JPH05158Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は刺繍縫ミシンの下糸タルミ防止装置に
係り、特には刺繍縫いミシンの縫い始めにおける
刺繍枠の移動により生じる下糸の糸タルミから発
生する糸切れ等を防止するに関する。

（従来技術） 従来の刺繍縫いミシンで刺繍枠を使用して刺繍
縫いする際、下糸は第３図に示す如く、布を張設
する位置にて予め下糸巻４から引き出され、布枠
５に張設した布１３の下に誘導しておき、次に縫
い初めの初期位置に刺繍枠を駆動して刺繍縫いが
行われる。

（考案が解決しようとする問題点） 第３図の如く、針板の糸穴から上方に出ている
下糸が矢印Ａで示す布の移動する方向と反対側に
下糸１２が予め導かれている場合は布枠５に張設
された布１３の下面との摩擦により、下糸が布の
移動方向に移動し、図中二点鎖線で示す如く針板
２の糸穴から針板下方に流れ込み針板下のスペー
ス中に糸タルミが発生する。針板下に糸タルミの
ない状態では針板下は第５図に示すように下糸１
２は中釜３の尾端３ａと距離を有している。しか
しながら、針板下に糸タルミが発生すると、第６
図の如く半回転式の中釜３の尾端３ａに干渉して
糸喰いを起したり、下糸切れの縫い障害を発生す
る欠点があつた。

（問題点を解決するための手段） 本考案では、ミシン機枠に支承され上下動する
針と、該針を挿通するための針穴を備え前記ミシ
ン機枠に固着の針板と、該針板の下で前記針と協
働して縫目を形成する針糸捕捉手段と、前記針板
上で該針板と平行な一方向とその方向と直交する
方向に駆動され且つ布を張設する布枠とを備える
刺繍縫ミシンに於いて、縫いに先立つて前記布枠
に布を張設するために案内される布の張設位置か
ら布の張設後、刺繍縫いの始めに設定されている
初期位置への駆動運動に対し、該布枠の初期位置
への駆動方向の向きの後方部で前記針板の上面よ
り低い位置の前記ミシン機枠の適宜の位置に針板
の針穴から引き出された、前記針糸捕捉手段から
の下糸を保持するための装置を設け、布枠の移動
による糸タルミを防止することを特徴とするもの
である。

（作用） 本考案は布枠への布の張設前に、針板の針穴か
ら引き出された針糸捕捉手段の下糸を針板の針穴
に引き出される前に緊張状態となる如く下糸保持
装置で保持させ、布枠に布を張設後、刺繍縫いの
初期位置への移動による布と下位置との間の摩擦
によつて下糸に糸タルミが発生するのを防止する
ものである。

（実施例） 次に本考案の実施例を図面により詳細に説明す
る。

第１図に於いて、１はミシン機枠であり、該ミ
シン機枠に固着の針板２には前記ミシン機枠１に
上下動可能に支承された針（図示せず）が貫通す
るための針穴２ａが設けられている。３は針糸捕
捉手段たる中釜であつて、下糸巻４を収めてい
る。

５は刺繍用布枠であり、前記ミシン機枠１内に
あつて前記針の上下動と同期運転する駆動手段
（図示せず）に連結しており、前記針板２上面と
スキマａを有し該針板と平行な一方向とその方向
と直交する方向とに夫々駆動され合成方向に移動
せしめられる。６は布押さえ枠であつて、その外
周６ａと前記刺繍用布枠５の内側５ａとの間に布
１３を保持可能な形状となつている。７は下糸保
持装置であつて、前記針板２の上面より低い糸で
あつて前記ミシン機枠１の前記針板２取付部の延
長線から下に垂下する面に設けられている。

前記下糸保持装置７は第２図に示す如くの構造
であつて、前記ミシン機枠１の垂下する面１ａに
鍔部８ａを備える段ネジ８がナツト９により固着
されている。１０は糸押え皿であつて、前記段ネ
ジ８の軸部８ｂに嵌装する底部１０ａと前記段ネ
ジ８の鍔部８ａにスライド可能に覆う覆い部１０
ｂとが形成されている。前記段ネジ８の鍔部８ａ
と前記糸押さえ皿１０の底部１０ａとの間にバネ
１１が配置されており、常には前記糸押さえ皿１
０を矢印Ｂと反対方向に付勢している。

次に刺繍縫いに於ける糸の動きについて、説明
する。第３図及び第４図に於いて、前記刺繍用布
枠５は刺繍縫いに先立ち、まず図中実線で示す布
装着位置に設定され、次に縫いの初期位置（図中
二点鎖線でしめす）に設定される。第３図の如く
下糸保持装置７を備えていない場合は、布１３装
着前に前記刺繍用布枠５の移動方向である矢印Ａ
方向と反対側に引き出された下糸１２は前記針板
２の下側において、図中実線の如く緊張状態に保
持されている。この状態において、前記中釜３の
尾端３ａは第５図の如く前記下糸１２とは離隔し
ている。その布の装着位置に於いて、前記刺繍用
布枠５の内側と前記布押さえ枠６とにより布を把
持する。次に前記刺繍用布枠５は図中点線で示す
刺繍縫いの初期位置に自動的に駆動される。布装
着位置に於ける布１３と前記針板２との間は移動
時に布が針板に抵触しないようにスキマａが形成
されているが、前記下糸１２の糸端が自由状態に
なつている為、刺繍用布枠に張られた布の下面が
下糸に接触する危険があつて、接触すれば接触摩
擦により前記刺繍用布枠５が駆動される方向に下
糸が引きずられて移動し、その為前記針板２の針
穴２ａから下方の下糸の緊張が弛み針板の下に糸
タルミを第３図二点鎖線の如く生ずる結果とな
る。この糸タルミにより下糸１２は第６図の如く
不必要に屈折し、従つて前記中釜３の尾端３ａが
下糸に干渉して常に縫い始めに糸切れ等の縫い障
害を起す可能性が生ずる。

然し乍ら、本考案の前記下糸保持装置７を前記
刺繍用布枠５の移動方向Ａの向きの後方で然かも
前記針板の面より低い位置に設けることにより、
前記刺繍用布枠５への布装着前に前記中釜３から
引き出された下糸１２を糸タルミなく第４図の如
く前記針糸保持装置７に案内し、実に前記糸押さ
え皿１０を前記バネ１１のバネ圧に抗して矢印Ｂ
方向に押し上げて、前記ミシン機枠１と前記糸押
さえ皿１０との間に挟持される。下糸保持装置７
の下糸挟持力は布１３の移動に於ける該布と前記
下糸１２との接触による摩擦に対して、該下糸が
抜け出ない程度の弱い力で充分である。この為第
４図実線で示す布装着位置から二点鎖線で示す刺
繍縫いの初期位置への駆動に際しても前記下糸１
２が下糸保持装置７により保持されているから、
前述の糸タルミは発生しない。

（効果） 以上の如く本考案は、刺繍用布枠への布装着位
置から刺繍縫いの初期位置への駆動装置による自
動的な移動に際して、刺繍用布枠の駆動方向の向
きの後方に針板から引き出された下糸を刺繍用布
枠を駆動する前に、針板下の中釜から緊張した状
態で針板上面より低い位置で保持させることによ
り、刺繍用布枠の駆動による張設された布と下糸
との接触摩擦による針板下の下糸の糸タルミの発
生を防いで中釜の下糸への干渉による縫い障害を
防ぐことのできる実用上効果大なるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の下糸保持装置を備えたミシン
の部分断面図、第２図は下糸保持装置の拡大図、
第３図は下糸保持装置を持たない従来のミシンに
於ける布枠駆動時の動作説明図、第４図は本考案
の下糸保持装置を備えたミシンに於ける布枠駆動
時の動作説明図、第５図は下糸緊張状態の下糸と
中釜との関係説明図、第６図は下糸の糸タルミ発
生状態に於ける下糸と中釜との関係説明図であ
り、４は下糸巻、５は布枠、７は下糸保持装置、
１３は布である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 布を張持する刺繍用布枠と、該刺繍用布枠を駆
   動する駆動手段と、針と針糸捕捉手段との協働に
   より前記布に刺繍縫目を形成する刺繍縫いミシン
   において、布を前記刺繍用布枠に張設し易い張設
   位置から布の張設後に前記駆動手段による刺繍の
   縫い始め（スタート）位置への移動に際して、針
   板の針穴から引き出される下糸を刺繍用布枠に張
   られる布と針板上との間で前記刺繍用布枠の駆動
   方向の向きの後方で針板より低い位置の前記ミシ
   ン機枠に前記刺繍用布枠の駆動により移動する布
   が下糸への接触により生じる摩擦力に抗して下糸
   を保持する下糸保持装置を設けたことを特徴とす
   る刺繍縫ミシンの下糸タルミ防止装置。