JPH0459156B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は感熱転写シートの改良に関する。

近年、サーマルヘツドを用いる感熱記録法が、
騒音のないこと、装置が比較的廉化且つコンパク
トに出来ること、保守性に優れていること等の利
点から多く用いられる様になつている。

その感熱記録のにひとつの技術として、熱や有
機溶剤により二次発色することがなく、記憶の保
存性に優れる感熱転写、即ち基材フイルム上に加
熱により溶融する転写インキ層を設けた感熱転写
シートを用い、この転写インキをサーマルヘツド
を用いて紙面に転写する方法がある。

従来、感熱転写シートの基材フイルムとしては
コンデンサー紙の様な紙類が使用されている。

この様な薄紙は強度が低く、特に引き裂きに弱
いので、例えば、ポリエステル樹脂の様な強靭な
プラスチツクのフイルムを基材にすることが望ま
しいが、実際は使用されていない。

それは、印字の際にサーマルヘツド上で感熱転
写シートに300℃前後の高熱が加わり、プラスチ
ツクがヘツドに融着してしまう。所謂ステイツキ
ングのトラブルが起こり易いからである。

感熱転写シートの基材としてプラスチツクフイ
ルムの使用を可能にする方策として、蒸着による
金属層を設けること（特開昭54−143152号公報参
照）や、熱硬化性樹脂の耐熱保護層を設けること
（特開昭55−7467号公報参照）、或は過冷却性の物
質を潤滑剤に利用すること（特開昭55−146790号
公報参照）等が提案された。

しかしながら、金属の蒸着はバツチ処理によら
ねばならずコスト高を免れないし、ステイツキン
グの防止の有効な程厚くすると、解像度に影響が
出てくる。

熱硬化性樹脂の保護層の利用も硬化を要する為
製造工程を複雑にするし、過冷却性の物質は毒
性、臭気或はヘツドに対する腐食性等の難点があ
る。

本発明は、この様な問題を解決し、プラスチツ
クフイルムを基材とし、単純な塗布により設けた
保護層を有する、ステイツキングを防止した感熱
転写シートを提供することを目的とする。

この目的は、本発明に従つて、プラスチツクフ
イルムの基材の一方の面に加熱により溶融する転
写インキ層を有する感熱転写シートにおいて、基
材の他方の面に、熱可塑性樹脂バインダーに対し
て、 (A) ポリエチレンワツクス、パラフインワツクス
の様なワツクス類、高級脂肪酸のアミド又はエ
ステル、高級アルコール及びリン酸エステルか
ら選んだ、加熱により溶融して滑剤又な離型剤
の作用をする物質、又は、 (B) 層中で固体粉末の状態で存在し、滑剤又は熱
離型剤の作用をする有機固体粉末、又は上記(A)
と(B)との混合物を配合した組成物からなる保護
層を設けたことを特徴とする感熱転写シートに
より達成される。

基材として使用すべきプラスチツクフイルムは
任意であるが、代表的なものには、前記のポリエ
ステル樹脂の他、ポリプロピレン、セロフアン及
びセルロースアセテート等がある。

厚さは10μｍ内外が適当であり、例えば、6μｍ
といつた薄いものも使える。

加熱により溶融して転写されるインキは、適当
な融点をもつたワツクス類、例えば、パラフイン
ワツクス、マイクロクリスタリンワツクス、カル
ナウバワツクス等をバインダーとし、カーボンブ
ラツクや各種の染料、顔料等の着色剤を配合して
なるものである。その製造及び基材フイルム上へ
の適用は、既知の技術に従つて実施することが出
来る。

本発明の特徴である保護層を形成する熱可塑性
樹脂バインダーも、広い範囲から選ぶことが出来
るが、好適な例を挙げれば、アクリル樹脂、ポリ
エステル樹脂、セルロースアセテートプロピオネ
ート、セルロースアセテートブチレート、酢酸セ
ルロース、フツ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポ
リビニルカルバゾール、塩化ゴム、環化ゴム及び
ポリビニルアルコールがある。これらの樹脂は、
ガラス転移が60℃以上ものが好ましいことが経験
的に知られた。

上記の熱可塑性樹脂バインダーに配合する、滑
剤又は熱離型剤の作用をもつ物質、即ち(A)加熱に
より溶融してこの作用を示すものと、(B)加熱して
も溶融しないが、固体粉末の状態でこの作用を示
すものとがあり、(A)と(B)のいずれか一方を使用す
れば有効であるが、両者を併用すれば更に高い効
果が得られる。

(A)のグループに属する物質の例は、ポリエチレ
ンワツクス、パラフインワツクスの様なワツクス
類、高級脂肪酸のアミド、エステル又は塩類、高
級アルコール及びレシチンの様なリン酸エステル
類である。

(B)のグループに入る材料には、テフロンやポリ
フツ化ビニリデンの様なフツ素含有樹脂の粉末、
グアナミン樹脂の粉末や微細な木粉から選んだも
のを用いる。

保護層を形成する組成物は前記の熱可塑性樹脂
100重量部に対し、上記(A)物質又は(B)物質或いは
(A)と(B)との混合物を、（併用の場合は合計量で）
10〜100重量部の割合で配合して形成する。基材
フイルムへの適用は、適宜の溶剤で練つてインキ
とし、グラビアコート、ロールコート、その他任
意の手法により塗布し、乾燥することによつて行
えばよい。

尚、基材フイルム上への保護像の付着を確実に
することを望むならば、予め基材上にプライマー
層を設けておくとよい。プライマーは、基材フイ
ルムの材料と保護層の熱可塑性樹脂バインダーの
種類に応じて選択すべきであるが、アクリル樹
脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩
化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合体或いはポリオ
ール／イソシアネート、エポキシ／イソシアネー
ト、ポリオール／メラミンの組み合わせ等の中な
ら、好適な材料を見出せるであろう。

プライマーの塗布は、保護層の組成物の適用と
同様に、適宜の溶剤を利用してインキ形態とし、
任意の手法で実施すればよい。

本発明によれば、プラスチツクフイルムを基材
とし機械的に強靭であるが、サーマルヘツドへの
ステイツキングの生じない感熱転写シートが、比
較的簡単な工程で、従つて低コストで製造され
る。

この感熱転写シートは、種々の記録装置の感熱
プリンター、例えば、フアクシミリ等に広く使用
することが出来、所望であればリボン状にしてカ
ートリツジの形態にすることも容易である。

実施例 １ 12μｍ及び6μｍの２種の厚さのポリエステルフ
イルム（東レ製）を基材に用い、その一方の面
に、先ず、下記の配合のプライマーインキをグラ
ビアコート法により１ｇ／m²（乾燥時）の厚さに
塗布した。

プライマーインキ組成： ポリエステル樹脂（「バイロン200」、東洋紡製）
３重量部 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体（「ビニライト
VAGH」UCC製） ３重量部 イソシアネート（「タケネートＤ−110N」武田製
品製） １重量部 トルエン／MEK（1/1） 40重量部 その上に、次の組成の保護層インキを、やは
りグラビアコート法により１ｇ／m²の厚さに塗布
し、乾燥した。

保護層インキ組成： セルロースアセテートプロピオネート
（「CAP482−05」、コダツク製） 10重量部 レシチン ４重量部 トルエン／MEK／IPA（１／１／１） 66重量部 次に下記の配合の熱転写インキをブレードニー
ダーを用い、80℃に加温しつつ６時間混練して調
製し、基材フイルムの他方の面に、100℃に加温
したホツトメルトコートを用いるロールコートに
より、5μｍの厚さに塗布して本発明の感熱転写
シートとした。

熱転写インキ組成： パラフインワツクス 10重量部 カルナウバワツクス 10重量部 ポリブデン（「VH−100」日本石油製） １重量部 カーボンブラツク（「シーストＳ」東海電極製）
２重量部 実施例 ２ 実施例１で使用したものと同じポリエステルフ
イルムに、前記のプライマー処理を施し、続いて
下記の組成の保護層インキを、やはりグラビア
コート法により１ｇ／m²の量で塗布した。

保護層インキ組成： アクリル樹脂（「ダイアナールBR88」三菱レー
ヨン製） 10重量部 ポリエチレンワツクス（「マークFC113」旭電化
製、30重量％トルエン分散液） ４重量部 フツ素樹脂パウダー（「MOLD WIZ Ｆ−57」東
洋曹達製、50重量％トルエン分散液） ３重量部 トルエン 90重量部 この場合も実施例１と同じ熱転写インキを用い
て本発明の感熱転写シートとした。

比較例 12μｍ及び6μｍの２種の厚さのポリエステルフ
イルムに、本発明の保護層を設けず、熱転写イン
キ層だけを与えた比較例の感熱転写シートを作成
した。

実用試験 上記の感熱転写シートをリボンにし、薄膜型の
サーマルヘツドをもつプリンター上を走行させ、
印字エネルギー１ｍＪ／ドツト（４×10^-4cm²）の
条件で上質紙（「KYP」135Kg、山陽国策パルプ
製）を被転写体とする感熱記録を行つた。

本発明に従う実施例１及び２の感熱転写シート
は、基材フイルムの厚さ12μｍのものも6μｍのも
のも、ステイツキングの発生をみることなく良好
な印字が出来た。

これに対し、保護層を有しない比較例の製品は
いずれもステイツキングに悩まされ、基材フイル
ム12μｍのものも一部に孔があき、6μｍのものは
孔あきが著しく、破れも生じた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ プラスチツクフイルムの基材の一方の面に加
   熱により溶融する転写インキ層を有する感熱転写
   シートにおいて、基材の他方の面に、熱可塑性樹
   脂バインダーに対して、 (A) ポリエチレンワツクス、パラフインワツクス
   の様なワツクス類、高級脂肪酸のアミド又はエス
   テル、高級アルコール及びリン酸エステルから選
   んだ、加熱により溶融して滑剤又は離型剤の作用
   をする物質、又は、 (B) 層中で固体粉末の状態で存在し、滑剤又は熱
   離型剤の作用をする有機固体粉末、又は上記(A)
   と(B)との混合物を配合した組成物からなる保護
   層を設けたことを特徴とする感熱転写シート。 ２ 基材のプラスチツクとして、ポリエステル樹
   脂、ポリプロピレン、セロフアン又はセルロース
   アセテートを使用する特許請求の範囲第１項の感
   熱転写シート。 ３ 保護層の組成物を形成する熱可塑性樹脂バイ
   ンダーとして、アクリル樹脂、ポリエステル樹
   脂、セルロースアセテートプロピオネート、セル
   ロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、
   フツ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリビニルカ
   ルバール、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルア
   ルコールから選んだ、ガラス転移点60℃以上のも
   のを使用する特許請求の範囲第１項の感熱転写シ
   ート。 ４ 固体粉末の状態で滑剤又は熱離型剤の作用を
   する物質(B)として、フツ素含有樹脂の粉末、グア
   ナミン樹脂の粉末及び木粉から選んだものを使用
   する特許請求の範囲第１項の感熱転写シート。 ５ 基材にプライマーを塗布した上に前記保護層
   を設けた特許請求の範囲第１項〜第４項にいずれ
   かの感熱転写シート。