JPH05220860A - プラスチック成形装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、プラスチック成形装置に関し、高
精度な成形品に対して歪や傷を発生させる突き出し機構
を用いることなく、型からの成形品の取り出しが容易に
行え、キャビティ内に挿入した樹脂の内圧が生じてもバ
リ等を発生することなく、キャビティの内面に沿って忠
実に成形することを目的とする。 【構成】 鏡面を有するキャビティ４を備えた上型１と
下型２とからなる一対のエージング用金型をキャビティ
４を中心として複数の金型部材に分離し、型締め方向と
直交する締め付け方向に配列して、そのエージング用金
型１，２を締め付け方向の両側から金型締め付け機構１
３，１４により締め付け可能とする。そして、エージン
グ用金型のキャビティ４には、前加工したプラスチック
母材３を挿入して、締め付け方向および型締め方向から
締め付けを行い、金型温度調節部７，８を使ってエージ
ング処理して、キャビティ形状をプラスチック母材に忠
実に転写するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はプラスチック成形装置、
特にプラスチックレンズやミラー等のように鏡面をもっ
た高精度なプラスチック成形品を製造するためのプラス
チック成形装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、プラスチック成形装置としては、
特開平２−２８９３１２号公報に記載されているよう
に、成形品の取り出し時に、エジェクタピンやスリーブ
等による突き出しや、ストリッパープレートによって金
型から成形品を分離していた。しかし、レンズやミラー
のように、引けのない高精度な成形品を取り出す場合
は、例えば、鏡面部を使って突き出すと、その突き出し
部分に歪が生じて精度が低下する原因となっていた。こ
のため、成形品の鏡面部以外の外周部等にリブを設け、
そのリブを使って突き出すことにより成形品を取り出し
ていた。

【０００３】ところが、このリブを設けたことにより、
突き出し時の成形品の変形を防ぎ、歪の発生を防止する
効果はあるものの、光走査系等でレンズやミラーを使っ
た装置を小型化するに際し、そのリブの存在が邪魔にな
って小型化を妨げる原因となっていた。また、成形品の
鏡面部が金型パーティング面に対して直交方向に設けら
れた金型の場合は、アンギュラーピン等を用いて金型か
ら成形品を分離する必要があるが、金型構造が複雑にな
ってしまい、高い金型精度が要求されると共に、多数個
取りに限度が生じる。そこで、上記場合に通常の突き出
し手段を用いると、成形品の取り出しが困難となり、ま
た鏡面部を使って突き出そうすると鏡面部が傷つき易く
なる。

【０００４】さらに、上記以外の従来例としては、特開
平３−３４８３１号、特開平３−３９２２２号公報に記
載のものや特願平２−２０９９６３号等がある。これら
の従来例は、ゲートシール成形法において、射出充填後
のキャビティ内の樹脂内圧によって金型が変形した場合
に、それによってバリが生じたりするのを防止するた
め、型開き方向に対して直角方向から押圧する方法が採
られている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来
のプラスチック成形装置は、通常はキャビティの大きさ
の変化しない固定された金型が用いられているため、前
加工されたプラスチック母材をプラスチック成形用のキ
ャビティ内に挿入したり、あるいは成形後に成形品を取
り出したりする作業が容易に行えないという問題があっ
た。特に、成形品を金型から取り出す場合は、従来は突
き出し機構によって取り出していたため、プラスチック
レンズやミラーなどのように高精度な鏡面部分を傷つけ
たり、歪を生じさせたりするという問題があった。

【０００６】そこで、上記したような成形品に対する傷
や歪の発生を防止するために、鏡面部以外にリブを設け
ることもできるが、リブ付きの成形品の場合は、光走査
系等の装置に用いる場合に小型化が難しいという問題が
あった。また、アンギュラーピンを用いて型締め方向か
らの力を金型の横方向からの締め付け力に変換したり、
その締め付け力を開放したりして、成形品の挿入や取り
出しを容易にすることも考えられているが、金型の横方
向からの締め付け力が型締め方向からの圧力に影響され
るため、所望の締め付け力に調整することが難しく、構
造も複雑になり、高い金型精度が要求されるという問題
があった。

【０００７】本発明は、このような従来の課題に鑑みて
なされたものであり、高精度な成形品に対して歪や傷を
発生させる突き出し機構を用いることなく、型からの成
形品の取り出しが容易に行え、キャビティ内に挿入した
樹脂の内圧が生じてもバリ等が発生せず、キャビティの
内面に沿って忠実に成形することができるプラスチック
成形装置を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は、
少なくとも１つの鏡面を有するプラスチック成形用のキ
ャビティを備えた一対のエージング用金型を含み、該キ
ャビティと形状および容積が略同じに前加工された熱可
塑性のプラスチック母材を該エージング用金型内に挿入
し、エージングによってプラスチック母材をガラス転移
温度以上に加熱溶融して樹脂内圧を発生させた後、徐冷
してキャビティ内の鏡面をプラスチック母材に転写させ
るプラスチック成形装置において、前記一対のエージン
グ用金型の少なくとも一方が金型を互いに当接させる型
締め方向と直交する方向に前記キャビティを中心として
複数の金型部材に分離して配列した分離金型と、該分離
金型を前記型締め方向と直交する方向の両側から締め付
ける金型締め付け機構と、を備えたことを特徴とする。

【０００９】請求項２記載の発明は、前記分離金型を前
記金型締め付け機構で締め付ける際に、分離金型が正規
のキャビティ形状を保持するように分離金型をガイドす
るガイド部材が設けられたことを特徴とする。請求項３
記載の発明は、前記分離金型の複数の金型部材間に弾性
部材が挿入され、前記金型締め付け機構による締め付け
時には該弾性部材が圧縮されて正規のキャビティ形状を
保持し、締め付け解除時には該弾性部材の反発力により
各金型部材同士が離反するようにしたことを特徴とす
る。

【００１０】請求項４記載の発明は、前記分離金型が各
キャビティ単位で交換可能なように金型ユニット化さ
れ、該各金型ユニットを型締め方向と直交する方向に配
列したことを特徴とする。請求項５記載の発明は、前記
一対のエージング用金型を構成する上型か下型の何れか
一方のキャビティの容積を他方よりも大きくし、該キャ
ビティ容積の大きい方の型に対してのみ前記金型締め付
け機構を設けたことを特徴とする。

【００１１】請求項６記載の発明は、前記金型締め付け
機構と前記分離金型との接触部分に熱伝導し難い断熱手
段が設けられたことを特徴とする。請求項７記載の発明
は、長尺形状のプラスチック成形品を成形する際に、前
記型締め方向と直交する締め付け方向に各キャビティの
長尺方向が直交するように前記分離金型を複数個連ねて
配置し、前記金型締め付け機構により両側から締め付け
るようにしたことを特徴とする。

【００１２】請求項８記載の発明は、前記金型締め付け
機構として、前記分離金型を締め付け方向から均一に締
め付ける油圧、空気圧または電動機などの均一締め付け
手段を用いたことを特徴とする。

【００１３】

【作用】請求項１記載の発明では、エージング用金型の
少なくとも一方がキャビティを中心として複数の金型部
材に分離できる分離金型とし、その分離金型を金型締め
付け機構によって両側から締め付け可能としたため、キ
ャビティ内へのプラスチック母材の挿入、成形および成
形後の成形品の取り出しが容易に行え、成形品を歪ませ
たり傷つけることなく所望の形状に成形することができ
る。

【００１４】請求項２記載の発明では、分離金型をガイ
ドレールやガイドピン等のガイド部材によって所定位置
でガイドして正規のキャビティ形状を保持するため、金
型精度が維持されると共に、金型の締め付け時や解除時
の分離金型の動きを滑らかにすることができる。請求項
３記載の発明では、分離金型の各金型部材間にバネ等の
弾性部材が挿入され、金型の締め付け解除時にそのバネ
の反発力によって金型部材同士が離反して金型と成形品
との間に隙間が形成されるため、成形品の取り出しや挿
入が一層容易に行える。

【００１５】請求項４記載の発明では、分離金型を各キ
ャビティ単位でユニット化して、締め付け方向に多数個
配列したため、不良なキャビティの交換やメンテナンス
が容易に行える。請求項５記載の発明では、型開き時に
エージング用金型の上型か下型の何れか一方に成形品が
とられるようにキャビティの容積を大とし、そのキャビ
ティ容積の大きい方の型にのみ金型締め付け機構を設け
るようにしたため、本発明の効果を維持しつつ、装置構
成が簡略化できる。

【００１６】請求項６記載の発明では、金型締め付け機
構と分離金型との接触部分に断熱手段を設けたため、分
離金型から金型締め付け機構への熱損失が少なくなり、
金型温度の均一性を維持して、高精度な成形品が得られ
る。請求項７記載の発明では、型締め方向と直交する方
向に各キャビティの長尺方向が直交するように分離金型
を複数個連ねて配置し、長尺形状のプラスチック成形品
を形成するようにしたため、長尺形状の成形品であって
も多数個取りが容易に行えるようになり、リブや突き出
し跡のない成形品を得ることができる。

【００１７】請求項８記載の発明では、油圧、空気圧ま
たは電動機などの均一締め付け手段を金型締め付け機構
に用いたため、分離金型を均一な力で締め付けることが
可能となり、また、設計の自由度が大きくとれる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。ま
ず、構成を説明する。図１は本発明の一実施例に係るプ
ラスチック成形装置の構成断面図である。図１に示され
る一対のエージング用金型は、上型１と下型２とで構成
されている。そして、その上型１と下型２で形成される
キャビティ４の内部には、そのキャビティ４と形状およ
び容積が略同等のエージング処理を行う前加工された熱
可塑性のプラスチック母材３が挿入されている。

【００１９】本実施例の特徴は、上型１と下型２の少な
くとも一方が、キャビティ４を中心に複数の金型部材に
分離され、型締め方向と直交する締め付け方向に配列さ
れていることにある。このため、エージング用金型を型
締め方向と締め付け方向から締め付けを行い、熱処理
（エージング処理）を行って成形した後は、締め付け方
向からの締め付け力を解除すると、分離金型の各金型部
材間に隙間ができてキャビティ４内で成形されたプラス
チック母材（成形品）３をエージング用金型１，２から
容易に取り出すことができる。また、この状態で成形前
のキャビティ４内に前加工したプラスチック母材３を容
易に挿入することができる。

【００２０】図１に示すように、このエージング用金型
の上型１と下型２の外側には、さらにエージング用金型
を保持する金型保持部５，６が設けられ、さらにその外
側には金型の温度を調節する金型温度調節部７，８が設
けられている。この金型温度調節部７，８は、加熱用の
ヒータ部７ａ，８ａと冷却用の冷却部７ｂ、８ｂの両方
を備えており、ヒータ部と冷却部とを適宜選択すること
によって、金型を所望の温度に素早く調節することがで
きる。そして、この金型温度調節部７，８の外側には、
断熱板９，１０を介して上下のダイプレート１１，１２
にそれぞれ支持されている。

【００２１】この上下のダイプレート１１，１２は、さ
らに図示しないプレス機に接続されており、上記した一
対のエージング用金型を上下の矢印方向（型締め方向）
から成形時に所定の圧力で型締めするものである。ま
た、本実施例では、上記したように、エージング用金型
の上型１と下型２とがキャビティ４を中心として複数個
の金型部材に分離されており、成形時に締め付け方向か
ら所定の圧力で加圧した状態でエージング処理する必要
がある。このため、本実施例では、エージング用金型
１，２を両側の締め付け方向から締め付ける金型締め付
け機構１３，１４を備えている。

【００２２】上記した型締め方向のプレス機や締め付け
方向の金型締め付け機構は、油圧、空気圧あるいは電動
機などを用いることによって均一な締め付け力を得るこ
とが可能であり、これらは成形品の形状、型の大きさお
よび締め付け力に応じて適宜選択することができる。次
に、図２は図１の金型保持部と下型との係合態様の一実
施例を示す斜視図である。図２に示すように、金型保持
部６に下型２を挿入する部分には、ガイドレール６ａが
白抜き矢印Ａ方向に向かって形成されている。一方、下
型２は、２ａ〜２ｅまで長尺状のキャビティ１５を中心
として複数の金型部材に分割されており、その下型２の
下部には前記ガイドレール６ａと係合して摺動可能なガ
イド溝１６が形成されている。

【００２３】また、図３は図１の金型保持部と下型との
係合態様の他の実施例を示す斜視図である。この図３の
実施例が前記図２の実施例と異なる点は、金型保持部６
にはガイドレール６ａが無く、その代わりに白抜き矢印
Ａ方向と平行に下型２の内部にスルーホール１７が形成
され、該スルーホール１７にガイドピン１８を嵌合する
ようにしたことである。

【００２４】このように、エージング用金型に上記した
ガイド部材を設けることにより、分離された複数の下型
２がガイドレール６ａやガイドピン１８にガイドされな
がら締め付け方向に摺動可能なため、締め付け時や締め
付け解除時における金型部材間の位置ずれが防止され、
正規のキャビティ形状を保持しながら、精度良くスムー
ズに締め付けや解除動作が行える。

【００２５】上記図２、図３では、下型２におけるガイ
ド部材で説明したが、上型１が複数の金型部材に分離さ
れている場合は、同様なガイド部材を用いて位置ずれが
防止される。次に、作用を説明する。まず、本実施例に
おけるエージング用金型でプラスチックをエージング処
理する前工程としては、エージング用金型のキャビティ
と略同じ容積と形状を持った射出成形用金型を使って、
プラスチックの射出成形を行い、略最終形状に前加工し
た熱可塑性のプラスチック母材を形成する。このプラス
チック母材は、本実施例では射出成形用金型の温度を樹
脂の熱変形温度以下として射出成形を行い、冷却、固化
したため、射出充填に要する時間が大幅に短縮できた反
面、樹脂内で内部歪や残留応力が存在し、また分子配向
により密度差が生じている。

【００２６】このため、上記射出成形工程で得られたプ
ラスチック母材を用いて、さらに本実施例のエージング
用金型を用いたエージング処理工程を行って最終的に成
形する必要がある。そこで、図１のエージング用金型の
上型１と下型２とを上下に開いてキャビティ４内に前加
工された熱可塑性のプラスチック母材３を挿入する。こ
の時のプラスチック母材３の温度は、樹脂の熱変形温度
以下であるのに対して、エージング用金型１，２の方は
樹脂の熱変形温度前後であってガタを有していることか
ら、プラスチック母材を容易に挿入することができる。

【００２７】次に、金型締め付け機構１３，１４を用い
て、ここではエージング用金型の固定型である上型１と
可動型である下型２を両側から基準位置まで締め付け
る。そして、今度は図示しないプレス機を用いて、型締
め方向から所定の圧力で型締めを行った後、金型温度調
節部７，８の加熱用のヒータ部７ａ，８ａを使ってエー
ジング用金型１，２を加熱して、プラスチック母材３を
ガラス転移温度以上とし、キャビティ４内の樹脂の溶融
膨張によって内圧を発生させて、キャビティ４内に形成
された鏡面にプラスチック母材３を押し付けて転写す
る。また、この時、プラスチック母材３の内部歪、残留
応力および分子配向を除去するエージング処理が行われ
る。そして、その後、内部歪、残留応力、分子配向が発
生しないようにプラスチック母材３の内部温度と表面温
度の温度差が最小限となるようにしながら徐冷し、キャ
ビティの内圧が大気圧（１ｋｇｆ／ｃｍ² ）と一致し、
かつ樹脂温度が熱変形温度以下となる温度で金型を開
く。

【００２８】この時、締め付け機構１３，１４の上型１
のみの締め付けを解除してから型開きすれば、成形品は
下型２側に取られる。そして、次に下型２側の締め付け
を解除することにより、最終的な成形品は下型２から容
易に取り出すことができる。本実施例では、図１に示す
ように、下型２側のキャビティ容積を上型１側のキャビ
ティ容積よりも大とし、上下方向に型を開くだけで成形
品が下型２にとられるようにしておけば、型開き後に締
め付け機構を解除するようにしてもよい。

【００２９】さらに、キャビティの容積を上記のように
上型１か下型２のどちらか一方に偏らせ、その型を複数
に分離させて、その型側にのみ金型締め付け機構を設け
るように構成することにより、本発明の効果を維持しつ
つ装置の構成を簡略化して、低コスト化することができ
る。本実施例において、図２または図３に示すように、
長尺形状のプラスチック成形品を複数個成形する場合
は、型締め方向と直交する締め付け方向にキャビティ１
５の長尺方向が直交するように金型を複数個配置したた
め、リブや突き出し跡のないコンパクトな成形品を容易
に成形することが可能である。

【００３０】また、図４はエージング用金型を複数片に
分離して各金型間にバネを挿入したプラスチック成形装
置の一実施例を示す断面図であり、その（ａ）は締め付
け状態図であり、（ｂ）は締め付け解除状態図である。
図４（ａ）に示すように、上型１および下型２をそれぞ
れ分離した金型部材間に圧縮バネ１９，２０を挿入した
状態で、金型締め付け機構１３，１４により締め付けた
場合は、バネ１９，２０が縮んで正規のキャビティ４の
形状が保持できる。

【００３１】次に、図４（ｂ）に示すように、金型締め
付け機構１３，１４の締め付けが解除されると、バネ１
９，２０の反発力により、各分割された金型間に隙間２
１が形成されるため、成形品３が金型から離れて取り出
し易くなる。また、エージング処理する前のプラスチッ
ク母材３を挿入する場合も、図４（ｂ）の状態で分割さ
れた金型間に隙間２１があるので容易に挿入することが
できる。

【００３２】図５は分離した金型を各キャビティ単位で
ユニット化したエージング用金型の一実施例を示す断面
構成図である。図５に示されるように、１００〜１０３
は各キャビティ毎にユニット化した金型ユニットであ
る。この各金型ユニット１００〜１０３の上型１と下型
２との位置決めは各ユニット毎に行われ、複数個並んだ
ユニットの何れかが不良キャビティである場合は、当該
不良ユニットだけを取り出して交換するだけで、短時間
かつ容易に修理やメンテナンスを行うことができるもの
である。

【００３３】さらに、図５において、図４に示したよう
な分離金型間にバネ１９，２０を挿入するように構成し
てもよく（図６、図７を参照）、その場合はさらに図４
の効果が付加される。図６は金型の締め付け時と解除時
の締め付け方向寸法を管理可能とした金型ユニットの斜
視図であり、図７は図６のＡ−Ｂ−Ｃ線断面図であり、
その（ａ）は金型締め付け時の図、（ｂ）は金型締め付
け解除時の図である。図６の６ａ，６ｂは位置決めピン
であり、上下の金型保持部５，６同士の位置合わせを行
うものである。図７（ａ）に示すように、キャビティ４
を中心に複数片に分離された各下型２の間にはバネ１９
が配置されており、そのバネ１９の中を両端部の径が中
間部の径よりも大きく形成したストッパ軸２２が貫通
し、分離された下型２の両端片が所定距離だけ移動する
ことによってストッパ軸２２の両端部に突き当たるよう
に構成されている。このため、図７（ａ）に示すよう
に、図示しない金型締め付け機構によって白抜き矢印Ｂ
方向から締め付けた場合は、バネ１９を圧縮してキャビ
ティ４を正規の形状とすることができる。そして、図７
（ｂ）に示すように、締め付けが解除されるとバネ１９
の反発力で分離された下型２の両端片が外側に移動しよ
うとするが、ストッパ軸２２の両端部に突き当たって、
それ以上拡がらない。従って、バネ１９によって形成さ
れる分離金型の隙間２１が常に一定距離に保たれる。

【００３４】このようなエージング用金型用いて成形す
る場合は、まず、キャビティ４内に母材を入れて型締め
圧が生じる一歩手前まで型締めを行い、その後、金型締
め付け機構を使って横方向から締め付けを行い、それか
ら更に型締めを行うことが可能となる。また、型開き工
程の場合も、型締め圧が解除されるまで型開きを行った
後、金型締め付け機構により横方向の締め付けを解除
し、そして型開きすることができる。

【００３５】図８各図は金型締め付け機構とエージング
用金型との接触部分の構造を示す図である。図８
（ａ），（ｂ）に示されるように、金型締め付け機構１
３側の先端部分にジルコニアセラミックスやガラス等の
断熱材２３が配設されたことにより、エージング用金型
１の熱が金型締め付け機構１３の接触部分から熱が逃げ
て金型の温度分布が不均一となり、エージング処理に悪
影響を与えないようにすることが可能になった。また、
８図（ｃ）は、逆にエージング用金型１側の接触部分に
断熱材２３が設けられているもので、上記と同様な効果
が得られる。さらに、８図（ｄ）は、金型締め付け機構
１３の先端部分をエージング用金型１との接触する面積
を小さくし、空間部２４を多くしたことにより、熱の伝
わり難い構造とすることができる。この場合も上記と同
様な効果が得られる。

【００３６】

【発明の効果】請求項１記載の発明によれば、キャビテ
ィ内へのプラスチック母材の挿入および成形品の取り出
しが容易になり、さらに成形品を歪ませたり傷を付ける
ことなく、所望の形状に高精度に成形することができ
る。請求項２記載の発明によれば、ガイドレールやガイ
ドピン等のガイド部材により分離金型をガイドするの
で、金型精度を維持して高精度に成形することができる
と共に、金型の締め付け時や解除時の金型の動きが滑ら
かにできる。

【００３７】請求項３記載の発明によれば、金型の締め
付け解除時に分離金型の金型部材間に配設した弾性部材
により各金型部材同士が離反するので、成形品の取り出
しが一層容易に行うことができる。請求項４記載の発明
によれば、分離金型を各キャビティ単位でユニット化し
たので、多数個配列したキャビティの一部に不良なキャ
ビティが発生しても、キャビティ単位で取り付け、取り
外しが行え、メンテナンスや交換等を容易に行うことが
できる。

【００３８】請求項５記載の発明によれば、型開き時に
一対のエージング用金型の一方の型に成形品がとられる
ようにして、その型側にのみ金型締め付け機構を設けた
ので、上記効果を維持しつつ、装置構成を簡略化するこ
とができる。請求項６記載の発明によれば、金型締め付
け機構と分離金型との接触部分に断熱手段を設けたの
で、金型温度の均一性が維持されることにより、高精度
な成形品を得ることができる。

【００３９】請求項７記載の発明によれば、長尺形状の
プラスチック成形用の分離金型を所定の方向に複数個連
ねて配置したので、長尺形状の成形品の効率の良い多数
個取りが可能になると共に、リブや突き出し跡のない成
形品を得ることができる。請求項８記載の発明によれ
ば、成形品の形状、大きさおよび締め付け圧力に応じて
油圧、空気圧または電動機などの均一締め付け手段が適
宜選択できるので、自由に設計が行えると共に、分離金
型の締め付け方向からの圧力を均一にかけることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るプラスチック成形装置
の構成断面図である。

【図２】図１の金型保持部と下型との係合態様の一実施
例を示す斜視図である。

【図３】図１の金型保持部と下型との係合態様の他の実
施例を示す斜視図である。

【図４】エージング用金型を複数片に分割して各金型間
にバネを挿入したプラスチック成形装置の一実施例を示
す断面図であり、その（ａ）は締め付け状態図であり、
（ｂ）は締め付け解除状態図である。

【図５】分離した金型を各キャビティ単位でユニット化
したエージング用金型の一実施例を示す断面構成図であ
る。

【図６】金型の締め付け時と解除時の締め付け方向寸法
を管理可能とした金型ユニットの斜視図である。

【図７】図６のＡ−Ｂ−Ｃ線断面図であり、その（ａ）
は金型締め付け時の図、（ｂ）は金型締め付け解除時の
図である。

【図８】金型締め付け機構とエージング用金型との接触
部分の構造を示す図である。

【符号の説明】

１ 上型（エージング用金型） ２ 下型（エージング用金型） ３ プラスチック母材（成形品） ４ キャビティ ５，６ 金型保持部 ６ａ ガイドレール（ガイド部材） ７，８ 金型温度調節部 ７ａ，８ａ ヒータ部 ７ｂ，８ｂ 冷却部 ９，１０ 断熱板 １１，１２ ダイプレート １３，１４ 金型締め付け機構 １６ ガイド溝（ガイド部材） １７ スルーホール（ガイド部材） １８ ガイドピン（ガイド部材） １９，２０ バネ（弾性部材） ２３ 断熱材（断熱手段） ２４ 空間部（断熱手段）

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】少なくとも１つの鏡面を有するプラスチッ
   ク成形用のキャビティを備えた一対のエージング用金型
   を含み、該キャビティと形状および容積が略同じに前加
   工された熱可塑性のプラスチック母材を該エージング用
   金型内に挿入し、エージングによって該プラスチック母
   材をガラス転移温度以上に加熱溶融して樹脂内圧を発生
   させた後、徐冷してキャビティ内の鏡面をプラスチック
   母材に転写させるプラスチック成形装置において、 前記一対のエージング用金型の少なくとも一方が金型を
   互いに当接させる型締め方向と直交する方向に前記キャ
   ビティを中心として複数の金型部材に分離して配列した
   分離金型と、 該分離金型を前記型締め方向と直交する方向の両側から
   締め付ける金型締め付け機構と、 を備えたことを特徴とするプラスチック成形装置。
2. 【請求項２】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記分離金型を前記金型締め付け機構で締め付ける際
   に、分離金型が正規のキャビティ形状を保持するように
   分離金型をガイドするガイド部材が設けられたことを特
   徴とするプラスチック成形装置。
3. 【請求項３】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記分離金型の複数の金型部材間に弾性部材が挿入さ
   れ、前記金型締め付け機構による締め付け時には該弾性
   部材が圧縮されて正規のキャビティ形状を保持し、締め
   付け解除時には該弾性部材の反発力により各金型部材同
   士が離反するようにしたことを特徴とするプラスチック
   成形装置。
4. 【請求項４】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記分離金型が各キャビティ単位で交換可能なように金
   型ユニット化され、該各金型ユニットを型締め方向と直
   交する方向に配列したことを特徴とするプラスチック成
   形装置。
5. 【請求項５】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記一対のエージング用金型を構成する上型か下型の何
   れか一方のキャビティの容積を他方よりも大きくし、該
   キャビティ容積の大きい方の型に対してのみ前記金型締
   め付け機構を設けたことを特徴とするプラスチック成形
   装置。
6. 【請求項６】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記金型締め付け機構と前記分離金型との接触部分に熱
   伝導し難い断熱手段が設けられたことを特徴とするプラ
   スチック成形装置。
7. 【請求項７】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 長尺形状のプラスチック成形品を成形する際に、前記型
   締め方向と直交する締め付け方向に各キャビティの長尺
   方向が直交するように前記分離金型を複数個連ねて配置
   し、前記金型締め付け機構により両側から締め付けるよ
   うにしたことを特徴とするプラスチック成形装置。
8. 【請求項８】請求項１記載のプラスチック成形装置にお
   いて、 前記金型締め付け機構として、前記分離金型を締め付け
   方向から均一に締め付ける油圧、空気圧または電動機な
   どの均一締め付け手段を用いたことを特徴とするプラス
   チック成形装置。