JPH0518358B2 - - Google Patents

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JPH0518358B2
JPH0518358B2 JP61070902A JP7090286A JPH0518358B2 JP H0518358 B2 JPH0518358 B2 JP H0518358B2 JP 61070902 A JP61070902 A JP 61070902A JP 7090286 A JP7090286 A JP 7090286A JP H0518358 B2 JPH0518358 B2 JP H0518358B2
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JP
Japan
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polymer
acid
group
adhesive film
forming material
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JP61070902A
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JPS62227957A (ja
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Toshio Kawaguchi
Koji Kusumoto
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Publication date
Application filed by Tokuyama Corp filed Critical Tokuyama Corp
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Publication of JPS62227957A publication Critical patent/JPS62227957A/ja
Publication of JPH0518358B2 publication Critical patent/JPH0518358B2/ja
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野) 本発明は、生体硬組織、特に歯牙に対して接着
性を有し、且つ被膜形成能を有する接着性被膜形
成材に関する。 (従来の技術及び発明が解決しようとする問題
点) 従来被膜形成材は使用分野によつてその分野特
有の種々の化合物が知られている。中でも歯牙治
療の目的に用いられる被膜形成材には口腔内で加
わる力の複雑さ、被着体の多様性、湿潤条件下と
いつた非常に予測し難い苛酷な環境に耐え、しか
も毒性があつてはならないと言う厳しい性状が要
求されている。 現在の歯牙治療用被膜形成材は、 アマルガム充填の際に前もつて塗布しておく
事によつて、充填後の辺縁封鎖性を向上させる 高分子系の充填材を充填する際に、あらかじ
め行なわれるエツチングに用いるリン酸や充填
後に残つた未重合モノマーを歯髄に対して遮断
させる 等の目的で用いられることが多い。 このような目的で使用される市販品がいくつか
あるが、これらの市販品は、まだ十分に上記の目
的を達成するものではない。 一方、特開昭54−102094号公報には、リン酸エ
ステル、反応性多価金属塩及びカルボキシル基を
有する樹脂からなる歯科用組成物が開示されてい
る。しかしながら、ここに示された歯科用組成物
は、主として根管充填用、暫間充填用或いは印象
用として用いられるものであり、本発明が目的と
する接着性と被膜形成能とを有する接着性被膜形
成材としては使用できないものであつた。 (問題点を解決するための手段) 本発明者らは、接着性と被膜形成能とを併せ有
し、前記した目的に十分に使用し得る接着性被膜
形成材の開発を目的として鋭意研究を重ねてき
た。その結果、重合体としてカルボキシル基又は
その無水基と疎水性基とを併せ有する重合体を用
い、上記重合体の架橋材として水酸化カルシウム
を用いることによつて、良好な接着性を示し、且
つ優れた被膜形成能を有する材料が得られること
を見い出し、本発明を完成するに至つた。 尚、本発明に於いて、重合体がカルボキシル基
又はその無水基に加えて疎水性基を有することに
より、はじめて歯牙に対する接着性が良好となつ
た。また、重合体の架橋材として水酸化カルシウ
ム以外の金属水酸化物あるいはカルシウム化合物
を用いたのでは接着性が全く発揮されない。水酸
化カルシウムを用いてはじめて本発明の目的とす
る接着性被膜形成材が得られたことは全く驚異的
なことである。 本発明は、 (i) カルボキシル基又はその無水基と疎水性基と
を有する重合体 及び (ii) 水酸化カルシウム とを主成分とし、少くとも該重合体は有機溶媒に
溶解又は懸濁し、被膜形成時に両者を混合する形
態からなることを特徴とする接着性被膜形成材で
ある。 本発明の接着性被膜形成材の主成分の一つはカ
ルボキシル基又はその無水基と疎水性基とを有す
る重合体である。 該重合体にカルボキシル基又はその無水基を有
している必要性は口腔内のような湿潤下において
も例えば歯質に対しても十分な接着力を有し使用
に耐えうるものとするためである。 本発明に用いる前記重合体は、30乃至700、特
に40乃至600の酸価を有するものであることが、
得られる被膜の強靭性及び耐水性の点で好まし
い。本明細書において、酸価とは樹脂1gを中和
するに要するKOHのmg数として定義される。 上記の重合体が有するカルボキシル基又はその
無水基は、該重合体を製造するときの原料に基因
して付与されることが多い。このような原料とし
ては、カルボキシル基又はその無水基を有する公
知のビニルモノマーが特に限定されず用いうる。
一般に好適に使用されるものを例示すれば次のと
おりである。即ち、アクリル酸、メタクリル酸等
のα,β不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フ
マル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタ
コン酸等のα,β不飽和ジカルボン酸;乳酸、β
−ヒドロキシ−n−酪酸、クエン酸などのヒドロ
キシモノカルボン酸;7−ヒドロキシ−1,1−
ウンデカンジカルボン酸、11−ヒドロキシ−1,
1−ウンデカンジカルボン酸、4−ヒドロキシエ
チルトリメリツト酸などのヒドロキシジカルボン
酸等が好適に使用される。 本発明で用いる重合体は、隣接する炭素原子に
それぞれカルボキシル基を結合して有するか、該
炭素原子にその無水基を結合して有するものが特
に好ましく用いられる。このような重合体は一般
には次のような方法で好適に製造される。即ち、
隣接する炭素原子に2つのカルボキシル基を有す
るビニルモノマー、例えば、前記したα,β不飽
和ジカルボン酸を原料として重合することによつ
て重合体を製造することができる。また前記隣接
する炭素原子にそれぞれカルボン酸のエステル又
はその無水基を有するビニルモノマー、例えば無
水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイ
ン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、フマル
酸ジエステルを1成分とする他の共重合可能なビ
ニルモノマーとの共重合体を製造しておき、しか
る後に該無水基又はカルボン酸エステル基を加水
分解することにより該無水基又はカルボン酸エス
テル基の一部又は全部をカルボキシル基に変換す
る方法も好適に採用出来る。 さらに、本発明で用いる重合体において、隣接
する炭素原子にそれぞれ結合したカルボキシル
基、又はその無水基の一部がヒドロキシカルボン
酸によつてエステル化されたものについても好適
に用いられる。 本発明の前記重合体は、前記したカルボキシル
基又はその無水基の他に疎水性基を有することが
重要である。 疎水性基を有する重合体を用いることにより、
カルボキシル基又はその無水基による親水性に加
えて疎水性の両者の性質を重合体に付与すること
ができる。この場合は親水性表面を有する材料と
疎水性表面を有する材料のような異種材料の接着
において特にその性能を向上させることができ
る。 本発明で用いる前記重合体に結合した疎水性基
は特に限定されず公知のものが使用出来る。一般
に好適に使用される該疎水性基の代表的なものを
例示すれば次のものである。 (1) フエニル基、ナフチル基等のアリール基 (2) メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基
等のアルキル基 (3) エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の
アルコキシ基 (4) アセチルオキシ基等のアシルオキシ基 (5) エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル
基等のアルコキシカルボニル基 また、上記(1)〜(5)で示される疎水性基は疎水性
の性状を損なわない限り他の置換基で置換されて
いてもよい。これらの置換基は例えば塩素、臭
素、沃素、フツ素等のハロゲン原子、アルキル
基、アルコキシ基、フエノキシ基等が一般的であ
る。 またこれらの疎水性基は詳しくは後述するよう
に、一般に本発明の重合体を製造するときの原料
に基因して付与されることが多い。このような疎
水性基を付与する原料は特に制限されず公知のビ
ニルモノマーが好適に使用される。特に好適に使
用される公知のビニルモノマーを例示すれば次の
通りである。即ち、前記(1)の疎水性基を有するも
のとしては、スチレン、ハロゲン化スチレン、メ
チルスチレン、ハロゲン化メチルスチレン、ビニ
ルナフタレン等が、前記(2)の疎水性基を有するも
のとしてはプロピレン、イソブテン等が好適であ
る。同様に前記(3)の疎水性基を有すものとして
は、エチルビニルエーテル、n−ブチルエーテル
等が、前記(4)の疎水性基を有するものとしては、
酢酸ビニル等が、前記(5)の疎水性基を有するもの
はメタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が好
適である。 本発明に好適に使用される疎水性基を有するビ
ニルモノマーは、下記一般式 (式中R1は水素原子又はアルキル基であり、
R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、
アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基であ
る)で表わされる。 本発明に於いては、上記の疎水性基を有するビ
ニルモノマーの中でも特に前記(1)の疎水性基を有
するものを用いることが、得られる接着性被膜形
成材の接着性を良好にするために特に好ましい。 本発明の重合体は、一般には入手の容易さ或い
は取扱いの容易さ等の理由で工業的には分子量が
1000〜100000好ましくは2000〜50000程度のもの
が好適である。上記のような重合体を得る方法は
特に限定されるものではないが工業的には前記し
たような疎水性基を有するビニルモノマーとカル
ボキシル基を有するビニルモノマー、就中、隣接
する炭素原子にそれぞれカルボキシル基、その無
水基、カルボン酸エステル基を結合したビニルモ
ノマーとを共重合することにより、或いはその後
加水分解することにより得る方法が好適に採用さ
れる。 従つて、好適な重合体は、(A)下記式 (式中、R1は水素原子又はアルキル基であり、
R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、
アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基であ
る。) で表わされる単位の少なくとも1種と、(B)下記式 (式中、R3は水素、アルキル基又はカルボキ
シメチル基であり、n及びmはゼロ又は1の数で
あり、nがゼロのときはmは1でR3は水素原子
であり、nが1のときはmはゼロでR3は水素、
アルキル基又はカルボキシメチル基であり、2つ
のカルボキシル基は無水基を形成していてもよ
い。) で表わされる単位の少なくとも1種とから成る。 また上記共重合を実施する場合は特に限定され
るものではなく、一般には次のような重合開始剤
で行なわれる重合が好適に採用される。例えば過
酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過
酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ
化合物、トリブチルホウ素などの有機金属化合物
またはレドツクス系開始剤を用いて行なうラジカ
ル重合が好適に利用出来る。 前記、(A)式で示される疎水性基を有する単量体
単位は、得られる接着性被膜形成材の接着性を勘
案すると重合中に40モル%〜90モル%含まれてい
る事が好ましい。 前記カルボン酸のエステル基又はその無水基を
加水分解する方法は特に限定されないが、一般的
には前記エステル基又は無水基を含む共重合体を
適当な有基溶媒に溶解し、これに水ならびに加水
分解反応の促進剤として酸またはアルカリ成分を
少量加えて室温あるいは加熱下に反応する方法が
好適である。 本発明の接着性被膜形成材の他の成分は、水酸
化カルシウムである。 本発明の接着性被膜形成材中の水酸化カルシウ
ムの使用量は特に限定されないが、得られる接着
性被膜形成材の接着性及び耐水性を勘案するとカ
ルボキシル基又はその無水基と疎水基とを有する
重合体のカルボキシル基1モル又はその無水基1/
2モルに対して、0.02モル〜10.0モルの範囲、さ
らに0.1〜5.0モルの範囲で添加することが好まし
い。 本発明の成分の一つである水酸化カルシウム
は、接着性被膜形成材の歯との接着性ならびに耐
水性を維持するために、必要不可欠なものであ
る。水酸化カルシウムに代わつてマグネシウム、
ストロンチウム、バリウス、亜鉛、アルミニウム
などの金属水酸化物、あるいは、酸化カルシウ
ム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カル
シウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、メ
タクリル酸カルシウムなどのカルシウム化合物を
用いたが、いずれも歯質に対して接着性が見られ
なかつた。 本発明の接着性被膜形成材は、均一で耐久性の
ある被膜を作るために、カルボキシル基又はその
無水基と疎水性基とを有する重合体と水酸化カル
シウムを別々の包装にして少くとも重合体は有機
溶媒に溶解もしくは懸濁して用いる。また、有機
溶媒としては、一般に公知のものが用いられる
が、毒性の比較的少ないものとして、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エ
チルなどが好適に用いられる。 有機溶媒は、カルボキシル基又はその無水基と
疎水性基とを有する重合体1重量部に対して1〜
100重量部、さらに3〜60重量部の範囲で使用す
ることが好ましい。 本発明の接着性被膜形成材は、上述のように別
別の包装で保存した場合、極めて保存安定性が良
く、例えば、後述する実施例に示すように1年間
の保存にもかかわらず、接着強度の低下はほとん
ど見られなかつた。 本発明の接着性被膜形成材は前記カルボキシル
基又はその無水基と疎水性基とを有する重合体、
水酸化カルシウムの二成分のみで十分な硬化形成
材を得る事ができるが、更に必要に応じ重合可能
なビニルモノマー及び開始剤の共存下に硬化させ
る事によつて硬化物の強度あるいは接着力を向上
させる事も可能である。 上記の重合可能なビニルモノマーとしては、既
に説明した疎水性基を有するビニルモノマーがそ
のまま使用される。該共重合可能なビニルモノマ
ー中でも特に、アクリル酸ならびにメタクリル酸
誘導体は室温重合が可能であるために好適に用い
られる。 前記開始剤は特に限定されないが、一般に過酸
化物とアミンの混合系を用いると好適である。該
過酸化物としては通常硬化剤として用いられる過
酸化物であればいずれでもよく、特にジベンゾイ
ルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド
等が好適に用いられる。またアミンとしては、
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−
P−トルイジン、N−メチル−N−β−ヒドロキ
シエチル−アニリン、N,N−ジメチル−P−
(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ
(β−ヒドロキシエチル)−P−トルイジン等が好
適に使用される。さらに前記開始剤に加えて例え
ばスルフイン酸塩又はカルボン酸塩等の金属塩の
如き助触媒を用いることもしばしば好ましい態様
である。 本発明の接着性被膜形成材を用いて得られる被
膜は、優れた耐候性、耐薬品性、耐溶剤性、接着
性を示し、その上光沢性も有する強靭な被膜とな
る。 本発明の接着性被膜形成材は、例えば皮膚用の
被覆材や生体硬組織用、特に歯科用の治療修復材
などに有用なものである。 皮膚の被覆材とは、例えば傷や口内炎等の患部
の上に塗布する事によつて空気や水分を遮断する
ことにより、刺激を遮断するものである。この場
合、後述する抗菌作用と相俟つて、切傷又は口内
炎等の患部の保護を図ることができる。 また、上記歯科用の治療修復材とは、歯牙の治
療修復材の際に使用され、歯牙の表面或いは歯牙
に設けられた窩洞等の表面に塗布される材料をい
い、本発明の接着性被膜形成材の最も重要な用途
である。このような材料としては、例えば、歯牙
用接着材、遮断被膜形成材、歯牙と充填材との辺
縁封鎖材等が挙げられる。 本発明の接着性被膜形成材を歯科用治療修復材
として用いた場合について以下説明する。 従来、歯牙の治療修復に於いて、歯牙の窩洞に
複合修復レジン等の充填材を充填する際、歯質と
充填材との接着に接着材が用いられている。しか
し、従来の接着材は歯質に対してほとんど接着性
を示さないため、歯質を予め高濃度のリン酸水溶
液で処理する事によつて脱灰させ機械的に保持形
態を作る必要があつた。しかし、この方法は高濃
度のリン酸水溶液を用いるため健全な歯質までも
痛めてしまうと言う欠点があり、特に象牙質をエ
ツチングした場合接着力があまり期待できないだ
けでなく、象牙細管を通じて歯髄にまでリン酸水
溶液の影響が及ぶ恐れがある。また、前記方法は
どうしても未反応のモノマーが残つてしまうた
め、このモノマーによる歯髄為害性を起こす恐れ
も生じてくる。 ところが、本発明の接着性被膜形成材を接着材
として用いるときは、前記リン酸水溶液で前処理
する事なく直接象牙質に接着しうるし、しかも硬
化物自体が本来ポリマーであるため未反応モノマ
ーによる歯髄為害性がないという優れた効果が発
揮される。 次に、従来の遮断被膜形成材としては、水酸化
カルシウム系のものやセメントなどが用いられて
おり、複合修復レジン等の充填材の充填の際に行
なうリン酸エツチングから象牙質を守るため等に
用いられている。ところが、これらの材料はどう
しても厚い被膜になつてしまう事と、充填材との
接着性を有しないと言う事から、浅い窩洞に充填
すると言う事がほとんど不可能であつた。そこ
で、本発明の接着性被膜形成材を有機溶媒に溶か
して前記遮断被膜形成材として用いる事により、
薄い膜でありながらリン酸エツチング液から歯質
を守る事が出来、しかも充填材と接着すると言う
優れた機能を発揮する。 又、金属と歯質の接着に現在でも良く使用され
ているリン酸亜鉛セメントは組成物の中に多量の
リン酸を含んでいるため歯髄為害性を起こす恐れ
があり、本来ならば象牙質を保護するために遮断
被膜形成材を用いることが望まれていた。ところ
が、従来のように被膜の厚い被膜形成材では、そ
れ自体の圧縮強度が問題となるため使用が不可能
であつた。そこで、本発明の接着性被膜形成材を
遮断被膜形成材として用いた場合、薄膜であるた
め、それ自身の強度は、それ程必要でなく、しか
もリン酸を透さないという理想的な効果を発揮す
るのである。 更に本発明の接着性被膜形成材の第三の機能と
して辺縁封鎖性が挙げられる。 上記機能を期待するものとして公知物質は例え
ばアマルガム充填の際に用いる、コーパライト等
の樹脂を有機溶媒に溶かしたものが知られてい
る。この材料は、確かに薄膜が形成されるが、歯
質やアマルガムとの接着力は無く、辺縁封鎖につ
いても、それ程効果が無い。本発明の接着性被膜
形成材を該辺縁封鎖材として用いる事により、辺
縁封鎖性に関して著しい効果を示す。 上記働きは、該接着性被膜形成材が歯質には接
着するが、アマルガムには接着しないと言う事実
から考えて接着性以外の性質、例えば密着性、疎
水性に基因していると思われる。 又、アマルガム充填以外のものとして複合修復
レジン、セメント充填、ゴムキヤツピングなどに
おいても上記接着性被膜形成材を用いる事によつ
て辺縁封鎖性を向上させる事も可能である。 また、歯牙と修復合金例えば金、金−パラジウ
ム合金、白金−金合金、銀−金合金、白金−パラ
ジウム合金、ニツケル−クロム合金等の封鎖にも
使用し得る。 上記の用途以外にも本発明の接着性被膜形成材
を用いる事は可能である。例えば、歯牙の窩洞に
充填していた材料を除去した場合や、歯けい部の
楔状欠損等により歯牙表面に象牙質が露出した部
分に本発明の接着性被膜形成材を塗布する事によ
つて外部刺激に対する遮断材として用いる事も可
能である。 以上に、歯牙用接着材、遮断被膜形成材、辺縁
封鎖材としての機能を個々に説明したが、本発明
の接着性被膜形成材は、これらの機能を併せ有す
るものであるため、一つの症例に於て本発明の接
着性被膜形成材を用いるのみで上記の機能をすべ
て発揮させることができる。従つて、従来、一つ
の症例において普通は、複数の材料を併用する必
要があり操作が非常に煩雑になる事や、複数のも
のを併用したためにかえつてお互いに機能が低下
するという欠点を有していたことを考えれば、本
発明の接着性被膜形成材は、歯科用治療修復材と
して極めて有用な組成物である。特に歯質と複合
修復レジンの接着剤に本発明の接着性被膜形成材
を用いた場合には、カルボキシル基は歯質に対し
て親和性を有しており、一方疎水性基は、複合修
復レジンに対して親和性を有しているため従来の
接着材に比べて著しい接着力の向上が見られる。 さらに、本発明の接着性被膜形成材は、抗菌作
用があり、嫌気性菌に対してその作用がみられ
る。本発明の接着性被膜形成材は、例えば下記の
菌に対して抗菌作用を有する。 Bacteroides gingivalia 381 Actinomyces naeslundii ATCC 12104 Actinomyces viscosus ATCC 15987 Propionibacterium acnes EXC−1 Actinomyces israeli ATCC 12102 さらに、本発明の接着性被膜形成材に例えば、
フツ素化合物やクロルヘキシジン等の薬理活性を
有する化合物を添加して用いる事も出来る。 本発明を更に具体的に説明するために、以下実
施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施
例に限定されるものではない。 製造例 1 500ml容量のガラス製セパラブルフラスコにシ
クロヘキサン200mlを入れ、これにスチレン5.2
g、無水マレイン酸4.9gならびにベンゾイルパ
ーオキサイド(以下BPOと略記する)0.05gを加
えて充分撹拌した。 次に、容器内を減圧、窒素置換した後、80℃で
4時間撹拌下に加熱重合を行ない室温まで冷却
後、生成した沈澱物を濾別した。得られた固体を
さらにベンゼン300mlで十分洗浄した後乾燥し白
色のポリマー8.7gを得た。このものの元素分析
から生成共重合体の組成を求めた結果、スチレン
48.4mol%、無水マレイン酸51.6mol%であつた。 次に、この生成物を80mlのジオキサンに溶か
し、500ml容量のフラスコに入れて充分撹拌しな
がら、5重量パーセントの水酸化カリウム水溶液
100mlを加え10時間室温で反応させた。次に、濃
塩酸を加えて中和しさらに過剰の塩酸を加えるこ
とによつて白色固体の沈澱物を得た。この固体を
濾別後、中性になるまで充分水洗を繰返し、さら
に乾燥して8.0gの共重合体を得た。この生成物
の赤外吸収スペクトルを測定した結果、無水マレ
イン酸のカルボニル基に由来する特性吸収(1850
cm-1,1775cm-1)が完全消失し、新たにマレイン
酸のカルボニル基に由来する特性吸収が1720cm-1
に出現しておりほぼ定量的に加水分解反応が進行
していることが確認できた。すなわち、上記で得
た白色固体はスチレン48.4mol%、マレイン酸
51.6mol%を含有する共重合体であることが確認
できた。 なお、このポリマーの酸価は370であつた。 製造例 2 スチレン−無水マレイン酸の共重合体として分
子量50000の市販品(モンサント(Monsant)社
製品)10gを200mlのジオキシンに溶かし、500ml
容量のフラスコに入れて充分撹拌しながら蒸留水
10gを加え、100℃で4時間加熱撹拌を行なつた。
次にこの溶液を室温まで冷却した後、2の蒸留
水中に投入することによつて綿状の白色ポリマー
が析出した。このポリマーを水洗乾燥することに
よつて白色固体9.8gを得た。この生成物の元素
分析ならびに赤外線吸収スペクトルの結果より、
スチレン−マレイン酸共重合体が得られたことを
確認した。なお、このポリマーの酸価は367であ
つた。 製造例 3〜4 スチレン−無水マレイン酸の共重合体として表
1に示した組成の異なる二種の市販品(アルコケ
ミカル(Arco Chemical)社製)を用いて、製
造例1と同様な方法で加水分解を行ない、原料共
重合体の元素分析結果及び加水分解後の赤外吸収
スペクトルの測定結果から同じく表1に示した組
成のスチレン−マレイン酸共重合体を得た。分子
量はそれぞれ1700,1900であり酸価は251,184で
あつた。
【表】 製造例 5 内容300mlの耐圧ガラス容器中に、無水マレイ
ン酸35gと90mgのアゾビスイソブチロニトリル
(以下AIBNと略記する)を含むベンゼン50mlを
加え、ドライアイス−メタノール浴で冷却しなが
ら内容を減圧下で窒素置換を行ない、次いで精製
プロピレン12gを液化計量器を通して蒸留により
加えた。次に、60℃で36時間撹拌を続け共重合を
行なつた。重合終了後、内容物を大量の無水エー
テル中に投入して生成共重合体を沈澱させ、傾斜
法でよく洗浄し、すみやかに減圧乾燥器中で乾燥
した。収率は60%であつた。元素分析により無水
マレイン酸55.6mol%プロピレン44.4mol%であ
つた。 次にこの生成物を、製造例1と同様な方法で加
水分解してプロピレン−マレイン酸共重合体242
gを得た。この共重合体の赤外吸収スペクトルを
測定した結果、原料中の無水マレイン酸基はほぼ
定量的にマレイン酸に変換していることが確認さ
れた。 なおこのポリマーの酸価は508であつた。 製造例 6 内容300mlの耐圧ガラス容器中に35.7gの無水
マレイン酸と90mgのAIBNを含むベンゼン50mlを
加える。これに12.5gのイソブテンを液化計量器
を通して蒸留により仕込み、次いで60℃で15分間
共重合を行なう。重合終了後内容物を大量の無水
エーテル中に注いで生成共重合体を沈澱させ、傾
斜法により上澄み部を捨て無水エーテルで充分洗
浄した後減圧乾燥する。収率は43.3であつた。こ
のものは元素分析よりイソブテンを47.1mol%、
無水マレイン酸52.9mol%含む共重合体であつ
た。 次に、この生成物を製造例1と同様な方法で加
水分解してイソブテン−マレイン酸共重合体20.5
gを得た。この共重合体の赤外吸収スペクトルを
測定した結果、原料中の無水マレイン酸基は、ほ
ぼ定量的にマレイン酸に変換していることが確認
された。なおこの共重合体の酸価は470であつた。 製造例 7 500ml容量のガラス製セパラブルフラスコに、
ベンゼン200mlを入れ、これにn−ブチルビニル
エーテル5.3g、無水マレイン酸4.9gならびに
AIBN0.05gを加えて充分撹拌した。 次に、容器を減圧、窒素置換した後、60℃で6
時間加熱重合を行ない、生成した沈澱を濾別し
た。このものの元素分析から生成共重合体の組成
を求めた結果、n−ブチルビニルエーテル
49.8mol%、無水マレイン酸50.2mol%であつた。
次に、この生成物200mlのジオキサンに溶かし、
500ml容量のフラスコに入れて充分撹拌しながら
蒸留水10gを加え、60℃で2時間撹拌を行なつ
た。得られた重合体溶液を、ドライアイス−メタ
ノールで固化した後、凍結乾燥することによつて
10.1gの白色固体が得られた。この生成物の赤外
吸収スペクトルを測定することによつて無水マレ
イン酸基の大部分がマレイン酸基に変つたことが
確認された。ポリマーの酸価は375であつた。 製造例 8 n−オクタデシルビニルエーテル−無水マレイ
ン酸の共重合体として、ポリサイエンス
(Polysciences,Inc.,)社製のものを用いて製造
例2と同様な方法で加水分解を行ない、原料共重
合体の元素分析結果及び加水分解後の赤外吸収ス
ペクトルの測定結果から同じくn−オクタデシル
ビニルエーテル−マレイン酸の共重合体を得た。
このポリマーの酸価は196であつた。 製造例 9 イタコン酸30g、スチレン20gをジオキサン
200gに溶かし、BPOをモノマーに対して0.1%加
え、10℃で5時間重合を行なつた。得られたポリ
マーをヘキサン1に入れて沈澱分離し濾過乾燥
後、さらに蒸留水で洗浄することによつて未反応
のイタコン酸を除去した。収率は4.2%であつた。
元素分析の結果より、イタコン酸49.0モル%、ス
チレン51.0モル%であることが分つた。 このポリマーの酸価は340であつた。 製造例 10 スチレンとフマル酸ジエチルエステルをAIBN
を開始剤として用い、60℃、20時間重合させてポ
リマーを得た。共重合物の組成は、元素分析より
スチレン56.5モル%、フマル酸ジエチルエステル
43.5モル%であつた。次にこのポリマーを100ml
のエルレンマイヤーフラスコに0.5g入れたもの
に、濃硫酸30mlを加え室温に放置した。2日間で
ポリマーは完全に溶解し黄色の溶液が得られた。
これを大量の氷水中に注ぐとスチレン−フマル酸
共重合体が沈澱として析出した。これを濾過後、
十分水洗をくり返し最後に乾燥して0.45gの固体
が得られた。このポリマーの酸価は93%であつ
た。 製造例 11 酢酸ビニル−無水マレイン酸の共重合体とし
て、ポリサイエンス(Polysciences,Inc.)社製
のものを用い、製造例7と同様な方法で加水分解
を行ない、共重合体の元素分析結果及び加水分解
後の赤外吸収スペクトルの測定結果から酢酸ビニ
ル−マレイン酸の共重合体が得られた。このポリ
マーの酸価は399であつた。 製造例 12 p−クロロスチレンと無水マレイン酸をBPO
を開始剤として用い製造例1と同じ条件で重合を
行なつた。得られた共重合体の元素分析の結果か
ら、p−クロロスチレン47.9mol%、無水マレイ
ン酸52.1mol%であつた。次に、この生成物を製
造例7と同様な方法で加水分解を行ない、生成重
合体の元素分析結果及び加水分解後の赤外吸収ス
ペクトルの測定結果から酢酸ビニル−マレイン酸
の共重合体を得た。 このポリマーの酸価は318であつた。 製造例 13 p−クロロメチルスチレンと無水マレイン酸を
BPOを開始剤として用い、製造例1と同じ条件
で重合を行なつた。得られた共重合体の元素分析
の結果から、p−クロロメチルスチレン48.9mol
%、無水マレイン酸51.1mol%であつた。 次に、この生成物を製造例7と同様な方法で加
水分解を行ない、生成共重合体の元素分析結果及
び加水分解後の赤外吸収スペクトルの測定結果か
らp−クロロメチルスチレン−マレイン酸の共重
合体を得た。 このポリマーの酸価は301であつた。 製造例 14 滴下ロートと冷却管を付けた300ml三つ口フラ
スコにマロン酸ジエチル33.8g、エタノール150
mlを入れ、氷冷しながら金属ナトリウム4.85gを
入れ、均一溶液となるまで撹拌を行なつた。続い
て10−ブロム−1デカノール50.0gを滴下ロート
で滴下した後に80℃で3時間加熱した。 上記溶液を500mlのナスフラスコに移し、エタ
ノールを減圧蒸留した。次に20wt%NaOH溶液
を120ml入れ100℃で2時間加熱した後に6規定塩
酸を130ml滴下して溶液のPHを約2とした。得ら
れた固体をガラスフイルターでロ過水洗した後
に、アセトンに溶解し無水硫酸ナトリウム、無水
硫酸マグネシウムで脱水を行なつた。続いてアセ
トンを室温で減圧留去し、35.6gの粘稠な白色固
体が得られた。 生成物の赤外吸収スペクトルならびに1H−
NMRより下記式に示すヒドロキシカルボン酸で
ある事を確認した。 次に、製造例2に示した市販のスチレン−無水
マレイン酸共重合体10gをピリジン100gに溶か
しておき、上記ヒドロキシカルボン酸13gを添加
し10時間還流を行なつた。その後、蒸留水を10g
を加え、さらに5時間還流した。 得られた反応溶液に同量のアセトンを加えて希
釈し、弱酸性に調製した酢酸に少しづつ添加する
事によりポリマーを分離した。 得られたポリマーの赤外吸収スペクトルより、
酸無水基の30モル%が前記ヒドロキシカルボン酸
と反応し、残りの酸無水基は水と反応してカルボ
キシル基になつた事が確認された。 このポリマーの酸価は314であつた。 製造例 15 原料として下記化合物を用いた他は製造例14と
同様の操作を行ない、下記のヒドロキシカルボン
酸を得た。 原料マロン酸ジエチル 6−ブロム−1−デカノール 金属ナトリウム 36.7g 37.2g 4.85g 次に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いた他は
製造例14と同様な操作を行ない、酸無水基の40モ
ル%が上記ヒドロキシカルボン酸と反応し、残り
の酸無水基は水と反応してカルボン酸になつた事
が確認された。 このポリマーの酸価は332であつた。 実施例 1 表2に示した接着性被膜形成材を用いて次のテ
ストを行なつた。 (1) 象牙質に対する接着性 (2) 窩洞に対する辺縁封鎖性 (3) リン酸水溶液に対する遮断性 上記に関するテストの評価は以下の方法で行な
つた。 まず以下の処方によりペースト()およびペ
ース()を調整した。 ()ビスグリシジルメタクリレート トリエチレングリコールジメ タクリレート ジメチルパラトルイジン シラン処理石英粉末 (粒径80μm以下)11.0重量部 10.5 〃 0.5 〃 78.0 〃 ()ビスグリシジルメタクリレート トリエチレングリコールジメ タクリレート ベンゾイルパーオキサイド シラン処理石英粉末 (粒径80μm以下)11.0重量部 10.5 〃 1.0 〃 78.0 〃 (1) 象牙質に対する接着性 新鮮抜去牛歯の唇側表面をエメリーペーパー
(#320)で研磨し平滑な象牙質を露出させ、その
研磨面を30秒間水洗した後エアーを吹きつけて表
面を乾燥した。直径4mm孔の空いた厚さ2mmの板
状ワツクスを乾燥表面に両面テープにて取り付け
た。次に表2に示した接着性被膜形成材の(A)液お
よび(B)液を1:1の割合で混合し、板状ワツクス
でかこまれた象牙質表面に塗布し、エアーを吹き
つけエタノールと余剰の接着剤を飛ばした。その
上に前記ペースト()および()を1:1の
割合で混合し充填した。一時間放置後板状ワツク
スを取り除き、37℃の水中に一昼夜浸漬した後引
張り強度を測定した。測定には東洋ボールドウイ
ン社製テンシロンを用い、引張り速度は10mm/分
とした。得られた結果を表2に示した。
【表】
【表】
【表】 (2) 窩洞に対する辺縁封鎖性 ヒト抜去歯の唇面に直径3mm、深さ2mmの窩洞
を形成した。次に表2で示した接着性被膜形成材
と、比較として従来使われている市販品(コーパ
ライト)を用い、各々窩壁にうすく塗布した後、
セメントあるいはアマルガムを充填した。充填1
時間後に37℃の水中に保存し、1日後に4℃と60
℃のフクシン水溶液中に1分間づつ交互に60回、
浸漬するパーコレーシヨンテストを行ない、辺縁
封鎖性を試験した。 その後抜去歯を中央で切断し、窩洞と充填物の
間に色素(フクシン)の侵入があるかどうか調べ
た。 尚上記テストはそれぞれ1種類の実験について
5個のサンプルを使用して再現性を確かめた。そ
の結果上記組成物を用いずに直接アマルガムやセ
メントを充填した場合、あるいはコーパライトを
塗布し、その後アマルガムやセメントを充填した
ものについては、全部のサンプルに色素の侵入が
見られた。 一方、表2のNo.1〜No.20の接着性被膜形成材に
ついては、いずれも色素の侵入が認められず、良
好な結果を得た。 (3) リン酸水溶液に対する遮断性 本発明の接着性被膜形成材がリン酸水溶液を遮
断する能力を有する事を確認するために次の様な
方法を用いてテストを行なつた。 まず、孔径3μのメンブランフイルターを蒸留
水に1時間浸漬したものを取り出し、表面を窒素
ガスを吹きつけて乾燥した。 次に遮断材(裏装材)として市販品のコーパラ
イト、ダイカルならびに実施例1で用いた接着性
被膜形成材を裏面に塗布し、再度エアーを吹きつ
けて溶媒を除去した。リン酸水溶液としては37%
オルトリン酸水溶液を用い、遮断材の上に一滴落
して自然放置した。 上記接着性被膜形成材を透過するリン酸を検知
するため、PH試験紙を上記メンブランフイルター
の下に置き、色が変化した時点を通過時間とし
た。 その結果、遮断材を全く使用しないものはリン
酸水溶液の透過時間が15秒であり、コーパライト
(商品名)を使用したものが1分10秒で、またダ
イカル(商品名)を使用したものは10分以上であ
つた。 これに対して表2で示した本発明の接着性被膜
形成材を該遮断材として使用した結果、リン酸水
溶液の透過時間はいずれも10分以上であつた。 実施例 2 ヒト抜去歯の唇面に直径3mm、深さ2mmの窩洞
を形成した。次に表2で示した接着性被膜形成材
ならびに従来使われているものとしてコーパライ
トを各々窩壁にうすく塗布した後、表3に示す合
金をそれぞれ充填した。充填1時間後に37℃の水
中に保存し、1日後に4℃と60℃のフクシン水溶
液中に1分間づつ交互に60回、浸漬するパーコレ
ーシヨンテストを行ない、辺縁封鎖性を試験し
た。 その後抜去歯を中央で切断し、窩洞と充填物の
間に色素(フクシン)の侵入があるかどうかを調
べた。 尚上記テストはそれぞれ1種類の実験について
5個のサンプルを使用して再現性を確かめた。そ
の結果、上記組成物を用いずに直接表3に示す合
金を充填した場合、あるいはコーパライトを塗布
し、その後表3に示す合金を充填したものについ
ては、全部のサンプルに色素の侵入が見られた。 一方、表2の接着性被膜形成材については、い
ずれも色素の侵入が認められず、良好な封鎖結果
を得た。
【表】 実施例 3 本発明の接着性被膜形成材がリン酸亜鉛セメン
トの未反応リン酸を遮断する能力を有する事を確
認するために、次の様な方法を用いてテストを行
なつた。 まず、孔径3μのメンブランフイルターを蒸留
水に1時間浸漬したものを取り出し、表面をエア
ーを吹きつけて乾燥した。 次に遮断材として表2に示した接着性被膜形成
材を表面に塗布し、再度エアーを吹きつけて溶媒
を除去した。 さらに市販のリン酸亜鉛セメント
としてエリート100を用い、処方に従つて練和し
た後、遮断材の上に盛り、ガラス板を載せ100g
の荷重をかけ放置した。 上記接着性被膜形成材を透過するリン酸を検知
するため、PH試験紙を上記メンブランフイルター
の下に置き、色が変化した時点を通過時間とし
た。 その結果、接着性被膜形成材を全く使用しない
ものはリン酸水溶液の透過時間が15秒であるのに
対して、本発明の接着性被膜形成材を用いたもの
は、いずれも10分以上であつた。 実施例 4 ヒト抜去歯の唇面に直径3mm、深さ2mmの窩洞
を形成し、その窩洞に表2で示したようなA液
と、B液を等量ずつ混合した後、塗布した。塗布
後、エアーで乾燥させ、窩洞にフクシン水溶液を
満たし、37℃、100%温度の恒温室で1日保存し
た。次に、本発明の接着性被膜形成材の耐水性を
調べるために、抜去歯を中央で切断し、フクシン
水溶液が歯質内部まで侵入しているかどうかを調
べた。その結果、ブランクとして本発明の接着性
被膜形成材を塗布しなかつたものでは歯質にフク
シンによる着色が見られたが、本発明の接着性被
膜形成材を塗布したものは、いずれも色素の侵入
が見られず、良好な結果が得られた。 実施例 5 歯頚部に楔状欠損があり、空気あるいは冷水が
触れた場合に痛みを感じる患者に対して表2のNo.
1に示したA液とB液を混合した後楔状欠損部に
塗布したところ、空気及び冷水との接触による痛
みが解消された。 また、実施例1のNo.2の(A)液及び(B)液を混合
し、皮膚切創部に塗布した。その結果、傷口の封
鎖が行なわれ、痛みも柔らいだ。 また、口内炎の患部に塗布した結果、飲食物の
みによつて滲みもなくなつた。 実施例 6 ブレイン・ハート・インフユージヨン(Brain
Heart Infusion)培地(寒天とブレイン・ハー
ト・インフユージヨンから成る培地)でシヤーレ
内に平板を作成した。寒天平板上に培養した下記
の菌の希釈液を400ml滴下して表面に一様に広げ
た後、表面を乾燥させた。 実施例1のNo.1の(A)液及び(B)液をよく混合し、
これにロ紙のデイスクをひたした後、エタノール
を蒸発させて、平板上にのせて、48hr嫌気培養を
行つた。 48時間後、いずれの菌についてもロ紙のふちに
幅が数mmの抗菌帯が生成していた。 使用した菌 Bacteroides gingivalis 381 Actinomyces naeslundii ATCC 12104 Actinomyces viscosus ATCC 15987 Propionibacterium acnes EXC−1 Actinomyces israeli ATCC 12102 実施例 7 表2に示した本発明の接着性被膜形成材の(A)液
及び(B)液を互いに別包装して37℃で保存した。 そして保存安定性は、実施例1と同様な方法を
用い、象牙質に対する接着強度が極端に低下した
時を終点として評価した。 その結果、いずれの接着性被膜形成材も1年以
上の保存後の接着強度は1〜4Kg/cm2の低下しか
見られなかつた。 比較例 1 カルボキシル基及び疎水性基を有する重合体と
して製造例2のスチレン−無水マレイン酸共重合
体の加水分解物の10%エタノール溶液(A)と、表4
に示した水酸化カルシウム以外の架橋剤のエタノ
ール溶液PHを等量ずつ混合した際の象牙質に対す
る接着性について実施例1と同様な方法で測定し
た。 その結果を表4に示した。
【表】
【表】 比較例2 (被膜の耐水性) カルボキシル基と疎水性基を有する重合体とし
て製造例2のスチレン−無水マレイン酸共重合体
加水分解物の10%エタノール溶液(A)と、表5に示
した水酸化物ならびに金属酸化物または、カルシ
ウム化合物の6%エタノール溶液(B)を調製した。 次に、新鮮抜去牛歯の唇側表面をエメリーペー
パー(#320)で研磨し平滑な象牙質を露出させ、
その研磨面を30秒間水洗した後エアーを吹きつけ
て表面を乾燥した。引き続き前記(A)液と(B)液を
1:1の割合で混合し象牙質表面に塗布した後、
エアーを吹きかけて溶媒を飛ばした。 この被膜で被われた牛歯は、37℃の蒸留水中で
保存し、10分毎に被膜の状態を観察した。 結果は表5に示した。 比較例 3 疎水性基を有しない重合体として表6に示した
重合体のエタノール溶液(A)と、水酸化カルシウム
の6%エタノール溶液(B)を用い、実施例1と同様
な方法で象牙質に対する接着強度の測定を行なつ
た。 結果は表6に示した。
【表】
【表】
【表】
【表】

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 (i) カルボキシル基又はその無水基と疎水性
    基とを有する重合体 及び (ii) 水酸化カルシウム とを主成分とし、少くとも該重合体は有機溶媒に
    溶解又は懸濁し、被膜形成時に両者を混合する形
    態からなることを特徴とする接着性被膜形成材。
JP61070902A 1986-03-31 1986-03-31 接着性被膜形成材 Granted JPS62227957A (ja)

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JPS4925027A (ja) * 1972-06-29 1974-03-06
JPS50109229A (ja) * 1974-02-04 1975-08-28
JPS61188476A (ja) * 1985-02-14 1986-08-22 Idemitsu Petrochem Co Ltd 接着剤

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