JPH05229411A - 一方向ダンパ及びこれを用いた自動車用足踏みパーキングブレーキ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動車に適用してもそれ程設置場所を取ら
ず、ブレーキペダル周りを十分広くし得る上に、簡単な
構成によりブレーキペダルの踏み込みにおいては十分に
少ない抵抗を、復帰においては所望の緩衝力を発生し得
る一方向ダンパ及びこれを用いた自動車用足踏みパーキ
ングブレーキを提供することにある。 【構成】 一方向ダンパ１は、外筒２と、外筒２との間
で粘性流体収容室５を形成し且つ外筒２に対してＡ及び
Ｂ方向に回転自在となるように、外筒２に対向して配さ
れた内筒７と、外筒２に巻き付けられたコイルばね９
と、粘性流体収容室５に配された粘性流体１０とを具備
している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、一方向ダンパ及びこれ
を用いた自動車用足踏みパーキングブレーキに関する。

【０００２】

【従来の技術】この種パーキングブレーキには、最近手
動式のもののほか足踏み式のものが用いられている。足
踏み式のパーキングブレーキは、一般にブレーキペダル
とこのこのブレーキペダルを踏んだ際にその位置を保持
するラチェット機構とラチェット解除においてブレーキ
ペダルを初期位置に復帰させるリターンスプリングとを
具備している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところでこのような足
踏み式のパーキングブレーキにおいて上記機構に加え
て、ピストン及びこのピストンを収容したシリンダから
なるショックアブソーバ型のダンパを用い、リターンス
プリングによるブレーキペダルの初期位置への復帰に際
する衝撃をこのダンパにより和らげ、ブレーキペダルの
急激な復帰に起因する異音の発生を防止している車種が
あるが、このようなダンパはペダルアームと車体フレー
ムとの間の空間に配置する必要があり、ブレーキペダル
周りが狭くなる欠点を有する。そしてまたパーキングブ
レーキに用いるダンパとしては、踏み込みにおいては十
分に少ない抵抗を、復帰においては所望の緩衝力を発生
する一方向性のものでなければならず、従来のショック
アブソーバ型のダンパでこの機能をもたせると比較的高
価になる。

【０００４】本発明は前記諸点に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、自動車に適用してもそ
れ程設置場所を取らず、ブレーキペダル周りを十分広く
し得る上に、簡単な構成によりブレーキペダルの踏み込
みにおいては十分に少ない抵抗を、復帰においては所望
の緩衝力を発生し得る一方向ダンパ及びこれを用いた自
動車用足踏みパーキングブレーキを提供することにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明によれば前記目的
は、第一の回転体と、この第一の回転体との間で粘性流
体収容室を形成し且つ第一の回転体に対して回転自在と
なるように、第一の回転体に対向して配された第二の回
転体と、第一の回転体に巻き付けられたコイルばねと、
粘性流体収容室に配された粘性流体とを具備する一方向
ダンパによって達成される。

【０００６】本発明の一つでは第一の回転体は外筒であ
り、第二の回転体はこの外筒内周面に装着された内筒で
あり、外筒の内周面と内筒の外周面との間に粘性流体収
容室が形成されており、コイルばねは外筒の外周面に巻
き付けられており、他の一つでは第一の回転体は内筒で
あり、第二の回転体はこの内筒の外周面に装着された外
筒であり、外筒の内周面と内筒の外周面との間に粘性流
体収容室が形成されており、コイルばねは内筒の内周面
に巻き付けられている。この例からも明らかであるよう
に本発明においてコイルばねを巻き付けるとは、外側か
ら第一の回転体にコイルばねを巻き付ける、換言すれば
第一の回転体の外側周囲に沿ってコイルばねを配置する
もの及び第一の回転体が内筒のように内周面を有する筒
状体等である場合には、内側から第一の回転体にコイル
ばねを巻き付ける、換言すれば第一の回転体の内側周囲
に沿ってコイルばねを配置するものをもいう。本発明で
はまた、第一及び第二の回転体としては、上記外筒、内
筒のような筒状体に限らないのであって、円板状体若し
くは柱状体等をも含むのである。第一及び第二の回転体
は夫々金属製でも良いが、軽量化を図るためには合成樹
脂製が好ましい。

【０００７】対向配置された第一及び第二の回転体間に
形成される粘性流体収容室は、ここに収容される粘性流
体の粘性剪断抵抗を主に利用して緩衝作用を得る場合に
は、粘性流体が極めて薄く広くフイルム状に伸びるよう
に、形成されていることが好ましく、この例として０．
０５ｍｍから１ｍｍ程度の厚みを示し得るが、高粘性流
体を収容する場合には、１ｍｍ以上の厚みであっても良
く、逆に機械的寸法精度が十分得られる場合には、０．
０５ｍｍよりも更に薄い厚みであっても良い。またこの
粘性流体収容室を形成する対向する第一及び第二の回転
体の面は、凹凸がなく平らに形成されているのが好まし
いが、第一及び第二の回転体の相対的回転においてしっ
かりと粘性流体を掴むようにする観点からは、凹凸をも
って形成されていても良い。粘性流体収容室は、一つの
環状、円板状又は円筒状等の形態であっても良いが、同
心状又は並行に配されて、夫々独立した又は夫々相互に
連通した複数の環状、円板状又は円筒状等の形態の分室
からなっていても良い。

【０００８】粘性流体収容室に収容される粘性流体とし
ては、十分な粘性抵抗、特に粘性剪断抵抗が得られるよ
うに高粘度の流体であることが好ましく、また寒冷地で
も十分安定して機能すべく不凍の流体が好ましく、この
ようなものの例としてシリコンオイルを示し得る。粘性
流体には空気が混入されていないことが好ましく、従っ
て粘性流体は粘性流体収容室に隙間なく充満されている
必要は特にないが、粘性流体の表面の振動による空気の
混入を避けるべく完全充満されているのが好ましい。

【０００９】本発明でのコイルばねは、これに対する第
一の回転体の相対的回転で縮径又は拡径すれば良く、従
って隣接する各コイル部分が相互に接触するように密な
ピッチをもって巻かれていても良い。コイルばねの線材
の断面は円形である必要はなく、例えば矩形であっても
良い。

【００１０】本発明によれば前記目的は更に、上述の一
方向ダンパを用いた自動車用足踏みパーキングブレーキ
であって、ブレーキペダルが弾性力によって初期位置に
復帰されるようにリターンスプリングにより付勢されて
おり、コイルばねの一端がブレーキペダル及びフレーム
のうちいずれか一方に連結されており、第二の回転体が
ブレーキペダル及びフレームのうちいずれか他方に連結
されており、ブレーキペダルの踏み込み行程では、第一
の回転体に対してコイルばねが相対的に空転し、ブレー
キペダルの初期位置への復帰行程では、第一の回転体に
コイルばねが高摩擦抵抗をもって接触するように、コイ
ルばねの巻き方向が設定されている自動車用足踏みパー
キングブレーキによっても達成される。

【００１１】

【作用】本発明の一方向ダンパでは、コイルばねの第一
の回転体に対する一の方向の相対的な回転で、コイルば
ねは例えば拡径される。このような拡径では第一の回転
体により緩く巻き付くようにコイルばねが配されている
と、コイルばねは第一の回転体に対して滑って空転し、
その結果コイルばねの相対的回転は第一の回転体に伝達
されず、従って第一の回転体と第二の回転体との間には
相対的回転は生じなく、粘性流体収容室に収容された粘
性流体には例えば粘性剪断力は生じない。これによりコ
イルばねは抵抗なしに相対的回転される。一方コイルば
ねの第一の回転体に対する一の方向と逆の方向の相対的
な回転で、コイルばねが縮径されると、コイルばねは第
一の回転体によりきつく巻き付き、コイルばねと第一の
回転体とは同方向に回転してコイルばねの相対的回転は
第一の回転体に伝達され、従って第一の回転体と第二の
回転体との間に相対的回転が生じて粘性流体収容室に収
容された粘性流体に粘性剪断力が生じる。この際粘性流
体から生じる粘性剪断抵抗によりコイルばねの回転はゆ
っくりとなされる。

【００１２】以下本発明を、図に示す好ましい具体例に
基づいて説明する。これにより前記発明及び他の発明が
更に明瞭となるであろう。尚、本発明はこれら具体例に
限定されないのは勿論である。

【００１３】

【具体例】図１及び図２において、本例の一方向ダンパ
１は、第一の回転体としての外筒２と、外周面３を有し
て、この外周面３と外筒２の内周面４との間で筒状の粘
性流体収容室５を形成し且つ外筒２に対して軸心６を中
心としてＡ及びＢ方向に回転自在となるように、外筒２
の内周面４に装着されて外筒２に対向して配された第二
の回転体としての内筒７と、外筒２の外周面８に巻き付
けられたコイルばね９と、粘性流体収容室５に配された
シリコンオイル等の粘性流体１０とを具備している。

【００１４】合成樹脂から形成された外筒２は、小径部
２１と、小径部２１に一体形成された大径部２２と、環
状蓋部２３とを具備しており、環状蓋部２３は、当該環
状蓋部２３に形成された環状突起２４が大径部２２に形
成された環状溝２５に入れられて、大径部２２と内筒７
との間に嵌着されている。

【００１５】合成樹脂から形成された内筒７の内周面３
１は、対向する円弧面３２及び３３と同じく対向する平
坦面３４及び３５とをもって形成されている。

【００１６】コイルばね９は、一端４１ではＵ字状に曲
げられており、他端（図示せず）では外周面８上で自由
端として終端されている。コイルばね９は、外周面８上
に巻き付けらた部位ではその内径が大径部２２の外径と
ほぼ等しくなるように、形成されており、従って縮径も
拡径もされない通常の場合には、コイルばね９の外周面
８上に巻き付けられた部位は所定の摩擦抵抗が得られる
程度に緩く外周面８に接触している。

【００１７】尚、大径部２２及び内筒７の夫々と環状蓋
体２３との間並びに大径部２２と内筒７との間には、夫
々粘性流体収容室５を液密に保持すべく，シールリング
５１、５２及び５３が配されている。

【００１８】このように形成された一方向ダンパ１は、
図３に示すようにパーキングブレーキのブレーキペダル
６１に適用される。ここで自動車のフレームとしてのブ
ラケット６２には、フランジ部６３を介して軸部材６４
が取付けられており、軸部材６４の軸部６５に内筒７の
内周面３１が嵌着されて一方向ダンパ１が軸部材６４に
装着されている。軸部６５の外形は、内筒７の内周面３
１の形状に対応しており、これにより内筒７は軸部６５
に固定されてＡ及びＢ方向には回転し得ないようになっ
ている。一方向ダンパ１の外筒２の外側には更に、小径
部６６及び大径部６７からなる筒状カバー６８が外筒２
に対してＡ及びＢ方向に回転自在に被せられており、筒
状カバー６８の小径部６６にブレーキペダル６１のペダ
ルアーム６９が固着されている。筒状カバー６８の大径
部６７の環状一端面７０には、スリット７１が形成され
ており、コイルばね９のＵ字状の一端４１はスリット７
１を通って伸びており、これによりコイルばね９は、そ
の一端４１で筒状カバー６８に引っ掛けられて連結され
ている。ブラケット６２に取付けられた他のブラケット
７２とペダルアーム６９との間には、リターンスプリン
グ７３が取付けられており、リターンスプリング７３の
弾性力に付勢されてペダルアーム６９は初期位置に復帰
されるようにされている。ブラケット７２には、ペダル
アーム６９の軸心６を中心とするＢ方向の必要以上の回
動を阻止するストッパ７４が取付けられている。

【００１９】一方向ダンパ１を用いた自動車用足踏みパ
ーキングブレーキは次のように動作する。ブレーキペダ
ル６１が踏み込まれてペダルアーム６９がリターンスプ
リング７３の弾性力に抗してＡ方向に回動されると、ペ
ダルアーム６９に連結された筒状カバー６８もＡ方向に
回転され、これにより筒状カバー６８に一端４１が連結
され且つ外筒２の外周面８に接触したコイルばね９もま
た外筒２の外周面８上で引摺られるようにしてＡ方向に
回転される。この引摺りにおいてコイルばね９には、そ
の径が拡径されるような摺動抵抗が外筒２の外周面８か
ら及ぼされる結果、拡径されたコイルばね９は外筒２に
対して少ない抵抗をもって空転し、外筒２はコイルばね
９と共には回転することなく静止したままとなる。コイ
ルばね９が外筒２に対して空転すると、ペダルアーム６
９はほぼリターンスプリング７３の弾性力に抗する力の
みでＡ方向に回動され得ることとなる。一方ブレーキを
解除すべく、ラチェット機構（図示せず）が外される
と、ペダルアーム６９はリターンスプリング７３に付勢
されてＢ方向に回動され始める。ペダルアーム６９のＢ
方向の回動で筒状カバー６８もまたＢ方向に回動され、
これにより筒状カバー６８に一端４１が連結され且つ外
筒２の外周面８に接触したコイルばね９もまた外筒２の
外周面８上で引摺られるようにしてＢ方向に回転され
る。この引摺りにおいてコイルばね９には、その径が縮
径されるような摺動抵抗が外筒２の外周面８から及ぼさ
れる結果、縮径されたコイルばね９は外筒２の外周面８
に更にきつく巻き付き、コイルばね９と外周面８との摺
動摩擦抵抗が増大して、外筒２はコイルばね９と共にＢ
方向に回転され始める。内筒７に対する外筒２のＢ方向
の回転は、粘性流体収容室５の粘性流体１０に粘性剪断
力を及ぼし、これにより外筒２は粘性流体１０の粘性剪
断抵抗によってゆっくりと回転されるようになり、結果
としてペダルアーム６９もまたＢ方向にゆっくりと回動
されることとなり、ペダルアーム６９がストッパ７４に
激突して異音が発生することを避けることができる。

【００２０】以上のように本発明の一方向ダンパ１を用
いた自動車用足踏みパーキングブレーキは、ブレーキペ
ダル６１が弾性力によって初期位置に復帰されるように
リターンスプリング７３により付勢されており、コイル
ばね９の一端４１は、ブレーキペダル６１及びブラケッ
ト６２のうちいずれか一方、本例ではブレーキペダル６
１に連結されており、内筒７がブレーキペダル６１及び
ブラケット６２のうちいずれか他方、本例ではブラケッ
ト６２に連結されており、ブレーキペダル６１の踏み込
み行程では、即ち軸心６を中心とするペダルアーム６９
のＡ方向の回動では、外筒２に対してコイルばね９が相
対的に空転し、ブレーキペダルの初期位置への復帰行程
では、即ち軸心６を中心とするペダルアーム６９のＢ方
向の回動では、外筒２にコイルばね９が高摩擦抵抗をも
って接触するように、コイルばね９の巻き方向が設定さ
れている。

【００２１】また上述のように本発明の一方向ダンパ１
は、ペダルアーム６９の軸支部にコンパクトに設けるこ
とができるのでペダルアーム６９周りを広くし得る。

【００２２】

【発明の効果】以上のように本発明の一方向ダンパは、
ペダルアームの軸支部に設けることができるので、自動
車に適用してもそれ程設置場所を取らず、ブレーキペダ
ル周りを十分広くし得る上に、簡単な構成によりブレー
キペダルの踏み込みにおいては十分に少ない抵抗を、復
帰においては所望の緩衝力を発生し得、ストッパ等への
激突による異音の発生を避けることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の好ましい一具体例の断面図である。

【図２】図１に示す具体例の側面図である。

【図３】図１に示す具体例をパーキングブレーキに適用
した説明図である。

【符号の説明】

１ 一方向ダンパ ２ 外筒 ５ 粘性流体収容室 ７ 内筒 ９ コイルばね １０ 粘性流体

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 第一の回転体と、この第一の回転体との
   間で粘性流体収容室を形成し且つ第一の回転体に対して
   回転自在となるように、第一の回転体に対向して配され
   た第二の回転体と、第一の回転体に巻き付けられたコイ
   ルばねと、粘性流体収容室に配された粘性流体とを具備
   する一方向ダンパ。
2. 【請求項２】 第一の回転体は外筒であり、第二の回転
   体はこの外筒内周面に装着された内筒であり、外筒の内
   周面と内筒の外周面との間に粘性流体収容室が形成され
   ており、コイルばねは外筒の外周面に巻き付けられてい
   る請求項１に記載の一方向ダンパ。
3. 【請求項３】 第一の回転体は内筒であり、第二の回転
   体はこの内筒の外周面に装着された外筒であり、外筒の
   内周面と内筒の外周面との間に粘性流体収容室が形成さ
   れており、コイルばねは内筒の内周面に巻き付けられて
   いる請求項１に記載の一方向ダンパ。
4. 【請求項４】 請求項１から３のいずれか一項に記載の
   一方向ダンパを用いた自動車用足踏みパーキングブレー
   キであって、ブレーキペダルは、弾性力によって初期位
   置に復帰されるようにリターンスプリングにより付勢さ
   れており、コイルばねの一端は、ブレーキペダル及びフ
   レームのうちいずれか一方に連結されており、第二の回
   転体は、ブレーキペダル及びフレームのうちいずれか他
   方に連結されており、ブレーキペダルの踏み込み行程で
   は、第一の回転体に対してコイルばねが相対的に空転
   し、ブレーキペダルの初期位置への復帰行程では、第一
   の回転体にコイルばねが高摩擦抵抗をもって接触するよ
   うに、コイルばねの巻き方向が設定されている自動車用
   足踏みパーキングブレーキ。