JPH0526268Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は内燃機関の各気筒に燃料を分配供給す
る分配型燃料噴射ポンプに係り、高回転域での噴
射量特性を補正する噴射量補正装置に関する。

〔従来の技術〕

一般に分配型燃料噴射ポンプは、エンジンと同
期して回転されるプランジヤを１回転中に気筒の
数に応じて往復移動させ、このプランジヤの圧縮
工程中に圧送ポンプ室の燃料を加圧してこの加圧
燃料をエンジンの各気筒へ分配供給するようにな
つている。

上記プランジヤには圧送ポンプ室に連なるスピ
ルポートを開口してあり、このスピルポートを上
記プランジヤに摺動自在に嵌合したスピルリング
で開放することにより圧送ポンプ室の燃料を、ポ
ンプハウジング内の燃料室に逃がし、これにより
各気筒に分配する燃料の量を規制するようになつ
ている。

そして、上記スピルリングはテンシヨンレバー
に連結されており、このテンシヨンレバーはガバ
ナスプリングおよび遠心調速機により作動させら
れ、このテンシヨンレバーの作動にもとづき上記
スピルリングをプランジヤの軸方向に移動させ、
これにより機関の回転数に応じて燃料噴射量を制
御するようになつている。

しかしながら上記従来の燃料噴射ポンプ、特に
直噴式エンジン用のポンプでは、その噴射量特性
が、第２図に示されるように、高回転域で落込む
傾向がある。

これを防止するため、たとえば特開昭59−
58146号公報に示されたように、高回転域におけ
る噴射量を補正する装置が提案されている。上記
特開昭59−58146号公報に開示された噴射量補正
装置は、機関の回転数に応じて圧力が変化する燃
料室の燃料圧力により調整ロツドを移動させ、こ
の調整ロツドに形成したカム面に当接する伝達ロ
ツドおよび回動レバーを介して、上記調整ロツド
の動きを前記テンシヨンレバーに伝えるようにな
つており、しかも、メインピストンとサブピスト
ンを連結軸で一体的に連結するとともにその一端
にダイアフラムまたはベローズを接続し、このダ
イアフラムまたはベローズに、大気圧又はブース
ト圧を作用させてメインピストンおよびサブピス
トンを移動させ、これにより燃料室の燃料が調整
ロツドに作用する量を制御して、調整ロツドの動
きをコントロールするようになつている。

したがつて、このものによると、調整ロツドが
燃料室の燃料圧力（この圧力はエンジン回転数に
比例する）により作動されるので、高回転域にお
ける噴射量の落込みを防止することができ、しか
も大気圧またはブースト圧に対する補償も行なえ
る利点がある。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、上記従来の装置は、メインピス
トン、サブピストンおよび連結軸を必要とするの
で部品点数の増加を招き、かつメインピストンと
シリンダとのクリアランス量で燃料室の燃料が調
整ロツドに作用する量をコントロールするもので
あるから、加工精度および組付け精度を高く必要
とし、加工や組付けに手間を要する不具合があ
る。

したがつて本考案は、部品点数が少なくて構造
が簡単となり、加工精度や組付け精度を高く必要
とせずに、高回転域における噴射量落込みを補正
し、かつブースト圧補償も行なえる分配型燃料噴
射ポンプの噴射量補正装置の提供を目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するため本考案は、ブースト圧
を受ける可動壁、この可動壁に当接してブースト
圧に抗して作動するスプリング、燃料室内の燃料
圧力を受けて作動するとともにカム面を有ししか
も上記可動壁の移動と独立して作動するようにこ
の可動壁に分離して対向された調整ロツド、この
調整ロツドと上記可動壁との間に設置されたスプ
リング、上記可動壁の移動量を規制するストツパ
を備えたことを特徴とする。

〔作用〕

上記の構成によると、ブースト圧により作動さ
れる可動壁の移動が調整ロツドに伝えられるから
ブースト圧に対する噴射量の補正を行なうことが
できるとともに、上記可動壁がストツパに当たつ
て移動が規制された状態であつても、この可動壁
に対して調整ロツドが分離されて独自に動き得る
ため燃料室の燃料圧力により調整ロツドを作動さ
せることができるので、回転数による燃料補正が
行なえる。しかもこのものは、従来のメインピス
トン、サブピストンおよび連結軸に代わつてスト
ツパおよびスプリングを使用するだけでよいから
構造が簡単になる。

〔考案の実施例〕

以下本考案について、第１図および第２図に示
す一実施例にもとづき説明する。

第１図は分配型燃料噴射ポンプを示し、図にお
いて１は駆動軸であり、デイーゼルエンジンによ
り駆動される。駆動軸１は、ポンプハウジング２
に装備したロータリ式フイードポンプ３を回し、
このフイードポンプ３は燃料タンク４から燃料を
吸い上げ、圧力調整弁５によつてこの燃料を調圧
したのち燃料室６に供給する。

駆動軸１には、カツプリング７を介してプラン
ジヤ８が連結されており、このプランジヤ８はフ
エイスカム９を備えている。上記カツプリング７
は、駆動軸１の回転をプランジヤ８に伝達する
が、プランジヤ８が軸方向に移動することを自在
に許す。

フエイスカム９は、上記プランジヤ８が連結さ
れた面と反対の面に、周方向にエンジンの気筒数
に応じた複数の山部を備えるカムプロフイル９ａ
を形成しており、このカムプロフイル９ａにはカ
ムローラ１０が転接している。このカムローラ１
０が上記カムプロフイル９ａに転接していること
により、上記フエイスカム９およびプランジヤ８
は１回転中にエンジンの気筒数に応じて往復回移
動される。

なお、上記カムプロフイル９ａは、所望のエン
ジン性能に適合させるために、最適な燃料噴射圧
および噴射時期が得られるような形状に設定され
ている。

プランジヤ８の吸入行程中に、このプランジヤ
８の先端部周面に形成した吸入溝１１…の１つが
吸入ポート１２に連通すると、上記燃料室６の燃
料が導入路１３を通じて圧送ポンプ室１４に吸入
される。プランジヤ８の圧縮行程中に加圧された
圧送ポンプ室１４内の燃料は、縦孔１５に押出さ
れ、供給ポート１６が複数個の内の１個の吐出ポ
ート１７と連通した場合に、噴射通路１８からデ
リバリ弁１９を経て、燃料噴射弁２０に供給され
る。

上記噴射通路１８を通じて燃料噴射弁２０に燃
料を圧送している最中に、プランジヤ８に設けた
スピルリング２１を軸方向へ移動させると、縦孔
１５に通じているスピルポート２２が開放され、
縦孔１５内の燃料がスピルポート２２より燃料室
６へ逃がされるので燃料噴射弁２０への燃料圧送
を停止する。すなわち、噴射が終了し、この噴射
終了は上記スピルリング２１の位置により決り、
よつてスピルリング２１の位置を制御することに
より噴射量を変えられる。

スピルリング２１は、ボールジヨイント３５に
より調整レバー３６に係合されている。調整レバ
ー３６はコントロールレバー２３とテンシヨンレ
バー２４を備え、これらコントロールレバー２３
およびテンシヨンレバー２４は支軸３７によりア
ジヤストレバー３８に支持されている。アジヤス
トレバー３８の位置はアジヤストボルト３９によ
り調整可能となつている。

コントロールレバー２３は遠心調速機として
の、ガバナスリーブ２５によつて押されるように
なつており、このガバナスリーブ２５は、駆動軸
１に取付けた駆動ギア２７を介して回転されるフ
ライウエイト２８に係合している。フライウエイ
ト２８が遠心力にもとづき作動された場合にガバ
ナスリーブ２５に軸方向に推力が与えられる。

したがつて、エンジンの回転数に応じてコント
ロールレバー２３が押されるので、スピルリング
２１の軸方向への移動を制御し、燃料噴射量をコ
ントロールする。

また、テンシヨンレバー２４はメインスプリン
グ２９を介して操作レバー３０に連結されてお
り、この操作レバー３０はアクセルペダル（図示
しない）により作動される。このアクセルペダル
により操作レバー３０を回動すると、テンシヨン
レバー２４が回動されるので上記コントロールレ
バー２３の回動とのバランスにより、スピルリン
グ２１の軸方向への移動を制御し、これによつて
も噴射量を制御する。

なお、コントロールレバー２３とテンシヨンレ
バー２４の間には、スタートスプリング４０およ
びアイドルスプリング４１が設けられている。

前記フエイスカム９に転接しているカムローラ
１０は、ローラリング３１に支持されており、こ
のローラリング３１はロツド３２を介してタイマ
ピストン３３に連結されている。タイマピストン
３３は圧力室３４に収容されており、圧力室３４
には燃料室６の圧力が導入されるようになつてい
る。燃料室６の圧力に応じて圧力室３４の燃料圧
力が変化されるとタイマピストン３３が軸方向に
変位し、この変位はロツド３２を介してローラリ
ング３１を周方向に回動させる。このためカムロ
ーラ１０がフエイスカム９に対して相対的に周方
向に変位するからフエイスカム９の山部がカムロ
ーラ１０に乗上げるタイミングが変わり、よつて
噴射タイミングが制御される。

なお、タイマピストン３３および圧力室３４
は、実際には紙面と直行する方向に設けられる
が、作図の都合上、図の通り示す。

このような分配型燃料噴射ポンプにおいて、噴
射量補正装置は以下のように構成されている。

ポンプハウジング２を覆うポンプカバー４５に
は、ダイアフラムケース４６が連結されており、
このダイアフラムケース４６はダイアフラムカバ
ー４７により覆われている。

これらダイアフラムケース４６とダイアフラム
カバー４７の間には、本考案の可動壁に相当する
ダイアフラム４８が気密に挟着されている。この
ダイアフラム４８によりダイアフラムケース４６
側のブースト圧室４９と、ダイアフラムカバー４
７側の大気圧室５０が気密に区画されている。

ブースト圧室４９は、ブースト圧導入孔５１を
介してブースター（過給機）５２に接続されてお
り、また大気圧室５０は大気開放孔５３を通じて
大気に開放されている。

したがつて、ブースト圧が上昇すると、ダイア
フラム４８は上向きに変位される。

ダイアフラムカバー４７には、上記ダイアフラ
ム４８がブースト圧により押し上げられた場合に
その移動量を規制する調整可能なストツパねじ５
４が取付られているとともに、大気圧室５０に
は、上記ダイアフラム４８をブースト圧に抗して
押し下げるスプリング５５が収容されている。

また、ブースト圧室４９には、上記ダイアフラ
ム４８がスプリング５５により押し下げられた場
合にその下降量を規制する筒状のストツパ５６が
収容されている。

ポンプカバー４５にはガイドシリンダ５７が嵌
挿されており、このガイドシリンダ５７には調整
ロツド５８が摺動自在に挿入されている。調整ロ
ツド５８の周面には、たとえば下向きに先細りを
なしたテーパカム面５９を有している。

調整ロツド５８の下端面が介在するガイドシリ
ンダ５７内は、導通孔６０により前記燃料室６に
連通されており、したがつて調整ロツド５８の下
端面は燃料室６の燃料圧力を受ける。

また、調整ロツド５８の上端面と上記ダイアフ
ラム４８の下面は互いに分離して対向されてお
り、これら調整ロツド５８とダイアフラム４８は
それぞれ独自に作動することができるとともに、
これら調整ロツド５８とダイアフラム４８の間に
はスプリング６１が介挿されている。

前記ポンプカバー４５には、調整ロツド５８と
直交して、伝達ロツド６２が摺動自在に嵌合され
ており、この伝達ロツド６２の先端は上記ガイド
シリンダ５７を貫通して調整ロツド５８のテーパ
カム面５９に当接されている。この伝達ロツド６
２の後端は、回動レバー６３に対向されている。
回動レバー６３はピン６４により回動自在に支持
されており、その下端は前述のテンシヨンレバー
２４の上端に対向されている。

このような構成の噴射量補正装置についてその
作用を説明する。

分配型燃料噴射ポンプは、エンジンの回転数が
上昇すると、第２図の特性図に示すように、燃料
室６内の燃料圧が上昇するものであるから、この
燃料室６内の燃料圧は導通孔６０を通じてガイド
シリンダ５７内の調整ロツド５８下面に作用し、
よつて調整ロツド５８は燃料圧を受けて上向きの
力が与えられる。この上向きの力と、スプリング
６１，５５およびブースト圧室４９、大気圧室５
０の圧力差のバランスにより、調整ロツド５８が
上昇される。この調整ロツド５８の上昇に応じて
伝達ロツド６２が調整ロツド５８のテーパーカム
面５９に追随して図示右方に移動し、回動レバー
６３が時計回り方向に回動されてテンシヨンレバ
ー２４を燃料増量の方向に回動させる。したがつ
て燃料噴射量が補充されることになる。

一方、ブースト圧は、第２図に示すように、エ
ンジン回転数が所定の回転数以上に達すると上昇
するものであり、ブースト圧が高くなると、ダイ
アフラム４８がスプリング５５の付勢力に抗して
上動され、このダイアフラム４８と調整ロツド５
８との間に設けたスプリング６１のばね力を弱め
るので、調整ロツド５８はさらに上昇させられ、
これによりブースト圧による噴射量の補正も行な
う。

ブースト圧が上限に達してダイアフラム４８が
ストツパ５４に当接した場合でも、燃料圧が上昇
するとスプリング６１を押して調整ロツド５８は
上昇させられる。

したがつて、本実施例においてはエンジン回転
数が高くなつた領域において、噴射量を増量する
ことができ、かつブースト圧による補正も可能に
なる。

また、ダイアフラム４８と調整ロツド５８は互
いに分離して対向されて、互に独自に作動するこ
とができるようになつているから、ブースト圧の
上昇によりダイアフラム４８がストツパ５４に当
接した後であつても調整ロツド５８を燃料圧力に
より作動させることができる。このことは、最大
ブースト圧にばらつきが生じても、このばらつき
が調整ロツド５８には伝えられなくなり、最大ブ
ースト圧のばらつきにもとづく噴射量のばらつき
を防止することができる。

しかも、本実施例では、ダイアフラム４８，ス
プリング５５，６１、ストツパ５４，５６を用い
て調整ロツド５８を作動させる構造であるから、
従来と比べて、構成が簡単であり、高精度な加
工、組付けを必要としない。

なお、ストツパ５４は、ねじにより構成されて
いるので、突出量を自在に調節することができ、
これにより調整ロツド５８の作動ストロークを変
化させて第２図の特性Ａのように変えることもで
きる。

また、調整ロツド５８に形成するカム面は、第
３図に他の実施例として示すように、そのカムプ
ロフイル７０を適当に選定することもでき、これ
により第４図に示す噴射量特性を得ることが可能
となる。

さらに、本考案はダイアフラムに代わつてピス
トンを使用してもよい。

〔考案の効果〕

以上述べたように本考案によると、ブースト圧
により作動される可動壁の移動が調整ロツドに伝
えられるからブースト圧に対する噴射量の補正を
行なうことができるとともに、上記可動壁と調整
ロツドを分離してあるから上記可動壁がストツパ
に当たつて移動が規制された状態であつても、燃
料室の燃料圧力によつて調整ロツドを作動させる
ことができるので、回転数による燃料補正が行な
え、高回転域の噴射量増量を可能にする。また、
可動壁と調整ロツドを分離してあるから可動壁が
ストツパに当つた後はブースト圧の影響が調整ロ
ツドに及ばず、最大ブースト圧のばらつきによる
噴射量のばらつきを防止することもできる。しか
もこのものは、従来のメインピストン、サブピス
トンおよび連結軸に代わつてストツパおよびスプ
リングを使用するだけでよいから構造が簡単にな
り、加工や組立てに高精度を必要とせず、小形で
安価になる等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本考案の一実施例を示
し、第１図は分配型燃料噴射ポンプの全体を示す
断面図、第２図はその噴射量特性図、第３図は本
考案の他の実施例を示す要部を拡大した断面図、
第４図はその噴射量特性図である。 １……駆動軸、３……フイードポンプ、６……
燃料室、８……プランジヤ、９……フエイスカ
ム、１４……圧送ポンプ室、２１……スピルリン
グ、２２……スピリポート、２４……テンシヨン
レバー、２８……フライウエイト、４８……ダイ
アフラム、４９……ブースト圧室、５９……大気
圧質、５２……ブースタ、５４……ストツパ、５
５……スプリング、５６……ストツパ、５８……
調整ロツド、５９……カム面、６０……導通孔、
６１……スプリング、６２……伝達ロツド、６３
……回動レバー。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 内燃機関により駆動されるフイードポンプによ
   つて燃料を燃料室内に供給するとともに、この燃
   料室内の燃料を圧送ポンプ室に導入し、上記内燃
   機関から伝達される回転運動をカムローラおよび
   このカムローラに転接するフエイスカムにより変
   換してプランジヤを上記機関の１回転中に複数回
   往復運動させるようにし、このプランジヤの往復
   運動により上記圧送ポンプ室に導入した燃料を加
   圧して上記内燃機関の各気筒に供給するととも
   に、上記プランジヤに摺動自在に嵌合したスピル
   リングを移動させてプランジヤに開口したスピル
   ポートを開くことにより燃料噴射量を規制し、か
   つ上記スピルリングをアクセル操作および遠心調
   速機の作用を受けるテンシヨンレバーにより位置
   調節して燃料噴射量を制御する分配型燃料噴射ポ
   ンプにおいて、 燃料室内の燃料圧力を受けて作動するとともに
   カム面を備える調整ロツドと、 上記調整ロツドの移動と独立して作動するよう
   にこの調整ロツドに分離して対向され、ブースト
   圧および大気圧を受けてこれらの圧力差により変
   位する可動壁と、 上記調整ロツドと可動壁との間に介挿されたス
   プリングと、 上記可動壁がブースト圧を受けて作動するのに
   抗してこの可動壁を押圧する他のスプリングと、 上記可動壁の移動量を規制するストツパと、 上記調整ロツドのカム面に当接してこのカム面
   の変位により作動される伝達ロツドと、 この伝達ロツドの動きを上記テンシヨンレバー
   に伝える回動レバーと、 を具備したことを特徴とする分配型燃料噴射ポン
   プの噴射量補正装置。