ、また、適当な医薬担体と混
合して用いることもできる。医薬担体としては、経口的
には、乳糖、マンニットなどの糖類、デンプン類、結晶
セルロース、クエン酸カルシウム、第2リン酸カルシウ
ム、ゼラチン、デキストリン、メチルセルロース、カル
ボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピ
ルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸及
びそのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、タルクな
どが挙げられる。非経口的には、植物油、エタノール、
プロピレングリコール、ポリエチレングリコール類、カ
カオ脂、ラウリン酸、グリセリンなどが挙げられる。
【0021】また、投与剤型としては、錠剤、散剤、カ
プセル剤の如き固形剤であっても良く、溶液、懸濁液の
如き液剤であっても良い。更に、非経口的に投与する場
合には、注射剤、点滴用液剤あるいは坐剤として用いる
ことができる。
【0022】本発明の投与量は、投与経路、病疾患の種
類、程度、患者の年齢、体重、症状などによっても変動
するが、通常1日当り経口投与の場合は、0.3〜30
mg/kg、とりわけ1〜20mg/kg、静脈投与の
場合は0.1〜10mg/kgとりわけ0.5〜5mg
/kgが好ましい。
【0023】試験例1 LM細胞に対するNGF産生
促進活性 2×104cell/ml(0.5%ペプトン含有19
9培地)のLM細胞を、96wellマルチプレートの
各wellに0.2mlずつ播種し、2〜3日培養した
後、トリペプチド(I)を各濃度含んだ培地(0.5%
BSA含有199培地)に培地交換し、更に24時間培
養した。培養終了後、培養上清に含まれるNGFの定量
は、抗マウスNGFポリクローナル抗体を用いる酵素免
疫測定法によって測定した。その結果、図1に示したよ
うに10μg/ml以上で無添加の場合の3〜5倍のN
GF産生促進活性が見られた。
【0024】試験例2 誘導されたNGFの神経突起
伸長活性 LM細胞2×104cell/mlを培養フラスコ(7
5cm2)に20ml接種し、3〜5日培養した後、ト
リペプチド(I)を25μg/mlの濃度で含む培地に
培地交換し、更に24時間培養した。培養終了後、培養
中に含まれるNGF量をEIAにより測定した。この測
定値をもとにNGF濃度が15ng/mlとなるように
濃縮し、この濃縮液を10μl、トロンビン(100u
nit/ml)10μl及びニワトリ血漿10μl含む
培養系で、7日齢ニワトリ胚脊髄後根神経節の培養を行
った。約20時間培養した後に、顕微鏡観察により神経
節からの神経突起の伸長の有無を観察した。その結果、
神経突起の伸長が観察された。この神経突起伸長活性の
強さは、EIAによって求めたNGF濃度から推定され
る活性の強さに対し矛盾のないものであることを、コン
トロールNGF(マウス顎下腺より精製したNGF)を
用いた実験により同時に確認した。
【0025】試験例3 脳細胞に対するNGF産生促
進活性 17日齢ラット胎児より分離した脳細胞(神経細胞、ア
ストログリア細胞、その他の混合系)8×105cel
l/ml(10%FBS含有DMEM)を、培養フラス
コ(75cm2)に20ml接種し、4時間後、インシ
ュリン5μg/ml、トランスフェリン5μg/ml、
亜セレン酸ナトリウム37nM、ピルビン酸ナトリウム
1mM及びプロゲステロン20nMを含むDMEMに培
地交換し、更に3日間培養した。これにトリペプチド
(I)を25μg/mlの濃度になるように添加し、さ
らに24時間培養を継続した後、培地中に生産されたN
GFの濃度を20倍に濃縮して測定した。その結果を図
2に示した。トリペプチド(I)25μg/mlの添加
(図中2)により、無添加の場合(図中1)の4〜5倍
のNGF産生が見られた。
【0026】
【発明の効果】前記式(I)で示されるトリペプチド
は、LM細胞のNGF産生を促進し、また、本物質によ
って誘導産生されたNGFは、神経細胞の突起を伸ばす
活性を有していることがニワトリ胚脊髄後根神経節を用
いて確認された。さらに本物質は、脳の神経細胞と神経
細胞を支えるアストログリア細胞の混合培養系において
もNGFの分泌を誘導した。以上のことから、トリペプ
チド(I)は、脳内および末梢でNGFの分泌を促進す
る活性を有し、痴呆症、末梢の各種神経障害等の予防治
療に有効である。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】LM細胞におけるNGF産生活性を表わす。
【図2】脳細胞におけるNGF産生活性を表わす。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12P 21/02 C12R 1:80)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I) 【化1】 で示されるトリペプチドを有効成分とする神経成長因子
    産生促進剤。
  2. 【請求項2】 ペニシリウム属に属する請求項1記載の
    トリペプチド産生菌を静置条件で好気的に培養し、培養
    物から前記トリペプチドを採取することを特徴とする前
    記トリペプチドの製造法。
JP4119532A 1992-04-14 1992-04-14 神経成長因子産生促進剤及びその製造法 Pending JPH05284992A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2007125913A1 (ja) * 2006-04-26 2009-09-10 富山化学工業株式会社 アルキルエーテル誘導体またはその塩を含有する神経細胞新生誘導剤および精神障害治療剤

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2007125913A1 (ja) * 2006-04-26 2009-09-10 富山化学工業株式会社 アルキルエーテル誘導体またはその塩を含有する神経細胞新生誘導剤および精神障害治療剤
JP5695293B2 (ja) * 2006-04-26 2015-04-01 富山化学工業株式会社 アルキルエーテル誘導体またはその塩を含有する神経細胞新生誘導剤および精神障害治療剤

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