JPH05171282A - 複合組織ステンレス鋼ばねの製造法 - Google Patents

複合組織ステンレス鋼ばねの製造法

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JPH05171282A
JPH05171282A JP35489491A JP35489491A JPH05171282A JP H05171282 A JPH05171282 A JP H05171282A JP 35489491 A JP35489491 A JP 35489491A JP 35489491 A JP35489491 A JP 35489491A JP H05171282 A JPH05171282 A JP H05171282A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フエライト+マルテンサイトの複合組織ステ
ンレス鋼からなる優れたばね特性を具備したばねを製造
する。 【構成】 重量%において,C:0.01〜0.15%, Cr:1
0.0〜20.0%を含有し,さらに0.10〜4.0%のNi,0.10
〜4.0%のMn, 0.10〜4.0%のCuの1種または2種以上
をFe中に含有させたステンレス鋼の冷延鋼帯を通常の
熱間圧延工程および冷間圧延工程を経て製造し,この冷
延鋼帯をフエライト+オーステナイトの二相域温度に加
熱したあと急冷する熱処理によりフエライト+マルテン
サイトの複合組織の鋼帯とし,この鋼帯を素材としてば
ねを製造するにあたり,該鋼帯を素材として所望のばね
形状に加工し,この加工品に時効処理を施すことを特徴
とする複合組織ステンレス鋼ばねの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,実質的にフエライトと
マルテンサイトの混合組織を有したステンレス鋼からな
るばねの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より,ステンレス鋼ばね用材料は,
例えばJIS G4313 によれば,オーステナイト系としてSU
S301-CSPおよびSUS304-CSP, マルテンサイト系としてSU
S420J2-CSP, 析出硬化系としてSUS631-CSPの4種が規定
されている。
【0003】オーステナイト系のSUS301-CSPならびにSU
S304-CSPは,いずれも冷間圧延による加工硬化により強
度を高めたもので,さらに調質圧延の程度 (圧延率) に
よりSUS301-CSPでは4種, SUS304-CSPでは3種の硬さ
(強度)レベルのものが規定されている。オーステナイ
ト系のばね用鋼帯は,冷間圧延状態で素材メーカーから
出荷され,加工メーカーにおいて所望のばね形状に加工
された後,さらにばね特性の向上を目的とする場合には
約400℃で1時間程度の時効処理が施される。
【0004】マルテンサイト系のSUS420J2-CSPは焼入れ
−焼戻し処理で硬さ (強度) を高めてばね特性を得るも
のであるが,素材メーカーからは冷間圧延後, 焼なまし
を施した状態で出荷され, 加工メーカーにおいて所望形
状のばねに加工された後, 焼入れ−焼戻し処理が施され
ることが多い。
【0005】析出硬化系のSUS631-CSPは,固溶化熱処理
を施して出荷されるSUS631-CSP-0を除き, 他はオーステ
ナイト系と同様に冷間圧延状態で素材メーカーから出荷
され,加工メーカーにおいてばね形状に加工した後に,
いずれもばね特性を向上させる目的で析出硬化熱処理が
施される。なお析出硬化系ではJISに規定されているSUS
631-CSP以外にも種々のばね用ステンレス鋼帯が商用化
されている。
【0006】これらのばね用ステンレス鋼とは別に, 本
出願人はフエライト+マルテンサイト複合組織とした高
強度 (高延性) ステンレス鋼帯に10分以内の短時間連続
時効処理を施すことで,ばね特性に優れたステンレス鋼
帯が得られることを提案している (特開平3-56621号公
報) 。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】オーステナイト系およ
び析出硬化系のばね用ステンレス鋼帯では,調質圧延率
の増加とともに硬さおよびばね限界値は上昇する。また
加工後に時効処理, 析出硬化熱処理を施した後の硬さお
よびばね限界値も調質圧延率の高い方が高い。
【0008】したがって,ばね特性を向上させるために
は調質圧延率を高める必要があるが,調質圧延率を高く
すると成形加工性は低下する。また,冷間圧延によるば
ね限界値の上昇の程度は鋼帯の圧延方向 (L方向) に比
べ, 圧延方向に対し90o方向(T方向) の方が大きく, 冷
間圧延率を高めるにしたがって両者の差が大きくなっ
て,いわゆる異方性が大きいという問題もある。このた
め鋼帯からのばねとしての加工成品の採取方向に制約を
受けたり, 成形されたばねに等方な特性が得られないと
いう問題も生じる。
【0009】また, 板厚0.3mm程度以下の極薄板でなお
かつ高いばね特性が必要とされる場合には,冷間圧延率
を大きくとって極薄板を製造する必要があるがSUS301,
SUS304, SUS631のような加工硬化の大きい材料で広幅の
極薄鋼帯を形状良く冷間圧延により製造することは技術
的にも難しさを伴うことや, Niを多量に含有すること
からコスト高となるため高価なばねとなる。
【0010】マルテンサイト系のSUS420J2-CSPは,Cr
量が12.00〜14.00%と低く耐食性が不十分であることに
加えて, 0.26〜0.40%ものCを含有するため, 靭性が劣
り製造性に問題があることや,最適なばね特性を得るた
めの焼入れ, 焼戻しの熱処理が必要とされる。
【0011】析出硬化系のばね用ステンレス鋼は,準安
定オーステナイトにAlを添加し,マルテンサイト変態
とNi-Al化合物の析出によって硬化するもので,オー
ステナイト地に少量のフエライトを含み, このフエライ
トの分布や大きさが特性を左右するため,成分や熱処理
バランス, 製造条件などに注意を払う必要があり,製造
コストが高いことから高価なばねとなる。
【0012】一方, 先に特開平3-56621号公報で提案し
た短時間連続時効処理を施したフエライト+マルテンサ
イト複相組織ステンレス鋼帯は,鋼板素材状態で既に優
れたばね特性を具備し且つ加工性も良好である。しか
し,加工歪みが加わるとばね特性が低下する傾向がある
ことがわかった。したがって,ばね成品にする際の加工
形状や加工の程度によっては,成形加工後のばね特性は
素材状態のものに及ばないような結果となることもあ
る。本発明は,このような問題の解決を目的としたもの
である。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,重量%
において,C:0.01〜0.15%, Cr:10.0〜20.0%を含
有し,さらに0.10〜4.0%のNi,0.10〜4.0%のMn, 0.
10〜4.0%のCuの1種または2種以上をFe中に含有さ
せたステンレス鋼の冷延鋼帯を通常の熱間圧延工程およ
び冷間圧延工程を経て製造し,この冷延鋼帯をフエライ
ト+オーステナイトの二相域温度に加熱したあと急冷す
る熱処理によりフエライト+マルテンサイトの複合組織
の鋼帯とし,この鋼帯を素材としてばねを製造するにあ
たり,該鋼帯を素材として所望のばね形状に加工し,こ
の加工品に時効処理を施すことを特徴とする複合組織ス
テンレス鋼ばねの製造法を提供する。
【0014】そのさい,鋼の化学成分値として,下式に
従うA値が200〜500の範囲で且つB値が30〜9
0の範囲となるように調節する。 A値=2010(%C)−25.8(%Si)+28.3(%Mn)−72.4(%P)+101(%Ni) −31.7(%Cr)+1230(%N)+43(%Cu)−38.3(%Mo)+570 B値=470(%N)+420(%C)+23(%Ni)+9(%Cu)+7(%Mn) −11.5(%Cr)−11.5(%Si)−12(%Mo)−23(%V)−47(%Nb) −49(%Ti)+189
【0015】
【作用】本出願人は,先にクロムを主合金成分とするク
ロム系ステンレス鋼について,鋼成分を適性に制御し通
常の熱間圧延, 焼鈍, 冷間圧延により得られた冷間圧延
ままの鋼帯もしくは鋼板に,従来のフエライト単相域温
度での仕上焼鈍 (焼なまし)ではなくフエライト+オー
ステナイト二相域への加熱とその後の急冷処理からなる
仕上熱処理を施すことにより, 実質的にフエライト+マ
ルテンサイトの複相組織となり, 強度および延性の面内
異方性の小さい高延性, 高強度のステンレス鋼板または
鋼帯が得られることを提案している (特開昭63-7338号
公報,特開昭63-169330号公報〜特開昭63-169335号公報)
【0016】本発明は,前記提案に係る高強度複相組織
ステンレス鋼帯についてさらに研究を進め, マルテンサ
イト量を30%以上, 90%以下(容積%)とすることで成
形加工性に優れ, かつ成形加工後に適当な条件の時効処
理を付与することにより, またより好ましくは該ステン
レス鋼帯に軽度の調質圧延を施した後に成形加工して適
当な時効処理を付与することにより, ばね特性が極めて
優れかつばね特性の面内異方性の小さいフエライト+マ
ルテンサイト複合組織ステンレス鋼製ばねが得られ, 前
述の従来のばね用ステンレス鋼帯の問題点がすべて解決
できるとの新たな知見を得たものである。
【0017】先ず,本発明に従うステンレス鋼の化学成
分について説明する。本発明法を適用するステンレス鋼
におけるCr量については,ステンレス鋼としての耐食
性を維持する上で少なくとも10.0%以上は必要最低量と
して含有させるべきであるが, あまりCr量が高いとマ
ルテンサイト相を生成させて高強度を得るに必要なNi,
Mn,Cuなどのオーステナイト生成元素の量が多くなる
とともに靭性が低下するようになるため20.0%を上限と
する。
【0018】Cは,強力なオーステナイト生成元素であ
りマルテンサイト量を増加させるとともに固溶強化によ
りマルテンサイト相およびフエライト相の強度を高める
に有効である。また時効処理によりばね限界値を向上さ
せるうえでも重要な元素である。これらのCの効果を得
るには,少なくとも0.01%以上が必要である。しかしC
があまり高いとフエライト+オーステナイト二相域に加
熱, 急冷する複相化熱処理において加熱時に一旦固溶し
たクロム炭化物が冷却時にフエライトもしくはオーステ
ナイト (冷却後はマルテンサイト) 粒界に再析出し, 粒
界近傍にCr欠乏層が生じて (いわゆる鋭敏化が生じて)
耐食性が著しく劣化するようになる。このためには,
Cr,Ni,Mn,Cuなどの他の元素の添加量による成分バ
ランスによっても異なるが,多くとも0.15%以下とする
のが良い。
【0019】Ni,Mn,Cuは,前述のCによる鋭敏化を
回避するためC量を抑制する一方でCに替わるオーステ
ナイト生成元素として高温でフエライト相+オーステナ
イト相の二相組織を得るために有効な元素である。また
Ni,Mn,Cu量の増加にともない冷却後のマルテンサイ
ト量 (高温でのオーステナイト量) が増加し,強度 (硬
さ) が上昇する。これらの効果を得るためには,Cr量
およびC量に応じて一定量以上が必要であり,少なくと
も0.1%以上含有させる必要がある。しかしあまり多い
と複相化処理後の生成マルテンサイト相が多くなりす
ぎ, 場合によっては100%マルテンサイト相となって強
度は得られるものの延性が低下するためそれぞれ上限を
4.0%とするのがよい。
【0020】以上の成分設計が本発明の目的を達成する
うえで不可欠であり,これによって強度やばね特性が成
分面で適正に制御できるが,このばね特性のみならず,
耐食性の向上を目的としてMoを添加したり,耐酸化性
向上の観点からYやREMを添加するなど, 各種のその他
の特性を向上させる目的で上記以外にもB,V,Nb,Ti
などの種々の元素を添加またはその含有量を規制するこ
とができる。その一例は後記の実施例でも示すが,Mo
では2.50%まで,Yは0.20%まで,REMは0.10%まで,
Vは0.20%まで,Bは0.0050%まで,Nbは0.50%まで,
Tiは0.50%までとするのがよい。
【0021】いずれにしても, 本発明を適用するステン
レス鋼は高温でフエライト相+オーステナイト相の二相
組織となるよう成分調整されたものでなければならな
い。
【0022】前式にしたがうA値は硬さの指標となるも
ので,ステンレス鋼製ばねとしての特性を得るためには
少なくともこのA値を200以上とすることが必要であ
る。しか,あまりA値が高いと各種のばね形状に加工で
きないなどの支障を来す恐れがあるため500を上限とす
るのがよい。
【0023】前式にしたがうB値はマルテンサイト量の
指標となるもので,フエライト相とのマルテンサイト相
の複合組織ステンレス鋼製ばねとしての特性を維持する
上で少なくとも30%は必要である。しかし,あまりマル
テンサイト量が多いと強度・靭性バランスを損ない, 各
種のばね形状に加工する上で問題となる。このためB値
は30〜90%の範囲とするのがよい。
【0024】本発明における複相化熱処理は加熱温度を
フエライト相+オーステナイト相の二相域温度とするこ
とが絶対条件である。本発明を有利に実施し得るステン
レス鋼ではフエライト相+オーステナイト相の二相組織
となる下限の温度はおおむね600〜900℃の範囲であり,
一方その上限の温度は1200〜1450℃の範囲である。
【0025】複相化熱処理時の二相域加熱では,短時間
のうちにほぼ平衡状態の量のオーステナイト相が生成す
るので加熱時間は短時間おおむね10分間以内の加熱でよ
い。この短時間でよいことは本発明法の実際操業の点で
も連続熱処理が可能となり,生産効率, 製造コストの面
から非常に有利である。
【0026】複相化熱処理時の冷却速度については,高
温でのオーステナイトがマルテンサイトに変態するに十
分な冷却速度とする必要があることはいうまでもない
が,実操業面ではおおむね1〜1000℃/secの冷却速度範
囲である。またマルテンサイトに変態した後の冷却過程
では冷却速度は任意でよい。
【0027】ばね形状に成形した後の時効処理は本発明
の重要な点であって,これにより最終成品のばねとして
のばね特性が向上する。時効処理をばね成形前に施した
場合には加工による歪みによりばね特性が劣ることがあ
る。
【0028】時効条件は特に規制するものではないが30
0℃未満ではばね特性の向上が十分ではなく,また650℃
を超えると固溶Cがクロム炭化物として粒界および粒内
に析出し耐食性の低下をもたらす。したがって時効処理
における加熱温度は300〜650℃が望ましい。
【0029】時効処理時間は1分程度の短時間の加熱に
よりばね限界値は急激に上昇する。この加熱時間は特に
規制するものではないが,あまり長くしてもばね限界値
の向上効果は飽和する傾向にあるので, 加熱時間は1時
間以内とするのが望ましい。
【0030】以下に本発明を適用した実施例を挙げて本
発明についてさらに説明する。
【0031】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼を溶製し,ス
ラブとした。鋼No.1〜10は本発明の対象とする鋼であ
り, 熱間圧延により板厚3.6mmの熱延鋼帯とした後, 780
℃×6時間均熱,炉冷の熱延板焼鈍を施した。さらに酸
洗の後,冷間圧延により板厚1.0mmとし,780℃×1分均
熱,空冷の中間焼鈍を施して酸洗した後,再度冷間圧延
により板厚0.3mmの冷延鋼帯とした。
【0032】この冷延鋼帯に表2に示す条件での連続複
相化熱処理および調質圧延を施し,これを素材として,
図1に示す寸法形状をもつばね試片に成形加工した後,
表2に示す条件でバッチ式の時効処理を施した。
【0033】鋼No.11と12はそれぞれ比較材としたSUS30
1およびSUS304である。これらについては,熱間圧延に
より板厚3.6mmの熱延鋼帯とした後, 1100℃×1分均
熱,急冷の熱延板焼鈍後,酸洗を施した。さらに冷間圧
延と1050℃×1分均熱,急冷の焼鈍を繰返し,最終的に
表2に示す調質圧延率の冷間圧延を行って板厚0.3mmの
冷延鋼帯とした。その後,図1に示すばね形状に成形加
工した後,表2に示す条件でバッチ式の時効処理を施し
た。
【0034】表2に各材料の時効処理後の硬さ,ばね限
界値Kbおよびばね試片の時効処理後の永久変位量の測
定値を示した。ばね限界値Kbは,ばね試片の長手方向
を圧延(L)方向に平行とした場合と圧延方向に対し90
o (T)方向とした場合の両者について測定した。永久変
位量については,図2に示すように,長手方向が圧延方
向と平行となるよう採取した図1と同様の試験片(a) の
折り曲げ部を固定冶具(b) で把持し,初期位置(c) から
変形位置 (d)に15秒間で50回往復する繰り返したわみを
付与し (固定端応力=50kgf/mm2), 500回の繰り返した
わみ後に変形した量 (Δh =初期位置の高さh−試験後
の高さh')を永久変位量 (mm) とした。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】表2の結果に見られるように,本発明によ
る複合組織ステンレス鋼は,高いばね限界値Kbを有す
るとともにL方向とT方向のKbの差が小さく,ばね特
性の異方性が小さい。そして,本発明法によるばねは繰
返したわみ試験での永久変位量も小さい。さらに本発明
例No.2とNo.3の比較,およびNo.7とNo.8の比較から
わかるように,複相化熱処理後に調質圧延を行った場合
には時効処理後のばね限界値Kbが一層向上するととも
に,成形加工品に時効処理を施すことにより永久変位量
も小さくなる。
【0038】これに対し,比較例No.1は複相化熱処理
温度が780℃と低く実質的にフエライト単相域での焼な
ましであって,金属組織もマルテンサイト相の存在しな
いフエライト単相組織であった。このため硬さ (強度)
が低く時効処理後のばね限界値Kbも低い。
【0039】比較例No.2および比較例No.4は複相組織
鋼であるが時効処理を施していないため,それぞれ本発
明例No.2および本発明例No.7と比較してわかるように
ばね限界値Kbは低い。
【0040】比較例No.3は複相化熱処理後の調質圧延
率が15%と高く, ばね限界値Kbは高いものの異方性が
大きい。
【0041】比較例No.5および比較例No.6は複相化熱
処理後時効処理を施し,ばね成形加工を施した後の時効
処理を省略しているため,ばねに加工前のばね限界値は
高いもののばね成形後の繰返したわみ試験後での永久変
位量が大きいことからばね特性が劣る。
【0042】比較例No.7および比較例No.8はオーステ
ナイト系ばね用ステンレス鋼のSUS301-CSP およびSUS30
4-CSPであり,ばね限界値の異方性が大きいとともに,
ばね限界値Kbそのものが低く,本発明例に比べてばね
特性が劣る。
【0043】図3は表1に示す鋼4,5,6の本発明鋼
と比較鋼のSUS301鋼およびSUS304鋼を用いて,図1に示
す寸法・形状にばね成形加工し,温度450℃で10分間の
時効処理を施した後に,図2に示す方法で固定端応力50
kgf/mm2として繰り返したわみ試験を行い試験回数と試
験後の永久変位量の関係について示す。
【0044】図3からわかるように,本発明による複合
組織ステンレス鋼製ばね4,5,6は比較鋼のSUS301鋼
およびSUS304鋼の従来のばねに比べ, いずれの繰返した
わみ試験回数においても試験後の永久変位量が小さく,
ばね特性に優れることがわかる。
【0045】
【発明の効果】以上詳述したように, 本発明法によれば
ばね特性に優れ, かつばね特性の異方製の小さい高強度
複合組織ステンレス鋼製ばねが提供できる。そして従来
のばね用ステンレス鋼に比較し,成形加工後の繰返した
わみ試験での永久変位量も小さく, 優れたばねとしての
特性を有し, 各種成形ばね加工製品として多大の貢献を
なし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 永久変位量を求めるために供したばね成形加
工品の試験片寸法および形状を示す図である。
【図2】 永久変位量を求めるための繰返したわみ試験
方法を示した図である。
【図3】 高強度複合組織ステンレス鋼の繰返したわみ
試験回数と試験後の永久変位量の関係をSUS301, SUS304
との比較で示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤本 廣 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社鉄鋼研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%において,C:0.01〜0.15%, C
    r:10.0〜20.0%を含有し,さらに0.10〜4.0%のNi,
    0.10〜4.0%のMn, 0.10〜4.0%のCuの1種または2種
    以上をFe中に含有させたステンレス鋼の冷延鋼帯を通
    常の熱間圧延工程および冷間圧延工程を経て製造し,こ
    の冷延鋼帯をフエライト+オーステナイトの二相域温度
    に加熱したあと急冷する熱処理によりフエライト+マル
    テンサイトの複合組織の鋼帯とし,この鋼帯を素材とし
    てばねを製造するにあたり,該鋼帯を素材として所望の
    ばね形状に加工し,この加工品に時効処理を施すことを
    特徴とする複合組織ステンレス鋼ばねの製造法。
  2. 【請求項2】 鋼の化学成分値は,下式に従うA値が2
    00〜500の範囲で且つB値が30〜90の範囲とな
    るように調節されている請求項1に記載の複合組織ステ
    ンレス鋼ばねの製造法。 A値=2010(%C)−25.8(%Si)+28.3(%Mn)−72.4(%P)+101(%Ni) −31.7(%Cr)+1230(%N)+43(%Cu)−38.3(%Mo)+570 B値=470(%N)+420(%C)+23(%Ni)+9(%Cu)+7(%Mn) −11.5(%Cr)−11.5(%Si)−12(%Mo)−23(%V)−47(%Nb) −49(%Ti)+189
  3. 【請求項3】 熱処理は鋼帯を連続的に通板する連続熱
    処理炉で行われる請求項1または2に記載の複合組織ス
    テンレス鋼ばねの製造法。
  4. 【請求項4】 熱処理されたフエライト+マルテンサイ
    トの複合組織の鋼帯は,圧延率10%以下の調質圧延が
    施されたうえでばね用素材に供される請求項1,2また
    は3に記載の複合組織ステンレス鋼ばねの製造法。
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US5983951A (en) * 1996-08-12 1999-11-16 Kabushiki Kaisha Toshiba Wear resistant loom part and loom comprising the same
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