JPH05277694A - 傾斜羽根付回転体用成形型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 傾斜した羽根の部分においても離型性が良好
で、内部品質，寸法精度が改善できるととともに生産コ
ストの大幅な低減が可能な傾斜羽根付回転体用成形型を
提供する。 【構成】 羽根成形金型部４を複数の円筒金型４ｂ〜４
ｄに分割するとともに、分割した各円筒金型の側面に、
軸方向に対して回転体における羽根の傾斜角度と等しい
角度で傾いた傾斜スロット４ｅ〜４ｇを設け、該傾斜ス
ロットに挿通した通しピン１２を押出しボス３およびス
トリッパリング５に設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば、トルクコン
バータの羽根車などのように傾斜羽根を有する回転体を
鋳造（ダイキャスト）または射出成形するのに利用され
る成形型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えばトルクコンバータの羽根車
などのように、数十枚の傾斜した羽根を備えた複雑な形
状の回転体を成形する場合、金型成形では羽根の部分の
離型ができないので、石膏製の型を用いて鋳造し、冷却
したのち前記石膏型を破壊することによって凝固した成
品を取り出すようにしていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記した石
膏型を用いる成形方法では、再利用ができないため成形
品の数だけ石膏型が必要となり、コスト高となるととも
に、金型に較べて寸法精度の管理が困難なため不良率が
高くなるという問題がある。 さらに、石膏の強度の関
係から、石膏型では成形中に石膏型が破壊することがあ
るので成形圧力を高くすることができず、低圧成形とな
らざるを得ないため、製品にブローホールなどの内部欠
陥が発生しやすいといった問題点があり、これらの問題
点を解決することが複雑な傾斜羽根を有する回転体の鋳
造あるいは射出成形における品質管理や生産管理上の課
題となっていた。

【０００４】

【発明の目的】この発明は、上記した従来の課題に着目
してなされたもので、再利用および高圧成形が可能な金
型であって、しかも傾斜した羽根の部分においても離型
性が良好で、内部品質，寸法精度が改善できるとととも
に生産コストの大幅な低減が可能な傾斜羽根付回転体用
成形金型を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明に係わる傾斜羽
根付回転体用成形型は、放射状に配置され、回転軸方向
に対して所定の傾斜角度で傾いた複数の羽根を備えた回
転体を成形するための金型であって、中心部に位置し、
型開きに際して成形品を押出す押出しボスと、複数の円
筒金型に分割されるとともに、前記押出しボスの外側に
同心状に配設されて前記回転体の羽根部分の成形空間を
形成するキャビティを備えた羽根成形金型部と、該羽根
成形金型部の外側に位置し、型開きに際して前記押出し
ボスと共に作動するストリッパリングと、該ストリッパ
リングに接し、前記押出しボスおよび羽根成形金型部と
の間に前記回転体の成形空間を形成する可動金型部を有
し、さらに前記羽根成形金型部の分割された各円筒金型
の側面には、軸方向に対して前記回転体における羽根の
傾斜角度と等しい角度で傾いた傾斜スロットを備えると
ともに、前記各傾斜スロットに挿通した通しピンを前記
押出しボスおよびストリッパリングに設けてなる構成と
しており、傾斜羽根付回転体用成形金型におけるこのよ
うな構成を前述した従来の課題を解決するための手段と
したことを特徴としている。

【０００６】

【発明の作用】この発明に係わる傾斜羽根付回転体用成
形型においては、傾斜羽根を成形するキャビティを備え
た羽根成形金型部が複数の円筒金型に分割されており、
この円筒金型の各側面には軸方向に対して回転体の羽根
の傾斜角度に等しい角度で傾いた傾斜スロットがそれぞ
れ設けてあり、この各傾斜スロットには金型中心部の押
出しボスと外周部のストリッパリングに設けた１本の通
しピンが貫通させてある。 したがって、成形完了後の
型開きに際して、押出しボスが成形品を押出すと、この
押出しボスおよびこれに連動するストリッパリングの間
に設けた通しピンが製品の押出し方向に作動し、羽根成
形金型部の各円筒金型に前記傾斜スロットの傾斜角度に
応じた回転が与えられることになる。 すなわち、成形
品が押出されると同時に羽根成形金型部の各円筒金型が
羽根の傾きに沿ってそれぞれ回転するので、成形品は容
易に前記金型から分離し、傾斜した羽根の部分において
も離型性が劣化するようなことがない。

【０００７】

【実施例】以下、この発明を図面に基づいて具体的に説
明する。

【０００８】図１ないし図５は、この発明に係わる傾斜
羽根付回転体用成形型の一実施例を示すものである。

【０００９】図１（ａ）および（ｂ）は、その実施例に
おいてダイキャスト成形される回転体の形状を説明する
ものであって、図に示す回転体２０は、トルクコンバー
タの羽根車であり、半割りドーナツ状のシェル２０ａの
内部に２４枚の羽根２０ｂを放射状に備えており、前記
羽根２０ｂは当該回転体２０の回転軸に対して約３５°
の傾斜角度で傾いたものとなっている。

【００１０】図２は、前記回転体２０をダイキャスト成
形するための成形型の形状を示すものであって、図に示
す成形型１は、取付け基板２上の中央部に配設された押
出しボス３と、該押出しボス３の周囲に位置する羽根成
形金型部４と、該羽根成形金型部４の外周に位置するス
トリッパリング５と、該ストリッパリング５に接し、前
記押出しボス３と羽根成形金型部４との間に前記回転体
２０のシェル２０ａおよび羽根２０ｂを成形するための
成形空間６を形成する可動金型部７とから主に構成され
ており、前記可動金型部７は可動基板８に取付けられ、
中央部に湯口ピース９を備えている。

【００１１】取付け基板２には、押出しロッド１０を挿
通するためのロッド挿通孔２ａが設けてあり、後述する
ように、型開き時に前記押出しロッド１０を挿通させる
ことにより押出しボス３とストリッパリング５を押出
し、成形品を突出して離型させるようになっている。
さらに、前記取付け基板２には、ストリッパリング５に
埋め込まれたピン５ａを受入れる摺動溝１１ａを備えた
ブロック１１が固定されており、前記ストリッパリング
５の押出し方向以外の動きを規制するようになってい
る。

【００１２】前記羽根成形金型部４は、図中の上端部に
キャビティ４ａを備え、回転体２０の傾斜羽根２０ｂを
成形するための羽根用成形空間６ａを形成するようにな
っているとともに、この実施例では円筒金型４ｂ，４
ｃ，４ｄに３分割されている。

【００１３】そして、羽根成形金型部４を構成するこの
円筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄのそれぞれの側面の相対向す
る位置には、図３にも示すように、軸方向に対して、前
記回転体２０における羽根２０ｂの傾斜角度である３５
°だけ傾斜させた傾斜スロット４ｅ，４ｆ，４ｇが設け
てあり、当該傾斜スロット４ｅ，４ｆ，４ｇには、１本
の通しピン１２がそれぞれ挿通してあって、この通しピ
ン１２は、前記押出しボス３およびストリッパリング５
に取付けてある。

【００１４】さらに、前記円筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄの
図中下端には、図３にも示すように、取付け基板２に円
筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄのそれぞれの径に合わせて円弧
状に形成した段付きスロット２ｂ，２ｃ，２ｄに挿通し
たストリッパボルト１３がそれぞれ螺着してあり、当該
円筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄが取付け基板２から離れるこ
となく所定の範囲で回転するようにしてある。

【００１５】次に、上記構造を有する傾斜羽根付回転体
用成形型１を用いた回転体２０の成形手順について説明
する。

【００１６】まず、前記成形型１を組み合わせ、適当な
ダイキャストマシンにセットする。

【００１７】そして、常法に従って、可動金型部７の側
に備えた湯口ピース９の湯口９ａから、所定の注入圧力
で溶湯を圧入することによって成形型１内の前記シェル
２０ａおよび羽根２０ｂに対応する成形空間６が溶湯で
満され、該溶湯が冷却し、成形空間６の形状どおりに凝
固することによって回転体２０が成形型１内に成形され
る。

【００１８】次に、図４に示すように、可動金型部７を
移動させて型開きし、次いで、押出しロッド１０の作動
によって、成形型１の押出しボス３とストリッパリング
５が図５に示すように、図中上方に押出し駆動され、こ
れによって成形された回転体２０が図中上方に突き出さ
れる。

【００１９】このとき、羽根成形金型部４の各円筒金型
４ｂ，４ｃ，４ｄに設けた各傾斜スロット４ｅ，４ｆ，
４ｇを貫通する通しピン１２が前記押出しボス３および
ストリッパリング５とともに回転体２０の突き出し方向
に動くので、前記各円筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄには、回
転体２０が突き出されると同時に、図３中に示した矢印
Ｒ方向への回転が与えられることになる。

【００２０】前記傾斜スロット４ｅ，４ｆ，４ｇは、回
転体２０の羽根２０ｂの傾斜角度に合わせた傾斜角度に
形成してあるので、各円筒金型４ｂ，４ｃ，４ｄの回転
は、羽根２０ｂの傾斜に沿ったものとなり、回転体２０
の型抜き方向と一致したものとなるので、回転体２０を
前記羽根形成金型部４の羽根形成用キャビティ４ａから
容易に離脱させることができ、複雑な傾斜羽根を有する
回転体の場合も良好な離型性が得られることになる。

【００２１】また、この傾斜羽根付回転体用成形型１
は、強度，耐久性など金型本来の特性を備えているの
で、高圧成形，繰返し成形に耐え、寸法精度の管理も容
易であることから、大幅なコスト低減に加えて、内部欠
陥の低減や寸法精度の向上など大幅な品質改善が可能と
なる。

【００２２】さらに、成形しようとする回転体の羽根形
状に合わせて羽根成形金型部４の分割数や分割位置を変
更したり、分割した各円筒金型に設ける傾斜スロットの
形状を調整したりすることによって、種々の羽根形状に
対応した成形型を製作することができる。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように、この発明に係わる
傾斜羽根付回転体用成形型は、前記構成とすることによ
って、型開き時に成形品が押出されると同時に回転体の
羽根部分に相当する金型部が羽根の傾斜角度に沿って回
転するようにしたものであるから、成形後の型抜きが容
易なため、複雑な傾斜羽根を備えた回転体の成形にも適
用することができ、成形品の品質や生産性を大幅に向上
させ、大幅なコスト低減が達成できるという優れた効果
がもたらされる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ） この発明に係わる傾斜羽根付回転体用
成形型によって成形される回転体の形状を示す平面図で
ある。（ｂ） 図１（ａ）に示した回転体の形状を示す
１部破断斜視図である。

【図２】この発明に係わる傾斜羽根付回転体用成形型の
構造を説明する断面図である。

【図３】この発明に係わる傾斜羽根付回転体用成形型に
おける離型機構を説明する傾斜スロットおよび通しピン
部分の斜視図である。

【図４】図１に示した傾斜羽根付回転体用成形型の型開
き過程を示す断面図である。

【図５】図４に示した傾斜羽根付回転体用成形型の型開
きの次の過程を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 傾斜羽根付回転体用成形型 ３ 押出しボス ４ 羽根成形金型部 ４ａ キャビティ ４ｂ，４ｃ，４ｄ 円筒金型 ４ｅ，４ｆ，４ｇ 傾斜スロット ５ ストリッパリング ６ 成形空間 ７ 可動金型部 １２ 通しピン ２０ 回転体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 放射状に配置され、回転軸方向に対して
   所定の傾斜角度で傾いた複数の羽根を備えた回転体を成
   形するための金型であって、中心部に位置し、型開きに
   際して成形品を押出す押出しボスと、複数の円筒金型に
   分割されるとともに、前記押出しボスの外側に同心状に
   配設されて前記回転体の羽根部分の成形空間を形成する
   キャビティを備えた羽根成形金型部と、該羽根成形金型
   部の外側に位置し、型開きに際して前記押出しボスと共
   に作動するストリッパリングと、該ストリッパリングに
   接し、前記押出しボスおよび羽根成形金型部との間に前
   記回転体の成形空間を形成する可動金型部を有し、さら
   に前記羽根成形金型部の分割された各円筒金型の側面に
   は、軸方向に対して前記回転体における羽根の傾斜角度
   と等しい角度で傾いた傾斜スロットを備えるとともに、
   前記各傾斜スロットに挿通した通しピンを前記押出しボ
   スおよびストリッパリングに設けてなることを特徴とす
   る傾斜羽根付回転体用成形型。