JPH0472998B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 この発明は、空調あるいは低温冷凍ユニツトな
どに用いられるスクロール圧縮機、とくに起動時
などに生ずる潤滑油中への寝込み冷媒のフオーミ
ング現象による油上りを抑制する手段を備えたス
クロール圧縮機に関するものである。

〔従来技術〕

この発明の説明に入る前に、スクロール流体機
械の原理について簡単に述べる。

第１図はスクロール流体機械を圧縮機として用
いた場合の基本的な構成要素と圧縮原理を示して
おり、同図において、１は固定スクロール、２は
揺動スクロール、３は吸入室、４は吐出ポート、
５は圧縮室である。まあ、Ｏは固定スクロール１
の中心である。

上記固定スクロール１及び揺動スクロール２は
同一形状で巻方向が互いに反対の渦巻（１ａ，２
ａを有し、これらの渦巻１ａ，２ａの形状は従来
から知られている如く、インボリユート曲線、円
弧等から構成させている。

次に動作について説明する。上記固定スクロー
ル１は空間に対して静止しており、揺動スクロー
ル２は固定スクロール１に対して180°位相のずれ
た状態で組合わされ、固定スクロール１の中心Ｏ
のまわりを自転しない公転運動を行ない、第１図
ａ〜ｄに示す如く0°、90°、180°、270°のように運
動する。図中、第１図ａに示す0°の状態で吸入室
３のガスの閉じ込みが完了し、渦巻１ａ，２ａ間
に圧縮室５が形成される。そして、揺動スクロー
ル２の運動に伴い、圧縮室５は順次その容積を減
じ、その中のガス圧縮されて固定スクロール１の
中心部に設けられた吐出ポート４より排出され
る。

スクロール圧縮機の名前で知られている装置の
概略は以上のようである。

次に、スクロール圧縮機の具体的な構造及び動
作について説明する。第２図にスクロール圧縮機
の一実施例の構成を示し、とくに、スクロール圧
縮機を全密閉形冷媒圧縮機に応用した場合の具体
的な実施例である。同図において、１は固定スク
ロール、２は揺動スクロール、３は吸入口（吸入
室）、４は吐出ポート、５は圧縮室、６は主軸、
７は吸込口７ａを有し、主軸下端と所定空隙をも
つて主軸下端部を覆うように装着されたオイル・
キヤツプ、８，９は軸受フレーム、１０はモータ
ロータ、１１はモータ・ステータ、１２はシエ
ル、１３はオルダム継手、１４は邪魔板、１５は
シエル１２底部に設けた油溜め、１６は吸入管、
１７は吐出管、１８は主軸６に偏心して設けられ
た揺動スクロール軸２ｂと回転自在に嵌入された
揺動軸受、１９は主軸６上部の大径部６ａを支承
する第１の主軸受、２０は主軸６下部の小径部６
ｂを支承する第２の主軸受、２１は揺動スクロー
ル２の下面の軸方向から支承する第１のスラスト
軸受、２２は主軸６の大径部６ａと小径部６ｂ間
の段部６ｃを軸方向から支承する第２のスラスト
軸受、２３は主軸６下端に開口部２８ａを有し、
主軸６内にその軸心より偏心して設けられた給油
孔で、各軸受１８，２０部へ連通している。２４
は主軸６内に設けられたガス抜き穴、２５，２６
は油経路用の返油孔、２７，２８は吸入ガス経路
用の連通孔である。

ここで、揺動スクロール２は、固定スクロール
１とかみ合わされた状態で揺動スクロール軸２ｂ
が揺動軸受１８を介して主軸６に係合され、前記
揺動軸受１８及び軸受フレーム８に配設された第
１のスラスト軸受２１によつて支承されている。
更に、主軸６はいんろうなどで互いに結合された
軸受フレーム８，９内に配設された第１の主軸受
１９、第２の主軸受２０、第２のスラスト軸受２
１によつて支承されている。また、オルダム継手
１３は揺動スクロール２と軸受フレーム８との間
に配設され、揺動スクロール２の自転を防止し、
公転運動のみを行なわせるように構成されてい
る。このような状態で、固定スクロール１は軸受
フレーム８，９とともにボルトなどにより共締め
される。また、モータ・ロータ１０は主軸６に、
モータ・ステータ１１は、軸受フレーム９に、圧
入、焼嵌めまたはねじ止めなどによつて固定され
ている。更に、オイル・キヤツプ７は、主軸６に
圧入、焼嵌めなどによつて固定されている。この
ようにして組立てられた機構部は固定及び揺動ス
クロール１，２を上部に、モータロータ及びステ
ータ１０，１１を下部にしてシエル１２内に圧
入、焼嵌め等により収容固定されている。

次にこのような構成されたスクロール圧縮機の
動作について説明する。モータ・ロータ１０が回
転すると、主軸６及びオルダム継手１３を介して
揺動スクロール２が公転運動を始め、第１図で説
明した作動原理により圧縮が開始する。この時、
冷媒ガスは吸入管１６よりシエル１２内に吸入さ
れ実線矢印に示すように軸受フレーム９とモー
タ・ステータ１１との間の連通孔２７、モータ・
ロータ１０とモータ・ステータ１１との間のエア
ギヤツプなどを通過してモータを冷却した後、シ
エル１２と軸受フレーム８，９との間の連通孔２
８を通つて固定スクロール１に設けた吸入口３よ
り圧縮室５へ取り込まれ圧縮される。圧縮された
ガスは、吐出ポート４を経て吐出管１７より圧縮
機外へ排出される。また、潤滑油は、油溜め１５
より破線矢印で示すように主軸６は配設されたオ
イルキヤツプ７及び給油孔２３による遠心ポンプ
作用によりオイル・キヤツプ７の吸込口７ａ及び
給油孔２３を通して各軸受１８、２０を給油し、
さらに軸受１８からは軸受２１，１９，２２に給
油される。潤滑に使用された油は、主に軸受フレ
ーム８，９に設けられた返油孔２５，２６を通つ
て油溜め１５に戻される。前記軸受２１等から漏
れ出た油が直接吸入口（吸入室）３へ吸引されな
いよう邪魔板１４が軸受フレーム８と揺動スクロ
ール２の外周面との間の隙間を閉鎖するように設
けられ、邪魔板１４と揺動スクロール２により吸
入口（吸入室）３と摺動機構部とを分離してい
る。また、主軸６に設けられたガス抜き穴２４
は、作動時、オイル・キヤツプ７内のガスを迅速
に軸外へ排出し、ポンプ効率を高めるためのもの
である。

このような従来のスクロール圧縮機において
は、液バツク時にシエル１２内に液冷媒が流入し
たり、長期停止後の起動時等、油溜め１５の油に
寝込んだ冷媒ガスがフオーミング現像を起こし、
油ごと連通孔２８を通つて圧縮室５に吸入され、
そのまま圧縮機外へ排出されて、瞬時に油が枯渇
してしまうことが多かつた。その結果、給油不良
を生じ、各軸受１８，１９，２０，２１，２２の
損傷、あるいは焼付き事故を起こす原因となつて
いる。

〔発明の概要〕

この発明は、主軸下端部が油溜め内に侵漬する
ように主軸を貫通させる貫通穴を有し、かつ油溜
めの上方を覆う仕切板を設け、主軸が仕切板を貫
通する部分には、上記仕切板と該仕切板を貫通す
る主軸下端部とで構成される一定長さの流通路を
設け、かつ、上記一定長さの流通路中に、油上り
抑制通路を設けることにより、軸受の潤滑作用後
の油は、主軸が仕切板を貫通する部分を介して油
溜めに戻るが、運転起動時などのフオーミング現
象による逆方向への油の移動は、上記仕切板と上
記一定長さの流通路及び上記油上り抑制通路によ
る流通路抵抗とにより抑制することにより、給油
不良を解消し軸受のトラブルを防止するようにし
たスクロール圧縮機を提供しようとするものであ
る。

〔発明の実施例〕

以下、この発明の一実施例を第３図乃至第５図
について説明する。図中、第１図及び第２図と同
一符号は同一、又は相当部分を示し、３０は主軸
６の下端部において油溜め１５の上方を覆う仕切
り板で、この仕切り板３０は薄板で構成され内周
側に下面側に突出して筒状に押出成形されると共
に主軸６下端部を貫通させる貫通穴３０ａを有
し、外周側は上面側へ突出して筒状に成形された
外縁部３０ｂを有する。そして、この外縁部３０
ｂにおいて、シエル１２の内周面にスポツト溶接
等により仕切板３０を固定する。さらに、上記貫
通穴３０ａの押出基部３００ａは大径で、その先
端部３００ｂは小径に形成された先細形状であ
り、かつ、オイル・キヤツプ７の側周面との間に
は押出基部３００ａでは隙間が大きく、先端部３
００ｂでは隙間が順次小さく形成されている。す
なわち、押出基部３００ａから先端部３００ｂへ
行くに従い油の流通抵抗が大きくなる。

又、仕切り板３０の貫通穴３０ａと外縁部３０
ｂの間には返油穴３０ｃが１個以上設けられ、仕
切板３０の下面にはこの返油穴３０ｃを覆うよう
に逆止弁３１を取り付けられている。この実施例
の場合は、逆止弁３１は薄板を折り曲げて形成し
たもので、仕切り板３０の下面にスポツト溶接で
その一端を取り付けた簡易的なものである。第４
図は、逆止弁３１を取り付けた仕切り板３０を下
面より見た下面図、第５図は、起動時などフオー
ミングにより油の逆流を生じた場合の圧縮機下部
の要部拡大断面図である。なお、第３図乃至第５
図は示す実施例の上述した以外の構成は第１図、
及び第２図に示す従来例のスクロール圧縮機と同
様であるからその説明を省略する。

次に油の流れを説明する。通常運転中の油の流
れは第３図において、破線矢印で示しているが、
返油孔２６から排油されるまでの流れは第２図の
従来のものと同じであるのでここではその説明は
省略する。返油孔２６から排油された油は、いつ
たん仕切り板３０上面にたまる。ここで、油のヘ
ツド差により逆止弁３１は開いており返油穴３０
ｃ及び、貫通穴３０ａより油溜め１５へ油は戻さ
れる。ここで、仕切り板３０の上面に油がたまり
すぎないように、ポンプ揚油量および返油量のバ
ランスを考えて貫通穴３０ａ及び返油穴３０ｃの
通路抵抗を決めていた。一方、油溜め１５内油中
に冷媒が寝込んだ状態で起動時などフオーミング
が生じた場合、第５図に示すように発泡による差
圧のために逆止弁３１の自由端側が押し上げら
れ、逆止弁３１は閉じられるため、返油穴３０ｃ
を介して油が上方へ逆流はなく、又、貫通穴３０
ａは第５図に示すように主軸下端部のオイルキヤ
ツプ７の側周面と仕切板の押出基部３００ａから
その先端部３００ｂで形成される一定長さの流通
路を有し、しかも、押出基部３００ａからその先
端部３００ｂへ至るに従いその径が小さくなるよ
うに油溜め１５側に突出した油上り抑制通路を設
けているため、貫通穴を通しての、油の上方への
逆流は、上記一定長さの流通路及び上記油上り抑
制通路により流通抵抗により抑制できる。更に、
上記したように、この仕切り板３０は、下方から
上方へ流体の流れを抑制する特性をもつため、仕
切り板３０より下方にある油溜め１５の油は、圧
縮機の起動時、仕切り板３０より下面の内圧が下
がりにくく、フオーミング自体も抑えられるとい
う利点ももつている。

第６図乃至第８図はこの発明の他の実施例を示
す。すなわち、第６図に示すように貫通穴３０ａ
を単なる打抜穴とし、オイルキヤツプ７の上端部
に仕切り板３０の下面側に平行で、かつ微少隙間
δを有し、貫通穴３０ａと同心でこの貫通穴３０
ａより大きな径を備えたフランジ部３２が形成さ
れたオイルキヤツプ７を主軸６の下端部に嵌合さ
せて構成したものであり、このように構成すると
貫通穴３０ａから、オイルキヤツプ７の上端部の
フランジ部３２に到する一定長さの流通路の流通
抵抗により、油溜め１５より上方への油の流れは
起りにくくなり、さらに本構成によると、主軸６
の回転とともにオイルキヤツプ７のフランジ部３
２は回転するので、隙間δの中の油は遠心力を与
えられ、油はフランジ部３２の外周方向へ向つて
流れ、仕切り板３０上部の油は下方の油溜め１５
へ流入している。しかし、逆方向へは流れにくい
ため、油溜め１５に溜つた油は、仕切り板３０上
へは上つてこない。

又、第６図において、３３は仕切り板３０にそ
の下面側に凸になつた複数個のバーリング穴であ
り、その押出基部３３ａから先端部３３ｂへ至る
に従いその径が小さくなるように設けられてい
る。このバーリング穴３３は貫通穴３０ａ及び隙
間δを介して仕切り板３０下方へ流入する油の通
過量が少ない場合の補助的な返油手段であり、油
穴２３から軸受部へポンピングされる揚油量との
バランスによつて適宜設けられる。第８図は、こ
のような仕切り板３０を下方より見た図であり、
バーリング穴３３は、90°のピツチで点在し、仕
切り板３０の上側から下側へ油を流すより逆方向
へ流す方が流体的損失が大きく、逆流防止効果が
ある。又、貫通穴３０ａ及び隙間δより仕切り板
３０の下方へ流入する油の通過量に比べてその絶
対通過量が小さい場合は、バーリング穴３３は単
なる打抜き細孔でもよい。なお、油の流れに方向
性をもたせる手段としては、第４図乃至第８図に
示す各手段を適宜組合わせても良く、また単独の
手段でも良い。更にここに述べた実施例に限定さ
れるものでないことは言うまでもない。

〔発明の効果〕

以上のように発明のスクロール圧縮機は、それ
ぞれ渦巻を有し、これらの渦巻を互いに組合せる
ことにより上記渦巻間に圧縮室を形成する固定ス
クロール及び揺動スクロールと、この揺動スクロ
ールに公転運動を与え、上記圧縮室内に吸入され
た流体を圧縮させる主軸及び自転防止装置と、上
記主軸を回転可能に支承する主軸受を有するフレ
ームと、このフレームの下方に設けられ上記主軸
を回転させるモータと、底部に油溜めを有し、上
記固定スクロール及び揺動スクロールを上部に、
上記モータを下部に位置させて上記主軸の下端を
上記油溜め内に浸漬するように収納するシエル
と、上記主軸の下端に開口して上記主軸中に形成
され、上記主軸の回転により上記油溜め内の潤滑
油を上記主軸下端の開口部を介して上記主軸受部
へ供給する油穴と、中央部には上記主軸の周囲と
所定隙間をもつて上記主軸を貫通させる貫通穴を
有し、上記油溜めの上方を覆う仕切り板と、上記
主軸が仕切板を貫通する部分には、上記仕切板と
該仕切板を貫通する主軸下端部とで構成される一
定長さの流通路と、上記主軸受の潤滑作用後、上
記仕切り板上に流下した潤滑油を上記所定隙間を
介して上記油溜め内に返油するとき、上記仕切板
上より油溜めの方へは通り易く、かつその逆方向
へ対しては通りにくくなるように上記一定長さの
流通路に形成した油上り抑制通路とを備えてなる
ので、圧縮機の通常運転中では、主軸受の潤滑作
用後の潤滑油は上記所定隙間及び油上り抑制通路
を介して油溜め内に円滑に返油できると共に圧縮
機の起動時等フオーミング現象が生じた場合、上
記一定長さの流通路及び油上り抑制通路による流
通抵抗により、油溜めからの油上りも抑制でき
る。

すなわち、油上りを抑制しながら、返油を効果
的に行うことができ、油溜め内に給油に必要な油
面が確保でき、主軸の油穴を介して主軸受へ充分
に給油できる。従つて、油溜め内の油枯渇による
主軸受の焼付きが防止され、主軸受の信頼性が向
上すると共に油上りを想定して油溜め内の油量を
多くしておく必要がなく、その分だけ圧縮機を小
形化することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ〜ｄは、スクロール圧縮機の作用原理
図、第２図は従来のスクロール圧縮機の断面図、
第３図はこの発明の一実施例を示すスクロール圧
縮機の断面図、第４図は同じく要部底面図、第５
図は同じく作動状態におけるスクロール圧縮機の
下部拡大断面図、第６図はこの発明の他の実施例
を示す要部断面図、第７図は同じく要部斜視図、
第８図は同じく要部底面図である。 図中、１……固定スクロール、２……揺動スク
ロール、６……主軸、７……オイルキヤツプ、
８，９……軸受フレーム、１０……モータ・ロー
タ、１１……モータ・ステータ、１２……シエ
ル、１５……油溜め、１６……吸入管、１７……
吐出管、１９，２０……第１及び第２の主軸受、
３０……仕切り体、３０ａ……貫通穴、３１……
逆止弁、３２……フランジ部、３３……バーリン
グ穴。なお、図中、同一符号は、同一又は相当部
分を示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ それぞれ渦巻を有し、これらの渦巻を互いに
   組合せることにより上記渦巻間に圧縮室を形成す
   る固定スクロール及び揺動スクロールと、この揺
   動スクロールに公転運動を与え、上記圧縮室内に
   吸入された流体を圧縮させる主軸及び自転防止装
   置と、上記主軸を回転可能に支承する主軸受を有
   するフレームと、このフレームの下方に設けら
   れ、上記主軸を回転させるモータと、底部に油溜
   めを有し、上記固定スクロール及び揺動スクロー
   ルを上部に、上記モータを下部に位置させて上記
   主軸の下端を油溜め内に浸漬するように収納する
   とともに、内部が低圧状態に保持されるように構
   成した低圧シエルと、上記主軸の下端に開口して
   上記主軸中に形成され、上記主軸の回転により上
   記油溜め内の潤滑油を上記主軸下端の開口部を介
   して上記主軸受部へ供給する油穴と、中央部には
   上記主軸の周囲と所定隙間をもつて上記主軸を貫
   通させる貫通穴を有し、上記油溜めの上方を覆う
   仕切り板と、上記主軸が仕切板を貫通する部分に
   は、上記仕切板と該仕切板を貫通する主軸下端部
   とで構成される一定長さの流通路と、上記主軸受
   の潤滑作用後、上記仕切り板上に流下した潤滑油
   を上記所定隙間を介して上記油溜め内に返油する
   とき、上記仕切板上より油溜めの方へは通り易
   く、かつその逆方向へ対しては通りにくくなるよ
   うに上記一定長さの流通路に形成した油上り抑制
   通路とを備えてなるスクロール圧縮機。