JPH0522015B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、建物の鉄骨を耐火材で被覆する耐
火被覆構造の改良に関するものである。

従来の技術 従来、建物の梁や柱などの鉄骨に耐火材を被覆
する構造として、ロツクウールを主材とし、それ
にポルトランドセメント結合材、水溶性粉末質有
機糊材を配合して調製した耐火材を水と共に鉄骨
表面に吹き付ける乾式の耐火被覆構造、またはロ
ツクウールにポルトランドセメントと水で粘稠ペ
ースト状に調製した耐火材をポンプで圧送したス
プレーガンで吹き付ける湿式の耐火被覆構造、あ
るいは石綿珪酸カルシウム板のような成形板を接
着剤と釘を併用して貼り付ける成形板による耐火
被覆構造が適用されている。

しかし、前述した乾式・湿式吹き付け耐火被覆
構造にあつては、下記の如き欠点がある。

(イ) ホコリが出るため、作業環境が悪く、作業中
は他の作業員が同時に仕事ができない。

(ロ) ホコリが多いため、吹き付け作業場所の周辺
をシートで囲つて屋外にホコリを出さないよう
にし、また床や壁が汚れないようにシートを敷
く必要がある。

(ハ) 水を使うため、被覆材を硬化するまで、夏期
は１ケ月、冬期は２ケ月の養生期間が必要であ
る。

(ニ) 現場作業であるため、表面の仕上げが作業員
の技術に左右され、一般に表面性状が悪い。

(ホ) 吹き付け作業には特別な技術、熟練を必要と
する。

(ヘ) 現場作業のため、被覆層の厚さや密度が不均
一である。

(ト) 吹き付け作業には特別な機械が必要である。

(チ) 前述した耐火被覆材は耐熱性が600℃以下し
かない。

一方、成形板を貼り付ける耐火被覆構造にあつ
ては、下記に示す欠点がある。

(イ) 加工性が悪い。

(ロ) 取り付けが困難である。

(ハ) 曲面および配管回りなどの複雑な形状部分へ
の貼り付け施工が不可能である。

(ニ) 被覆材の重量に比べて強度が弱いため割れや
欠けが生じ易い。

上記吹き付け構造および成形板貼り付け構造に
代るものとして、ロツクウール、グラスウール、
石綿などの無機繊維を主材として形成したフエル
トを鉄骨表面に取り付ける構造も提案されている
が、前記無機繊維材料は1000℃以上の耐火性能を
要求されるところには適用できない欠点がある。

発明が解決しようとする問題点 この発明は、前述した乾式・湿式の吹き付け耐
火被覆構造および成形板貼り付け耐火被覆構造の
すべての欠点を解消するためになされたものであ
つて、吹き付け構造と比べてホコリの発生が殆ん
どなく、また熟練した施工技術を必要とせず、し
かも施工期間の大巾な短縮化ができるばかりでな
く、安価な材料で1000℃以上の耐火性能を発揮で
きる鉄骨の耐火被覆構造を提供することを主たる
目的としているものである。

問題点を解決するための手段 この発明による鉄骨の耐火被覆構造は、ロツク
ウール又はグラスウールからなるフエルトを基材
とし、該基材にセラミツク繊維フエルトを積層
し、その上に金網を重ね合わせ、それらを金属ワ
イヤーで縫合して一体に形成して耐火被覆材を構
成し、この耐火被覆材を、その金網が外側になる
ように無機質系接着剤および／または溶接ピンに
よつて鉄骨に取り付けられたことを特徴としてい
るものである。

実施例 第１図において、符号Ａで示したものは、この
発明の耐火被覆構造で用いる耐火被覆材の一例を
示したものであつて、ロツクウールまたはグラス
ウールからなるフエルト１が基材とされ、その片
面にセラミツク繊維からなるセラミツク繊維フエ
ルト２が積層され、さらにそのうえにガラス布か
らなる表面材３と金属ラス４とが重ね合わされ、
それらが金属ワイヤー５の縫合で一体化されてい
る。

前記セラミツクフエルト２のセラミツク素材と
しては、Al₂O₃30〜70wt％、SiO₂70〜30wt％の
組成からなるものが好ましい。また金属ラス４、
ひし形金網、亀甲形金網などの金網が用いられ
る。

前記耐火被覆材Ａは、その金網４を外側にして
鉄骨に取り付けるもので、第２図ないし第５図
に、鉄骨への取り付け施工状態を示してある。Ｂ
は鉄骨、６は溶接ガンによる溶接ピン、７は押え
座金、８は建物のスラブである。

すなわち、第２図は前記耐火被覆材Ａを鉄骨柱
に８字貼りにして被覆する例を、第３図は鉄骨梁
にほヾ８字貼りにして被覆する例を、第４図は鉄
骨梁に箱貼りにして被ほする例を、また第５図は
鉄骨梁に直貼りにして被覆する例をそれぞれ示し
てある。

前記耐火被覆材Ａを鉄骨に取り付ける手段とし
ては、溶接ピンに限らず、無機接着剤を用いて接
着してもよく、また両者を併用することもでき
る。

上記耐火被覆材Ａを使用して鉄骨を被覆する構
造によれば、下記の効果が得られる。

(1) 吹き付け構造でなく、貼り付け構造であるか
ら、ホコリは殆んど発生しない。加えて、セラ
ミツク繊維フエルト２の上面にガラス布のよう
な表面材３を重ね合わせた被覆材Ａの構成によ
れば、施工後の繊維の飛散を完全に防止でき
る。

(2) ホコリが発生しないから、養生シートなどを
使用する必要がない。

(3) 水などを使わないから、被覆材の養生期間は
全く不要であり、施工期間の大巾の短縮化がで
きる。

(4) 前記耐火被覆材は貼り付けるだけであるか
ら、熟練した技術は不要である。また、吹き付
け機のような特殊な大型機械も不要である。

(5) 前記耐火被覆材は接着剤や溶接ピンで簡単容
易に取り付けることができる。

(6) 前記耐火被覆材は複雑な形状に屈曲できるば
かりでなく、ハサミやカツターで簡単に切断で
きるため、加工は極めて容易である。

(7) 前記耐火被覆材は全体が繊維の成形体で構成
されているので、従来の成形板のように、割れ
や欠けを生じるおそれがない。

(8) 前記耐火被覆材は工場製品として製作できる
ので、厚さや密度がムラなく均一であり、品質
に優れる。

(9) 前記耐火被覆材の性能については、火災発生
の場合、直接1000℃以上の高温にさらされる表
面側に1300℃以上の耐火性と断熱性を有するセ
ラミツク繊維フエルトが使用され、600℃以下
の温度となる内部には、同温度に充分に耐える
ロツクウールまたはグラスウールからなる基材
が組み合わされているので、同じ厚さでも、高
価なセラミツク繊維フエルトと同等の耐火性能
が得られる。

(10) 前記セラミツク繊維フエルトのうえに金属ラ
スが重ね合わされ、一体化された構成の耐火被
覆材の使用によれば、繊維層からなる被覆材の
補強と施工中での損傷防止に効果がある。

(11) また、セラミツク繊維フエルトの表面にガラ
ス布を重ね合わせて一体化した構成の耐火被覆
材の使用によれば、とくに施工後の繊維の飛散
を確実に防止できる利点があり、かつ表面性状
の向上と化粧可能な耐火被覆体が得られる。

(12) さらに前記耐火被覆材は、フエルト状のもの
であるから、梁や柱部分への先付け工法も可能
である。

発明の効果 以上に述べたように、この発明によれば、ロツ
クウール又はグラスウールからなるフエルトを基
材とし、該基材にセラミツク繊維フエルトを積層
し、その上に金網を重ね合わせ、それらを金属ワ
イヤーで縫合して一体に形成して耐火被覆材を構
成し、この耐火被覆材を、その金網が外側になる
ように無機質系接着剤および／または溶接ピンに
よつて鉄骨に取り付けられたことを特徴としてい
るものであるから、同じ厚さでも高価のセラミツ
ク繊維と同等の耐火性能を有する経済的な耐火被
覆材を形成することができるばかりでなく、熟練
した施工技術が不要で、ホコリの発生がなく、短
期間で施工できる鉄骨の耐火被覆構造が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明の実施に使用する耐火被覆
材の一部切断斜視図、第２図ないし第５図は耐火
被覆材を鉄骨に被覆施工した状態を示す鉄骨被覆
部分の断面図である。 Ａ……耐火被覆材、１……ロツクウールフエル
トまたはグラスウールフエルトからなる基材、２
……セラミツク繊維フエルト、３……ガラス布か
らなる表面材、４……金属ラス、５……金属ワイ
ヤー、６……溶接ピン、７……押え座金、８……
建物のスラブ、Ｂ……鉄骨。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ロツクウール又はグラスウールからなるフエ
   ルトを基材とし、該基材にセラミツク繊維フエル
   トを積層し、その上に金網を重ね合わせ、それら
   を金属ワイヤーで縫合して一体に形成して耐火被
   覆材を構成し、この耐火被覆材を、その金属が外
   側になるように無機質系接着剤および／または溶
   接ピンによつて鉄骨に取り付けられたことを特徴
   とする鉄骨の耐火被覆構造。