JPH051312A - ベルレス高炉の原料装入方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ベルレス高炉において、鉱石とコークスの堆積
重量比分布（ O/C分布）の周方向偏差を助長することな
しに、異種原料（細粒原料など）の炉内分布を制御して
これらの原料を高炉の炉壁近傍部位に堆積させる。 【構成】炉頂バンカー４内に貯えられた原料８を内振り
分配方式で高炉内に装入するに際し、炉頂バンカー４内
の通常原料８の排出が完了する前に排出口を閉操作し、
異種原料を前記の炉頂バンカー４内に供給した後、再び
この炉頂バンカー４の排出口を開操作して高炉内に原料
８を装入する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、高炉炉頂部に設けられ
た原料貯槽（以下、「炉頂バンカー」または単に「バン
カー」という）と原料を高炉内に装入するための分配シ
ュートを有するベルレス高炉における原料装入方法に関
する。

【０００２】

【従来の技術】高炉操業においては、炉内径方向におけ
るガス流分布を制御し、炉内に装入した鉱石の還元、溶
解を安定して行うことが操業上の基本課題である。

【０００３】高炉内におけるガス流分布を制御するため
に採られる主な手段は、炉頂バンカーから炉内へ装入さ
れる原料の分布状態の制御で、そのために、(a) 炉内径
方向における鉱石とコークスの堆積重量比分布（以下、
「O/C 分布」という）の制御、および、(b) 鉱石、コー
クスなど、原料の粒径分布の制御が行われている。

【０００４】ベルレス高炉における原料装入装置（ベル
レス装入装置）は、高炉内に直接原料を供給する炉頂バ
ンカーが１基のものと複数個のものとに大きく分類でき
る。

【０００５】図１は、直列に２段の炉頂バンカーを有す
るベルレス装入装置の一例の構成を示す図である。この
図において、原料（鉱石、焼結鉱、コークス）１はベル
トコンベア２で搬送され、まず炉頂の上段バンカー３に
蓄えられ、下段バンカー４内の原料が排出された後、下
段バンカー４に供給される。そして、炉内の装入物が荷
下がりして所定のストックライン５に達すると、装入物
流量調整用のゲート弁６およびシール弁７を開操作し
て、下段バンカー４内の原料８を分配シュート９上に供
給し、この分配シュート９の傾動角度を調整して原料８
を炉内10に装入する。

【０００６】このベルレス高炉において、前記(a) の炉
内径方向における O/C分布の制御は、分配シュート９の
運転スケジュール (具体的には、分配シュート傾動角の
設定とその傾動角での旋回数の割り付け)を定め、それ
に基づいて分配シュートを操作することによってなされ
る。すなわち、ベルレス装入装置により炉頂バンカー４
内の原料８を炉内に装入する場合、通常は、分配シュー
ト９を10回以上旋回させて原料を炉内に装入し、かつ、
その間に分配シュート９の傾動角度を１回以上変更して
原料の炉内落下位置を変化させる装入形態をとってい
る。このとき分配シュート９に供給される原料８の粒径
が、炉頂バンカー４からの１回のダンプの中で経時的に
変化すると、その影響は炉の内径方向の粒径分布に現れ
る。

【０００７】一方、(b) の原料の粒径分布の制御は、以
下のようになされている。

【０００８】近年の高炉操業においては、原料コストの
低減、あるいは炉内径方向のガス流分布の制御性の向上
を狙って、細粒の原料の他、低強度の原料、反応性の低
い原料など高炉原料として劣質な原料 (以下、これらを
「異種原料」という) を、炉内径方向の特定部位に選択
的に分布させる操業 (特開昭55−62106 号公報）が指向
されており、この原料を高炉で使用するにあたっては、
これらの原料を炉壁近傍部に偏在させるように制御して
いる。

【０００９】その具体的な方法としては、異種原料を分
配シュートに直結している別の炉頂バンカーを使用して
別バッチで高炉内に装入し、その際、分配シュートの傾
動角度および各傾動角度での旋回数の配分を調整するこ
とによって、異種原料の炉内における分布状況を制御し
ようとする方法がある。

【００１０】また、これとは異なる方法として、炉頂バ
ンカー内における原料の流動特性を利用して、上記の目
的を達成しようとする方法がある。原料の流動特性と
は、炉頂バンカーの底部から原料を排出する場合にみら
れる流動特性であって、まず、排出口の上方部にある原
料が排出され、続いて炉頂バンカーの周辺部にある原料
が排出される所謂ファンネルフロー型の流動特性 (鉄と
鋼 74(1988) P.978 ）である。このような流動特性を示
すことが、粒度幅の大きい原料を一旦炉頂バンカーに貯
えた後排出する際に、排出される原料の粒度が経時的に
変化する一因になっているのであるが、この原料の流動
特性を利用して異種原料を炉内径方向の特定部位に選択
的に分布させるのである。すなわち、異種原料を、例え
ば原料の炉内装入の初期に排出させたければ、排出口の
上方部に偏在させればよく、末期に排出させたければ炉
頂バンカーの周辺部に偏在させればよいことになる。異
種原料を炉頂バンカー内の特定部位に偏在させる具体的
な方法としては、バンカー内に昇降可能な蓋付きの中空
円筒を設けて、内部を仕切る方法 (特開昭61−157604号
公報)などが公知である。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】原料の粒径分布の制御
を行うに際し、上記のように、異種原料を炉内径方向の
特定部位に選択的に分布させる方法には、次のような問
題点がある。すなわち、異種原料を別バッチで装入する
方法においては、１バッチ当たりの異種原料の装入量が
少なくなってくると装入に要する分配シュート旋回数が
減少していくため、炉内の円周方向の堆積量に偏差が現
れ、異種原料の分布のみならず O/C分布においても周方
向偏差を生ずる危険性がある。また、炉頂バンカー内に
仕切りを設ける方法は、バンカー内に工作物をおき、こ
れで制御することとなるたため、設備のメンテナンス上
の問題がある。

【００１２】本発明は、ベルレス高炉における異種原料
の炉内分布を制御すること、すなわち、劣質の原料を高
炉の炉壁近傍部位に確実に堆積させることができ、か
つ、設備のメンテナンス上の問題が少なく、 O/C分布の
周方向偏差を助長することのない原料装入方法を提供す
ることを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、「ベル
レス装入装置を有する高炉の原料貯槽（図１に示すよう
な多段方式においては、最下段の貯槽）内に貯えられた
原料を内振り分配方式で炉内に装入するに際し、原料貯
槽内の通常原料の排出が完了する前に排出を一旦停止
し、予め仕分けした異種原料を前記の原料貯槽内に供給
した後、再びこの原料貯槽内の原料の排出を開始して高
炉内に原料を装入することを特徴とするベルレス高炉の
原料装入方法」にある。

【００１４】つまり、本発明方法は高炉炉内への原料の
装入を、前段と後段の２段に分けて行うのである。

【００１５】焼結鉱、コークス等の原料を分配シュート
を介して炉内に装入する方法としては、通常、分配シュ
ートの傾斜角を操作して炉壁部から炉中心部に向かって
順次原料を装入する内振り分配方式が採られている。本
発明はこの内振り分配方式を前提とするものである。

【００１６】前記の通常原料とは、ここでは、高炉内に
装入される原料のうち劣質な異種原料を除いた原料をい
う。

【００１７】なお、異種原料とは、前記のように、高炉
原料として劣質な原料であって、細粒の原料の他、低強
度の原料、反応性の低い原料などを含んでもよく、制御
の必要性に応じて、異種原料として予め仕分けしておけ
ばよい。

【００１８】

【作用】以下に、本発明方法の作用効果、すなわち、本
発明方法を適用することにより異種原料の炉内分布を制
御することができる理由について述べる。

【００１９】先に述べたように、原料排出時における炉
頂バンカー内の原料の流動形態はファンネルフローであ
るため、バンカー内原料の堆積部位別の排出順序は、概
ね図２に示すようなパターンになる。すなわち、最初、
の部位にある原料が排出され、次いでの部位、さら
に、の部位と続く。これに伴って、原料排出時のバ
ンカー内原料の表面は、排出口の上方部（図２のの部
位の上方部）が陥没し始め、次第にその度合いを増し、
すり鉢状を呈するに到る。炉頂バンカー内原料の表面形
状がこのようなすり鉢状になったところで排出を中断
し、すり鉢部（凹部）に異種原料を装入して堆積させ、
その後原料の排出を再開すると、この異種原料が初期に
排出されることになる。従って、内振り分配装入により
炉壁部から炉中心部に向かって順次原料を装入していけ
ば、異種原料を炉壁近傍部位に堆積させることができ
る。

【００２０】このような装入方法を採れば、異種原料を
他の原料と区別することなく連続的に炉内に装入でき、
異種原料を別バッチで装入する場合にみられる、分配シ
ュートの旋回数の減少に起因する周方向の堆積量の偏差
や、 O/C分布の周方向偏差を惹起することがない。ま
た、炉頂バンカー内に工作物を設ける必要もないので、
設備メンテナンス上の新たな問題が生ずることもない。

【００２１】なお、本出願人は特開昭57−207104号公報
で原料排出の中断操作を構成要件の一つとする装入方法
の発明を提案したが、その方法は、炉内円周方向への原
料堆積量を制御しようとするものであり、また、炉頂バ
ンカーからの原料排出の中断および再開のタイミングを
分配シュートの旋回方位を基に決定しており、目的およ
び制御の考え方のいずれも本発明方法とは異なる。

【００２２】

【実施例】実物大の模型を用い、本発明方法を適用して
実験を行い、異種原料の炉内における分布状態を調査し
た。炉内への装入物としては焼結鉱を用い、異種原料と
しては焼結鉱に着色を施した着色焼結鉱を、通常原料に
は無着色焼結鉱を使用した。表１に、用いた模型の要部
の寸法および焼結鉱の装入条件を示す。

【００２３】

【表１】

【００２４】実験は以下の手順に基づいて行った。な
お、原料の炉内への装入は内振り分配装入により行っ
た。表２に装入実験で用いた分配シュートスケジュール
を示す。

【００２５】(1) 通常原料（無着色焼結鉱）を炉頂バン
カーに受け入れる（炉頂バンカー内の通常原料の表面プ
ロフィルは、後述の図３の破線のようになる）。

【００２６】(2) 炉頂バンカーの排出ゲートを開操作し
てバンカー内の通常原料のうち、所定量を炉内に装入
(以下、これを「前段装入」という) した後、排出ゲー
トを閉操作して装入を中断する（バンカー内の通常原料
の表面プロフィルは、図３の実線のようになる）。

【００２７】(3) 異種原料（着色焼結鉱）を炉頂バンカ
ーに装入し、既にバンカー内にある通常原料（無着色焼
結鉱）のすり鉢部（凹部）に堆積させる（バンカー内の
原料の表面プロフィルは、図３の一点鎖線のようにな
る）。

【００２８】(4) 再び炉頂バンカーの排出ゲートを開操
作して、全量を炉内に装入 (以下、これを「後段装入」
という) する。

【００２９】

【表２】

【００３０】炉内への装入を完了した後、炉内の焼結鉱
をサンプリングして炉内径方向における異種原料（着色
焼結鉱）の分布状態および炉壁部の近傍での周方向にお
ける焼結鉱の層厚偏差を調査した。また、装入の途中
で、分配シュートから排出される原料を直接サンプリン
グして異種原料（着色焼結鉱）の混在比率の経時変化の
調査も行った。

【００３１】実験結果を図３〜図６に示す。

【００３２】図３は、本発明方法を適用した場合の炉頂
バンカー内の原料の表面プロフィルを示す図で、破線は
実験の最初に通常原料（無着色焼結鉱）をバンカー内に
装入した直後、すなわち、炉内への前段装入開始前の状
態、実線は前段装入終了後の状態、一点鎖線は異種原料
（着色焼結鉱）を炉頂バンカーに装入後、すなわち、炉
内への後段装入開始前の状態を示す。前段装入終了後
は、炉頂バンカーの中央部（排出口の直上部）を中心に
表面が陥没して、すり鉢状を呈している。そして、異種
原料（着色焼結鉱）は主にこのすり鉢部（凹部）に堆積
している。

【００３３】図４は、異種原料（着色焼結鉱）の混在比
率の経時変化を示す図で、横軸は後段装入の開始から終
了までの所要時間を1.0 として表した原料の排出時間で
あるが、この図から、異種原料（着色焼結鉱）は後段装
入の初期に集中的に排出されていることがわかる。

【００３４】図５は、後段装入時の炉内径方向における
異種原料（着色焼結鉱）の分布状態を示す図で、横軸は
炉中心（横軸の左端）から炉壁（横軸の右端）までの距
離を1.0 として表した炉半径であるが、この図から明ら
かなように、本発明方法が目的とする、炉壁部分への異
種原料の偏在が実現されている。

【００３５】なお、異種原料（着色焼結鉱）を炉壁部に
偏在させるためには、異種原料を、図３に示したよう
に、陥没したすり鉢状の部分（凹部）に堆積させること
が必要であるため、前段装入量は異種原料（着色焼結
鉱）量より多くしなければならない。また、前段装入量
をあまり減少させると、前段装入の際の分配シュートの
旋回数が不足し、先に述べた別バッチで異種原料を装入
する方法における問題点と同様、 O/C分布の周方向にお
ける偏差が現れるので、前段装入量は、分配シュート旋
回数が概ね３〜４以上とれるに十分な量を設定するのが
望ましい。

【００３６】図６は、前段および後段装入を合わせた全
装入原料の炉壁部近傍での周方向における層厚分布を示
す図である。この図から、本発明方法を適用した場合、
炉内の周方向の層厚偏差の防止も十分なされていること
がわかる。

【００３７】

【発明の効果】ベルレス高炉における原料装入の際、本
発明方法を適用することにより、細粒原料などの異種原
料の炉内分布を制御し、それらの原料を高炉の炉壁近傍
部位に確実に堆積させることができる。この方法は、炉
内の周方向における O/C分布の偏差を助長することな
く、また、炉頂バンカー内に特殊な工作物を設ける必要
もなく、容易に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】ベルレス高炉における原料装入形態の概略説明
図である。

【図２】炉頂バンカー内原料の排出パターンの概念図で
ある。

【図３】本発明方法を適用した場合の炉頂バンカー内の
原料の表面プロフィルを示す図である。

【図４】本発明方法による後段装入の際の炉頂バンカー
から排出される原料中における異種原料混在比率の経時
変化を示す図である。

【図５】本発明方法による後段装入の際の炉内径方向に
おける異種原料の分布状態を示す図である。

【図６】本発明方法を適用した場合の炉壁部近傍での周
方向における焼結鉱の全層厚分布を示す図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 道彦 大阪府大阪市中央区北浜４丁目５番33号 住友金属工業株式会社内

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 ベルレス装入装置を有する高炉の原料貯
   槽内に貯えられた原料を内振り分配方式で炉内に装入す
   るに際し、原料貯槽内の通常原料の排出が完了する前に
   排出を一旦停止し、予め仕分けした異種原料を前記の原
   料貯槽内に供給した後、再びこの原料貯槽内の原料の排
   出を開始して高炉内に原料を装入することを特徴とする
   ベルレス高炉の原料装入方法。