JPH05277598A - 缶蓋の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】防湿性に優れ粉乳容器の蓋体に好適な缶蓋の製
造方法を提供する。 【構成】缶蓋１は、缶容器に巻締るための巻締部５を外
周縁部に備え、水平パネル部９に開口８を画成した金属
製支持リング２を備える。まず、支持リング２の外表面
に下塗り層１１を形成し、その上にポリエチレン成分を
含有させたエポキシフェノール系塗料の塗膜１２を形成
する。次に、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタ
レート樹脂を射出成形により、前記支持リング２の開口
内周縁部に沿って、前記樹脂からなるフレーム３を一体
的に形成する。次に、フレーム３上部から支持リング２
を高周波加熱装置１４により高周波加熱して塗膜１２を
介してフレーム３と支持リング２とを融着する。次に、
支持リング２の開口８をフレームの上縁部１３に密封シ
ート材を重ねて閉蓋し、フレーム３に前記密封シート材
を剥離自在に融着する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は缶蓋の製造方法に関する
ものであり、さらに詳しくは、粉乳容器の缶蓋の製造方
法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、調製粉乳等の容器として使用され
る金属製缶体では、缶蓋にアルミニウム箔等からなるシ
ート材を剥離自在に接着して開口部を密封したものが知
られている。このような缶体を開缶する際には前記シー
ト材を剥離すればよく、缶切り等の用具が不要であるの
で、開缶が容易である。

【０００３】前記缶蓋として、例えば、金属製缶体に巻
締めるための巻締部を周縁部に備え、水平パネル部に開
口部を画成した金属製支持リングに、前記シート材を直
接ホットメルト接着剤などにより接着したものがある。
ところが、このような缶蓋にあっては、前記接着剤の金
属に対する接着性が十分でなく、また前記支持リングは
比較的に硬質であって且つその表面に小さな凹凸やうね
りがあり、前記シート材を均一に接着することが難し
い。

【０００４】そこで、環状の合成樹脂製フレームを射出
成形により前記支持リングの内周縁部に沿って一体的に
形成し、前記フレームの上部に前記シート材を剥離自在
に接着することが考えられている。前記フレームは射出
成形により形成されるので平坦な表面が容易に得られ、
このフレームに前記シート材を高周波加熱などの手段に
よりヒート・シールすることにより、容易に均一な接着
を行うことができる。

【０００５】しかしながら、調製粉乳の容器では食品衛
生法に基づく昭和２６年１２月２７日付の厚生省令第５
２号「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令（乳等省
令）」により使用できる合成樹脂がポリエチレン樹脂ま
たはポリエチレンテレフタレート樹脂のみに制限されて
おり、金属に対して良好な接着性を有する樹脂を選択で
きないとの不都合がある。

【０００６】前記ポリエチレン樹脂及びポリエチレンテ
レフタレート樹脂は金属との接着性が低いので、前記フ
レームをポリエチレン樹脂またはポリエチレンテレフタ
レート樹脂により構成すると、前記支持リングと前記フ
レームとの間に接着不良が生じやすい。このため、前記
支持リングと前記フレームとの間から外気が容器内に侵
入し、粉乳が吸湿して固まったり、外気中の酸素と接触
して酸化され変質する等の不都合がある。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる不都
合を解消して、防湿性に優れ粉乳容器の蓋体に好適な缶
蓋の製造方法を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明の缶蓋の製造方法は、缶容器に巻締るため
の巻締部を周縁部に備え、水平パネル部に開口部を画成
した金属製支持リングの外表面に、ポリエチレン成分を
含有させたエポキシフェノール系塗料の塗膜を形成する
塗膜形成工程と、ポリエチレン樹脂またはポリエチレン
テレフタレート樹脂を射出成形により、前記支持リング
の開口部の内周縁部に沿って、前記樹脂からなるフレー
ムを一体的に形成するフレーム形成工程と、前記フレー
ム上部から前記支持リングを高周波加熱して前記塗膜を
介して前記フレームと前記支持リングとを融着するフレ
ーム融着工程と、前記フレームの上部に前記開口部を密
封する密封シート材を重ねて前記支持リングの開口部を
閉蓋し、前記フレームに該密封シート材を剥離自在に融
着する密封シート材融着工程とからなることを特徴とす
る。

【０００９】本発明の製造方法では、前記支持リングは
内周側端部をその内周に沿って内方または外方に湾曲さ
せたフレーム支持部を備え、前記フレーム中に該フレー
ム支持部を埋設する。

【００１０】

【作用】かかる手段によれば、まず、前記支持リングの
外表面にポリエチレン成分を含有させたエポキシフェノ
ール系塗料の塗膜を形成する。エポキシフェノール樹脂
は金属との親和性に優れているので、前記エポキシフェ
ノール系塗料の塗膜は前記支持リングによく接着する。
また、前記エポキシフェノール系塗料はポリエチレン成
分を含有しているので、前記支持リングの外表面では前
記フレームとの親和性が増大する。

【００１１】次に、ポリエチレン樹脂またはポリエチレ
ンテレフタレート樹脂を射出成形により、前記支持リン
グの開口内周縁部に沿って、前記樹脂からなるフレーム
を前記支持リングと一体的に形成する。次いで、前記フ
レームの上部から前記支持リングを高周波加熱すると、
前記支持リングの外表面に形成された前記エポキシフェ
ノール系塗料の塗膜に含有されるポリエチレン成分が溶
融して同質の前記フレームと融着する。この結果、前記
フレームが前記塗膜を介して前記支持リングに接合され
る。

【００１２】次に、前記支持リングの開口を前記フレー
ムの上部に密封シート材を重ねて閉蓋し、前記フレーム
に前記密封シート材を剥離自在に融着する。

【００１３】前記製造方法によれば、前記フレームがポ
リエチレン成分を含有する前記エポキシフェノール系塗
料の塗膜を介して前記支持リングに接合されるので、前
記フレームと前記支持リングとが均一に接着され、防湿
性に優れた缶蓋が得られる。

【００１４】本発明の製造方法では、前記支持リングが
内周側端部をその内周に沿って内方または外方に湾曲さ
せたフレーム支持部を備え、前記フレーム中に該フレー
ム支持部を埋設することにより、射出成形により形成さ
れる前記フレームが前記フレーム支持部を介して前記支
持リングに固定されやすくなる。

【００１５】

【実施例】次に、添付の図面を参照しながら本発明の缶
蓋の製造方法についてさらに詳しく説明する。図１は本
実施例の製造方法により得られる缶蓋の平面図、図２は
図１のＩＩ−ＩＩ線断面図、図３は支持リングの表面に
形成される塗膜の構成を示す説明的断面図、図４は本実
施例の製造方法におけるフレーム融着工程を示す説明的
断面図、図５は図１に示す支持リングの他の形状を示す
説明的断面図である。

【００１６】本実施例の製造方法により得られる缶蓋１
は、未だ容器に巻締められていない状態で図１及び図２
に示すように、ブリキ製の支持リング２と、該支持リン
グ２の内周縁部に沿って固定された環状のフレーム３
と、フレーム３の上部に剥離自在に融着された密封用シ
ート材４とによって構成されている。

【００１７】支持リング２は、その外周縁部に巻締めが
可能になる形状として巻締部５、シーミングパネル６及
びチャックウォール７が形成されている。そして、チャ
ックウォール７から連続して内方に水平に延び、開口部
８を画成する水平パネル部９が設けられている。該水平
パネル部９の先端は直線状でもよいが、更に本実施例で
は、水平パネル部９の内周縁部に沿って、内方に湾曲さ
せてフレーム支持部１０が形成されている。フレーム支
持部１０はその先端が水平パネル部９と平行になるよう
に折り返されている。

【００１８】前記支持リング２を構成する水平パネル部
９及びフレーム支持部１０の外表面には、図３に示すよ
うに、ポリエステル・アミノ系のサイジングニスからな
る下塗り層１１が設けられ、その上にポリエチレン成分
を含有するエポキシフェノール系塗料の塗膜１２が設け
られている。前記下塗り層１１を設けることにより、ブ
リキからなる支持リング２とエポキシフェノール系塗料
との親和性が向上し、塗膜１２の接着強度がさらに増大
するとの効果が得られる。

【００１９】前記フレーム３には、棒状のすりきり部材
３ａが設けられており、すりきり部材３ａにより開口部
８が２分されている。すりきり部材３ａは、粉乳などの
内容物を計量スプーン等により定量ごとに取り出す際の
便宜のために設けられている。

【００２０】なお、密封シート材４は、図示しないが、
アルミニウム箔の内表面にポリエチレンテレフタレート
樹脂のシート材が積層され、該ポリエチレンテレフタレ
ート樹脂層上にさらにポリエチレン樹脂の被覆層が形成
された構成を備えており、図１及び図２に示すように、
前記フレーム３の上縁部１３及び支持リング２の水平パ
ネル部９の一部に剥離自在に融着されて開口部８が閉
蓋、密封されている。密封シート材４の外周の一部には
手指によって把持できるタブ４ａが連設されており、密
封シート材４はタブ４ａを把持して引き上げることによ
り容易に剥離できるようになっている。

【００２１】次に、本実施例の製造方法について説明す
る。

【００２２】まず、図３に示すように、支持リング２の
外表面に、サイジングニスを塗布して下塗り層１１を形
成する。前記支持リング２は熱容量の大きなブリキ製と
することにより高周波加熱を有利に行うことができ、且
つ安価でもあるので好ましい。なお、支持リング２は内
周側端部がプレス加工により、支持リング２の内周に沿
って内方に湾曲させた形状のフレーム支持部１０が形成
されている。

【００２３】次いで、下塗り層１１の上にポリエチレン
成分を含有するエポキシフェノール系塗料（大日本イン
キ化学工業（株）製５Ｃ−８８７Ａ ＣＬＳタイプ）を
塗布して塗膜１２を形成する。前記エポキシフェノール
系塗料は低密度ポリエチレン９０重量％、高密度ポリエ
チレン１０重量％からなるポリエチレン成分を塗料全体
の１１重量％の割合で含有している。前記ポリエチレン
成分は後述の高周波加熱により溶融してフレーム３に融
着させるために配合されており、良好な融着性を確保す
るためにその配合量は前記エポキシフェノール系塗料の
全体に対して通常５〜１５重量％、さらに８〜１３重量
％の範囲であることが好ましい。

【００２４】前記エポキシフェノール系塗料は金属に対
する親和性が高く、支持リング２の表面に強固な塗膜１
２を形成することができるが、前記のように支持リング
２の外表面に下塗り層１１を形成し、その上にエポキシ
フェノール系塗料を塗布することにより、さらに強固な
塗膜１２が得られる。

【００２５】次に、中密度ポリエチレン（三井石油化学
工業（株）製ネオゼックス４０６０ＭＫ）を射出成形
し、表面に塗膜１２が形成された支持リング２の開口部
８を画成する内周縁部に沿って、前記中密度ポリエチレ
ンからなるフレーム３及びすりきり部材３ａを形成す
る。フレーム３はフレーム支持部１０を内外面両側から
包囲して埋設するように形成され、フレーム支持部１０
を介して支持リング２に確実に固定される。

【００２６】次に、フレーム３の上部から前記支持リン
グ２を高周波加熱する。前記高周波加熱は、図４に示す
ように、フレーム３を固定治具１４上に載置し、フレー
ム３の上縁部１３に高周波加熱装置１５を圧接して誘導
加熱することにより行う。

【００２７】高周波加熱装置１５は、ベークライト材の
支持部材１６に粉末フェライトからなる環状の磁束収束
部材１７が取着されており、磁束収束部材１７には環状
の高周波コイル１８が組み込まれている。コイル１８の
内面側は空洞部１９となっており、空洞部１９には冷却
水が流通されている。なお、コイル１８の周囲の磁束収
束部材１７は強磁性体であるフェライトで構成すること
により、発生する磁束の集束効率が向上され、加熱効果
が高められる。

【００２８】この状態で誘導加熱することにより支持リ
ング２が発熱し、その表面温度が１６０〜１８０℃の範
囲に加熱される。前記加熱により、支持リング２の表面
に形成された前記エポキシフェノール系塗料の塗膜１２
に含有されるポリエチレン成分が溶融して同質の樹脂か
ら成るフレーム３と融着し、フレーム３が塗膜１２を介
して支持リング２と接合される。

【００２９】前記高周波加熱は、支持リング２の表面温
度が１６０〜１８０℃となる範囲で行うことが好まし
い。支持リング２の表面温度が１８０℃以上になるとフ
レーム３を構成する中密度ポリエチレンが溶融して巣が
できることがあり、１６０℃以下では塗膜１２とフレー
ム３との融着が不十分になることがある。

【００３０】次に、フレーム３を一旦冷却したのち、フ
レーム３の上縁部１３に密封シート材４を重ねて、支持
リング２の開口部８を閉蓋し、フレーム３に密封シート
材４を剥離自在に融着する。密封シート材４の融着は、
フレーム３を固定治具１４上に載置し、密封シート材４
の上から高周波加熱装置１５と同様の高周波加熱装置を
圧接して、誘導加熱することにより行う。この結果、密
封シート材４のアルミニウム箔が発熱し、密封シート材
４がフレーム３に剥離自在に融着される。

【００３１】密封シート材４は前述のようにアルミニウ
ム箔の内表面にポリエチレンテレフタレート樹脂層及び
ポリエチレン樹脂被覆層が形成されているので、前記ア
ルミニウム箔の発熱により該ポリエチレン樹脂被覆層と
フレーム３とが融着され、密封シート材４とフレーム３
との接着力が向上すると共に開口部１３が確実に閉蓋、
密封される。

【００３２】本実施例では、支持リング２をブリキ製と
しているが、支持リング２はアルミニウム製またはティ
ン・フリー・スチール製であってもよい。

【００３３】また、本実施例では、フレーム支持部１０
の形状を、その先端を折り返して水平パネル部９と平行
になるようにしているが、図５に示すように単にその先
端が下方に垂下する程度に湾曲させたものであってもよ
く、図示しないが外方に湾曲させたものであってもよ
い。フレーム支持部１０の形状を前記のようにすること
により、水平パネル部９の水平部分が多くなり、高周波
加熱によりフレーム３と融着できる部分が多くなるので
好ましい。

【００３４】さらに、本実施例では密封シート材４の融
着を高周波加熱により行っているが、密封シート材４の
融着は密封シート材４をフレーム３にヒート・シールす
ることができる手段であれば、他の手段により行っても
よい。

【００３５】

【発明の効果】以上のことから明らかなように、本発明
の製造方法によれば、乳等省令に規定されたポリエチレ
ン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂からなる
フレームを該支持リングに確実に融着させて固定するこ
とができ、防湿性に優れ粉乳容器の蓋体に好適な缶蓋を
得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる製造方法により得られる缶蓋の
一例を示す平面図。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線断面図。

【図３】図１に示す支持リングの表面に形成される塗膜
の構成を示す説明的断面図。

【図４】本発明の製造方法の一実施例におけるフレーム
融着工程を示す説明的断面図。

【図５】図１に示す支持リングの他の形状を示す説明的
断面図。

【符号の説明】

１…缶蓋、 ２…支持リング、 ３…フレーム、 ４…
密封シート材、５…巻締部、 ８…開口部、 ９…水平
パネル部、 １０…フレーム支持部、１１…下塗り層、
１２…エポキシフェノール系塗料の塗膜、１５…高周
波加熱装置。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】缶容器に巻締るための巻締部を周縁部に備
   え、水平パネル部に開口部を画成した金属製支持リング
   の外表面に、ポリエチレン成分を含有させたエポキシフ
   ェノール系塗料の塗膜を形成する塗膜形成工程と、 ポリエチレン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹
   脂を射出成形により、前記支持リングの開口部の内周縁
   部に沿って、前記樹脂からなるフレームを一体的に形成
   するフレーム形成工程と、 前記フレーム上部から前記支持リングを高周波加熱して
   前記塗膜を介して前記フレームと前記支持リングとを融
   着するフレーム融着工程と、 前記フレームの上部に前記開口部を密封する密封シート
   材を重ねて前記支持リングの開口部を閉蓋し、前記フレ
   ームに該密封シート材を剥離自在に融着する密封シート
   材融着工程とからなることを特徴とする缶蓋の製造方
   法。
2. 【請求項２】前記支持リングは内周側端部をその内周に
   沿って内方または外方に湾曲させたフレーム支持部を備
   え、前記フレーム中に該フレーム支持部を埋設すること
   を特徴とする請求項１記載の缶蓋の製造方法。