JPH05146808A - 棒鋼圧延用ロール - Google Patents

棒鋼圧延用ロール

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JPH05146808A
JPH05146808A JP33971991A JP33971991A JPH05146808A JP H05146808 A JPH05146808 A JP H05146808A JP 33971991 A JP33971991 A JP 33971991A JP 33971991 A JP33971991 A JP 33971991A JP H05146808 A JPH05146808 A JP H05146808A
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roll
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清史 古島
Mitsuru Nakamura
充 中村
Atsushi Otobe
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 各圧延材サイズに応じたロール特性を有し、
種々の径の圧延材を長期にわたって使用可能な3ロール
圧延機を提供する。 【構成】 ロール2の傾きを互いに60度変えた3ロー
ル圧延機を2台用いて圧延する際に使用する棒鋼圧延用
カリバーロール。棒鋼圧延材の中心位置Pを基準にし
て、カリバー表面から片肉20±5mmまでの範囲内に
ある第1圧延層3は黒鉛量が面積率で0〜1.5%、硬
さがHs74〜83であり、さらにその内部の片肉20
±5mmから65mmまでの範囲内にある第2圧延層4
は黒鉛量が面積率で1.6〜4.0%、硬さがHs68
〜77である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、棒鋼等を圧延するのに
用いる3ロール圧延機用の複合カリバーロールに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】棒線材の2ロール圧延機による圧延は、
水平圧延機及び垂直圧延機を組み合わせたラインで行な
われている。粗、中間、及び仕上げの各圧延機群の圧延
用ロールは、例えば日本鉄鋼協会第50回中小型分科会
の特別講演「条鋼圧延用ロールの動向について」のP.
66の第15表「条鋼圧延用ロールの動向」や、地人書
館発行、日本鉄鋼協会編の「新版鉄鋼技術講座第2巻、
鋼材製造法」P.168(e)に示されているように、
圧延特性、圧延材温度、圧延速度、圧延材質等により、
ロール材質及びロール硬さが使用区分されている。
【0003】例えば、仕上圧延機群用の圧延ロールにお
いては、圧延速度の高速化、圧延材の低温化、及び高負
荷圧延に対応して、同じ仕上げ圧延機群のなかにおいて
も、仕上げ上流圧延機用ロールと、仕上げ中流圧延機用
ロールと、仕上げ下流圧延機用ロールとに区分して使用
され、ロール材質の選定は細分化されている。さらに同
じ仕上げ下流圧延機用ロールでも、圧延材がφ40mm
以下の細径材では圧延速度が高速となるため、耐摩耗性
に優れた合金チルドロールや、超硬ロール等が使用され
ている。また圧延材がφ40mm以上の比較的圧延速度
の遅い場合は、耐クラック性に優れたダクタイル等の鋳
鉄ロールが使用されている。このように、同じ下流仕上
げ圧延機でも、圧延材サイズによって使用ロール材質は
区分されている。仕上げ圧延機群においてロール材質等
を使い分けるのは、3ロール圧延機を用いて棒線材の仕
上圧延を行なう場合でも同様である。
【0004】ここで、上記のように複数の異なるロール
特性が求められる場合には、従来から、二重層や三重層
からなる複合ロールが用いられている。例えば特公昭6
0−18245号公報には、ロール径が減少するに従い
要求特性が異なってくる熱延鋼板の圧延に用いるため、
第1圧延層と第2圧延層で特性の異なるロール材質を持
った二重圧延層を有する複合ロールが記載されている。
この複合ロールは、例えば、耐摩耗性が必要な表面側の
第1圧延層に高合金チルド材を用い、耐クラック性が要
求される内側の第2圧延層に高合金グレン材を用い、さ
らに芯材として高級鋳鉄を用いてなる三重層構造を有す
る。
【0005】また、特公昭61−19699号公報に
は、H形鋼圧延用のロールとして、圧延時に耐摩耗性の
必要な部分と耐焼付き性が必要な部分があるため、二重
圧延層を持ったロールが記載されている。
【0006】このように、耐摩耗性と耐クラック性とい
う相反する特性を一本のロールに付与するためには、異
なった材質を組み合わせた複合ロールとすることが必要
であると考えられるようになってきている。
【0007】また、3ロール圧延機を用いる場合につい
て、異なった圧延材サイズに対してカリバーを改削する
ことなく圧延を可能にする圧延方法が提案されている
(特開昭63−43702号公報)。この方法において
は、ロールの傾きを互いに60度変えた3ロール圧延機
が2台組み合わされ、カリバー断面形状が棒鋼圧延材の
半径に対して1.0〜1.1倍の半径を有する円弧と逃
がしで構成されているロールが用られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、圧延条件
に応じて最適に使用し得るロール材質は限定され、棒線
材の製造ラインにおいても、各々の圧延ロールを使用し
得る圧延機は限定されていた。また、近年ユーザーから
要求される圧延製品の寸法精度が益々高くなり、要求圧
延材の径が変わるたびにカリバー形状の改削を行なわね
ばならなかった。このため、圧延機へのロールの組替え
を頻繁に行なうためにメンテナンスに時間がかかった
り、ロールの常備数を増加するために保管場所の確保や
在庫管理に手間がかかり、非常に不経済であった。
【0009】また、2ロール圧延機を用いる場合に対し
て、3ロール圧延機を用いる場合には、別の問題があ
る。すなわち、2ロール圧延機を用いて棒線材を圧延す
る場合には、ほとんどの圧延機においてロール同士の間
隔つまり圧下量を自由に調整することができるため、ロ
ール外径に関係なく同一の圧延材サイズを圧延すること
ができる。これに対し、図4に示すような3ロール圧延
機では、圧延材1の中心位置からロール2の回転軸中心
位置までの距離はほぼ一定なため(すなわち、ロールの
外径に対してカリバー断面形状が限定されるので、上記
距離を大きく変えることができないため)、圧延材のサ
イズが限定される。そのため、異なる圧延材サイズに対
応させるためには、それぞれの圧延材サイズに対応した
カリバー断面形状を有するロールを準備しなければなら
い。また、ロールの圧延可能有効径の観点からみれば、
通常のロールはロール材質が一本のロールの中で変化し
ないため、そのロール材質が適するロール径の範囲外で
はそのロールは使用不適となり、ロールの圧延可能な有
効径の範囲は非常に小さなものとなっていた。
【0010】以上の問題を解消し得るように異なった圧
延特性を一本のロールに付与するためには、異なるロー
ル材質の複合化が必要である。しかし、異材質の層を溶
着一体化すると、どうしても異材質同士の混合した遷移
層が発生する。この遷移層は使用できないため改削除去
する必要があり、また無理をして使用しても圧延成績が
悪いという問題がある。
【0011】従って、本発明の目的は、このような全て
の問題点を解消し、各圧延材サイズに応じたロール特性
を有し、小径材の圧延から大径材の圧延まで長期に渡っ
て使用可能な3ロール圧延機用ロールを提供することで
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ロールの
傾きを互いに60度変えた3ロール圧延機を2台用いて
棒鋼を圧延する場合において、まず、棒鋼圧延材中心位
置を基準にしてカリバー表面から片肉20±5mmまで
の範囲の第1圧延層には、従来から単一材質ロールで用
いられているチルド材質を、さらにその内部の第2圧延
層には同じく単一材質ロールで用いられているダクタイ
ル材質を用いたロールについて、研究を行なった。その
結果、第2圧延層の部分に異常金属組織を呈する遷移組
織層部分が発生し、十分な特性を発揮出来ないという問
題があることを発見した。
【0013】そこで原点に戻って、ロールの損耗状況と
組織との関係について検討を行なった結果、ロールの硬
さと黒鉛量によって耐摩耗性と耐クラック性が調整でき
ることに想到した。すなわち、ロール硬さが高く黒鉛量
が少ないと耐摩耗性がよく、ロール硬さが低くて黒鉛量
が多いと耐クラック性が優れるということである。そし
て、このようなロール特性の変更は、成分のわずかの変
更でなしうること、またこのような構成のロールを用い
れば、小径材から大径材までの全てのサイズの棒鋼の圧
延において、耐摩耗性及び耐クラック性が総合的に優れ
た性能を発揮するようにできることを発見した。
【0014】さらに棒鋼圧延材の半径に対して1.0〜
1.1倍の半径を有する円弧と逃がしで形成されたカリ
バー断面形状を有するロールを用いて、サイジング圧延
を行なえば、製品の偏径差を大きく損なうことがないこ
とを見出した。本発明はこれらの発見に基づき完成した
ものである。
【0015】すなわち、本発明の棒鋼圧延用カリバーロ
ールは、ロールの傾きを互いに60度変えた3ロール圧
延機を2台用いて圧延する際に用いるもので、棒鋼圧延
材の中心位置を基準にして、カリバー表面から片肉20
±5mmまでの範囲内にある第1圧延層は黒鉛量が面積
率で0〜1.5%、硬さがHs74〜83であり、さら
に内部の片肉20±5mmから65mmまでの範囲内に
ある第2圧延層は黒鉛量が面積率で1.6〜4.0%、
硬さがHs68〜77であることを特徴とする。
【0016】本発明の棒鋼圧延用カリバーロールにおい
てカリバー表面の断面形状は、棒鋼圧延材の半径に対し
て1.0〜1.1倍の半径を有する円弧と逃がしで形成
されているのが好ましい。
【0017】
【実施例及び作用】本発明を添付図面を参照して詳細に
説明する。
【0018】[1] ロールの層構成 図1に示すように、棒鋼圧延材の中心位置Pを基準にし
て、カリバー表面6から片肉20±5mmまでの範囲内
にある第1圧延層3では、組織中の黒鉛量は、面積率で
0〜1.5%とする。この圧延層域では圧延材のサイズ
が小さいので、高速で圧延材が接触する。そのため、ロ
ール表面に耐摩耗性が要求される。クラック発生につい
てはほとんど問題がないので、組織中に黒鉛がなくても
よいが、黒鉛量が2.0%を超えると、耐摩耗性が低下
して異常摩耗を発生する。好ましい黒鉛量の面積率は0
〜1.0%である。
【0019】第1圧延層3の硬さについては、上記のよ
うに耐摩耗性が必要なため、Hs74〜83とする。H
s74未満では耐摩耗性が十分でなく、またHs83を
超えても耐摩耗性の向上はみられないうえに、高硬さを
得ようとすると製造時に割れ等の不具合が発生する。
【0020】第1圧延層3よりさらに内部の片肉20±
5mmから65mmまでの範囲内にある第2圧延層4で
は、圧延材のサイズが大きく、圧延材の接触速度が低く
なり、耐摩耗性に代わって耐クラック性が要求される。
このため黒鉛量は面積率で1.6〜4.0%とする。黒
鉛の面積率が1.6%未満ではロール表面のクラックの
発生が激しくなり、一方4.0%を超えると最低限必要
な硬さ及び耐摩耗性が確保できない。好ましい黒鉛量の
面積率は1.6〜3.5%である。硬さは前記の要求特
性によりHs68〜77とする。Hs68未満では耐摩
耗性が十分でなく、Hs77を超えるとクラックが発生
しやすくなる。
【0021】第2圧延層4より内側の内層(芯材)5
は、ダクタイル鋳鉄等の強靭性材料により形成する。こ
の強靭性材料としては、公知の鋳鉄を使用することがで
きる。
【0022】[2] 第1圧延層の材質 本発明の第1の実施例においては、第1圧延層の化学成
分は、重量比で、C:3.1〜3.6%、Si:0.3
〜0.8%、Mn:0.4〜0.9%、P:0.5%以
下、S:0.05%以下、Ni:2.5〜4.5%、C
r:1.0〜1.9%、Mo:0.1〜0.5%、残部
実質的に不純物元素及びFeからなる。
【0023】(1) C:3.1〜3.6% Cは炭化物形成及び黒鉛形成元素であるが、3.1%未
満では炭化物量が少なくなり耐摩耗性を保持できなくな
る。一方3.6%を超えると、炭化物又は黒鉛量が過剰
となり材質が脆弱化する。
【0024】(2) Si:0.3〜0.8% Siは黒鉛量の制御及び脱酸の作用を有するが、0.3
%未満ではその効果は不十分である。しかし、0.8%
を超えて含有すると、必要以上に黒鉛量が増加し、硬さ
の確保が困難になるとともに、フェライト中に固溶した
Siが材質を脆弱にする。
【0025】(3) Mn:0.4〜0.9% MnはSと結合してSの悪影響を排除するととも、脱酸
効果があり、同時に硬さ及び耐摩耗性向上に寄与する。
しかし、Mnが0.4%未満ではその効果が少なく、一
方0.9%を超えると材質が脆弱となる。
【0026】(4) P:0.5%以下 Pは溶湯の流動性を高めるとともに、耐摩耗性を付与す
るが、材質を脆くするため0.5%以下に抑える。特に
0.15%以下とするのが好ましい。
【0027】(5) S:0.05%以下 SはPと同様に材質を脆弱にするため、低く抑える必要
があるため0.05%以下とする。特に0.04%以下
とするのが好ましい。
【0028】(6) Ni:2.5〜4.5% Niは基地硬さを上げ、耐摩耗性を向上させるため2.
5%以上添加する。しかし、組織の高温安定性を滅じ耐
肌荒性を劣化させる作用もあるため、4.5%以下とす
る。
【0029】(7) Cr:1.0〜1.9% Crは、炭化物の強化、炭化物量の制御、基地組織の強
化等のために添加する。1.0%未満ではその効果が少
なく、一方1.9%を超えると炭化物量が多くなり過ぎ
るとともに、耐クラック性に効果のある黒鉛が得られな
くなり、材質が脆弱化する。
【0030】(8) Mo:0.1〜0.5% Moは、炭化物の形状改善及び基地硬さを確保する作用
があるが、0.1%未満ではその効果が少ない。一方
0.5%を超えると、その効果が飽和する。
【0031】本発明の第2の実施例においては、第1圧
延層の化学成分は、重量比で、C:3.1〜3.6%、
Si:0.3〜0.8%、Mn:0.4〜0.9%、
P:0.1%以下、S:0.05%以下、Ni:2.5
〜4.5%、Cr:1.0〜1.9%、Mo:0.1〜
0.5%、V:0.3〜0.8%、残部実質的に不純物
元素及びFeからなる。前記第1の実施例との違いはV
を添加したことにある。
【0032】(9) V:0.3〜0.8% Vは炭化物を形成して黒鉛の晶出を阻止する元素であ
り、白銑化して耐摩耗性向上に効果がある。0.3%未
満では黒鉛晶出阻止効果が小さく、0.8%を超えると
その効果が飽和し、過剰分はVC炭化物の形成に作用す
るようになる。
【0033】V以外の成分の限定理由については、上記
と同様である。なお、Pは、溶湯の流動性を高めるとと
もに耐摩耗性を付与するが、材質を脆くするので、これ
を防止するため、第2の実施例においては0.1%以下
に抑える必要がある。
【0034】[3] 第2圧延層の材質 本発明の第1圧延層と組み合わせて使用する第2圧延層
の化学成分は、第1の実施例においては、重量比で、
C:3.1〜3.6%、Si:0.5〜1.3%、M
n:0.4〜0.9%、P:0.1%以下、S:0.0
5%以下、Ni:2.5〜4.5%、Cr:1.0〜
1.9%、Mo:0.1〜0.5%、残部実質的に不純
物元素及びFeからなる。第2圧延層は、第1圧延層に
比べて耐摩耗性よりも耐クラック性が要求されるため、
耐クラック性に効果のある黒鉛を晶出させる目的で、成
分変更を行なっている。その成分限定理由について以下
に詳述する。
【0035】(1) C:3.1〜3.6% Cは黒鉛形成及び炭化物形成元素であるが、3.1%未
満では白銑化傾向が著しく、耐クラック性に効果の大き
い黒鉛の晶出が難しくなる。一方3.6%を超えると、
黒鉛量が過剰となり、硬さ及び耐摩耗性の点で問題を来
たす。
【0036】(2) Si:0.5〜1.3% Siは黒鉛量の制御及び脱酸のためのものであり、耐ク
ラック性が要求される第2圧延層においては黒鉛を晶出
させてクラックの発生を防止するために添加する。0.
5%未満では、黒鉛の晶出量が少ないが、1.3%を超
えて含有すると、必要以上に黒鉛量が増え、硬さの確保
が困難になる。
【0037】(3) Mn:0.4〜0.9% MnはSと結合してSの悪影響を排除するとともに、脱
酸効果があり、同時に硬さ及び耐摩耗性の向上に寄与す
る。しかし、0.4%未満ではその効果が少なく、一方
0.9%を超えると材質が脆弱となる。
【0038】(4) P:0.1%以下 Pは溶湯の流動性を高めるが、材質を脆くするため0.
1%以下に抑える。
【0039】(5) S:0.05%以下 SはPと同様に材質を脆弱にするため、低く抑える必要
があるため0.05%以下とする。
【0040】(6) Ni:2.5〜4.5% Niは、基地硬さを上げて耐摩耗性を向上させるため、
2.5%以上添加する。しかし、組織の高温安定性を滅
じ耐肌荒性を劣化させる作用もあるため、4.5%以下
とする。
【0041】(7) Cr:1.0〜1.9% Crは、炭化物の強化、炭化物量の制御、基地組織の強
化等のために添加する。1.0%未満ではその効果が少
ないが、1.9%を超えると炭化物量が多くなり過ぎる
とともに、耐クラック性に効果のある黒鉛が得られなく
なり、材質が脆弱化する。
【0042】(8) Mo:0.1〜0.5% Moは炭化物の形状改善及びマトリックス硬さの確保を
するのに有効であるが、0.1%未満ではその効果が少
ない。一方0.5%を超えると、その効果が飽和する。
【0043】本発明の第2の実施例においては、第2圧
延層の化学成分は、重量比で、C:3.1〜3.6%、
Si:0.5〜1.3%、Mn:0.4〜0.9%、
P:0.1%以下、S:0.05%以下、Ni:2.5
〜4.5%、Cr:1.0〜1.9%、Mo:0.1〜
0.5%、V:0.3%以下、残部実質的に不純物元素
及びFeからなる。第2圧延層は、第1圧延層に比べて
耐摩耗性よりも耐クラック性が要求されるため、耐クラ
ック性に効果のある黒鉛を晶出させる目的で、成分変更
を行なっている。鋳造時に特にVを添加しないが、前記
第1圧延層と溶着するために、Vが混入している。Vが
混入している以外は、上記組成と同様である。
【0044】(9) V:0.3%以下 Vは炭化物を形成し黒鉛の晶出を阻止する元素であり、
耐摩耗性向上の効果や結晶粒微細化の効果があるが、耐
クラック性を重視する第2圧延層においては有害元素と
なる。前記第1圧延層と溶着させて用いるために混入す
るが、0.3%を超えると黒鉛晶出阻止作用が大きく、
耐クラック性が低下する。
【0045】[4] カリバー断面形状 通常の3ロール圧延機においては、カリバーの断面形状
は棒鋼圧延材と同サイズであるが、本発明においては、
ロールの傾きを互いに60度変えた3ロール圧延機を2
台用いて圧延するため、カリバーの断面形状が、棒鋼圧
延材の半径に対して1.0〜1.1倍の半径を有する円
弧と逃がしで形成されたロールを用いるのが好ましい。
このようなロールを用いてサイジング圧延を行なえば、
製品の偏径差を大きく損なうことがない。ただし、カリ
バーの断面形状が棒鋼圧延材の半径に対して1.1倍よ
り大きい場合には、カリバー断面形状と圧延材の形状と
の差が大きいため、圧延材断面形状が六角形のような形
状となり、良好な偏径差の製品を得ることができない。
【0046】本発明にかかわる棒鋼圧延用ロールは、以
上のように、第1圧延層及び第2圧延層で異なった特性
を持つているが、その製造方法の例を、本発明の一実施
例によるロールを示す図1を参照しながら、次に説明す
る。
【0047】まず内面に耐火材を被覆した遠心鋳造用鋳
型を遠心力鋳造機上で回転し、これに第1圧延層3を形
成すべき溶湯を鋳込み、その後第2圧延層4の溶湯を鋳
込む。第1圧延層3と第2圧延層4が凝固した後、ダク
タイル鋳鉄等の強靭性材料からなる内層5を鋳込み、第
1圧延層3と第2圧延層4と内層5との三者を金属的に
完全に結合させた一体の複合ロールを得る。
【0048】以上のようにして鋳造一体化した複合ロー
ルに、所定の熱処理を施して必要な硬さとなるように組
織を調整する。本発明のロールがスリーブの場合には、
アーバーに取り付けて圧延に使用する。
【0049】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
【0050】実施例1 表1に示す組成1の溶湯を溶製し、内径590mm、長
さ1150mmの遠心鋳造用鋳型を回転させながら、第
1圧延層3が片肉30mmの厚さになるように注湯し
た。次に上記圧延層3の内面が凝固した後、組成3の溶
湯を注湯し、片肉45mmの厚さの第2圧延層4を形成
した。第2圧延層4が凝固した後、さらに内層5として
ダクタイル鋳鉄の溶湯を片肉115mm厚さになるよう
に注湯し、凝固後解体し、熱処理、切断加工を行ない、
本発明のロール1として外形570mm、内径300m
m、長さ90mmの3ロール圧延機用ロール6個を製作
した。これらのロールをアーバーに取り付けて3ロール
圧延機2台に組み込んだ。
【0051】次に本発明のロール2として、表1に示す
組成2の溶湯を第1圧延層3とし、組成3の溶湯を第2
圧延層4とし、本発明のロール1と同様の方法で製作し
た。
【0052】また比較用の従来材質ロールとして、表2
に示す比較ロール1のチルドロールと比較ロール2のダ
クタイルロールを、単一の圧延層として片肉75mmの
厚さになるように製作し、それぞれ圧延機に組み込ん
だ。
【0053】これらのロールの成分、黒鉛量及び硬さを
表2及び表3に示す。
【0054】 表1 溶 湯 の 化 学 成 分 (wt%) 組成No. Si Mn Ni Cr Mo Fe 組成1 3.3 0.6 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 − bal 組成2 3.3 0.5 0.6 0.07 0.02 3.1 1.3 4 0.5 bal 組成3 3.3 0.8 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 − bal
【0055】 表2 ロ ー ル の 化 学 成 分 (wt%) Si Mn Ni Cr Mo Fe 本発明のロール1 第1圧延層 3.3 0.6 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 − bal 第2圧延層 3.3 0.8 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 − bal本発明のロール2 第1圧延層 3.3 0.5 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 0.5 bal 第2圧延層 3.3 0.8 0.6 0.08 0.03 3.1 1.3 0.4 0.1 bal比較ロール1 圧延層 3.4 0.4 0.3 0.30 0.08 3.1 0.8 0.3 − bal比較ロール2 (注) 圧延層 3.5 0.5 0.6 0.07 0.02 2.5 0.6 0.6 − bal (注)比較ロール2は他にMg0.04%を含む。
【0056】 表3 圧延材直径 圧延材中心から 黒鉛面積率 硬さ (mm) の距離(mm) (%) Hs) 本発明のロール1 圧延層1 20 10 0.5 80 圧延層2 60 30 1.8 75 圧延層2 120 60 3.0 70本発明のロール2 圧延層1 20 10 0 82 圧延層2 60 30 1.6 78 圧延層2 120 60 2.5 72比較ロール1 20 10 0 82 単一圧延層 60 30 0 81 120 60 0 80比較ロール2 20 10 2.5 68 単一圧延層 60 30 3 66 120 60 3.5 64
【0057】各ロールを用いて、直径20mm、60m
m、及び120mmの圧延材をそれぞれ700トン圧延
した。そのときのロール摩耗量を図2に示す。ロール摩
耗量は、圧延材の径が小さいほど全体的に大きいが、そ
の中で、比較ロール1の摩耗が少なく、以下本発明のロ
ール2、本発明のロール1、比較ロール2の順番になっ
ている。表3を参照すると、硬さが大で黒鉛量の少ない
ものほど耐摩耗性に優れることがわかる。
【0058】また耐クラック性を評価するため、圧延後
のロール表層部から試験片を採取し、発生しているクラ
ックの深さを断面観察により調べた。その結果、比較ロ
ール1は、直径120mmの棒材の圧延のとき相対的に
著しいクラックが認められ、圧延材が60mm、20m
mと小さくなるにしたがってクラックは軽微となってい
た。本発明のロール2は、120mm材のとき相対的に
軽度のクラックが認められ、圧延材が60mm、20m
mと小さくなるにしたがってクラックは軽微となってい
た。本発明のロール1は、同じような傾向でさらに軽度
のクラックとなっていた。比較ロール2は、いずれの圧
延材のときも軽微であり、殆んどクラックが認められな
かった。これらのことから、耐クラック性は黒鉛量が多
く硬さが小のものほど優れることがわかる。
【0059】耐摩耗性と耐クラック性を総合して判断す
ると、本発明のロール1及びロール2は、全ての圧延材
サイズに対して良好な圧延成績が得られることがわか
る。
【0060】実施例2 実施例1で作成した6個の本発明のロール1のロール表
面6に半径20mmの断面形状を持つカリバーを加工
し、ロールの傾きを互いに60度変えた3ロール圧延機
2台に組込んだ。次に、圧延材として表4に示す直径の
丸棒鋼各2トンづつを減面率20%で圧延し、真円度を
測定した。結果を表4に示す。真円度は丸棒においては
図4に示す最小径Aと最大径Bの差の平均径に対する割
合である。
【0061】通常の圧延に使われるカリバー半径の1.
0倍、つまりカリバー半径20mmによる直径40mm
の圧延材から、カリバー半径の1.1倍、つまりカリバ
ー半径22mmによる直径40mmの圧延材までのもの
だけ、真円度規格1.5%以下の条件を満足している。
このように、本発明の範囲の1.0倍〜1.1倍では、
規格を満足し、1.1を超えたものは規格を外れている
ことがわかる。また、1.0倍未満のものについても同
様に規格外れとなっている。
【0062】 表4 カリバー半径(mm) 19 20 21 22 23 〔カリバー半径/圧延材半径〕〔0.95〕〔1.00〕〔1.05〕〔1.10〕〔1.15〕 最小径 A (mm) 37.68 39.78 41.84 43.95 45.61 最大径 B (mm) 38.32 40.36 42.12 44.08 46.39 真円度(A−B)/平均径 (%) 1.68 1.45 0.67 0.30 1.70
【0063】
【発明の効果】以上の通り、ロールの傾きを互いに60
度変えた3ロール圧延機を2台組み合わせて用いる場合
の複合ロールにおいて、ロール硬さ及び黒鉛量を規定す
ることにより、各圧延材サイズに応じたロール特性を有
するように調整したので、小径材から大径材の圧延まで
長期にわたって使用可能である。さらに、この特性を維
持しつつ、棒鋼圧延材の半径に対して1.0〜1.1倍
の半径の円弧と逃がしで形成したカリバー表面断面形状
を有するロールを、この3ロール圧延機に用いることに
より、適正なカリバー径で圧延したときと同等の製品精
度を効率良く得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるカリバーロールを示す
断面図である。
【図2】圧延材サイズとロール摩耗量との関係を示すグ
ラフである。
【図3】真円度を説明するための圧延材の断面図であ
る。
【図4】3ロール圧延機を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 圧延材 2 ロール 3 第1圧延層 4 第2圧延層 5 内層 6 カリバー表面 A 圧延材最小径 B 圧延材最大径 P 圧延材の中心
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 充 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内 (72)発明者 乙部 厚志 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロールの傾きを互いに60度変えた3ロ
    ール圧延機を2台用いて圧延する際に使用する棒鋼圧延
    用カリバーロールにおいて、棒鋼圧延材の中心位置を基
    準にして、カリバー表面から片肉20±5mmまでの範
    囲内にある第1圧延層は黒鉛量が面積率で0〜1.5
    %、硬さがHs74〜83であり、さらにその内部の片
    肉20±5mmから65mmまでの範囲内にある第2圧
    延層は黒鉛量が面積率で1.6〜4.0%、硬さがHs
    68〜77であることを特徴とする棒鋼圧延用カリバー
    ロール。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の棒鋼圧延用カリバーロ
    ールにおいて、カリバー表面の断面形状が、棒鋼圧延材
    の半径に対して1.0〜1.1倍の半径を有する円弧と
    逃がしで形成されていることを特徴とする棒鋼圧延用カ
    リバーロール。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の棒鋼圧延用カリ
    バーロールにおいて、第1圧延層の化学成分が、重量比
    で、C:3.1〜3.6%、Si:0.3〜0.8%、
    Mn:0.4〜0.9%、P:0.5%以下、S:0.
    05%以下、Ni:2.5〜4.5%、Cr:1.0〜
    1.9%、Mo:0.1〜0.5%、残部実質的に不純
    物元素及びFeからなることを特徴とする棒鋼圧延用カ
    リバーロール。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の棒鋼
    圧延用カリバーロールにおいて、第2圧延層の化学成分
    が、重量比で、C:3.1〜3.6%、Si:0.5〜
    1.3%、Mn:0.4〜0.9%、P:0.1%以
    下、S:0.05%以下、Ni:2.5〜4.5%、C
    r:1.0〜1.9%、Mo:0.1〜0.5%、残部
    実質的に不純物元素及びFeからなることを特徴とする
    棒鋼圧延用カリバーロール。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の棒鋼圧延用カリバーロ
    ールにおいて、第1圧延層の化学成分が、重量比で、
    C:3.1〜3.6%、Si:0.3〜0.8%、M
    n:0.4〜0.9%、P:0.1%以下、S:0.0
    5%以下、Ni:2.5〜4.5%、Cr:1.0〜
    1.9%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.3〜0.
    8%、残部実質的に不純物元素及びFeからなることを
    特徴とする棒鋼圧延用カリバーロール。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の棒鋼圧延用カリバーロ
    ールにおいて、第2圧延層の化学成分が、重量比で、
    C:3.1〜3.6%、Si:0.5〜1.3%、M
    n:0.4〜0.9%、P:0.1%以下、S:0.0
    5%以下、Ni:2.5〜4.5%、Cr:1.0〜
    1.9%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.3%以
    下、残部実質的に不純物元素及びFeからなることを特
    徴とする棒鋼圧延用カリバーロール。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005169426A (ja) * 2003-12-09 2005-06-30 Hitachi Metals Ltd 圧延用複合ロール
JP2005169422A (ja) * 2003-12-09 2005-06-30 Hitachi Metals Ltd 圧延用複合ロール
JP2011000598A (ja) * 2009-06-16 2011-01-06 Nittetsu Sumikin Rolls Kk 圧延用複合スリーブロール

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