JPH0516965B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 この発明は、正面フライス等の転削工具、特に
鋼、鋳物等の切削加工に用いて好適な転削工具に
関する。 〔従来の技術〕 従来、正面フライスにおいては、それが断続切
削を行うものであるため、切刃の強度が高いスロ
ーアウエイチツプ（以下、チツプと略称すること
もある。）を用いることが重要視されており、一
般的にはすくい面と側面（逃げ面）とのなす角が
直角であるネガテイブチツプが用いられていた。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら、従来の正面フライスにおいて
は、切刃強度が高いネガテイブチツプを用いてい
るにも拘らず、切刃の欠損等の問題が比較的多く
発生し、このためチツプ交換を頻繁に行わなけれ
ばならない等の問題があつた。 すなわち、ネガテイブチツプを用いた正面フラ
イスにおいては、逃げ角を確保する必要上、すく
い角を負の値にしなければならない。このため、
切削抵抗が増大して多量の切削熱が発生するとと
もに、厚さの厚い切屑が生成される。多量の切削
熱は、チツプの切刃部分を軟化させる。一方、厚
さの厚い切屑はチツプのすくい角が負であるた
め、チツプのすくい面に多大な押圧力をもつて衝
突し、そこで急激に流出方向を変えられる。この
とき、切屑は摩擦力によつてチツプのすくい角を
多量に削り取る。この削り取る量は、チツプの切
刃部分が切削熱によつて軟化せしめられているた
め、より一層助長される。この結果、チツプのす
くい面には早期に多きなクレータが発生する。こ
のクレータを画成する壁面には、切屑の流出方向
に沿つて延びる多数のすじが存する。そして、断
続切削による衝撃荷重、切屑による押圧力等によ
つてすじからクラツクが発生し、ひいてはチツプ
が欠損するという事態が惹起されていたのであ
る。また、多量の切削熱によつて切刃部分が軟化
されるため、逃げ面摩耗が大きいという問題もあ
る。 このように、従来の正面フライスにおいては、
切刃に欠損が多発し、さらに逃げ面摩耗が大きい
ため、チツプの寿命が短く、したがつてチツプを
早期に交換しなければならず、チツプ交換に多大
な手間を要するという問題があつた。この点につ
いては、正面フライスをマシニングセンタのよう
に高価な工作機械に取り付ける場合に、その稼働
率を低下させることから、大きな問題であつた。 さらに、すくい角が負になされた正面フライス
においては、切削抵抗が増大し、このためマシニ
ングセンターのような高精度の工作機械を用いた
としても、加工精度を一定限度以上向上させるこ
とができないという問題があつた。 〔発明の目的〕 この発明は、上記種々の問題を解消するために
なされたもので、チツプ寿命が長く、したがつて
チツプ交換の手間を大幅に軽減することができ、
しかも切削抵抗を軽減して加工精度の向上を図る
ことができる転削工具を提供することを目的とす
る。 〔発明をなすに至る経過〕 本発明者は、上記問題の主要因がすくい角を負
にしている点にあるものと推定し、規格のポジテ
イブチツプを正面フライスに装着して切削試験を
行つた。しかし期待する効果はほとんど得られな
かつた。そこで、従来一般の技術常識と全く相反
することになるが、すくい角が20°ないし35°の正
面フライスを作成し、切削試験を行つた。その結
果は、切刃の強度が低いため、クレータ摩耗等が
発生する以前に切刃のチツピングが発生し、この
チツピングから欠損へと進んでいまい、したがつ
て全く使用に耐えなかつた。 ところが、切刃部分にホーニングを施すと、従
来からいわれていた切刃のチツピングおよびそれ
に伴う欠損がほとんど生じることがないことが判
明した。しかも、すくい角が20°〜35°と大きいの
で、クレータ摩耗に起因する欠損も防止すること
ができ、しかも切削熱および切削抵抗を大幅に軽
減することができ、ひいはチツプ寿命を向上させ
てチツプ交換の手間を大幅に軽減することがで
き、さらに加工精度の向上を図ることができると
いう知見を得るに至つたのである。 〔発明の構成〕 この発明は、上記の知見に基づき、逃げ面の逃
げ角を30°ないし45°に設定したスローアウエイチ
ツプをそのすくい角が20°ないし35°になるように
装着するとともに、切刃にホーニングを施し、ホ
ーニング幅を0.1mmないし0.2mmでかつ前記すくい
面に対するホーニング角が30°ないし45°に設定さ
れた角度ホーニングとするか、または曲率半径が
0.05mmのないし0.1mmになされた丸ホーニングと
したことを構成上の特徴とするものである。 〔実施例〕 以下、この発明の一実施例について添付図を参
照して説明する。 第１図は、この発明に係る正面フライスを示す
断面図であつて、この図に示す正面フライスにお
いてもカツタ本体（工具本体）１の先端部に複数
のスローアウエイチツプ２がカツタ本体１の周方
向に適宜離間して着脱自在に装着されている。 チツプ２は、超硬合金あるいはサーメツトから
なるものであつて、第２図に示すように、平面略
正方形をなす平板状に形成されている。そして、
その上面がすくい面２１とされるとともに、下面
が載置面２２とされ、すくい面２１と載置面２２
との間に存する側面が逃げ面２３とされている。
この逃げ面２３とすくい面２１との交叉稜に切刃
２４が形成されている。この切刃２４は、チツプ
２が正面フライス用であるため、主切刃２４ａと
副切刃２４ｂとから構成されている。主切刃２４
ａに対応する逃げ面２３の逃げ角TNは30°ないし
45°に設定されている。また、副切刃２４ｂに対
応する逃げ面２３の逃げ角TRも同様に、30°ない
し45°に設定されている。 また、主切刃２４ａ部分には、第３図Ａ，Ｂ，
Ｃにそれぞれ示すホーニング２５が施されてい
る。第１図Ａに示すホーニング２５は、角度ホー
ニングであり、ホーニング幅Ｗが0.1mmないし0.2
mmに設定され、すくい面２１に対するホーニング
角度が30°ないし45°に設定されている。また、第
３図Ｂに示すホーニング２５は丸ホーニングであ
り、その曲率半径Ｒが0.05mmないし0.1mmに設定
されている。さらに、第３図Ｃに示すホーニング
２５は、第３図Ａに示すホーニング２５の各端部
とすくい面２１または逃げ面２３とを円弧によつ
て滑らかに連続させた複合ホーニングである。な
お、ホーニング２５は、逃げ角TNを大きくした
ことによる主切刃２４ａの強度低下を防止するも
のであるから、作用する切削荷重が小さい副切刃
２４ｂには施さなくともよい。副切刃２４ｂには
ホーニングを施す場合には、ホーニング幅または
曲率半径を主切刃２４ａに施したホーニング２５
と同等若しくは若干小さくするのがよい。 上記のように構成されたチツプ２は、切削に供
される副切刃２４ｂをカツタ本体１の軸線Ｏ方向
に向けるとともに、主切刃２４ａの真のすくい角
Ｔを20°ないし35°に設定されてカツタ本体１に配
置されている。このとき、主切刃２４ａに対応す
る逃げ面２３の実用上の逃げ角CNが10°前後にな
つているのは勿論である。なお、取付け状態にお
けるチツプの各角度は例えば次のように設定され
ている。アキシヤルすくい角Ａ＝27°、ラジアル
すくい角Ｒ＝1°、主切刃２４ａの傾き角Ｉ＝20°
である。 しかして、上記構成の正面フライスによつて切
削加工を行つた場合には、従来負の値であつたす
くい角が20°ないし35°になつているから、切削熱
の発生が大幅に低下する。したがつて、切刃部分
の軟化を大幅に押えることができる。また、生成
される切屑が薄くなり、しかも切屑が多大な押圧
力をもつてすくい面２１に衝突してその流出方向
が急激に変えられることもないから、クレータの
発生が大幅に軽減されるとともに、クレータを画
成する壁面にすじが発生することもほとんどなく
なる。このクレータの発生軽減については、切削
熱の発生が少なく、切刃部分の軟化が防止される
ことからより一層顕著になる。したがつて、クレ
ータの発生に伴う切刃部分の欠損を防止すること
ができる。しかも、主切刃２４ａ部分にホーニン
グ２５を施しているから、主切刃２４ａ部分の強
度が向上し、単に逃げ角TNを30°ないし45°に設
定してすくい角Ｔを20°ないし35°にした場合に生
じるチツピングおよびそれによつて惹起される欠
損も防止することができる。 また、切削熱の発生が少なくなつて切刃２４部
分の軟化を抑制することができるから、逃げ面摩
耗を大幅に減少する。この逃げ面摩耗の減少と欠
損防止とが相俟つて、チツプ２の寿命を向上させ
ることができ、ひいてはチツプ交換の手間を大幅
に軽減することができる。 さらに、主切刃２４ａのすくい角Ｔを20°ない
し35°に設定することにより、切削抵抗を大幅に
軽減して、被削物の変形、カツタおよび被削物の
振動等を軽減することができ、したがつてマシニ
グセンタ等の高精度工作機械の性能を十分に発揮
させて、加工精度の向上を図ることができる。 〔試験例〕 次に、この発明に係る上記正面フライスの作用
効果を確認するために行つた試験結果を紹介す
る。この試験においては、カツタ本体１に１つの
チツプのみ装着し、真のすくい角を0°、10°、20°、
30°とした点以外、各切刃角度は同様とした。切
削条件は次のとおりである。 被削材 SCM440（HB240） 切削速度 160ｍ／min 切込み量 ３mm 送り量 0.4mm／rev 総切削量 2600mm 室温 25℃ 試験結果を次表に示す。表中、切削抵抗の分力
Ｘ、Ｙ、Ｚは、第４図に示すとおりである。ま
た、切削熱は、被削材の温度の計測によつてこれ
に変えた。切削熱の項目中、瞬間熱は切刃が温度
計測器にもつとも接近した瞬間の被削材の温度を
いい、残熱は切刃が被削材から離れている間の被
削材の温度である。

〔発明の効果〕

以上説明したように、この発明のスローアウエ
イ式転削工具においては、逃げ面の逃げ角を30°
ないし45°に設定したスローアウエイチツプをそ
の切刃の真のすくい角を20°ないし35°に設定して
装着しているから、クレータ摩耗に起因する切刃
部分の決そおよび切削熱に起因する逃げ面摩耗を
大幅に軽減してチツプ寿命を大幅に向上させるこ
とができ、ひいてはチツプ交換の手間を大幅に軽
減することができる。また、切削抵抗を減少させ
ることができ、かつ切削熱の発生が少なく加工物
の変形も少ないから加工精度の向上を図ることが
できる。しかも、切刃部分にホーニングを施し、
ホーニング幅を0.1mmのいし0.2mmでかつ前記すく
い面に対するホーニング角が30°ないし45°に設定
された角度ホーニングとするか、または曲率半径
が0.05mmないし0.1mmになされた丸ホーニングと
しているから、すくい角を20°ないし35°に設定し
たことによるチツピングおよびそれに伴う欠損も
防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例を示し、第１図Ａ
はその縦断面図、第１図Ｂ，Ｃ，Ｄ，Ｅはそれぞ
れチツプの装着状態における各部の角度を示す
図、第２図はこの発明のカツタに用いられるチツ
プの一例を示し、第２図Ａはその拡大平面図、第
２図Ｂはその拡大側面図、第２図Ｃは副切刃の逃
げ角を示す図、第３図Ａ，Ｂ，Ｃはそれぞれホー
ニングの一例を示す第２図Ａの−線矢視拡大
断面図、第５図Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄはそれぞれすくい
角を0°、10°、20°、30°としたときの摩耗状況を示
す図である。 １……カツタ本体（工具本体）、２……スロー
アウエイチツプ、２１……すくい面、２４……切
刃、２５……ホーニング。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 工具本体にその周方向に沿つて切刃を有する
   複数のスローアウエイチツプを着脱自在に装着し
   てなる転削工具において、前記スローアウエイチ
   ツプの逃げ面の逃げ角を30°ないし45°に設定し、
   かつその切刃の真のすくい角を20°ないし35°に設
   定して上記工具本体に装着するとともに、前記切
   刃にホーニングを施し、このホーニングは、ホー
   ニング幅が0.1mmないし0.2mmでかつ前記すくい面
   に対するホーニング角が30°ないし45°に設定され
   た角度ホーニングであるか、また曲率半径が0.05
   mmのないし0.1mmになされた丸ホーニングである
   ことを特徴とするスローアウエイ式転削工具。