JP5495921B2 - 溶融亜鉛系めっき高張力鋼板の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、Mnを比較的多量に含有する高張力鋼板用の鋼種をめっき原板に用いて、溶融Zn−Al−Mg系めっきを施した鋼板であって、耐溶融金属脆化割れ性およびめっき密着性を同時に改善したものを製造する技術に関する。
亜鉛系めっき鋼板は種々の用途で広く用いられているが、亜鉛系めっき鋼板に溶接を施すと、溶接熱影響部に割れが発生して問題となることがある。この現象は一般に「溶融金属脆化割れ」と呼ばれ、溶融しためっき成分が母材の粒界に作用して脆性的な破壊(粒界破壊)を引き起こすものと考えられている。
亜鉛系めっき鋼板の中でも、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は耐食性に優れることから建材をはじめとする種々の耐食用途において使用されている。最近では従来一般的な亜鉛めっき鋼板の代替としても溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を適用することが多くなってきた。ただし溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、従来の溶融亜鉛めっき鋼板よりも溶融金属脆化割れを生じやすい傾向にある。
耐溶融金属脆化割れ性を改善する手法として、Bを含有するめっき原板を適用することが有効であることが知られている(特許文献1)。
特開2003−3238号公報 特開2006−97063号公報
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、その高耐食性を活かして種々の用途で適用されるようになり、高張力鋼板の用途においても当該合金めっき鋼板のニーズが増えてきた。特許文献2には比較的多量(2%前後)のMnを含有する高張力鋼板用の鋼種をめっき原板として溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を製造する技術が開示されている。ただし、耐溶融金属脆化割れ性については特に配慮されておらず、これを溶接用途に使用した場合には溶融金属脆化割れが問題となる場合がありうる。
高張力鋼板用の鋼種をめっき原板とする溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板において、耐溶融金属脆化割れ性を改善するためには、やはりBを添加した鋼をめっき原板に使用することが有効である。しかしながら、比較的高Mn系の高強度鋼種においてBを添加したものをめっき原板に使用すると、溶融Zn−Al−Mg系めっき層の密着性が低下しやすいという新たな問題が生じた。めっき密着性に劣る鋼板を曲げ加工に供すると、曲げ部でめっきが剥離してトラブルの要因となる。
本発明は、Mnを比較的多量に含有する高張力鋼板用の鋼種にBを添加して耐溶融金属脆化割れ性を付与した鋼板をめっき原板に用いて、めっき密着性に優れた溶融Zn−Al−Mg系合金めっき高張力鋼板を製造することを目的とする。
上記目的は、鋼板を溶融亜鉛系めっき浴に導入する際に行われる還元熱処理の条件を厳密にコントロールすることによって達成される。
すなわち本発明では、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:1.00%以下、Mn:1.00〜2.50%、P:0.030%未満、S:0.010%以下、Ti:0.010〜0.150%、B:0.0003〜0.0100%、sol.Al:0.100%以下、N:0.010%未満を含有し、必要に応じてさらにNb:0.100%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板をめっき原板として、還元熱処理に引き続いて、質量%で、Al:4.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%を含有し、さらにTi:0.10%以下、B:0.05%以下、Si:2.0%以下の1種以上を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛系めっきを施すにあたり、
前記還元熱処理の炉内で鋼板表面温度が700℃以上に保持される時間を「保持時間」、当該炉内での鋼板表面の最高到達温度を「還元熱処理温度」と定義するとき、保持時間(sec)をx軸、還元熱処理温度(℃)をy軸とする実数目盛のx−y直交座標系において、図1に示すa(5,830)−b(20,830)−c(75,790)−d(200,725)−e(200,700)−f(5,700)−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の保持時間、還元熱処理温度を満たす条件で還元処理を行う、溶融亜鉛系めっき高張力鋼板の製造法が提供される。
また、上記の還元熱処理の前に弱酸化熱処理を施すこともできる。その場合は、還元熱処理の適正範囲がより高温域まで拡大される。具体的には、図2に示すA(5,850)−B(25,850)−C(70,810)−D(200,740)−E(200,700)−F(5,700)−Aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の保持時間、還元熱処理温度を満たす条件で還元処理を行うことができる。
本発明によれば、高耐食性を有する溶融Zn−Al−Mg系めっきを施した高張力鋼板において、「耐溶融金属脆化割れ性」と「めっき密着性」の両方を改善した材料が実現される。これらの特性の両立は従来困難であったところ、本発明は曲げ加工や溶接加工に供される高張力鋼板の用途において、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の普及に寄与するものである。
還元熱処理の「保持時間」と「還元熱処理温度」の適正範囲を示すグラフ。 弱酸化熱処理後に行う還元熱処理の「保持時間」と「還元熱処理温度」の適正範囲を示すグラフ。
本明細書において、めっき原板および溶融めっきの化学組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
〔めっき原板〕
本発明では、Mnを比較的多量に含有する高強度鋼種をめっき原板の対象とする。その化学組成は以下のとおりである。
C:0.05〜0.20%
Cは、強度向上に有効な元素であり、本発明では0.05%以上のC含有量レベルの高強度鋼種を対象とする。0.10%以上のC含有量のものを使用するように管理してもよい。ただし、過剰のC含有は延性、溶接性を低下させるので、C含有量は0.20%以下に制限される。
Si:1.00%以下
鋼中のSiは、めっき性に有害なSi酸化膜を鋼板表面に生じさせる要因となる。種々検討の結果、Si含有量は1.00%以下とする必要がある。ただし、Siには固溶強化により鋼材の強度を向上させる作用があるので、積極的に添加してもよい。その場合、0.05%以上のSi含有量を確保することが効果的であり、0.20%以上とすることがより好ましい。
Mn:1.00〜2.50%
Mnは、固溶強化によって鋼材を強化する作用を有すると共に、オーステナイトを安定化させマルテンサイト等の変態相の生成を促進させる作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるために、Mn含有量は1.00%以上とする必要がある。1.50%以上とすることがより好ましく、さらに1.80%以上のMn含有量に管理してもよい。ただし、多量のMn添加は加工性およびめっき性を低下させる要因となる。検討の結果、Mn含有量は2.50%以下に制限される。
P:0.030%未満
Pは、固溶強化によって鋼材を強化する作用を有するが、加工性を低下させる要因となるので、本発明ではP含有量0.030%未満のものを対象とする。0.020%以下のP含有量であることがより好ましい。
S:0.010%以下
Sは、加工性低下の要因となる硫化物を形成するので、できるだけ低減することが望ましい。種々検討の結果、S含有量は0.010%まで許容されるが、特に加工性を重視する用途では0.005%以下とすることがより好ましい。
B:0.0003〜0.0100%
Bは、溶融金属脆化の抑制に有効な元素である。その作用はBがフリーBとして結晶粒界に偏析して原子間結合力が増大することによってもたらされるものと考えられる。そのためには少なくとも0.0003%以上のB含有量を確保する必要がある。0.0005%以上のB含有量とすることがより好ましい。ただし、過剰のB添加は硼化物の生成、加工性劣化の要因となるため、B含有量の上限は0.0100%に制限される。
N:0.010%未満
Nは、Bと反応して硼化物を形成し、耐溶融金属脆化割れ性の改善に有効なフリーBの量を低減させる要因となる。種々検討の結果、N含有量は0.010%未満の範囲に制限される。
Ti:0.010〜0.150%
Tiは、強力な窒化物形成元素であり、めっき原板中のNをTiNとして固定する上で重要な元素である。Nを固定することによりフリーBの量が確保され、フリーBによる耐溶融金属脆化割れ性の向上作用が発揮される。検討の結果、上記作用を十分に発揮させるためには0.010%以上のTi含有量を確保する必要がある。0.020%以上とすることがより好ましい。ただし、過剰にTiを添加しても上記効果は飽和し、またTiの多量添加は鋼材の加工性を劣化させる要因になる。このためTi含有量は0.150%以下の範囲に制限される。
sol.Al:0.100%以下
Alは、脱酸剤として添加されるが、過剰のAl添加はプレス成形性の低下を招く等の弊害を生じるので、sol.Al(酸可溶Al)として0.100%以下の含有量に制限される。0.060%以下であることがより好ましい。なお、脱酸においてはsol.Al含有量が0.005%以上となる範囲でAlを添加することがより効果的であり、0.010%以上となる範囲での添加が一層効果的である。
Nb:0.100%以下
Nbは、Nを固定する作用を有するので、フリーBを確保する上で有効な元素である。このため本発明では必要に応じてNbを含有する鋼を使用することができる。その含有量は0.010%以上とすることがより効果的である。ただし、多量のNb含有は鋼の靭性や加工性の低下を招く要因となるので、Nbを含有する鋼を使用する場合は、その含有量は0.100%以下に制限される。
本発明では、以上の化学組成を有する熱延鋼板または冷延鋼板をめっき原板として使用することができる。熱延鋼板の場合は、表面の酸化スケールが十分に除去されている必要がある。板厚は用途に応じて例えば0.6〜4.5mmの範囲で選択すればよい。
〔還元熱処理〕
めっき原板を溶融亜鉛系めっき浴に導入する前には、鋼板表面を活性化させるために還元熱処理を行うことが通常である。大量生産現場の連続溶融めっきラインでは、還元熱処理と溶融めっきを連続的に行うようになっている。この還元熱処理工程は、単に表面を活性化させるだけではなく、めっき鋼板製品の最終的な組織状態に調整するための焼鈍工程を兼ねる場合が多い。したがって、目的に応じて種々のヒートパターンが採用される。また、ラインの操業状況によっては、活性化や焼鈍に支障のない範囲で熱処理炉を通過する鋼帯の速度(ライン速度)が調整されることもある。
前述のように、比較的高Mnの高強度鋼種にBを添加した鋼板は、溶融Zn−Al−Mg系めっきに供するとめっき密着性に問題を生じることがある。発明者らは、その原因を究明すべく、溶融めっき後のめっき層/鋼素地界面の状態を詳細に調べた。その結果、Bを含有しない高強度鋼種では、めっき層/鋼素地界面には連続したFe−Al合金層が形成されており、この合金層を介してめっき層の密着性が確保されていた。これに対しBを含有する高強度鋼種の場合、めっき層/鋼素地界面にはFe−Al合金層が形成されていない部分が多く見られた。その部分では、めっき層と鋼素地とが接合されていないことがわかった。また、鋼板表面にはめっき層が付着していない領域(不めっきと呼ばれる欠陥)がところどころに見られた。
そこで、溶融めっき浴に浸漬する直前のめっき原板の表面状態を把握するために、鋼板試料を種々の条件で還元熱処理したのち、その表面を観察した。それによると、良好なめっき密着性が得られるB無添加の高強度鋼種では、表面にSi−Mn系酸化物が点在しており、還元熱処理条件を変化させても、この表面状態には大きな変化は見られなかった。これに対しBを含有する高強度鋼種では、還元熱処理の初期の段階では上記と同様のSi−Mn系酸化物が点在する表面状態となるが、加熱が進行するに伴い鋼中から拡散してきたBがSi−Mn系酸化物に加わり、Si−Mn−B系の酸化物が生成するようになることがわかった。鋼中からのBの拡散がさらに進むと鋼板表面のSi−Mn−B系の酸化物はBの濃度を増していき、低融点化する。その結果、還元熱処理中にSi−Mn−B系の酸化物が部分的に溶融し、生じた溶融物が鋼板表面に拡がるものと考えられる。事実、高温・長時間の加熱を行ったものでは鋼板表面の大部分がSi−Mn−B系の酸化物と、溶融凝固したと見られるMn−B系酸化皮膜に覆われていた。このようなBが濃化した表面部分では鋼素地中のFeとZn−Al−Mg系めっき浴中のAlとの反応が阻害され、結果的にめっき層との接合不良や不めっきが生じやすくなるものと推察された。
このような知見から、比較的高Mnの鋼にBを添加した高強度鋼種をめっき原板として、溶融Zn−Al−Mg系めっきを施す際には、めっき前処理の還元熱処理を、Bが表面に多量に拡散してくる前に終了させることによって、めっき密着性を改善することが可能となる。具体的には、還元熱処理の「保持時間」と「還元熱処理温度」の組合せを適正範囲に厳密にコントロールすることによって、良好なめっき密着性を安定して実現することができる。
めっき原板表面の活性化を十分に行うためには700℃以上の還元雰囲気中に鋼板表面を曝すことが有効である。詳細な検討の結果、還元雰囲気の炉内で鋼板表面温度が700℃以上に保持される時間を「保持時間」と定義し、当該炉内での鋼板表面の最高到達温度を「還元熱処理温度」と定義するとき、これらによって良好なめっき密着性を安定して実現することができる還元熱処理の条件範囲を規定することができる。実際の操業では、使用する製造ラインの還元熱処理炉において予め測定されている鋼板表面温度のヒートカーブのデータに基づいて、適正な「保持時間」と「還元熱処理温度」の条件範囲にコントロールすることが可能である。
化学組成が前述の範囲にある鋼板をめっき原板とする場合、(保持時間,還元熱処理温度)の適正範囲として、図1に示されるa(5,830)−b(20,830)−c(75,790)−d(200,725)−e(200,700)−f(5,700)−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件が採用できることがわかった。この範囲内で、鋼の最終焼鈍を兼ねた条件を適用すればよい。図1において、熱処理条件が折れ線a−b−c−dより右上になると、鋼中のBの表面への拡散が過度に進行してめっき密着性を安定して改善することが難しくなる。還元熱処理温度(表面の最高到達温度)が700℃(直線ef)を下回る場合や、保持時間(表面温度が700℃以上である時間)が5sec未満(直線af)となる場合は、表面の活性化が不十分となりやすい。保持時間が200sec(直線de)を超える場合は、生産性が低下し不利となる。
操業条件に応じて、さらに好ましい条件範囲に管理することもできる。例えば図1において、a−b−c−g−i−k−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件や、a−b−c−g−h−k−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件や、a−b−c−g−h−j−l−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件などに規制することができる。また上記各条件において、b−cを結ぶ直線をb−m−cを結ぶ直線に替えた領域内(境界を含む)の条件を採用してもよい。
還元熱処理によって再結晶焼鈍を兼ねる場合は、上記の各条件範囲において、鋼板内部まで再結晶温度以上となる条件を採用すればよい。当該対象鋼種の場合、上記の各条件範囲において還元処理温度(表面の最高到達温度)が740℃以上となるようにすることが望ましい。
還元熱処理の雰囲気としては、従来一般的に溶融めっき前処理として使用されている雰囲気が適用できる。例えば5〜50%H2−N2雰囲気が例示できる。
還元熱処理の前に、弱酸化雰囲気での加熱(弱酸化熱処理)を行うこともできる。弱酸化雰囲気としては、例えば空燃比0.7〜1.0未満の燃焼ガスなどが採用できる。ヒートパターンとしては、鋼板を弱酸化雰囲気の炉に入れたのち鋼板表面温度が400〜700℃まで昇温した時点で弱酸化雰囲気での加熱を終了させるパターンが採用できる。この弱酸化熱処理を終了した後、常温まで冷却し、その後、還元熱処理に供してもよいが、連続溶融めっきラインによっては弱酸化炉と還元熱処理炉を備えたものもあり、その場合は弱酸化熱処理の加熱温度から常温まで冷却されることなく、還元加熱炉に移行して昇温される。
発明者らは詳細な検討の結果、弱酸化熱処理が施された鋼板に対して還元熱処理を施す場合、還元熱処理の適正範囲がより高温域まで拡大されることを見出した。具体的には、図2に示すA(5,850)−B(25,850)−C(70,810)−D(200,740)−E(200,700)−F(5,700)−Aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の保持時間、還元熱処理温度を満たす条件で還元処理を行うことができるのである。図2において、熱処理条件が折れ線A−B−C−Dより右上になると、鋼中のBの表面への拡散が過度に進行してめっき密着性を安定して改善することが難しくなる。還元熱処理温度(表面の最高到達温度)が700℃(直線EF)を下回る場合や、保持時間(表面温度が700℃以上である時間)が5sec未満(直線AF)となる場合は、表面の活性化が不十分となりやすい。保持時間が200sec(直線DF)を超える場合は、生産性が低下し不利となる。
弱酸化熱処理後に還元熱処理を施す場合も、操業条件に応じて、さらに好ましい条件範囲に管理することもできる。例えば図2において、A−B−C−D−G−H−J−L−Aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件や、I−B−C−D−G−H−J−K−Iを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の条件などに規制することができる。また上記各条件において、B−Cを結ぶ直線をB−M−Cを結ぶ直線に替えた領域内(境界を含む)の条件を採用してもよい。
〔溶融亜鉛系めっき〕
上記の還元熱処理を終えためっき原板を、大気に曝すことなく、溶融Zn−Al−Mg系めっき浴に導入する。
めっき浴中のAlは、めっき鋼板の耐食性向上に有効であり、また、めっき浴においてMg酸化物系ドロスの発生を抑制する。さらに、めっき密着性の改善にも有効である。これらの作用を十分に得るには溶融めっき浴のAl含有量を4.0%以上とする必要がある。一方、Al含有量が22.0%を超えると、めっき層と鋼基材との界面で脆いFe−Al合金層が過剰に成長するようになり、めっき密着性の低下を招く要因となる。優れためっき密着性を確保するには15.0%以下のAl含有量とすることが好ましく、10.0%以下に管理しても構わない。
めっき浴中のMgは、めっき層表面に均一な腐食生成物を生成させてめっき鋼板の耐食性を著しく高める作用を呈する。さらに、めっき密着性の改善にも有効である。これらの作用は溶融めっき浴のMg含有量が0.05%以上の範囲で発現し、特に顕著な効果を得るためには1.0%以上のMg含有量を確保することがより好ましい。一方、Mg含有量が10.0%を超えるとMg酸化物系ドロスが発生し易くなる。より高品質のめっき層を得るには5.0%以下のMg含有量とすることが好ましく、4.0%以下に管理しても構わない。
溶融めっき浴中にTi、Bを含有させると、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板において斑点状の外観不良を与えるZn11Mg2相の生成・成長が抑制される。またこれらの元素の添加によって溶融めっき時における製造条件の自由度が拡大する。このため、必要に応じてTi、Bの1種または2種を添加することができる。その添加量はTiの場合0.002%以上、Bの場合0.001%以上とすることがより効果的である。ただし、Ti含有量が過剰になるとめっき層中にTi−Al系の析出物が生成し、またB含有量が過剰になるとめっき層中にAl−B系あるいはTi−B系の析出物が生成して粗大化する。これらの析出物はめっき層表面の外観を損ねる要因となる。したがって、めっき浴にTiを添加する場合は0.10%以下の範囲で行う必要があり、0.01%以下とすることがより好ましい。また、Bを添加する場合は0.05%以下の範囲とする必要があり、0.005%以下とすることがより好ましい。
溶融めっき浴中にSiを含有させると、鋼素地とめっき層の界面に生成するFe−Al合金層の過剰な成長が抑制され、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の加工性を向上させる上で有利となる。またSiはめっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効である。したがって、必要に応じてSiを含有させることができる。Siを含有させる場合は、溶融めっき浴のSi含有量を0.005%以上とすることがより効果的である。ただし、過剰のSi含有は溶融めっき浴中のドロス量を増大させる要因となるので、めっき浴中のSi含有量は2.0%以下に制限される。
溶融めっき浴中には、鋼板を浸漬・通過させる関係上、一般にはFeの混入が避けられない。Zn−Al−Mg系めっき浴中のFe含有量は概ね2.0%程度まで許容される。めっき浴中にはその他の元素として例えば、Ca、Sr、Na、希土類元素、Ni、Co、Sn、Cu、Cr、Mnの1種以上が混入する場合があるが、それらの合計含有量は1.0%以下に管理することが望ましい。
めっき付着量は、鋼板片面当たり20〜300g/m2の範囲で調整することが望ましい。
めっき原板として表1に示す化学組成の冷延鋼板(板厚1.4mm)を用意した。
Figure 0005495921
各冷延鋼板について、弱酸化熱処理を施さずに、種々の保持時間、還元熱処理温度にて還元熱処理を施し、その後、大気に曝すことなく溶融亜鉛系めっき浴に浸漬し、浴から引き上げ、片面当たりのめっき付着量が約90g/m2の溶融亜鉛系めっき鋼板を得た。実験条件は以下のとおりである。
〔還元熱処理〕
雰囲気ガス;30%H2−N2雰囲気
ヒートパターン; 表2に示す還元熱処理温度(表面の最高到達温度)および保持時間(表面温度が700℃以上である時間)の組合せ
〔溶融めっき〕
・浴組成; 以下の(a)または(b)
(a)Zn−6.2%Al−3.1%Mg−0.019%Ti−0.0041%B−0.03%Si
(b)Zn−6.2%Al−3.1%Mg−0.03%Si
・浴温; 400℃
・浴浸漬時間; 2sec
得られためっき鋼板から幅15mmの曲げ試験片を切り出し、先端半径R=5mmのポンチを用いて90°V曲げ試験を行った。試験片の幅方向(=曲げ軸の方向)が圧延方向と一致するようにした。曲げ試験後の試験片について、曲げ加工部の外周部にJIS Z1522で定めるセロハン粘着テープを貼付した後、剥ぎ取って、テープにめっき層の付着が認められないものを○(めっき密着性;良好)、それ以外のものを×(めっき密着性;不良)と判定した。同種のめっきサンプルについてn=3で曲げ試験を行い、最も評価の悪い試験片の結果をそのサンプルの成績として採用した。
結果を表2に示す。また、図1中の還元熱処理条件を表す座標上にめっき密着性の良否結果を表示した(参考鋼Hを除く)。
Figure 0005495921
本発明で規定する還元熱処理の範囲において、良好なめっき密着性が得られることがわかる。なお、鋼HはBを含有しない高強度鋼種(すなわち溶融金属脆化割れに未対応のもの)であるが、高温・長時間の還元加熱条件でもめっき密着性の低下は見られないことがわかる(表2)。
実施例1と同じめっき原板を用いて、ここでは弱酸化熱処理を施した後に還元熱処理を施す工程にて、片面当たりのめっき付着量が約90g/m2の溶融亜鉛系めっき鋼板を得た。弱酸化熱処理を施したこと、および表3に示す還元熱処理温度(表面の最高到達温度)と保持時間(表面温度が700℃以上である時間)の組合せを採用したことを除き、実施例1と同様の実験条件とした。弱酸化熱処理条件は以下のとおりである。
〔弱酸化熱処理〕
・雰囲気ガス; 空燃比0.7〜1.0未満の燃焼ガス
・ヒートパターン; 表面温度が500℃に到達した時点で加熱を終了して降温開始(いわゆる500℃均熱0秒)
結果を表3に示す。また、図2中の還元熱処理条件を表す座標上にめっき密着性の良否結果を表示した(参考鋼Hを除く)。
Figure 0005495921
弱酸化熱処理を施すと、良好なめっき密着性が得られる還元熱処理条件の範囲が拡大されることがわかる(図1と図2の対比)。なお、鋼H(耐溶融金属脆化割れ性を向上させていないB無添加鋼種)は、高温・長時間の還元加熱条件でもめっき密着性の低下は見られない(表3)。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.05〜1.00、Mn:1.00〜2.50%、P:0.030%未満、S:0.010%以下、Ti:0.010〜0.150%、B:0.0003〜0.0100%、sol.Al:0.100%以下、N:0.010%未満、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板をめっき原板として、還元熱処理に引き続いて、質量%で、Al:4.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%を含有し、さらにTi:0.002〜0.10、B:0.001〜0.05、Si:0.005〜2.0の1種以上を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛系めっきを施すにあたり、
    前記還元熱処理の炉内で鋼板表面温度が700℃以上に保持される時間を「保持時間」、当該炉内での鋼板表面の最高到達温度を「還元熱処理温度」と定義するとき、保持時間(sec)をx軸、還元熱処理温度(℃)をy軸とする実数目盛のx−y直交座標系において、図1に示すa(5,830)−b(20,830)−c(75,790)−d(200,725)−e(200,700)−f(5,700)−aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の保持時間、還元熱処理温度を満たす条件で還元処理を行う、溶融亜鉛系めっき高張力鋼板の製造法。
  2. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.05〜1.00、Mn:1.00〜2.50%、P:0.030%未満、S:0.010%以下、Ti:0.010〜0.150%、B:0.0003〜0.0100%、sol.Al:0.100%以下、N:0.010%未満、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板をめっき原板として、弱酸化熱処理および還元熱処理に引き続いて、質量%で、Al:4.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%を含有し、さらにTi:0.002〜0.10、B:0.001〜0.05、Si:0.005〜2.0の1種以上を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛系めっきを施すにあたり、
    前記還元熱処理の炉内で鋼板表面温度が700℃以上に保持される時間を「保持時間」、当該炉内での鋼板表面の最高到達温度を「還元熱処理温度」と定義するとき、保持時間(sec)をx軸、還元熱処理温度(℃)をy軸とする実数目盛のx−y直交座標系において、図2に示すA(5,850)−B(25,850)−C(70,810)−D(200,740)−E(200,700)−F(5,700)−Aを結ぶ直線で囲まれた領域内(境界を含む)の保持時間、還元熱処理温度を満たす条件で還元処理を行う、溶融亜鉛系めっき高張力鋼板の製造法。
  3. めっき原板は、さらにNb:0.010〜0.100を含有するものである請求項1または2に記載の溶融亜鉛系めっき高張力鋼板の製造法。
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