JP5309653B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Mnは易酸化元素であるため、めっき前の再結晶焼鈍時に、鋼板表面に濃化して酸化物を形成する。このような酸化物は、溶融亜鉛との濡れ性を低下させて不めっきを生じさせ、また不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性の劣化を招く。
また、特許文献2には、めっき前の再結晶焼鈍を高露点で行うことで、鋼中の易酸化元素を内部酸化させ、表面濃化を抑制しめっき性を改善する技術が開示されている。
従来技術のように易酸化元素酸化物の表面への露出を減らすのではない新しい方法を鋭意検討した。その結果、鋼板表面に溶融亜鉛めっき浴中に添加したAlと反応しやすいスピネル型酸化物を形成しておくことでめっき濡れ性が向上すること、そして、Alと反応した酸化物はAlを含有し、それによりめっき密着性が向上すること、さらには、これらの効果は、表面酸化物を適正な組成のMnCr系スピネル型酸化物とすることで、有効に得られることを見出した。
[1]質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面にFe-Zn合金めっき皮膜を有してなる合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、該めっき皮膜により形成されるめっき層中には、Alを含有するスピネル型酸化物が存在することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
[2]前記[1]において、前記酸化物として、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下でかつAlを含有したスピネル型酸化物が存在することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下、Cr:0.2%以上1.0%未満を含有する下地鋼板の表面にFe-Zn合金めっき皮膜を有してなる合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、該めっき皮膜により形成されるめっき層中には、AlとCrとMnを含有するスピネル型酸化物が存在し、前記酸化物中のCrとMnが、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
[4]質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面に、スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[5]質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面に、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のMnCr系スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[6]質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下、Cr:0.2%以上1.0%未満を含有する下地鋼板を焼鈍して、表面に、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のMnCr系スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
また、特にプレ酸化等の前処理を必要とせずに、不めっきのない美麗な表面外観を有し、めっき密着性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られ、産業上有益な発明である。
上記Alを含んだスピネル型酸化物をめっき層中に存在させるためには、めっき浴中にあらかじめスピネル型酸化物を分散させておくか、もしくは、めっき処理前に形成した下地鋼板表面のスピネル型酸化物を合金化により皮膜中へ取り込ませる方法などが考えられる。いずれの方法でも、本発明の効果は得られるため、その方法は問わない。ただし、スピネル型酸化物を皮膜中に取り込ませるための制御性や、上述のめっき濡れ性との両立との観点から、下地鋼板表面のスピネル型酸化物を合金化により皮膜中へ取り込ませる方法が現実的である。
本発明は、下地鋼板の高強度化手段として含有されるMnによってめっき性が阻害されるのを解決することを主旨とする。そのため、下地鋼中にMnが含有されていることを前提とする。但し、Mnの含有量が低い鋼では、本発明を適用するまでもなく良好にめっきができるため、本発明の効果を十分に発揮できる範囲としてMnは0.5%以上である。一方、3.0%を超えて含有しても、材質向上への効果が飽和する。よって、Mnは0.5%以上3.0%以下とする。
が、これらを含んでいても、スピネル型酸化物が含まれていればよい。
Pは、鋼の強化に有効な元素であるが、0.1%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、耐衝撃性を劣化させ、また0.1%越えだと合金化速度を大幅に遅延させるためである。
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となるので極力低い方がよいが、製造コストとの兼ね合いから、0.07%以下が好ましい。
Nは、鋼の耐時効性を最も大きく劣化させる元素であり、少ないほどよく、0.008%を超えると耐時効性の劣化が顕著となるため、N量を0.008%以下が好ましい。
スピネル型酸化物はAlが置換固溶することで内部に取り込まれやすいため、酸化物の一部を上記スピネル型酸化物とすることで、酸化物中にAlを含有させてめっき濡れ性およびめっき密着性を向上させる目的を効率的に実施できる。
スピネル型酸化物の種類は特に限定するものではないが、CrとMnのスピネル型酸化物はAlとの反応性が優れており、好適であり、CrとMnの添加量の割合を適切な範囲内にすることが好ましく、その具体的な範囲は、後述するように還元焼鈍条件と関係する。
MnCr系スピネル型以外の酸化物としては、通常、NaCl型、コランダム型または非晶質のMnおよび/またはCrを含む酸化物が挙げられる。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常の方法により上記の成分組成を有するスラブを熱間圧延した後、冷間圧延あるいは熱処理が施された薄鋼板を下地鋼板とし、上記下地鋼板を、Alを0.1 %以上0.2 %以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬し、次いで、合金化処理を施すことにより得られる。この時、溶融亜鉛浴に浸漬する前に、下地鋼板の表面に、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のMnCr系のスピネル型酸化物を形成する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造では、めっき前に還元雰囲気中で再結晶焼鈍を行う。焼鈍炉の形式は特に限定するものではなく、例えば、放射加熱方式の焼鈍炉が一般的である。焼鈍条件は、水素を含む還元性雰囲気中で700〜900℃程度の温度で加熱するのが一般的である。また、還元焼鈍の前に鋼板表面を酸化するプレ酸化過程がある製造ラインもあるが、本発明はプレ酸化の有無は問わない。一般にプレ酸化はめっき性向上に有利であるが、本発明によれば、特にプレ酸化をする必要はない。
-0.006 × 露点(℃) < Cr(質量%)/Mn(質量%) < -0.006 × 露点(℃)+ 0.3
以上のような還元処理後の鋼板を、非酸化性あるいは還元性雰囲気中でめっきに適した温度まで冷却し、Alを含む溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施す。めっき条件は、めっき浴温:440〜500℃程度、浸漬時の鋼板温度はめっき浴温とほぼ等しいか若干高目とすることが一般的であり、それに従えばよい。本発明では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1 %以上0.2%以下程度とするのが好ましい。
得られた溶融亜鉛めっき鋼板を用いて目視および10倍のルーペにて外観観察を行い、不めっきが全くない場合を不めっき無しとし、10倍のルーペにて観察可能な微小の不めっきがある場合を微小不めっき有りとし、目視にて不めっきが観察できる場合を不めっき有りとした。
◎:不めっきなし
○:微小不めっきあり
×:不めっきあり
<めっき密着性>
得られた溶融亜鉛めっき鋼板を用いてボールインパクト試験を行い、テープ剥離した際のめっき剥離状態を評価した。試験条件は、直径1/2インチの半球状突起の上に載せた溶融亜鉛めっき鋼板上に、2.8kgの重りを1mの高さから落下させた後、凸側でテープ剥離を実施した。
◎:めっき剥離なし
○:めっき剥離ほとんどなし
△:めっき剥離若干あり
×:めっき剥離あり
<めっき層中酸化物の解析>
めっき層中の酸化物の調査は、FIB加工で作製したサンプルの断面TEM観察により行った。皮膜(めっき層)中に酸化物が見出された場合は、EDSにより組成分析、TEDで結晶構造解析を実施した。
各供試鋼に対して、任意の皮膜中酸化物を10個分析し、その酸化物がAlを含有するか否か(酸化物を構成する金属元素(酸素除く)の合計量に対するAlの割合が、原子割合で1%以上含有している部分があれば、その酸化物はAl含有していると見なす)、及びCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のスピネル型酸化物であるか否かについて判定した。
Al含有有無
○:2つ以上存在
△:1つ存在
×:なし
MnCr系スピネル型酸化物
◎:Cr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のスピネル型酸化物が2つ以上存在
○:Cr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のスピネル型酸化物が1つ以下、かつ、Cr/(Mn+Cr)が0.1未満または0.67超のスピネル型酸化物が1つ以上存在
△:スピネル型酸化物が1つ存在
×:スピネル型酸化物なし
以上により得られた結果を、処理条件と併せて表2に示す。
Claims (6)
- 質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面にFe-Zn合金めっき皮膜を有してなる合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、該めっき皮膜により形成されるめっき層中には、Alを含有するMnCr系スピネル型酸化物が存在することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記酸化物として、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下でかつAlを含有したMnCr系スピネル型酸化物が存在することを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下、Cr:0.2%以上1.0%未満を含有する下地鋼板の表面にFe-Zn合金めっき皮膜を有してなる合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、該めっき皮膜により形成されるめっき層中には、AlとCrとMnを含有するMnCr系スピネル型酸化物が存在し、前記酸化物中のCrとMnが、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面に、MnCr系スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下を含有する下地鋼板の表面に、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のMnCr系スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 質量%で、Mn:0.5%以上3.0%以下、Cr:0.2%以上1.0%未満を含有する下地鋼板を焼鈍して、表面に、原子比としてのCr/(Mn+Cr)が0.1以上0.67以下のMnCr系スピネル型酸化物を形成し、次いで、Alを0.1質量%以上0.2質量%以下含有する溶融亜鉛浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを形成し、次いで、合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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