JPH05208206A - 極薄ステンレス鋼帯の製造方法および装置 - Google Patents

極薄ステンレス鋼帯の製造方法および装置

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JPH05208206A
JPH05208206A JP4016462A JP1646292A JPH05208206A JP H05208206 A JPH05208206 A JP H05208206A JP 4016462 A JP4016462 A JP 4016462A JP 1646292 A JP1646292 A JP 1646292A JP H05208206 A JPH05208206 A JP H05208206A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 圧延機によって板厚0.3mm以下に冷間圧
延されたステンレス鋼帯を少なくとも15m以上にわた
る自由負担を有する連続焼鈍炉によって焼鈍したときに
しわが発生することを確実に防止する。 【構成】 圧延機によって板厚0.3mm以下に冷間圧
延されたステンレス鋼帯を、少なくとも15m以上にわ
たる未接触または未拘束の自由スパンを有する連続焼鈍
炉によって焼鈍する極薄ステンレス鋼帯の製造方法にお
いて、前記冷間圧延直後のステンレス鋼帯の形状に基づ
いて、そのステンレス鋼帯が中伸びとなるように、圧延
機をフィードバック制御してステンレス鋼帯の圧延張力
を調整する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極薄と呼ばれる板厚
0.3mm以下のステンレス鋼帯を冷間圧延後、15m
以上の自由スパンを有する連続焼鈍炉で焼鈍する極薄ス
テンレス鋼帯の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼帯の製造工程において、冷
間圧延(以下、圧延と記す)は、板厚を所定の板厚に仕
上げる工程であるが、圧延されたままの鋼帯は、加工硬
化によって硬質化しており、そのままでは二次加工が困
難である。そこでその材質を軟化せしめるため、圧延の
後工程である連続焼鈍炉(以下、焼鈍炉と記す)におい
て加熱と冷却を行って熱処理する。焼鈍以外の熱処理と
しては、応力除去や時効硬化等を行う場合もあるが、こ
こでは主に焼鈍について説明する。
【0003】一般に、ステンレス鋼は、フェライト系と
オーステナイト系に大別され、焼鈍温度はそれぞれ約7
50〜1000℃、約1000〜1100℃の範囲であ
る。その温度の違いからか、経験的には後者にしわが生
じる場合が多く、特に板厚0.3mm以下の極薄ステン
レス鋼帯において著しい。
【0004】また焼鈍炉の形式には、横型と竪型とがあ
り、横型炉においては図15のごとく、鋼帯1は10〜
13mピッチ毎に設けられた数本のハースロール2上で
送られるが、図16および図17に示される竪型炉にお
いては加熱帯3と、それに続く冷却帯4に、一切のハー
スロールがない場合が多い。図16と図17とに示され
る炉は光輝焼鈍炉であり、図16に示すものは下りパス
で加熱と冷却を行い、図17に示すものは上りパスで加
熱と冷却を行う例である。炉体は大略的に逆U字状であ
って、加熱された鋼帯1の表面にスケールが生成しない
よう、内部には水素ガスとちっ素ガスとのブレンドガス
等が満たされ、鋼帯1の入口5および出口6にはそのガ
スの漏洩を防止するロールシール手段7,8が設けられ
ている。上部炉体内にはトップロール9があり、入口5
および出口6と各トップロール9との間隔は、15〜5
0mであり、自由スパンが大変長いにも拘わらず、鋼帯
表面の疵防止のために、その間にはハースロールが設け
られていないことが多く、またあったとしても図16お
よび図17中に仮想線10で示すように、加熱帯3およ
び冷却帯4間に各一対設けられるのみであることが多
い。
【0005】図18は、直火型の焼鈍炉を示す断面図で
ある。鋼帯1はバーナ11の廃ガス雰囲気の中で加熱さ
れ、冷却は空冷や噴射された水等によって行われるた
め、鋼帯表面にはスケールが生成し、後処理として、デ
スケールが必要となる。さらに他の焼鈍炉として、図に
は示さなかったが、ラジアントチューブで加熱を行う炉
なども周知である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記先行技術のよう
に、自由スパンが長い横型炉および竪型炉においては、
板厚0.3mm以下のいわゆる極薄の鋼帯を通板する
際、鋼帯にしわが発生し易い。その防止方法としては、
急冷を避ける方法、板幅の中央を強冷する方法、ハース
ロールのクラウンを調整する方法などが知られている
が、いずれの方法であっても、鋼帯のしわの発生を完全
に防止することができない。このようなしわが発生する
と、ステンレス鋼帯としての商品価値が全くなくなる
上、極薄まで圧延するに要した各工程の製造費用は、一
般の板厚の製品よりも高価であるにも拘わらずむだとな
り、さらに極薄鋼帯の熱処理の際は技術者がその冷却調
整作業に立ち会わねばならないなど、製造上の大きな問
題を有する。
【0007】本件発明者は上記課題を解決すべく、鋭意
研究の結果、熱処理する前の鋼帯の形状を制御すること
によって、完全にしわを防止できることを究明した。す
なわち板厚0.3mm以下に冷間圧延されたステンレス
鋼帯は、15m以上の自由スパンを有する焼鈍炉で焼鈍
する場合にしわが発生しやすいが、これを防止する方法
を見いだすべく、数多くの通板テストを繰返した結果、
圧延で耳伸びやクォータ伸びの形状を実現すると、必ず
著しいしわになり、圧延での鋼帯の形状を中伸びにする
ことにより、そのしわは防止できるという知見を得たの
である。
【0008】したがって本発明の目的は、焼鈍後のステ
ンレス鋼帯にしわが発生することを確実に防止し、焼鈍
後の極薄ステンレス鋼帯の形状を良好にして高品質のス
テンレス鋼帯を製造することができるようにした鋼帯の
製造方法および装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、圧延機によっ
て板厚0.3mm以下に冷間圧延されたステンレス鋼帯
を、少なくとも15m以上にわたる未接触または未拘束
の自由スパンを有する連続焼鈍炉によって焼鈍する極薄
ステンレス鋼帯の製造方法において、前記冷間圧延直後
のステンレス鋼帯の形状に基づいて、そのステンレス鋼
帯が中伸びとなるように、圧延機をフィードバック制御
してステンレス鋼帯の圧延張力を調整することを特徴と
する極薄ステンレス鋼帯の製造方法である。
【0010】また本発明は、前記中伸びの急峻度を、
0.2〜2%とすることを特徴とする。
【0011】さらに本発明は、前記中伸びの伸び率差
を、1×10-5〜1×10-3とすることを特徴とする。
【0012】さらに本発明は、ステンレス鋼帯を、板厚
0.3mm以下に冷間圧延する圧延機と、通板されたス
テンレス鋼帯が少なくとも15m以上にわたって未接触
または未拘束となる自由スパンを有し、板厚0.3mm
以下に冷間圧延された前記ステンレス鋼帯を焼鈍する連
続焼鈍炉とを備える極薄ステンレス鋼帯の製造装置にお
いて、前記圧延機の出側に近接して配置され、冷間圧延
された前記ステンレス鋼帯の幅方向の延び率差分布を検
出する手段と、前記延び率差分布検出手段からの出力に
基づいて、急峻度を演算して求める演算手段と、前記演
算手段によって求められた急峻度を、ステンレス鋼帯の
表面上の分布として画像表示する表示手段と、前記演算
手段からの出力に応答して、ステンレス鋼帯が中伸びと
なるように、圧延機の圧下力を制御する制御手段とを含
むことを特徴とする極薄ステンレス鋼帯の製造装置であ
る。
【0013】
【作用】本発明に従えば、板厚0.3mm以下に冷間圧
延されたステンレス鋼帯の形状をたとえば中空多分割ロ
ール法などの検出手段によって検出し、この検出された
前記ステンレス鋼帯の形状に基づいて、そのステンレス
鋼帯が中伸びとなるように圧延機をフィードバック制御
し、ステンレス鋼帯の圧延張力を調整し、これによって
焼鈍後におけるしわの発生を確実に防止することができ
る。またステンレス鋼帯が中伸びとなるように圧延機を
制御するにあたって、その中伸びの急峻度を0.2〜2
%とするか、あるいは中伸びの延び率差を1×10-5
1×10-3とすることによって、より一層確実に焼鈍後
のしわの発生を防止することができる。
【0014】また本発明に従えば、ステンレス鋼帯は圧
延機によって板厚0.3mm以下に冷間圧延され、15
m以上にわたってロールなどがステンレス鋼帯に接触ま
たは拘束することのない自由スパンを有する焼鈍炉によ
って連続焼鈍するにあたつて、前記圧延機の出側に近接
して延び率差分布を検出する手段を設けておき、この検
出手段によって冷間圧延後のステンレス鋼帯の幅方向の
延び率差分布を検出し、この検出手段からの出力に基づ
いて、演算手段によって急峻度を演算して求め、表示手
段によってステンレス鋼帯の表面上の急峻度を画像表示
して作業者が圧延機を通板後のステンレス鋼帯の形状を
視認可能とし、また制御手段によって前記演算手段から
の出力に応答してステンレス鋼帯が中伸びとなるように
圧延機の圧下力を制御し、焼鈍後にステンレス鋼帯にし
わが生じることを防止することができる。
【0015】
【実施例】図1は、本発明の一実施例を説明するための
全体の系統図である。たとえば注射針、複合樹脂パネ
ル、通信ケーブルシース管、あるいはクラッドパイプ素
材などを製造するために、焼鈍した板厚0.3mm以下
のステンレス鋼帯が用いられており、特に近年では0.
1mm程度の極薄品の注文が増加している。このような
極薄ステンレス鋼帯を製造するにあたって、冷間圧延機
20に通板して冷間圧延を行った後、焼鈍炉21によっ
て焼鈍処理が行われる。
【0016】前記冷間圧延機20は、たとえば自動形状
制御可能なシングルスタンドレバースタイプの12段ク
ライスターミルが用いられる。この圧延機20は、上下
一対のワークロール22a,22b、各ワークロール2
2a,22bを支持する中間ロール23a,23bおよ
び各中間ロール23a,23bを支持するバックアップ
ロール24a,24bを有する。下方のバックアップロ
ール24bは、油圧シリンダなどを備える左右一対の圧
下手段25a,25bに支持されており、各ワークロー
ル22a,22b間に通板されるステンレス鋼帯26の
圧下力を調整することができるように構成されている。
【0017】また焼鈍炉21は、竪形光輝焼鈍炉であっ
て、その炉体は大略的に逆U字状に形成されている。こ
の炉体の通板方向の入口27と出口28には、各対をな
すロールシール手段29,30がそれぞれ設けられてお
り、炉体内に満たされているスケールの生成防止用の水
素ガスなどが漏洩しないように、炉体内の気密性が保た
れている。この炉体の上部にはトップロール31,32
が設けられ、入側におけるロールシール手段29とトッ
プロール31との間隔、出側におけるロールシール手段
20とトップロール32との間隔は、それぞれ15〜5
0m程度であり、このような15m以上の自由スパンを
設けることによって、通板されるステンレス鋼帯の表面
に傷が生じることを防止している。
【0018】前記冷間圧延機20の出側には、通板され
たステンレス鋼帯26の幅方向の延び率差分布を検出す
るための手段である形状検出ロール33が設けられる。
この形状検出ロール33は、図2の斜視図および図3の
断面図に示されるような磁歪式荷重検出機が用いられ
る。この形状検出ロール33は、軸線方向にたとえば2
6〜52mm程度の幅を有する複数の接触リング34
と、接触リング34の歪みを検出するために周方向に複
数(本実施例では4)設けられるひずみ計35とを有
し、ステンレス鋼帯26が通過したとき、接触リング3
4に1つ当たり1250kgf(52mm幅の場合)の
ラジアル負荷を検出することができる。
【0019】このような形状検出ロール33からの出力
はモニタ36に入力され、ステンレス鋼帯26の幅方向
の凹凸状態が画像表示される。また形状検出ロール33
からの出力は演算手段37に入力され、1次、2次およ
び4次関数に分解され、特に2次および4次関数に対応
する急峻度λ2,λ4として指標を算出し、それらを表
示手段38によってステンレス鋼帯26の平面画像上に
表示し、前記演算手段37において求められた急峻度λ
2,λ4を制御手段39に入力して、バックアップロー
ル24a,24bに対してはクラウンを調整し、中間ロ
ール23a,23bおよびワークロール22a,22b
に対してはベンディングを調整し、圧下手段25a,2
5bに対しては圧下量の調整として制御される。前記演
算手段37における演算方法について以下に説明する。
【0020】(1)圧延の伸び率 元の長さL′、厚みt′の鋼帯が圧延されて、長さL、
厚みtになった状態を図4に示す。その幅wには変化が
ないとするならば、次式が成り立つ。
【0021】
【数1】L′×t′=L×t ∴ t′/t=L/L′ 元の長さL′に対して伸びた長さ(L−L′)の比が、
圧延による伸び率εである。
【0022】
【数2】ε=(L−L′)/L′ =L/L′−1 =t′/t−1 よって圧延後の長さLや板厚tと圧延の伸び率εは次式
の関係になる。
【0023】
【数3】L=L′×(1+ε) t=t′/(1+ε) これは、圧延の伸び率εが大きい程、板が長くなり板厚
は薄くなるという自明のことを示す。
【0024】(2)圧延率 なお、鋼帯の圧延作業においては板長さL′,Lよりも
板厚t′,tの方が測定が容易であり、圧延の伸び率ε
よりも次の比を圧延率γとして用いるのが一般的であ
る。
【0025】
【数4】γ=(t′−t)/t′ =1−t/t′ ∴ t=t′×(1−γ) よってεとγには次の関係がある。
【0026】
【数5】t/t′=1−γ ε=t′/t−1 =1/(1−γ)−1 =γ/(1−γ) ∴ 1/ε=(1−γ)/γ =1/γ−1 ∴ 1/γ=1/ε+1 =(1+ε)/ε γ=ε/(1+ε) (3)鋼帯の急峻度 製品として出荷するときの鋼帯は、フラット形状に可及
的に近いことが望まれるのだが、圧延された鋼帯は必ず
しも完全なフラットな形状ではなく、長さLを切り出し
て平板の上に置くと、図5(a)のような中伸び、同図
(b)のような耳伸び、同図(c)のようなクォータ伸
びなどさまざまである。たとえば図5(a)の鋼帯の幅
中央断面は図6のごとくに波状である。波高をh、波周
期をpとすると、鋼帯長さはpより長く(p+dp)に
なっている。このとき形状不良の程度を示す、測定可能
な指標として、次の比を急峻度λで表す。
【0027】
【数6】λ=h/p これからわかるように、フラットでない鋼帯は急峻度が
0ではなく、その値が幅方向で異なる鋼帯を意味し、図
5(a)〜(c)の各下段にそれぞれの模式的な幅方向
急峻度分布を図示する。
【0028】なお、その測定法から急峻度の値が負にな
らないことは明らかである。
【0029】
【数7】λ≧0 さて実際に圧延されたままの鋼帯の急峻度は、一般に
0.04以下、そしてその多くは約0.02以下、つま
り百分率で約2%以下であるが、2%の急峻度とはすな
わち、波周期が100mmならば波高は2mm、波周期
が500mmならば波高は10mmであり、目視によれ
ば顕著な中伸びである。急峻度が0.005未満、つま
り0.5%未満であれば目視ではほぼ良好な形状に見え
る。また0.5%以下は測定が困難である。
【0030】(4)幅方向長さ分布 形状不良の他の測定方法として、次のことも考えられ
る。図7(a),(b)に示されるように、この板を長
手方向に条切りすれば、中段のように長さに違いdLが
出現する。すなわち、形状不良とは次のようなものであ
ったと解釈される。すなわち、条切り前においても中央
部の長さは幅方向両端部に比して長かったので、中央部
は幅方向両端部により圧縮応力を受け、また幅方向両端
部は中央部により引張応力を受けるのだが、中央部が面
外へ変形する。つまりフラットでなくなることにより、
両端部および中央部は共にその応力を解放していたので
ある。
【0031】そこで、次に形状がかなり不良の場合を取
り上げ、図7(a)に示されるように、幅方向両端部が
直線、中央部が急峻度2%のサインカーブの波状である
として、その長さ差の比dL/Lを考えるならば、それ
は前項(3)におけるdp/pと同一の値で、幾何学的
に次の近似式で与えられる。
【0032】
【数8】dL/L=dp/p =(π/2)2×(h/p)2 =2.47×λ2 =2.47×0.022 =0.001 =1×10-3 すなわち、急峻度λが0.1%であり、目視によれば顕
著な中伸びでありながら、dLはLに比して極めて小さ
いことが判る。
【0033】なお前項(3)で述べた急峻度4%,0.
5%,0.2%は、それぞれ伸び率にすると、4×10
-3,6×10-5,1×10-5になる。
【0034】したがって、このような条切り作業を必要
とするばかりか、微小長さの測定が不可欠な測定は大変
困難なので、急峻度λの測定の方が、現実的である。
【0035】上の例ではλは2%、dL/Lは0.1%
であったから、測定で検出される値としてdL/Lはλ
の1/20となっている。すなわちλの導入は、微小な
dLを誇張させ、測定を容易にする手段でもあった。
【0036】図7(a),(b)の下段にdL/Lの幅
方向分布を示す。なお、その値が負にならないことは明
らかである。
【0037】(5)伸び率差 さて前項(4)にて論述した「条切りする前の長さLに
対する長さの違いdLの比」は、伸び率差deと称す
る。
【0038】
【数9】de=dL/L ∴ dL=de×L deを伸び率差と称する理由は次のように仮想的なもの
で、つまり長さLのフラットな板の中央部を引張って伸
び率差deの歪を与えたとすると、同様の形状が得られ
るからである。
【0039】(6)圧延の伸び率差 圧延にてフラットな形状を目標としても、このような形
状を得てしまうことについて説明する。前項(1)にお
ける、圧延前のL′×t′×wの鋼帯を再び図9に示す
が、これはフラットな板材であったとも考えられる。そ
こでこの材料に対し圧延により伸び率εを与えて、長さ
をLに伸ばそうとしても、その歪の量が幅方向に微妙に
異なり、幅方向両端部ではεだが、中央部では(ε+d
ε)になってしまい、両端部では長さがLとなるが、中
央部では(L+dL)になったとする。両端部の長さL
と圧延率εとの関係は、既に述べたように、
【0040】
【数10】L=L′×(1+ε+dε) であり、また中央部においては、
【0041】
【数11】L+dL=L′×(1+ε+dε) =L+L′×dε ∴ dL=L′×dε である。なお、前項(5)で述べた仮想的な伸び率差d
eとは次の関係にある。
【0042】
【数12】dL=L×de ∴ dε=(L/L′)×de =(1+ε)×de この圧延の伸び率差dεを試算してみるが、圧延の仕上
げパス前の鋼帯はフラット、仕上げパスの圧延の歪εを
0.05、つまり5%とし、圧延後の鋼帯が急峻度2%
の中伸びになったとすると、deは0.001であった
から、
【0043】
【数13】dε=(1+ε)×de =(1+0.05)×0.001 ≒0.001 すなわち約0.1%という極めてわずかな圧延の伸び率
差によって著しい形状不良にいたることが判る。圧延の
形状制御の困難さ、重要性はここにある。
【0044】これからわかるように、フラットでない鋼
帯とは幅方向で圧延の伸び率差が異なった結果生ずるの
であるが、圧延前の形状や幅方向板厚分布にも依存する
ことは明らかである。
【0045】(7)板厚分布 図8(2),(3)では板厚をtとは記していない。な
ぜなら、両端部はtでも中央部はtよりも薄く(t−d
t)となっているからである。しかし前項(2)から次
のことがいえる。
【0046】両端部では、
【0047】
【数14】t=t′×(1−γ) =t′×{1−ε/(1+ε)} =t′/(1+ε) であり、中央部では、
【0048】
【数15】t−dt=t′/(1+ε+dε) しかし、この分子・分母において前項(6)のごとくd
εはεや(1+ε)に比して微小であるから無視でき、
【0049】
【数16】t−dt〜t′≒(1+ε) =t ∴ dt≒0 結局、圧延後の板厚はt=一定と見なせる。
【0050】(8)急峻度と伸び率差の対応 前項(4)でも触れた急峻度λと伸び率差deの対応、
言い換えるならば、図5および図7間の対応を述べる。
【0051】
【数17】dL/L=dp/p =(π/2)2×(h/p)2 =2.47×λ2 ∴ λ=(de/2.47)1/2 これまでに定性的に述べてきた次の2つのことが確認さ
れる。第1に、deは0.005以下という1未満の値
であるため、ルートをとることにより値を大きくしたλ
が得られること、および第2に、λとdeが負にならな
いことである。
【0052】よって図5のλ分布と、図7のde分布
は、類似の形でかつ縦軸の単位も共に%と同一でありな
がら、縦軸の縮尺を調整しても両者は一致しない。ただ
し、一方の分布が測定されると、他方の分布を算出する
ことが可能である。
【0053】(9)伸び率差の別の測定方法 前項(4)で述べた条切りによるdeの測定は必ずしも
容易でなかったが、次の原理で測定することも可能であ
る。図8の板材を引張って弾性変形させ、長さ(L+d
L+d2)を一定にした状態を図9(2)に示す。元の
板の長さが一定でなかったのだから、それを上記の一定
長さにするための張力Tは、幅方向に一定でない。中央
部はd2だけ伸ばし、両端部は(dL+d2)を伸ばし
ている。ヤング率Eが幅方向に一定であるとするとフッ
クの法則より、両端部の張力TEは、
【0054】
【数18】TE=E×(dL+d2)/L 一方中央部の張力TCは、
【0055】
【数19】TC=E×d2/(L+dL) しかし、この分母においてdLはLに比して微小である
から無視でき、次のごとくに近似される。
【0056】
【数20】TC=E×d2/L これらの張力分布を下段に示す。
【0057】この引張りを次の2段に分けると判りやす
い。まず全幅にわたってd2だけ伸ばし、両端部長さを
(L+d2)、中央部長さを(L+dL+d2)にす
る。次に両端部だけ伸ばして全体長さを(L+dL+d
2)=一定にする。上記の近似は、第1段に要する張力
が幅方向に一定と見なせることを意味し、図9(2)の
仮想線Mで示される。ここに上乗せされている張力が第
2段に要するものである。
【0058】これらより弾性変形させて一定長さに引張
るための張力Tは、元の板の幅方向長さ偏差dLと線形
の関係にあることが判る。従って図9(3)を上下逆に
し、(−Tの分布を描き)、縦軸の縮尺と横軸の位置を
調整すれば、単位は異なるが、グラフとして図7のde
に一致させ得る。
【0059】よって板材を一定長さに弾性変形させるた
めの張力分布を測定でき、計算により、de分布も、さ
らにそれからλ分布も得られることが判る。
【0060】(10)伸び率差の測定装置−形状検出
機。
【0061】前項(9)の方法を用いて伸び率差deを
測定する装置としては、前述したように図1〜図3のご
とき形状検出ロール33が用いられる。前項(9)にお
いては長さが幅方向で異なる板材を一定長さに引張った
が、図10に示すように圧延機20の出側においては、
鋼帯は形状いかんにかかわらず圧延張力にて伸ばされ、
前項(9)の状況が図らずも実現している。そこに形状
検出機として、複数の分割リング34で構成された図1
〜図3示のときロール33を設置している。
【0062】テンションリール41は鋼帯26を巻き取
りつつ、鋼帯26に張力を付与するが、塑性伸びを起こ
させるには至っていない。そして鋼帯26は図11のご
とくその張力に応じた力で該ロール33を押し下げよう
とする。同図においては鋼帯はあたかも条切りされてい
るかのように描かれている。張力を除かれると形状不良
が判明する鋼帯には、その形状に応じた幅方向張力分布
が発生しており、各リング34はその張力分布を検出す
る。
【0063】図11の各棒グラフに対応するロール配置
においては、圧延機内のパスラインは水平で、該ロール
33とテンションリール41の間にデフレクタロール4
2,43を置いているので、該ロール33への鋼帯の巻
き付け角度が一定である利点がある。デフレクタロール
が無いと、テンションリール41の鋼帯26による巻き
太りに伴うパスライン上昇が、形状検出ロール33への
鋼帯の巻付け角度θ(図3をも参照)を変化させ、同一
張力を保っていても押下げ力が減少するという不具合を
もたらす。しかしパスライン角度θを検出して、それを
補正する技術も一般化されている。
【0064】このように従来の形状の測定としては、板
材を平板上に置いて、波の高さと周期から急峻度λを測
定するしか現実的でなかったが、この装置によれば伸び
率差deと線形の関係にある張力Tの分布をオンライン
で連続的に測定でき、計算処理でde分布を知ること、
さらにそれからλ分布を得ることも可能である。また、
実測が困難であった0.2%以下の急峻度も測定可能で
ある。
【0065】(11)形状検出ロールの出力例 本件発明者らが圧延機にて用いている形状検出ロール3
3の出力例として、L1000×W1000×t174
(mm)を用いたとき、耳中伸び(図1参照)の鋼帯
が、該検出ロール33のリング34を押し下げた力の偏
差から算出した伸び率差de分布を図12に示す。個々
で本来あり得ないdeが負と表示された領域があるが、
これは次のような考え方によるためである。
【0066】すなわちdeは、前項(5)で述べたごと
く、長さLでフラットな板材を部分的に引張ったとし
て、仮想的に歪ませた値であったが、歪んだ結果の平均
長さをLとして中央部と両端部に引張りを与え、クォー
タ部に負の引張り(圧縮)を与えたとして横軸位置(d
e=0)を設定する計算ロジックを用いて、図12を得
ているのである。したがってこの図では最上部と最下部
の差が重要となる。
【0067】この図で横軸の1目盛りは、de=10-4
つまり0.001%に相当し、急峻度に換算すると、
【0068】
【数21】λ=(10-4/0.247)1/2 =0.002 つまり0.2%に相当する。
【0069】この図は前項で述べたようにdeを直接測
定しているのではないから、測定対象である鋼帯が実際
にこの図のとおりの形状になっているように計算されて
いなければならない。その確認例を図12に示す。形状
検出機出力deから算出した急峻度●と、実測急峻度○
はよく一致しており、したがって図12の縦軸目盛り間
隔は妥当といえ、すなわちdeという形状の指標をよく
検出しているといえる。
【0070】(12)他の圧延時の形状検出方法 このような形状検出装置は比較的新しい技術で、これが
無かった頃に用いられた鋼帯の形状を知る他の方法は、
圧延機を停止せしめ張力をゆるめて目視確認したり、圧
延中の鋼帯の両端部を棒で叩き、発生する音の高低で推
測したりしていた。前者は確実ではあるが、圧延ワーク
ロールの停止部にタッチマークと称するロールの圧痕が
残る問題があった。後者にはその問題がなく、連続的な
検出が可能であるという利点はあったが、作業に熟練を
要する上、危険を伴った。
【0071】 (13)圧延機に設けられた鋼帯形状の調整装置 前項(6)でも述べたが、圧延においては微妙な圧延の
伸び歪の偏差にて形状が変化する。逆に圧延歪を幅方向
に微妙に変化させ、形状を調整する。たとえば図1の圧
延機で、最も上側のバックアップロール23aは分割リ
ング構造で、これらのリングのあるものを上下させる
と、その直下近傍の鋼帯形状が変化する。このような圧
延機に内蔵された調整装置は、形状検出機に比して古い
歴史を持ち、前項(12)で述べた方法で形状を検出
し、目標形状を得るように形状調整装置を操作するよう
にしてもよい。
【0072】その他の形状調整方法として、ワークロー
ルや中間ロールを強制的にたわませる方法や、手前側、
向こう側の圧下装置の圧下力バランスを調整する、いわ
ゆる傾斜圧下法を用いるようにしてもよい。
【0073】(14)自動形状制御 再び図1をも参照して、圧延中に鋼帯の形状の把握を形
状検出機によって行い、目標とする形状との違いを確認
し、その違いを形状調整装置にフィードバックして形状
を目標どうりに自動制御するようにしてもよい。形状の
把握を形状検出ロールによって鋼帯の幅方向伸び率差分
布deとして確認し、目標形状であるフラットな鋼帯を
得るための自動制御例を前述した図1に示す。ここでは
非対称耳中伸び形状が発生した例である。ただし前述の
ごとく圧延中の鋼帯はテンションリール張力でフラット
に見えるが、この図ではその形状が目視可能であるかの
ように描いている。de分布は計算機にて1次、2次、
4次の関数の和として確認され、それぞれに分解され
る。1次成分は圧延機の傾斜圧下に、2次成分は中間ロ
ールベンダに、4次成分はバックアップロールを構成す
る接触リングの位置調整にフィードバックされるなどし
て、たとえば全関数が0に収束するように制御される。
【0074】(15)λ2とλ4 これまで鋼帯形状を示す指標として急峻度λや伸び率差
deを述べてきたが、これらは幅方向位置と対応させた
グラフや数表の形でないと形状を表すことができない。
たとえば急峻度λ=2%というだけでは、耳伸び、中伸
び、クォータ伸び等のいずれかは判らない。しかし形状
を形状平面なる2次元直行座標の中での1点として表示
できると便利である。そこで本項と次項ではこれについ
て述べる。
【0075】今、前項(14)の圧延においてde分布
が仮に2次関数だけ残っているとし、それが下に凸なら
ば鋼帯は耳伸びであるし、上に凸ならば中伸びである。
また4次関数の成分が残っていて、それが上に開いたも
のならば耳中伸び、下に開いていれば、クォータ伸びを
示す。
【0076】そこで本件発明者らは端部が中央部に比し
て伸びている(端部のde>0、耳伸び)、縮んでいる
(端部のde<0、中伸び)かを端部の急峻度的指標λ
2として導入している。急峻度とは異なるのは負の値も
とることで、端部がより伸びていれば正、縮んでいれば
負とする。λ2の2は上記2次関数成分との関連であ
る。一方、4次関数と関連あるλ4をクォータ伸びか、
耳中伸びかの指標としている。まずλ2の算出について
述べる。図11に示すように鋼帯幅wを±w/2の間で
36等分し、端部を7w/18〜9w/18とみなす。
その部分のdeが中央部のdecに比して高いか低いか
を判断するための指標Λ2をこの区間で次のように定め
る。
【0077】
【数22】
【0078】Λ2の符号は正または負となり、kは後述
の比例係数である。そして
【0079】
【数23】λ2=±(|Λ2|/2.47)1/2 とし、λ2の符号はΛ2に合わせる。このλ2が正の鋼
帯は、中央部に比して端部が伸びて、いわゆる耳伸びが
あることを、またλ2が負の鋼帯は、端部に比して中央
部が伸びて、いわゆる中伸びがあることを示す。
【0080】そして、たとえばλ2=1%であるとする
と、中央部の急峻度がλなら端部はλ+1%で、λ2=
−1%であるとすると、端部の急峻度がλなら中央部は
λ+1%であるようにkの値を決めるのが好都合であ
る。このようにλ2の正負は中央部または端部のいずれ
が急峻度の基準であるか、すなわちどちらの部分がより
伸びていないかを示す。λ2=−1%であるときに、中
央部の急峻度がλなら端部の急峻度がλ−1%になるわ
けではない。λ−1%が負になる可能性があるからであ
る。
【0081】つぎにλ4の算出について述べるがλ2と
同様である。鋼帯幅wを±w/2の間で36等分し、ク
ォータ部を3w/18〜5w/18とみなし、その部分
のdeが中央部のdecに比して高いか低いかを判断す
るための指標Λ4をこの区間で次のように定める。
【0082】
【数24】
【0083】Λ4の符号は正または負となり、kは前述
の比例係数である。そして
【0084】
【数25】λ4=±(|Λ4|/2.47)1/2 とし、λ4の符号はΛ4に合わせる。このλ4の符号は
λ2と同様である。
【0085】(16)形状平面 横軸にλ4、縦軸にλ2なる2次元直行座標を考える
と、図1の鋼帯の形状はその中での1点として表示で
き、いわゆる形状平面上の一点として、すなわち座標
(λ4,λ2)なる点として表すことができる。その例
を図1に示す。
【0086】さてたとえばλ4が0である形状とは、こ
の平面上の縦軸上であることをいい、さらにλ2が正で
あるならば単純な耳伸び、λ2が負ならば単純な中伸び
を示す。
【0087】λ4が正ならばクォータ伸びが、負ならば
耳中伸びが混在した形状であることを示す。結局(λ
4,λ2)なる座標の位置が、右上第1象限ならば耳伸
びにクォータ伸びが混在、左上第2象限ならば耳伸びの
強い耳中伸び、左下第3象限ならば中伸びの強い耳中伸
び、右下第4象限ならば中伸びにクォータ伸びが混在し
た形状であることを示す。図1の表示手段38上の例で
は、図1左下の×印として表示される。
【0088】(17)圧延時の形状制御 製品として出荷するときの鋼帯は、フラット形状に近い
ことが望まれるため、従来圧延作業の1つの目標は、鋼
帯の形状をフラットに近づけることであった。ただし、
圧延作業の際、耳伸びが全くないと、鋼帯の端部に小さ
なクラック等が存在した場合、裂断にいたる危険があ
る。すなわち、形状平面で表すと、第4象限の形状は望
ましくない。したがって圧延された鋼帯の形状は第1,
2,3象限のいずれかに位置することになり、上記のフ
ラット形状とは、厳密にはこの平面の原点であるが、実
際の目標形状は若干の耳伸びであった。
【0089】(18)まとめ 本発明は、板厚0.3mm以下のいわゆる極薄の鋼帯の
製造において、鋼帯の形状を急峻度0.5〜4%の中伸
び、または伸び率差6×10-5〜4×10-3の中伸びに
制御することによって、その後の熱処理を竪型炉のよう
に自由スパンが長い炉において行っても、炉内でのしわ
を防止できることを見いだした点にある。
【0090】しかしもちろんこの発明は、形状検出機を
備えてそれを形状調整装置にフィードバックするような
近代的な圧延機のみに適用可能なことではなく、形状調
整装置はあるが、形状検出機のない従来の圧延機でもた
とえば次のような方法で実施できる。すなわち、圧延の
最終パスにて、ある圧延条件にて圧延を行ってた後、圧
延機を停止させ、鋼帯をたるませてその形状が中伸びで
あるかを目視で点検し、もしもそうでないなら圧延条件
を修正して再度、圧延、点検を繰返す。形状の測定には
鋼帯の下に平板を差し入れて急峻度を測定する方法もあ
る。目視であっても急峻度の実測であっても、明らかに
中伸びであるならば、急峻度は0.5〜4%の範囲であ
る。もしも中伸びならばその条件を踏襲し、圧延を完了
させる。この手法は、圧延の初期部に、いくつかの圧延
停止によるロールの圧痕(タッチマーク)が避けられな
いし、条件設定に至るまで数百mの形状不安定部を作る
ことになる。しかしながら鋼帯は極薄であるため、その
屑になる部分の重量は全体に比して小さい。
【0091】また圧延の後工程である熱処理ラインにお
いて最後は鋼帯をコイル状に巻き取るが、炉内でしわに
なった部分を巻き取った上にしわのない鋼帯を巻くとそ
こで内巻きのしわが外巻きに転写してゆくという問題が
でるため、熱処理の初期にしわを発生させることを極力
回避せねばならないのだが、前記圧延調整部の部分は中
伸びになっていないため熱処理の際にしわになるであろ
うが、さいわい圧延初期部は次工程である熱処理の最終
部に当り、巻き取ったコイルの外巻きとなるため、しわ
転写問題にはいたらない。外巻きしわ部はさらなる次工
程で切除すれば良い。このことは形状検出機を備えて自
動形状制御を行う近代的圧延機にとっても同様で、最終
パスの形状制御の初期段階でうまく中伸びに収束させら
れず、次工程の熱処理ラインでしわが発生したとして
も、その被害は従来において鋼帯全体にしわができてい
たことに比べると小さい。
【0092】図14に各種形状の鋼帯を図1に示す光輝
焼鈍炉にて熱処理を行った場合の、熱処理前の形状、す
なわち圧延形状と、熱処理後の形状を対比して示す。従
来の技術で述べたごとくオーステナイト系にしわが発生
しやすいことから、この実験にはその代表的鋼種である
SUS304を用い、寸法は板厚0.1×板幅1000
mmとし、炉内での最高鋼帯温度はSUS304の一般
的な熱処理温度として約1050℃とした。この図にお
けるしわは典型的な形態を示しており、鋼帯の長手方向
に直線的で、鋼帯は炉内で幅方向に挫屈した結果と考え
られる。ここに見るように、しわは熱処理前に伸びてい
ない形状の部分に発生し、このことは再現性があった。
【0093】すなわち、従来圧延において若干の耳伸び
のあるフラット形状を目標とすることが多かったが、そ
のような鋼帯を連続焼鈍すると、図には無いもののフラ
ットな中央部に著しいしわが発生していた。しかし本発
明に示すような中央部をフラットでない、いわゆる中伸
びを目標として圧延し、その形状を実現すると、次なる
工程である炉でのしわを回避することができる。
【0094】前記の事実を利用して、多くのオーステナ
イト系鋼種の極薄鋼帯をさらに通板した。前述の図13
はその結果得た圧延形状と炉内しわ有無の関係を示す。
明らかに第2,3象限の形状が望ましいことが認められ
る。第2象限の縦軸近傍ではしわは認められた場合があ
ったが、安定した製造条件領域が確認された。
【0095】
【発明の効果】本発明によれば、圧延時に中伸びとなる
ように圧延機を制御することによって、焼鈍後に鋼帯に
しわが発生することを確実に防止し、焼鈍後の極薄ステ
ンレス鋼帯の形状を良好にして高品質のステンレス鋼帯
を製造することができる。
【0096】近年極薄ステンレス鋼の需要が増加し、ス
テンレス鋼帯製造業者にとって、その安定した製造技術
は必要欠くべかざるものであるが、工程内で発生するし
わの防止はその中でも特に重要であり、とりわけ熱処理
炉内で発生するものの対策は困難であった。
【0097】先にも述べたが、焼鈍炉でしわが発生する
とステンレス鋼帯としての商品価値が全くなくなる上、
極薄まで圧延するに要した各工程の製造費用は、一般の
板厚の製品よりも高価につくにも拘わらずむだとなり、
さらに極薄まで圧延するに要した各工程の時間をもって
すれば、各工程は一般の厚みの鋼帯をより多くの重量と
して生産することができる。すなわち多量の一般厚み鋼
帯生産をするかわりに小量の極薄材を生産するのだか
ら、極薄材を屑にするということはそれに匹敵する相当
量の一般厚み鋼帯を屑にしたと同等の損害であり、その
量の極薄材を再び生産し直すには、さらにそれに匹敵す
る相当量の一般厚み鋼帯の生産をあきらめざるを得ず、
工場の生産能力を圧迫させることにもなったが、本発明
によってこの問題を解決することができる。
【0098】また従来、しわ防止は冷却条件の調整のみ
に依存していたが、その条件が確立していなかったた
め、極薄鋼帯の熱処理の際は技術スタッフがその冷却調
整作業に立ち会わねばならない上、極薄品は必然的に鋼
帯長さが長いため、ここでも通板に時間を要し、したが
って立ち会いに要する時間も長くなるなど、製造上の大
きな問題であった。それらを解消した本発明の産業上の
意義はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を説明するための全体の構成
を示す系統図である。
【図2】形状検出ロール33を示す斜視図である。
【図3】形状検出ロール33の軸直角断面図である。
【図4】圧延によって生じる歪みを説明するための図で
ある。
【図5】鋼帯の形状と急峻度との関係を示す図である。
【図6】急峻度を説明するための図である。
【図7】延び率差を説明するための図である。
【図8】圧延による中伸びの発生を説明するための図で
ある。
【図9】延び率差の測定法を説明するための図である。
【図10】圧延機20の概略的構成を模式的に示す図で
ある。
【図11】形状検出ロール33によって検出された延び
率差を示すグラフである。
【図12】形状検出ロール33によって検出された急峻
度を示すグラフである。
【図13】表示手段38に表示される急峻度λ2,λ4
の一例を示す図である。
【図14】ステンレス鋼帯の焼鈍前と焼鈍後におけるし
わの発生状況を示す図である。
【図15】従来の横型焼鈍炉を示す簡略化した断面図で
ある。
【図16】従来の竪型光輝焼鈍炉を示す簡略化した断面
図である。
【図17】従来の他の竪型光輝焼鈍炉を示す簡略化した
断面図である。
【図18】従来の縦型焼鈍炉を示す簡略化した断面図で
ある。
【符号の説明】
20 冷間圧延機 21 焼鈍炉 22a,22b ワークロール 23a,23b 中間ロール 24a,24b バックアップロール 25a,25b 圧下手段 26 ステンレス鋼帯 33 形状検出ロール 34 接触リング 35 ひずみ計 37 演算手段 38 表示手段 39 制御手段

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延機によって板厚0.3mm以下に冷
    間圧延されたステンレス鋼帯を、少なくとも15m以上
    にわたる未接触または未拘束の自由スパンを有する連続
    焼鈍炉によって焼鈍する極薄ステンレス鋼帯の製造方法
    において、 前記冷間圧延直後のステンレス鋼帯の形状に基づいて、
    そのステンレス鋼帯が中伸びとなるように、圧延機をフ
    ィードバック制御してステンレス鋼帯の圧延張力を調整
    することを特徴とする極薄ステンレス鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記中伸びの急峻度を、0.2〜2%と
    することを特徴とする請求項1記載の極薄ステンレス鋼
    帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記中伸びの伸び率差を、1×10-5
    1×10-3とすることを特徴とする請求項1記載の極薄
    ステンレス鋼帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 ステンレス鋼帯を、板厚0.3mm以下
    に冷間圧延する圧延機と、通板されたステンレス鋼帯が
    少なくとも15m以上にわたって未接触または未拘束と
    なる自由スパンを有し、板厚0.3mm以下に冷間圧延
    された前記ステンレス鋼帯を焼鈍する連続焼鈍炉とを備
    える極薄ステンレス鋼帯の製造装置において、 前記圧延機の出側に近接して配置され、冷間圧延された
    前記ステンレス鋼帯の幅方向の延び率差分布を検出する
    手段と、 前記延び率差分布検出手段からの出力に基づいて、急峻
    度を演算して求める演算手段と、 前記演算手段によって求められた急峻度を、ステンレス
    鋼帯の表面上の分布として画像表示する表示手段と、 前記演算手段からの出力に応答して、ステンレス鋼帯が
    中伸びとなるように、圧延機の圧下力を制御する制御手
    段とを含むことを特徴とする極薄ステンレス鋼帯の製造
    装置。
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