JPH05222707A - 合成床版橋とその構築方法 - Google Patents

合成床版橋とその構築方法

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JPH05222707A JP3056068A JP5606891A JPH05222707A JP H05222707 A JPH05222707 A JP H05222707A JP 3056068 A JP3056068 A JP 3056068A JP 5606891 A JP5606891 A JP 5606891A JP H05222707 A JPH05222707 A JP H05222707A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 床版橋の死荷重を軽減し、コンクリート床版
部分の耐力を増大させるとともに鋼殻およびTリブの発
錆を防止して床版橋の強度の増大および耐久性の向上を
図る。 【構成】 橋軸方向に直交する断面が上向きコ字状を有
する鋼殻1の底板部1aの上面長手方向に互いに所定の
間隔をおいて圧縮断面域に至る高さを有するT形断面の
Tリブ2,2…を溶接等により固着立設し、このTリブ
間およびTリブ2と鋼殻1の側板1bとの間に独立気泡
の発泡性硬質ウレタンフォームを充填して発泡固化させ
ることにより鋼殻1の内面およびTリブ2の腹板2bに
密接固着して硬質ウレタン層3を形成し、この硬質ウレ
タン層の上にコンクリートを打設してコンクリート層5
を形成し、これら鋼板部分、硬質ウレタン層3、コンク
リート層5の三者一体の合成床版橋としたことを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は合成床版橋およびその構
築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】橋軸方向に直交する断面が上向きコ字状
を有する鋼殻の底板部上面に橋軸方向に桁材(Tリブ)
を埋設するようにコンクリートを打設して橋を構成する
合成床版橋は、橋自体の重量が嵩むためその死荷重が大
きく、支間15〜16m程度が経済性の面から限界とさ
れていた。
【0003】そこでこの種の合成床版橋の死荷重を軽減
する手段として、合成床版橋内の橋軸方向にパイプを設
置し、このパイプをとり囲むようにコンクリートを打設
してコンクリートの重量の軽減を図るようにしたもの
(実開昭63−171416号公報)、あるいは合成床
版橋の引張域を空洞または発泡スチロール等の軽量詰物
を入れ、その上にコンクリート層を形成するようにした
もの(特開昭63−181802号公報)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに前者の構造に
よると、コンクリート層内にパイプが埋設されるので、
その空間部分に相当するコンクリートの打設量は減少す
るが、パイプおよびそれより下位のコンクリート層は橋
の引張域で使用することになるためひび割れが発生しや
すく、雨水等が浸入して鋼殻に錆を発生させ、これらに
より耐久性に劣る構造となる。またコンクリート打設時
にコンクリートによりパイプが押し上げられ、そのため
パイプの浮上りを防ぐ固定用治具を設けることが必要と
なり、付加構造が増して好ましくない。
【0005】後者の構造によると、コンクリート層の下
部が空洞乃至は実質的に橋とは無関係な詰物を入れるだ
けであるから、前者の場合と同様にコンクリート層から
浸入した水が鋼殻の内面に集約され、鋼殻を内面から発
錆させて橋の寿命を短かくするという問題がある。
【0006】本発明はこれに鑑み、現場あるいは工場で
吹付けまたは注入という特別な治具や技術を必要としな
い方法により簡単に硬質ウレタン層を構築し、床版橋の
死荷重を大巾に軽減することができると同時にコンクリ
ートを圧縮域で使用することによりコンクリート層のひ
び割れを防ぎ、また硬質発泡ウレタン層が鋼殻の内面お
よびTリブの腹板面に密接固着して一体化されることに
より鋼殻への水や空気の接触を完璧に防ぎ、防錆効果を
完遂すると同時に自己の引張強度まで引張荷重を分担
し、これにより支間を伸ばすことができる軽量で経済的
な耐久性の大きい合成床版橋およびその構築方法を提供
することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記従来の技術が有する
問題点を解決するため、本発明は、橋軸方向に直交する
断面が上向きコ字状を有する鋼殻と、この鋼殻の底板部
上面長手方向に互いに所定の間隔をおいて固設され圧縮
断面域に至る高さを有するT形断面のTリブと、引張断
面域に充填され鋼殻の内面域およびTリブの腹板域に接
着固化してなる硬質ウレタン層と、この硬質ウレタン層
の上に前記Tリブの上端を包含して打設されたコンクリ
ート層とで構成したことを特徴とする合成床版橋を請求
項1とし、橋軸方向に直交する断面が上向きコ字状を有
する鋼殻の底板部上面長手方向に互いに所定の間隔をお
いて圧縮断面域に至る高さを有するT形断面のTリブを
溶接等により固着立設し、このTリブ間およびTリブと
鋼殻の側板との間に独立気泡の発泡性硬質ウレタンフォ
ームを充填して発泡固化させることによりこの硬質発泡
ウレタンフォームを鋼殻の内面およびTリブの腹板面に
接着固化して硬質発泡ウレタン層を形成し、この硬質発
泡ウレタン層の上面にコンクリートを打設して合成床版
とすることを特徴とする合成床版橋の構築方法を請求項
2とし、さらに前記硬質ウレタン層内にガラス繊維材を
層状に内設したことを請求項3とするものである。
【0008】
【作用】上記の構成により、合成床版橋の引張域にはコ
ンクリート層が存在せずに硬質ウレタン層が鋼殻の内面
およびTリブの腹板面に密接固着されていてこの硬質ウ
レタン層が引張域を構成するので、コンクリート層には
圧縮荷重のみが作用し、したがってコンクリート層にひ
び割れが発生せず、また仮にコンクリート層から水が浸
入しても硬質ウレタン層が鋼殻の内面およびTリブの腹
板面に密接して固着されているので水が鋼殻の内面に到
達することがなく鋼殻が水から完全に保護され、発錆が
防がれる。また鋼殻の底板部上のTリブの上端フランジ
がコンクリート層に埋設されるので、スタッドジベルそ
の他適当なコネクタを使用することにより、合成床版と
しての合成効果に支障はなく、鋼板部分、硬質ウレタン
層、コンクリート層の三者が一体となった合成床版橋と
しての挙動を示し、強靭な合成床版橋となる。それでい
て死荷重が大巾に軽減されるので、支間の増大、橋高の
低減が図られる。
【0009】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例を参照して
説明する。
【0010】図1に橋軸に対し直交する断面を示し、図
2にその一部の拡大断面を示すように、橋軸方向に対し
直交する断面が上向きの浅いコ字状を有し厚さ6〜9mm
程度の鋼板からなる鋼殻1の底板部1aの上面に、断面
T型の鋼板材からなる複数のTリブ2,2…が所定の間
隔をおいて橋軸方向に溶接等により固着立設され、この
Tリブ2,2…の上ウェブ2aの位置は橋高Hの圧縮域
Xと引張域Yとの中立軸Zを超えて圧縮域Xに存在する
高さ位置とされている。
【0011】上記のように構成された鋼殻1の側板1b
と、Tリブ2との間、および各Tリブ2,2…間に独立
気泡の発泡性硬質ウレタンフォームを前記中立軸Zを超
える厚みになるように注入発泡させ、硬質ウレタン層3
が形成されている。この硬質ウレタンは発泡して固化す
る際に、鋼殻1の内面およびTリブ2,2…の腹板2b
の表面に一体的に密接固着される(符号3′部分)。こ
ゝで使用する独立気泡の発泡性硬質ウレタンとしては、
例えばポリウレタンフォームが用いられ、硬質で耐圧性
が3.0kg/cm2 程度の圧縮耐荷力を有し、着火性の低
い難燃性で耐熱性に富む性質の材料が選択される。
【0012】上記硬質ウレタン層3が固化したのちその
上に鉄筋4を組み、コンクリートを打設してコンクリー
ト層5が形成され、その表面にアスファルト等を敷設し
て舗装6が施される。またコンクリート層5の橋軸方向
両側部には地覆部7,7が形成され、これに適宜高欄
8,8が設置される。
【0013】つぎに試験結果について記す。
【0014】図4のように支間3800mmの梁試験体を
2点載荷で破壊に至るまで加圧し、終局耐力および破壊
状態を実験した。また繰返し荷重を載荷し、疲労性状も
調べた。試験に用いた梁試験体は、図5に断面形状を示
すように底部鋼板10(幅400mm)の上面中央長手方
向にTリブ11を固着立設し、引張域には硬質ウレタン
12(厚さ290mm)を、圧縮域にはコンクリート13
(厚さ160mm)を積層し、コンクリート13内にTリ
ブ11の上端のウェブ11aを埋設した本発明を象徴す
るタイプ(A)、図6に示すようにすべてコンクリート
13としたタイプ(B)、図7に示すように圧縮域のみ
をコンクリート13とし、引張域は空洞14としたタイ
プ(C)の3種類について行なった。いずれもTリブ1
1のウェブ11aの上端から60mm下った位置に100
mmピッチで直径22mmの孔をあけ、外径19mmの鉄筋を
通し、この鉄筋のジベル作用、およびTリブ11とコン
クリート13との結合により鋼板10とコンクリート1
3との合成作用を期した。
【0015】上記試験体に使用した材料ならびにその特
性は下記の通りである。
【0016】底部鋼板10およびTリブ11はSS41
材、コンクリート13は早強コンクリート(強度試験結
果340kg/cm2 )、硬質ウレタン12は圧縮強度3.
0kg/cm2 (比重0.04t/m 3 )を使用した。そし
て試験体のタイプ(A)〜(C)は載荷点に設置したロ
ードセル15により荷重を管理した。
【0017】その載荷時の荷重に対するたわみ量は、図
8に示すようにタイプ(A),(C)では50t程度ま
で荷重とたわみが直線関係を保つのに対し、タイプ
(B)では10t程度で直線関係が乱れ、最大荷重も他
のタイプ(A),(C)より10%程度小さくなってい
る。
【0018】つぎに破壊状況について考察すると、タイ
プ(A)では荷重が26tで底部鋼板10が降伏応力に
達したのち29t以上になると硬質ウレタン12内に亀
裂が生じ、75tでコンクリート13の上面が破壊し、
終局に至った。タイプ(B)では、タイプ(A)と同様
にひずみ増加を示すが、39tでスパン中央付近の3箇
所でコンクリート13の下面より鉛直方向にクラックが
発生した。このクラックは断面の圧縮域にも進展すると
ともに60tを過ぎる段階で底部鋼板10とコンクリー
ト13との付着が切れ、70tでコンクリート13の上
面が破壊した。したがってタイプ(A)はタイプ(B)
と略同程度の強度を示し、死荷重が小さくて支間の増大
を図れることが実証されている。タイプ(C)では、引
張域ではタイプ(A)とほとんど同様な挙動を示すが、
これを過ぎると底部鋼板10のひずみの増加が大きくな
り、底部鋼板10の降伏で終局を迎える。
【0019】終局状態直前でのコンクリート13の上面
の圧壊応力度は、タイプ(A)では374kg/cm2 で生
じるのに対し、タイプ(C)では253kg/cm2 となっ
ている。そのためタイプ(C)では圧縮側のコンクリー
トに余裕があるなかで引張側の鋼板がどんどん伸びてし
まうのに対し、タイプ(A)では硬質ウレタンが鋼板か
らコンクリートへの力の伝達の役割を果しており、タイ
プ(C)と比較して耐荷力も比較的ゆるやかに破壊に至
ることになる。
【0020】以上の試験結果から把握されることは、硬
質ウレタン12が底部鋼板10の急激なひずみの増加を
防ぎ、コンクリート13にバランスよく力を分配する効
果をもたらしていることである。
【0021】つぎに版試験体による剪断力の試験結果に
ついてみると、図9のように無筋コンクリート版16
(厚さ160mm)を硬質ウレタン17(厚さ300mm)
の上に載せ、一辺が1150mm、他辺が1000mmの版
試験体を使用し、四隅を支え、中央に載荷してコンクリ
ート版16の剪断耐力を調べたところ、載荷重17.2
tでコンクリート版16の両端支持部間にそったクラッ
クが走り、破壊した。これにより荷重がコンクリート版
16の全体に分散されるとともに鉄筋がなくとも通常の
交通荷重に対しては床版としての耐力を有することが確
認でき、鉄筋量を減少させ得ることが判明した。
【0022】以上の各試験結果からも明らかなように、
引張域に硬質ウレタン層3を鋼殻1およびTリブ2の腹
板2bに密着固化させることにより、耐荷強度が増すう
え、その上面のコンクリート層5に荷重を分散させ、コ
ンクリート層全体の強度を高めることができる。
【0023】図3のように硬質ウレタン層3の内部にガ
ラス繊維材18,18…を施工時に層状に埋設すること
により硬質ウレタン層3のヤング率および引張耐力を増
強させることができ、さらに好ましい効果を挙げること
ができる。すなわち鋼板が受持っていた引張力の一部を
低い応力レベルであっても硬質ウレタンが分担すること
になり、橋全体の剛性を高めるとともに耐荷力が増大す
る。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、施工時において従
来のようにパイプの埋設、空洞部の形成のようにそのた
めに特別な構造あるいは治具類を必要としたものが、本
発明によれば鋼殻を型枠とし、この鋼殻の側板とTリブ
との間、およびTリブ間に独立気泡の発泡性硬質ウレタ
ンを吹付けあるいは注入施工により充填して発泡させる
ことにより鋼床版の内面、Tリブの腹板に密接固着し、
特別な治具を用いることなく床版コンクリートの打設が
可能となり、現場施工の作業性が大巾に改善される。
【0025】また硬質ウレタン層の支持力が大きい(3
kg/cm2 程度)ため、床版コンクリート層への配筋数が
少なくてすみながらコンクリート床版部分の耐久性の増
大を図ることができ、配筋数が少なくてすむことから現
場施工の作業も容易になる。そして硬質ウレタン層の引
張強度が断面抵抗に効果的に作用し、前述の試験結果か
らも明らかなようにコンクリート層の下部を空洞とした
場合には底部鋼板が降伏して崩壊するのに対し、本発明
によれば鋼板の降伏後に抵抗を示し、耐荷力が大巾に増
大している。また疲労試験においてもコンクリートのみ
を充填した場合には底部鋼板付近により鉛直方向にクラ
ックが発生して耐力が低下するものが、本発明によれ
ば、疲労試験実施後も変化がみられず、耐力の低下もみ
られなかった。これはコンクリートを断面引張域で使用
しないため繰返し載荷に対する耐久性に優れているとい
える。
【0026】一方、前述のように硬質ウレタン層は鋼殻
の内面およびTリブの腹板に密接して固着すること、お
よび硬質ウレタン自体独立気泡で透水性がないことによ
って水や空気が硬質ウレタン層の下部の鋼殻の内面やT
リブの腹板に接触することがなく、防錆効果がきわめて
高く、これら部材の耐久性の向上に大きく寄与する。
【0027】さらに硬質ウレタンを使用してもその比重
はコンクリートに比して小さく、従来と同様に死荷重の
軽減が図れ、低桁高で経済的な合成床版橋とすることが
できる。
【0028】硬質ウレタン層内にガラス繊維材を層状に
内設するようにすれば、硬質ウレタン層の引張強度をさ
らに強化するとともにヤング率を大巾に増大することが
でき、この場合でも硬質ウレタンを層状に施工する段階
にガラス繊維材を置いて行くことにより容易に実施する
ことができ、施工性を損なうことがない。このようにす
れば、鋼板部分にプラスして硬質ウレタン部分の引張抵
抗に関する割合が高くなり、橋全体の剛性を高めること
ができるとともに低桁高の橋梁を得ることが可能とな
り、同断面の場合には耐力を増大させることができるな
どの種々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による合成床版橋の橋軸に直交する断面
【図2】図1の一部の拡大図
【図3】本発明の他の実施例を示す図2相当図
【図4】試験用梁試験体の正面図
【図5】本発明に相当する梁試験体の断面図
【図6】コンクリート層のみの場合の梁試験体の断面図
【図7】コンクリート層と空洞とで構成される場合の梁
試験体の断面図
【図8】図5〜図7の試験体の荷重−支間中央たわみ曲
線図
【図9】剪断力試験体の斜視図
【符号の説明】
1 鋼殻 1a 底板部 1b 側板 2 Tリブ 2a ウェブ 2b 腹板 3 硬質ウレタン層 5 コンクリート層 10 底部鋼板 11 Tリブ 12 硬質ウレタン 13 コンクリート 18 ガラス繊維材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 具 志 保 武 沖縄県島尻郡豊見城村字豊見城166

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】橋軸方向に直交する断面が上向きコ字状を
    有する鋼殻と、この鋼殻の底板部上面長手方向に互いに
    所定の間隔をおいて固設され圧縮断面域に至る高さを有
    するT形断面のTリブと、引張断面域に充填され鋼殻の
    内面域およびTリブの腹板域に接着固化してなる硬質ウ
    レタン層と、この硬質ウレタン層の上に前記Tリブの上
    端を包含して打設されたコンクリート層とで構成したこ
    とを特徴とする合成床版橋。
  2. 【請求項2】橋軸方向に直交する断面が上向きコ字状を
    有する鋼殻の底板部上面長手方向に互いに所定の間隔を
    おいて圧縮断面域に至る高さを有するT形断面のTリブ
    を溶接等により固着立設し、このTリブ間およびTリブ
    と鋼殻の側板との間に独立気泡の発泡性硬質ウレタンフ
    ォームを充填して発泡固化させることによりこの硬質発
    泡ウレタンフォームを鋼殻の内面およびTリブの腹板面
    に接着固化して硬質発泡ウレタン層を形成し、この硬質
    発泡ウレタン層の上面にコンクリートを打設して合成床
    版とすることを特徴とする合成床版橋の構築方法。
  3. 【請求項3】前記硬質発泡ウレタン層内にガラス繊維材
    が層状に内設されている請求項1記載の合成床版橋。
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