JPH05171407A - Ni−Ti系金属間化合物を被覆した鋼材の製造方法 - Google Patents
Ni−Ti系金属間化合物を被覆した鋼材の製造方法Info
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- JPH05171407A JPH05171407A JP33890191A JP33890191A JPH05171407A JP H05171407 A JPH05171407 A JP H05171407A JP 33890191 A JP33890191 A JP 33890191A JP 33890191 A JP33890191 A JP 33890191A JP H05171407 A JPH05171407 A JP H05171407A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、Ni−Ti系金属間化合物を被覆
した、耐塩性と常温加工性の優れたコンクリート補強用
鋼材の製造方法を提供する。 【構成】 25重量%以上85重量%以下のNi粉末と
残部がTi粉末からなる金属混合粉末中に鋼材を保持
し、あるいは該金属混合粉末を有機高分子のアルコール
溶液でペースト状にして鋼材表面に塗布し、鋼が酸化し
ない雰囲気中で960℃以上1200℃以下に加熱す
る。 【効果】 Ni−Ti系金属間化合物を被覆した、耐塩
性と常温加工性に優たコンクリート補強用鋼材の工業的
な製造が可能になった。
した、耐塩性と常温加工性の優れたコンクリート補強用
鋼材の製造方法を提供する。 【構成】 25重量%以上85重量%以下のNi粉末と
残部がTi粉末からなる金属混合粉末中に鋼材を保持
し、あるいは該金属混合粉末を有機高分子のアルコール
溶液でペースト状にして鋼材表面に塗布し、鋼が酸化し
ない雰囲気中で960℃以上1200℃以下に加熱す
る。 【効果】 Ni−Ti系金属間化合物を被覆した、耐塩
性と常温加工性に優たコンクリート補強用鋼材の工業的
な製造が可能になった。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンクリート補強材で
ある鉄筋またはPC鋼材の製造方法に関するものであ
る。コンクリート中は通常pHが10を超える強アルカ
リ環境であるために、大気中では腐食する炭素鋼も腐食
しない。しかし、海浜地区に建造されるコンクリート構
造物や、混練する砂に未洗浄の海砂を使用したり、混練
用の水に海水を使用したコンクリート構造物では、pH
が10を超える強アルカリであってもCl- イオンが存
在するために、鋼材は腐食する。その結果、鋼材は断面
積が減少して強度が低下したり、腐食で発生した水素が
鋼中に侵入して脆化する危険が生じる。また、腐食生成
物の体積は鋼よりも大きいためコンクリートにひび割れ
が発生し、腐食がますます促進されてコンクリート構造
物の寿命が著しく低下する。
ある鉄筋またはPC鋼材の製造方法に関するものであ
る。コンクリート中は通常pHが10を超える強アルカ
リ環境であるために、大気中では腐食する炭素鋼も腐食
しない。しかし、海浜地区に建造されるコンクリート構
造物や、混練する砂に未洗浄の海砂を使用したり、混練
用の水に海水を使用したコンクリート構造物では、pH
が10を超える強アルカリであってもCl- イオンが存
在するために、鋼材は腐食する。その結果、鋼材は断面
積が減少して強度が低下したり、腐食で発生した水素が
鋼中に侵入して脆化する危険が生じる。また、腐食生成
物の体積は鋼よりも大きいためコンクリートにひび割れ
が発生し、腐食がますます促進されてコンクリート構造
物の寿命が著しく低下する。
【0002】本発明は、このようなCl- イオンを含有
するコンクリート構造物の補強材として用いられる、い
わゆる耐塩性の優れた鋼材の製造方法を提供するもので
ある。
するコンクリート構造物の補強材として用いられる、い
わゆる耐塩性の優れた鋼材の製造方法を提供するもので
ある。
【0003】
【従来の技術】従来、コンクリートには容易に採取可能
な川砂を使用し、河川水、工業用水あるいは上水を使用
して混練するのが通常であった。しかるに、コンクリー
ト構造物の飛躍的な増加の結果、川砂の採取も容易でな
くなり、海砂の使用が余儀なくされてきた。海砂を使用
する場合、十分な水洗を行って塩分を除去する必要があ
るため、作業工程が煩雑になり、工期が長くなるという
欠点が生じる。また、海洋構造物の場合、コンクリート
中へのCl- イオンの侵入が防止できないため、補強用
の鋼材の腐食とその結果のコンクリートの寿命低下も避
けられなかった。
な川砂を使用し、河川水、工業用水あるいは上水を使用
して混練するのが通常であった。しかるに、コンクリー
ト構造物の飛躍的な増加の結果、川砂の採取も容易でな
くなり、海砂の使用が余儀なくされてきた。海砂を使用
する場合、十分な水洗を行って塩分を除去する必要があ
るため、作業工程が煩雑になり、工期が長くなるという
欠点が生じる。また、海洋構造物の場合、コンクリート
中へのCl- イオンの侵入が防止できないため、補強用
の鋼材の腐食とその結果のコンクリートの寿命低下も避
けられなかった。
【0004】これらの欠点は、いずれも補強用の鋼材の
腐食が原因である。従って、Cl- イオンを含む強アル
カリ環境での耐食性、すなわち耐塩性に優れた補強用鋼
材があれば解決するのである。従来、耐塩性が必要なコ
ンクリート構造物用補強材には、エポキシ塗装を施した
塗装鉄筋や、Znめっき鉄筋、ステンレス鋼鉄筋が使用
されてきた。しかし、塗装鉄筋は溶接がそのままではで
きないだけではなく、曲げ加工部の塗膜が簡単に剥離し
て、そこから腐食が発生するために、必ずしも期待した
効果が得られなかった。Znめっき鉄筋、ステンレス鋼
鉄筋は、相応に耐塩性があり効果も期待できるが、溶接
が困難でかつ高価格であるという欠点があった。
腐食が原因である。従って、Cl- イオンを含む強アル
カリ環境での耐食性、すなわち耐塩性に優れた補強用鋼
材があれば解決するのである。従来、耐塩性が必要なコ
ンクリート構造物用補強材には、エポキシ塗装を施した
塗装鉄筋や、Znめっき鉄筋、ステンレス鋼鉄筋が使用
されてきた。しかし、塗装鉄筋は溶接がそのままではで
きないだけではなく、曲げ加工部の塗膜が簡単に剥離し
て、そこから腐食が発生するために、必ずしも期待した
効果が得られなかった。Znめっき鉄筋、ステンレス鋼
鉄筋は、相応に耐塩性があり効果も期待できるが、溶接
が困難でかつ高価格であるという欠点があった。
【0005】また、本出願人はAlを多量添加した鋼の
耐塩性が非常に優れていることを見出し、Alを7〜2
0重量%含む鋼材を発明した(特開昭64−79346
号公報)。さらに、本発明者らは先に耐塩性を要求され
るのは表層部分のみであることに着目して、表層部に5
〜15重量%のAl固溶層を被覆した鋼材を発明した
(特願平2−138400号)。これらの鋼材は、延性
および靱性に優れ、勿論高pH環境での耐塩性にも優れ
ていることが確認された。しかし、このようなAl含有
量の高い鋼は、冷間での加工性が著しく劣るため、鉄筋
などのコンクリート補強用鋼材としては使用できなかっ
た。
耐塩性が非常に優れていることを見出し、Alを7〜2
0重量%含む鋼材を発明した(特開昭64−79346
号公報)。さらに、本発明者らは先に耐塩性を要求され
るのは表層部分のみであることに着目して、表層部に5
〜15重量%のAl固溶層を被覆した鋼材を発明した
(特願平2−138400号)。これらの鋼材は、延性
および靱性に優れ、勿論高pH環境での耐塩性にも優れ
ていることが確認された。しかし、このようなAl含有
量の高い鋼は、冷間での加工性が著しく劣るため、鉄筋
などのコンクリート補強用鋼材としては使用できなかっ
た。
【0006】これに対して、本発明者らは、Ni−Ti
系金属間化合物が強アルカリ環境での耐塩性に優れ、か
つ常温での加工性が良好であることを見出し、表層に金
属Tiないし金属Niを含むNi−Ti系金属間化合物
層を被覆したコンクリート構造物の補強用鋼材を発明し
た(特願平2−130632号)。しかし、安価な量産
方法がなかったため、耐塩性が良好なだけでなく、曲げ
性、スポット溶接性が良好で取扱い上の疵も付きにくい
などコンクリート構造物の補強用鋼材として優れた特性
を示したが、実際には普及しなかった。
系金属間化合物が強アルカリ環境での耐塩性に優れ、か
つ常温での加工性が良好であることを見出し、表層に金
属Tiないし金属Niを含むNi−Ti系金属間化合物
層を被覆したコンクリート構造物の補強用鋼材を発明し
た(特願平2−130632号)。しかし、安価な量産
方法がなかったため、耐塩性が良好なだけでなく、曲げ
性、スポット溶接性が良好で取扱い上の疵も付きにくい
などコンクリート構造物の補強用鋼材として優れた特性
を示したが、実際には普及しなかった。
【0007】これ以外にも鋼材の耐食性を向上させる方
法には、カロライジングやクロマイジングなどの表面拡
散浸透処理、Cr、Niなどの金属めっきおよび表層合
金化処理、PVDやCVDによるAIN、TiN、Ti
Cなどのセラミックスコーティングがあり、耐塩性の必
要なコンクリート構造物の補強用鋼材への適用も可能と
思われる。しかし、これらの方法はいずれも特殊な装置
や工程が必要で、鉄筋などの量産鋼構造物材の表面処理
への適用はコスト的に不可能である。
法には、カロライジングやクロマイジングなどの表面拡
散浸透処理、Cr、Niなどの金属めっきおよび表層合
金化処理、PVDやCVDによるAIN、TiN、Ti
Cなどのセラミックスコーティングがあり、耐塩性の必
要なコンクリート構造物の補強用鋼材への適用も可能と
思われる。しかし、これらの方法はいずれも特殊な装置
や工程が必要で、鉄筋などの量産鋼構造物材の表面処理
への適用はコスト的に不可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、強アルカリ
環境での耐塩性と加工性に優れたNi−Ti系金属間化
合物あるいは金属Tiまたは金属Niを含むNi−Ti
系金属間化合物層を被覆したコンクリート構造物の補強
用鋼材の安価な製造方法を提供することを目的とする。
環境での耐塩性と加工性に優れたNi−Ti系金属間化
合物あるいは金属Tiまたは金属Niを含むNi−Ti
系金属間化合物層を被覆したコンクリート構造物の補強
用鋼材の安価な製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】Ni−Ti系金属間化合
物は、耐塩性は優れているものの、熱間や冷間での延性
や靱性が従来の鋼製の鉄筋に比べて低く、加工性が著し
く劣るため、Ni−Ti系金属間化合物によるコンクリ
ート構造物の補強は施工だけでなく構造物としても実用
が不可能である。本発明者らは、耐塩性は表面だけの問
題であることに注目して、Ni−Ti系金属間化合物を
鋼材の表面に被覆してコンクリート構造物の補強材とす
ることを指向した。そして、鋼材表面に金属間化合物を
短時間で被覆する方法として、金属間化合物の共晶を利
用することを発想し、本発明を完成した。
物は、耐塩性は優れているものの、熱間や冷間での延性
や靱性が従来の鋼製の鉄筋に比べて低く、加工性が著し
く劣るため、Ni−Ti系金属間化合物によるコンクリ
ート構造物の補強は施工だけでなく構造物としても実用
が不可能である。本発明者らは、耐塩性は表面だけの問
題であることに注目して、Ni−Ti系金属間化合物を
鋼材の表面に被覆してコンクリート構造物の補強材とす
ることを指向した。そして、鋼材表面に金属間化合物を
短時間で被覆する方法として、金属間化合物の共晶を利
用することを発想し、本発明を完成した。
【0010】以下に、共晶を利用してNi−Ti系金属
間化合物を鋼材表面へ被覆する方法について説明する。
Ni粉末の割合が25重量%以上85重量%以下で残部
がTi粉末からなる金属混合粉末中に鋼材を埋め込み、
鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で加熱した。温度の上
昇に伴って、NiとTiの粉末は焼結を起こした。温度
が960℃以上になると、NiとTiの相互拡散が一層
進行して共晶組成となった部位が溶融し始めた。この溶
融した金属間化合物は、NiおよびTiの金属粉末だけ
でなく鋼材表面にも当然濡れることが考えられた。Ni
やTiの金属粉末に濡れた部分では相互拡散速度が急激
に上昇するため、急速に共晶に達して溶融部分が増加す
るともの思われる。一方、鋼材表面では、濡れた共晶金
属間化合物が面方向に拡大し、鋼材全面を覆うこととな
る。この結果、鋼材表面にNi−Ti系金属間化合物が
被覆されるものと推定される。
間化合物を鋼材表面へ被覆する方法について説明する。
Ni粉末の割合が25重量%以上85重量%以下で残部
がTi粉末からなる金属混合粉末中に鋼材を埋め込み、
鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で加熱した。温度の上
昇に伴って、NiとTiの粉末は焼結を起こした。温度
が960℃以上になると、NiとTiの相互拡散が一層
進行して共晶組成となった部位が溶融し始めた。この溶
融した金属間化合物は、NiおよびTiの金属粉末だけ
でなく鋼材表面にも当然濡れることが考えられた。Ni
やTiの金属粉末に濡れた部分では相互拡散速度が急激
に上昇するため、急速に共晶に達して溶融部分が増加す
るともの思われる。一方、鋼材表面では、濡れた共晶金
属間化合物が面方向に拡大し、鋼材全面を覆うこととな
る。この結果、鋼材表面にNi−Ti系金属間化合物が
被覆されるものと推定される。
【0011】また、NiとTiの金属混合粉末中で鋼材
のみを加熱することで、周辺の混合粉末のみが焼結し、
さらに共晶溶融することとなるので、処理の連続化が可
能となる。この場合、鋼材の加熱は高周波加熱または直
接通電などが利用できる。本発明においては、金属混合
粉末を鋼材の周りに積極的に保持させる手段も採り得
る。すなわち、NiとTiの金属混合粉末中に鋼材を埋
め込まず、同じNiとTiの混合粉末をコロジオンなど
の有機高分子のアルコール溶液でペースト状にして鋼材
表面に塗布することも可能である。この場合、バインダ
ーの役割をした有機高分子物質および溶剤のアルコール
は加熱に伴って蒸発あるいは分解して飛散したが、同時
にNiとTiの粉末の焼結が起るため鋼材からの剥離は
なかった。この金属粉末をペースト状にして塗布する方
法では、加熱温度によらず塗布する厚さで生成する被覆
皮膜の厚さを制御することが可能であるという利点があ
る。
のみを加熱することで、周辺の混合粉末のみが焼結し、
さらに共晶溶融することとなるので、処理の連続化が可
能となる。この場合、鋼材の加熱は高周波加熱または直
接通電などが利用できる。本発明においては、金属混合
粉末を鋼材の周りに積極的に保持させる手段も採り得
る。すなわち、NiとTiの金属混合粉末中に鋼材を埋
め込まず、同じNiとTiの混合粉末をコロジオンなど
の有機高分子のアルコール溶液でペースト状にして鋼材
表面に塗布することも可能である。この場合、バインダ
ーの役割をした有機高分子物質および溶剤のアルコール
は加熱に伴って蒸発あるいは分解して飛散したが、同時
にNiとTiの粉末の焼結が起るため鋼材からの剥離は
なかった。この金属粉末をペースト状にして塗布する方
法では、加熱温度によらず塗布する厚さで生成する被覆
皮膜の厚さを制御することが可能であるという利点があ
る。
【0012】さらに本発明では、鋼材を事前に960℃
以上に加熱保持し、NiとTiの金属混合粉末中を通過
させる方法も採り得る。この方法によって、処理の連続
化および量産化が可能である。いずれの方法において
も、NiとTiの相互拡散が進行し共晶組成となって共
晶温度以上で溶融して鋼材に濡れることで、Ni−Ti
系金属間化合物が鋼材表面に被覆されることとなるので
ある。また、このように被覆が液相状態で行われるた
め、皮膜成分の一部が鋼材側に拡散浸透する。この結
果、皮膜と母材である鋼材との密着性が非常に向上する
こととなる。
以上に加熱保持し、NiとTiの金属混合粉末中を通過
させる方法も採り得る。この方法によって、処理の連続
化および量産化が可能である。いずれの方法において
も、NiとTiの相互拡散が進行し共晶組成となって共
晶温度以上で溶融して鋼材に濡れることで、Ni−Ti
系金属間化合物が鋼材表面に被覆されることとなるので
ある。また、このように被覆が液相状態で行われるた
め、皮膜成分の一部が鋼材側に拡散浸透する。この結
果、皮膜と母材である鋼材との密着性が非常に向上する
こととなる。
【0013】本発明によって生成するNi−Ti系金属
間化合物の皮膜は、原理的には共晶組成の金属間化合物
となるが、現実には共晶に至らない金属間化合物や金属
状のNiやTiが含まれる場合がある。この理由は、必
ずしも明確ではないが、次のように考えている。すなわ
ち、溶融した金属間化合物は鋼材以外にも当然NiやT
iの金属に濡れるし、共晶に至らない金属間化合物にも
濡れる。従って、融液状の金属間化合物を媒体としてこ
れらの金属Niや金属Tiおよび共晶組成ではない金属
間化合物が鋼材表面に残留することが十分に考えられる
のである。
間化合物の皮膜は、原理的には共晶組成の金属間化合物
となるが、現実には共晶に至らない金属間化合物や金属
状のNiやTiが含まれる場合がある。この理由は、必
ずしも明確ではないが、次のように考えている。すなわ
ち、溶融した金属間化合物は鋼材以外にも当然NiやT
iの金属に濡れるし、共晶に至らない金属間化合物にも
濡れる。従って、融液状の金属間化合物を媒体としてこ
れらの金属Niや金属Tiおよび共晶組成ではない金属
間化合物が鋼材表面に残留することが十分に考えられる
のである。
【0014】ところが、これらの金属Niや金属Tiお
よび共晶組成ではない金属間化合物もまた耐塩性は極め
て優れている。従って、本発明による皮膜でも耐塩性の
点からは共晶組成の金属間化合物に被覆されたものと全
く同様に取扱い得るものと考えられる。次に、本発明条
件の限定理由を説明する。
よび共晶組成ではない金属間化合物もまた耐塩性は極め
て優れている。従って、本発明による皮膜でも耐塩性の
点からは共晶組成の金属間化合物に被覆されたものと全
く同様に取扱い得るものと考えられる。次に、本発明条
件の限定理由を説明する。
【0015】NiとTiの混合粉末の組成は、Ni粉末
の割合が25重量%未満あるいは85重量%を超える
と、鋼材表面で両金属が焼結してNi−Ti系金属間化
合物が生成するが、共晶組成のNi−Ti系金属間化合
物の生成が困難となり、表面への被覆ができないため、
Ni粉末の割合は25重量%を下限、85重量%を上限
とした。
の割合が25重量%未満あるいは85重量%を超える
と、鋼材表面で両金属が焼結してNi−Ti系金属間化
合物が生成するが、共晶組成のNi−Ti系金属間化合
物の生成が困難となり、表面への被覆ができないため、
Ni粉末の割合は25重量%を下限、85重量%を上限
とした。
【0016】加熱温度は、960℃未満ではNi−Ti
系共晶金属間化合物の融点以下であり、本発明の狙いと
する融液による金属間化合物の被覆を達成できないた
め、960℃を下限とした。また、1200℃を超える
とNi−Ti系共晶金属間化合物の粘度が著しく低下し
て鋼材への付着が不十分となる上に、鋼材そのものの靱
性が劣化してコンクリート構造物の補強材としての使用
が不可能となるため、1200℃を上限とした。
系共晶金属間化合物の融点以下であり、本発明の狙いと
する融液による金属間化合物の被覆を達成できないた
め、960℃を下限とした。また、1200℃を超える
とNi−Ti系共晶金属間化合物の粘度が著しく低下し
て鋼材への付着が不十分となる上に、鋼材そのものの靱
性が劣化してコンクリート構造物の補強材としての使用
が不可能となるため、1200℃を上限とした。
【0017】加熱時間は、下限温度の960℃でも極め
て短時間で鋼材表面への金属間化合物の被覆が可能であ
るが、5sec未満では被覆されない部分が残留するお
それがあるので5secを下限とした。また、長時間の
処理を行っても品質的、工業的な利点はないため、1h
rを上限とした。加熱雰囲気は、鋼の酸化する雰囲気で
はTiが急激に酸化してNi−Ti系金属間化合物が生
成しないだけでなく、鋼材も酸化して、たとえNi−T
i系共晶金属間化合物が生成して溶融しても鋼材表面に
濡れず付着しないため、鋼の酸化しない非酸化性雰囲気
に限定した。鋼の酸化しない雰囲気でもTiは酸化する
ことがあるが、この場合は酸化皮膜が非常に薄く、焼結
によってNiと接触すると金属間化合物の生成反応が進
行するので、必ずしもTiの酸化しない雰囲気にする必
要はない。
て短時間で鋼材表面への金属間化合物の被覆が可能であ
るが、5sec未満では被覆されない部分が残留するお
それがあるので5secを下限とした。また、長時間の
処理を行っても品質的、工業的な利点はないため、1h
rを上限とした。加熱雰囲気は、鋼の酸化する雰囲気で
はTiが急激に酸化してNi−Ti系金属間化合物が生
成しないだけでなく、鋼材も酸化して、たとえNi−T
i系共晶金属間化合物が生成して溶融しても鋼材表面に
濡れず付着しないため、鋼の酸化しない非酸化性雰囲気
に限定した。鋼の酸化しない雰囲気でもTiは酸化する
ことがあるが、この場合は酸化皮膜が非常に薄く、焼結
によってNiと接触すると金属間化合物の生成反応が進
行するので、必ずしもTiの酸化しない雰囲気にする必
要はない。
【0018】NiとTiの混合粉末をペースト状にして
鋼材表面に塗布する方法においてバインダーの役割をす
る有機高分子物質は、一般的に非酸化性雰囲気中での加
熱で蒸発あるいは分解して飛散するものであれば、組成
は特に限定されない。また溶剤のアルコールも、非酸化
性雰囲気中で加熱すると蒸発あるいは分解して飛散する
ので、バインダーの役割をする有機高分子物質との関係
で自由に選択することが可能である。
鋼材表面に塗布する方法においてバインダーの役割をす
る有機高分子物質は、一般的に非酸化性雰囲気中での加
熱で蒸発あるいは分解して飛散するものであれば、組成
は特に限定されない。また溶剤のアルコールも、非酸化
性雰囲気中で加熱すると蒸発あるいは分解して飛散する
ので、バインダーの役割をする有機高分子物質との関係
で自由に選択することが可能である。
【0019】
【作用】本発明は、金属粉末を用いて表面にNi−Ti
系金属間化合物を被覆するものである。しかし、被覆に
至る過程では溶融したNi−Ti系金属間化合物が鋼材
に濡れる現象が起きている。すなわち、固相粉末を処理
しながら実質的には液相での処理を行っていることと同
じと考えられる。この結果、短時間の処理でかつ密着性
のよい皮膜を鋼材に被覆することが可能となった。
系金属間化合物を被覆するものである。しかし、被覆に
至る過程では溶融したNi−Ti系金属間化合物が鋼材
に濡れる現象が起きている。すなわち、固相粉末を処理
しながら実質的には液相での処理を行っていることと同
じと考えられる。この結果、短時間の処理でかつ密着性
のよい皮膜を鋼材に被覆することが可能となった。
【0020】また生成した皮膜は、Ni−Ti系の共晶
金属間化合物を主体に他のNi−Ti系金属間化合物、
金属TiやNiの混合層からなる皮膜であり、Cl- イ
オンを含む強アルカリ環境での耐食性、すなわち耐塩性
に優れている。また、皮膜成分の主としてNiが鋼側に
も拡散浸透しているため、鋼材との密着性も優れてい
る。この結果、本発明による表面被覆鋼材はコンクリー
ト中での耐塩性が良好である。
金属間化合物を主体に他のNi−Ti系金属間化合物、
金属TiやNiの混合層からなる皮膜であり、Cl- イ
オンを含む強アルカリ環境での耐食性、すなわち耐塩性
に優れている。また、皮膜成分の主としてNiが鋼側に
も拡散浸透しているため、鋼材との密着性も優れてい
る。この結果、本発明による表面被覆鋼材はコンクリー
ト中での耐塩性が良好である。
【0021】
【実施例】熱延後酸洗してスケールを除去した直径20
mmの鉄筋コンクリート用棒鋼JIS SD30BをN
iとTiの混合粉末中に埋め込み、種々の温度に加熱し
て表面にNi−Ti系金属間化合物を被覆させた。表1
に混合粉末中のTiおよびNiの比、粉末処理方法、加
熱温度、加熱時間および加熱方法を示した。本発明例
5、6は、NiとTiの混合粉末をコロジオンのアルコ
ール溶液によってペースト状にし、鉄筋コンクリート用
棒鋼に塗布した。
mmの鉄筋コンクリート用棒鋼JIS SD30BをN
iとTiの混合粉末中に埋め込み、種々の温度に加熱し
て表面にNi−Ti系金属間化合物を被覆させた。表1
に混合粉末中のTiおよびNiの比、粉末処理方法、加
熱温度、加熱時間および加熱方法を示した。本発明例
5、6は、NiとTiの混合粉末をコロジオンのアルコ
ール溶液によってペースト状にし、鉄筋コンクリート用
棒鋼に塗布した。
【0022】表2には、これらの方法で製造した被覆鋼
材の被覆皮膜の厚さと主たる構成物および被覆鋼材の品
質である耐塩性と曲げ性の結果を示した。なお、被覆皮
膜の厚さは、任意部位5個所を光学顕微鏡で測定し、平
均値で示した。主たる構成物は、表面の反射X線回折で
認められたピークから判断した。しかし、一部に解析で
きないピークが認められ、表中に?を印した。耐塩性試
験は、JIS A6205に規定されたオートクレーブ
装置によるコンクリート中の鉄筋の腐食促進試験法を適
用し、Cl- イオン添加量を0.8%とした。評価は、
錆発生面積率で行った。また、鉄筋は施工時に曲げ加工
がなされるため、曲げ加工で皮膜に剥離が生じないこと
が要求される。そこで、2D−180℃の曲げ試験を行
い、曲げ外面のひび割れ発生の有無によって皮膜の加工
性を評価した。
材の被覆皮膜の厚さと主たる構成物および被覆鋼材の品
質である耐塩性と曲げ性の結果を示した。なお、被覆皮
膜の厚さは、任意部位5個所を光学顕微鏡で測定し、平
均値で示した。主たる構成物は、表面の反射X線回折で
認められたピークから判断した。しかし、一部に解析で
きないピークが認められ、表中に?を印した。耐塩性試
験は、JIS A6205に規定されたオートクレーブ
装置によるコンクリート中の鉄筋の腐食促進試験法を適
用し、Cl- イオン添加量を0.8%とした。評価は、
錆発生面積率で行った。また、鉄筋は施工時に曲げ加工
がなされるため、曲げ加工で皮膜に剥離が生じないこと
が要求される。そこで、2D−180℃の曲げ試験を行
い、曲げ外面のひび割れ発生の有無によって皮膜の加工
性を評価した。
【0023】表2に示したように、1〜8の本発明例で
はいずれも短時間の熱処理で密着性がよく、オートクレ
ーブ試験での錆の発生がないなどコンクリート中での耐
塩性に優れ、また2D−180°曲げ試験でも剥離のな
い被覆処理ができた。また、本発明例である1および2
は真空加熱炉で加熱処理し、3および4はアルゴン雰囲
気中で高周波加熱により処理したものである。これらの
間には、特性上の差異がほとんど認められず、鋼の酸化
しない非酸化性雰囲気であれば加熱雰囲気の影響はない
ことがわかった。
はいずれも短時間の熱処理で密着性がよく、オートクレ
ーブ試験での錆の発生がないなどコンクリート中での耐
塩性に優れ、また2D−180°曲げ試験でも剥離のな
い被覆処理ができた。また、本発明例である1および2
は真空加熱炉で加熱処理し、3および4はアルゴン雰囲
気中で高周波加熱により処理したものである。これらの
間には、特性上の差異がほとんど認められず、鋼の酸化
しない非酸化性雰囲気であれば加熱雰囲気の影響はない
ことがわかった。
【0024】一方、比較例9の方法では処理温度が低い
ためNi−Ti系金属間化合物が溶融せず、皮膜はでき
なかった。この条件では、焼結により金属粉末が付着し
たが、多孔質で接合力は弱く手に触れるだけで落下し
た。比較例10は混合粉末のNiの比率が高すぎるた
め、融点が低い共晶のNi−Ti系金属間化合物が生成
せず、やはり皮膜はできなかった。この条件でも、焼結
により金属粉末が付着したが、比較例9と同様に多孔質
で接合力は弱かった。
ためNi−Ti系金属間化合物が溶融せず、皮膜はでき
なかった。この条件では、焼結により金属粉末が付着し
たが、多孔質で接合力は弱く手に触れるだけで落下し
た。比較例10は混合粉末のNiの比率が高すぎるた
め、融点が低い共晶のNi−Ti系金属間化合物が生成
せず、やはり皮膜はできなかった。この条件でも、焼結
により金属粉末が付着したが、比較例9と同様に多孔質
で接合力は弱かった。
【0025】また、比較のために実施した11の溶融メ
ッキ法によるNi−Ti系金属間化合物の被覆鋼材は、
非加工部の耐塩性は本発明による鋼材と同様に優れてい
たが、曲げ試験で皮膜に剥離が見られ、曲げ加工部で現
行の普通鉄筋と同様の錆が発生した。また、現行材であ
る12のZnメッキ鉄筋および13の普通鉄筋は、従来
の知見通りオートクレーブ試験で錆が発生し、耐塩性に
劣ることが再現された。
ッキ法によるNi−Ti系金属間化合物の被覆鋼材は、
非加工部の耐塩性は本発明による鋼材と同様に優れてい
たが、曲げ試験で皮膜に剥離が見られ、曲げ加工部で現
行の普通鉄筋と同様の錆が発生した。また、現行材であ
る12のZnメッキ鉄筋および13の普通鉄筋は、従来
の知見通りオートクレーブ試験で錆が発生し、耐塩性に
劣ることが再現された。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】以上に示したように、本発明によって表
面をNi−Ti系金属間化合物で被覆することで極めて
耐塩性に優れ、かつ加工性も良好なコンクリート補強用
鋼材の製造が可能となる。この結果、海洋構造物や海浜
地区の建造物で頻発している補強用鋼材の腐食によるコ
ンクリートの崩壊事故を未然に防止できるだけでなく、
コンクリートに安価で豊富な海砂を使用することが可能
となるなど、工業的、社会的な利益は極めて大である。
面をNi−Ti系金属間化合物で被覆することで極めて
耐塩性に優れ、かつ加工性も良好なコンクリート補強用
鋼材の製造が可能となる。この結果、海洋構造物や海浜
地区の建造物で頻発している補強用鋼材の腐食によるコ
ンクリートの崩壊事故を未然に防止できるだけでなく、
コンクリートに安価で豊富な海砂を使用することが可能
となるなど、工業的、社会的な利益は極めて大である。
【0029】また、本発明は鉄筋棒鋼に限定されず、鋼
板や鋼矢板などの条鋼製品、鋼管などにも全く同様に適
用できる。
板や鋼矢板などの条鋼製品、鋼管などにも全く同様に適
用できる。
フロントページの続き (72)発明者 渡辺 隆治 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内
Claims (4)
- 【請求項1】 25重量%以上85重量%以下のNi粉
末と残部がTi粉末からなる金属混合粉末を鋼材の周り
に保持し、鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で960℃
以上1200℃以下の温度で5sec以上1hr以下の
時間加熱することを特徴とするNi−Ti系金属間化合
物を被覆した鋼材の製造方法。 - 【請求項2】 25重量%以上85重量%以下のNi粉
末と残部がTi粉末からなる金属混合粉末中に鋼材を埋
め込み、鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で高周波加熱
あるいは通電加熱によって鋼材を960℃以上1200
℃以下の温度で5sec以上1hr以下の時間加熱する
ことを特徴とするNi−Ti系金属間化合物を被覆した
鋼材の製造方法。 - 【請求項3】 25重量%以上85重量%以下のNi粉
末と残部がTi粉末からなる金属混合粉末を有機高分子
のアルコール溶液でペースト状にして鋼材表面に塗布
し、鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で960℃以上1
200℃以下の温度で5sec以上1hr以下の時間加
熱することを特徴とするNi−Ti系金属間化合物を被
覆した鋼材の製造方法。 - 【請求項4】 鋼の酸化しない非酸化性雰囲気中で96
0℃以上1200℃以下に加熱保持した鋼材を、25重
量%以上85重量%以下のNi粉末と残部がTi粉末か
らなる金属混合粉末中を5sec以上1hr以下の時間
保定通過させることを特徴とするNi−Ti系金属間化
合物を被覆した鋼材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33890191A JPH05171407A (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | Ni−Ti系金属間化合物を被覆した鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33890191A JPH05171407A (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | Ni−Ti系金属間化合物を被覆した鋼材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05171407A true JPH05171407A (ja) | 1993-07-09 |
Family
ID=18322418
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33890191A Withdrawn JPH05171407A (ja) | 1991-12-20 | 1991-12-20 | Ni−Ti系金属間化合物を被覆した鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05171407A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004070077A1 (ja) * | 2003-02-10 | 2004-08-19 | Japan Science And Technology Agency | 耐高温腐食性皮膜の形成方法 |
-
1991
- 1991-12-20 JP JP33890191A patent/JPH05171407A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2004070077A1 (ja) * | 2003-02-10 | 2004-08-19 | Japan Science And Technology Agency | 耐高温腐食性皮膜の形成方法 |
US7378134B2 (en) | 2003-02-10 | 2008-05-27 | Japan Science And Technology Agency | Method of forming high temperature corrosion resistant film |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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