JPH0528393Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、シリンダブロツクに支持された回転
軸上の斜板と前記シリンダブロツク内に往復摺動
可能に収容されたピストンとの間にシユーを介在
し、ピストンを収容するシリンダボアに連通する
吸入室と冷媒ガスを供給通路より供給される斜板
室とをシリンダブロツク内の吸入通路で連通した
斜板式圧縮機における冷媒ガスの供給構造に関す
るものである。

（従来の技術） この種の斜板式圧縮機では、シリンダ内におけ
る潤滑を要する部位、例えばピストン及び斜板と
シユーとの摺動部位、あるいは斜板回転軸の軸受
部への潤滑油供給はミスト状潤滑油を含む冷媒ガ
スを斜板室内へ一旦供給することにより行われる
ため、前記のような摺動部位あるいは軸受部にお
ける潤滑性は冷媒ガス流の設定の仕方に比較的左
右され易い。そのため、シリンダブロツク前後の
吸入室と斜板室とを連通する吸入通路の斜板室側
開口（吸入口）を斜板室の比較的中心側に設定
し、斜板室の中心側へ冷媒ガスを誘導して前記の
ような摺動部位あるいは軸受部への潤滑油供給を
円滑化する対策が施されている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、シリンダブロツクの周面側から斜板
室へ供給される冷媒ガスは斜板の回転分力作用に
より斜板室の外周側へ流される傾向にあるため、
斜板の回転半径内にあるシユー近傍へ冷媒ガス中
のミスト状潤滑油を十分供給することには困難性
が伴う。そのため、シユーと摺動関係にあるピス
トン側の収容凹部及び斜板の摩耗あるいは両者間
の焼き付きを回避するための十分な潤滑性を付与
することができない。斜板の回転半径内への冷媒
ガスの進入困難性は潤滑性阻害のみならず吸入通
路への流入円滑化の阻害を意味し、高い圧縮効率
を達成する上で必要な冷媒ガス量をシリンダボア
へ供給することが難しく、しかも円滑な流れを阻
害された斜板室内の冷媒ガスが圧縮作業に伴う発
熱を吸収し、吐出温度の上昇が避けられない。

考案の構成 （問題点を解決するための手段） そこで本考案では、シリンダブロツクに支持さ
れた回転軸上の斜板と前記シリンダブロツク内に
往復摺動可能に収容されたピストンとの間にシユ
ーを介在し、ピストンを収容するシリンダボアに
連通する吸入室と冷媒ガスを供給通路より供給さ
れる斜板室とをシリンダブロツク内の吸入通路で
連通した斜板式圧縮機において、前記斜板室の端
面上の斜板回転半径領域内に前記吸入通路の吸入
口を設定し、この吸入口に向かう複数本の誘導通
路を斜板室の外周側から延設するとともに、前記
複数本の誘導通路の斜板回転方向下流側の一側端
上に誘導衝立を設けたことを特徴とする斜板式圧
縮機を設けた構成を採用した。

（作用） 即ち、冷媒ガス吸入工程では斜板室内の冷媒ガ
スが前記吸入通路の吸入口に向けて吸引誘導され
るが、冷媒ガスは誘導衝立に阻げられて誘導通路
内に導かれ、このように積極的に捕捉された冷媒
ガスは誘導通路の誘導作用を受けて専ら斜板室の
外周側から中心側に向けて行われ、斜板の回転分
力作用による外周側への冷媒ガス放出が前記誘導
通路設定により補償される。これにより高い圧縮
効率を達成する上で必要な冷媒ガス量が吸入通路
内へ吸引導入されると共に、斜板室内の冷媒ガス
が円滑な流れを示し、圧縮効率の向上及び熱吸収
による吐出温度の抑制が得られる。これと共に斜
板の回転半径内にあるシユーに関連した摺動部位
あるいは軸受部への冷媒ガス中のミスト状潤滑油
の供給割合が高くなり、このような摺動部位にお
ける潤滑性が向上する。

（実施例） 以下、本考案を具体化した一実施例を第１，２
図に基づいて説明する。

第１図に示すように締付接合された一対のシリ
ンダブロツク１，２には斜板３支持用の回転軸４
が支持されていると共に、回転軸４を中心とする
等間隔角度位置に複数のシリンダボア５，６が形
成されており、各シリンダボア５，６内にはピス
トンＰが往復摺動可能に嵌入されている。ピスト
ンＰの中心軸線方向の中央部には斜板３通過用の
溝７が形成されており、斜板通過溝７の両端面に
は球面状の収容凹部７ａが対向形成されている。
各収容凹部７ａと斜板３の前後（第１図において
左右）両面との間には半球状のシユー８が介在さ
れており、シユー８の球面部が各収容凹部７ａ内
に嵌入されている。

両シリンダブロツク１，２外端にはフロントハ
ウジング９及びリヤハウジング１０が接合固定さ
れており、シリンダブロツク１とフロントハウジ
ング９との間にはフロントサイドプレート１１が
介在されていると共に、シリンダブロツク２とリ
ヤハウジング１０との間にはリヤサイドプレート
１２が介在されている。これによりフロントハウ
ジング９及びリヤハウジング１０内には吸入室９
ａ，１０ａが区画形成されると共に、吐出室９
ｂ，１０ｂが区画形成され、シリンダボア５，６
が両サイドプレート１１，１２上の吸入孔１１
ａ，１２ａを介して吸入室９ａ，１０ａに連通さ
れていると共に、吐出孔１１ｂ，１２ｂを介して
吐出室９ｂ，１０ｂに連通されている。吸入孔１
１ａ，１２ａはシリンダボア５，６側において弾
性板からなる吸入弁１３，１４により開放可能に
閉塞されていると共に、吐出孔１１ｂ，１２ｂは
吐出室９ｂ，１０ｂ側において吐出弁１５，１６
により開放可能に閉塞されており、吐出弁１５，
１６は押さえ板１７，１８により可動範囲を規制
されている。

両シリンダブロツク１，２には複数のピストン
Ｐと同数の吸入通路１９が斜板室２０と吸入室９
ａ，１０ａとを連通するように貫設されており、
各吸入通路１９の斜板室２０両端面２０ａ，２０
ｂ上の開口（吸入口）１９ａ，１９ｂ，１９ｃ，
１９ｄ，１９ｅが斜板３の回転半径内の回転軸４
近傍に設定されている。そして、両端面２０ａ，
２０ｂ上には斜板室２０外周から略半径方向に沿
つて各吸入口１９ａ〜１９ｅに連なる複数の誘導
溝２１，２２，２３，２４，２５が凹設されてお
り、各誘導溝２１〜２５の一側縁上の斜板３回転
方向下流側には誘導衝立２６，２７，２８，２
９，３０が立設されている。各誘導溝２１〜２５
は斜板３の回転中心側へ向かうにつれて幅狭、か
つ深くなるように形成されており、第２図に鎖線
Ｌで示すようにそれらの向きが回転軸４の軸心に
対して偏心方向に設定されている。

さて、斜板３は第２図の矢印方向へ回転し、ピ
ストンＰがシリンダボア５，６内を往復摺動す
る。ピストンＰの往復動に伴う吸入作用により冷
媒ガスがシリンダブロツク１，２周面上の供給通
路３１から斜板室２０へ入り、複数の吸入通路１
９、吸入室９ａ，１０ａ及び吸入孔１１ａ，１２
ａを経てシリンダボア５，６内へ導入される。シ
リンダボア５，６内へ導入された冷媒ガスはピス
トンＰの圧縮作用を受けつつ吐出孔１１ｂ，１２
ｂ及び吐出室９ｂ，１０ｂを経由してシリンダブ
ロツク１，２周面上の図示しない排出通路から排
出される。

供給通路３１から斜板室２０へ供給された冷媒
ガスは高速回転する斜板３の回転分力作用により
斜板室２０の外周側へ流される傾向にあり、この
外周側への冷媒ガス放出は斜板３の回転半径内に
ある吸入口１９ａ〜１９ｅにおける吸入作用を阻
害する要因となる。しかしながら、斜板３の回転
半径外から回転半径内へ向けて各吸入口１９ａ〜
１９ｅへ連なる誘導衝立２６〜３０及び誘導溝２
１〜２５が斜板室２０の外周側の冷媒ガス周回流
を捕捉するため、斜板３の回転半径内の各吸入口
１９ａ〜１９ｅにおける吸入作用が誘導溝２１〜
２５及び誘導衝立２６〜３０に沿つて斜板室２０
の外周側へ及ぶ。これにより斜板室２０外周側の
冷媒ガスが誘導衝立２６〜３０にさえぎられ積極
的に捕捉されて誘導溝２１〜２５内に導かれ、こ
の誘導溝２１〜２５に誘導されて斜板３の回転半
径内へ円滑に流入し、高い圧縮効率を得る上で必
要な冷媒ガス量が各吸入口１９ａ〜１９ｅから吸
入される。誘導溝２１〜２５及び誘導衝立２６〜
３０に沿う円滑な冷媒ガス流は圧縮作業に伴う発
熱吸収の抑制に繋がり、吐出温度の上昇抑制がも
たらされる。しかも、斜板３の回転半径内にある
シユー８に関連した摺動部位、あるいは回転軸４
の軸受部への冷媒ガス中のミスト状潤滑油の供給
割合が高くなり、このような摺動部位あるいは軸
受部における潤滑性が向上する。即ち、斜板３の
回転分力作用による外周側への冷媒ガス放出が誘
導溝２１〜２５及び誘導衝立２６〜３０という誘
導通路の設定により補償され、圧縮効率向上、吐
出温度抑制及び高い潤滑性能が得られる。

本実施例における誘導溝２１〜２５及び誘導衝
立２６〜３０の向きＬを斜板３の半径方向に対し
て傾斜させる構成は斜板室２０の外周を周回する
冷媒ガスの中心側への導入を一層容易化する方向
に働くものであり、誘導溝２１〜２５を外周側ほ
ど幅広にし、かつ内側ほど深くする構成もまた同
様の作用をもたらす。

本考案は勿論前記実施例にのみ限定されるもの
ではなく、例えば第３図に示すように矢印方向へ
回転する斜板３の回転方向へ供給通路３１から離
間するにつれて誘導溝３２〜３６の幅を拡げてゆ
き、供給通路３１から回転方向へ離間するにつれ
て増大する吸入口１９ａ〜１９ｅへの冷媒ガス導
入抵抗を補償する実施例も可能である。これによ
り各シリンダボア５，６への冷媒ガス導入量の均
一化が図られ、各シリンダボア５，６における圧
縮作業効率の均等化が可能となる。

さらに、斜板の代わりにカム板を用いた圧縮機
にも本考案を適用することが可能である。

考案の効果 以上詳述したように本考案は、吸入室と斜板室
とを連通する吸入通路の吸入口を斜板室の端面上
の斜板回転半径領域内に設定し、この吸入口に向
かう誘導通路を斜板室の外周側から延設しさら
に、前記複数本の誘導通路を斜板回転方向下流側
の一側縁上に誘導衝立を設けたので斜板の回転分
力作用による外周側への冷媒ガス放出が前記誘導
衝立と誘導通路との積極的な捕捉誘導作用により
補償され、高い圧縮効率を得る上で必要な冷媒ガ
ス量を斜板の回転半径内へ円滑に導入することが
でき、これにより圧縮効率向上、吐出温度抑制及
びシユーに関連する摺動部位あるいは軸受部の高
い潤滑性をもたらすに十分な潤滑油供給を図り得
るという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を具体化した一実施例を示す側
断面図、第２図は第１図のＡ−Ａ線縮小断面図、
第３図は本考案の別例を示す縦路面図である。 １，２……シリンダブロツク、３……斜板、４
……回転軸、５，６……シリンダボア、８……シ
ユー、９ａ，１０ａ……吸入室、１９……吸入通
路、１９ａ，１９ｂ，１９ｃ，１９ｄ，１９ｅ…
…吸入口、２０……斜板室、２０ａ，２０ｂ……
端面、２１，２２，２３，２４，２５……誘導通
路を構成する誘導溝、２６，２７，２８，２９，
３０……同じく誘導衝立、３２，３３，３４，３
５，３６……誘導通路としての誘導溝、Ｐ……ピ
ストン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダブロツクに支持された回転軸上の斜板
   と前記シリンダブロツク内に往復揩動可能に収容
   されたピストンとの間にシユーを介在し、ピスト
   ンを収容するシリンダボアに連通する吸入室と冷
   媒ガスを供給通路より供給される斜板室とをシリ
   ンダブロツク内の吸入通路で連通した斜板式圧縮
   機において、前記斜板室の端面上の斜板回転半径
   領域内に前記吸入通路の吸入口を設定し、この吸
   入口に向かう複数本の誘導通路を斜板室の外周側
   から延設するとともに、前記複数本の誘導通路の
   斜板回転方向下流側の一側端上に誘導衝立を設け
   たことを特徴とする斜板式圧縮機。