JPH0447576B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、自然の血管に換わつて、動脈血を身
体全体の臓器及び組織へ供給するべく身体内に用
いられる移植片に係る。一層詳細には、この移植
片は血液を組織へ供給するために用いられる血管
移植片である。

背景技術 人間の血管は、先天性欠陥、疾患又は損傷によ
り、血液の適正な輸送路として機能できなくなる
ことがある。かかる疾患や外傷が生じた自然の脈
管の代用物、或いは、その機能の代用物として、
自原的血管を人体内のその元々の部位から移し換
え、新しい部位へ移植することが行われる。合成
又は非自原的組織起原血管移植片も、疾患又は外
傷が生じた自然の脈管系と置き換えるべく人体内
に移植することができる。

公知の血管移植片の全てに於いて、それが自原
的なものであつても非自原的なものであつても、
感染、動脈瘤、血栓症、過形成性組織反応、吻合
個所の狭窄等の問題が生ずる。かかる血管移植片
の長期間の開存性は、移植外科医の熟達度、患者
の健康状態、血管移植片の質、その他多くの因子
に関係したものである。何れの特定の因子につい
ても、移植片が成功裡に長期間機能することに対
する各因子が及ぼす影響は定量的に知られていな
い。しかし、一般に、血液の流速及び流量が低い
ということが開存性を減ずる主要な因子であると
考えられている。逆に、流量及び流速が高いこと
は開存性の寿命を増す主要な要因であるといえ
る。

冠状動脈の再血管形成に関して、自原的伏在静
脈が血液輸送路として成功裡に用いられている。
大動脈−冠状動脈バイパスのための適当な補綴移
植片の研究が続けられているが、自原的伏在静脈
よりも良好に利用できるものは見つかつていな
い。外科医は、大動脈−冠状動脈バイパスに合成
移植片を用いることについては消極的である。何
故ならば、合成移植片については、長期間の開存
性が実証された例が少ないためである。

伏在静脈が大動脈−冠状動脈のバイパス処理に
用いられているが、次のような幾つかの欠点があ
る。：(1)使用する際の不自由性、(2)小寸法、(3)不
均一な内径、(4)静脈瘤、(5)大直径、(6)硬化症、(7)
内膜過形成による閉塞、(8)動脈瘤形成、(9)採取を
するために必要とされるかなりの時間、(10)下腿不
快及び腫脹、及び(11)生じ得る下腿感染。

大動脈−冠状動脈バイパスを必要とする患者の
うちかなりの割合の患者が適当な静脈を持つてい
ないか、或いは、適当な静脈が既に大動脈−冠状
動脈バイパス又は周辺血管バイパス処置のために
使用されてしまつている。場合によつては、移植
片の必要性が手術前に予想されておらず、また下
腿や静脈を採取できるように準備をされていない
ことがある。伏在静脈を利用することができない
時には、腕からの橈側皮静脈が用いられてきた。
しかし、かかる橈側皮静脈は一般に壁厚が薄く、
また多くの場合、その内径が小さ過ぎる。更に、
橈側皮静脈を採取することは美容上に影響するの
で、患者にとつて受け容れ難いものである。

内胸動脈は、優れた開存比を有するので、心筋
の再血管形成に適するものとして広く受け容れら
れているが、これは左前の下行冠状動脈及び交叉
冠状動脈に対してのみ有用である。内胸及び橈骨
動脈の遊離移植片は、長期間の開存性に乏しいの
で、期待外れであつた。

自原的静脈の移植片内の血液の流速が、移植片
に関する分野で重要視されてきている。静脈から
なる移植片内の血液の流速と脈管内膜の増殖の量
との間に反比例的関係があることが観察された。
解剖の所見によれば、大動脈−冠状動脈の伏在静
脈移植片は、最も一般的には、繊維性内膜が増殖
することによつて、手術から１ケ月以上経過する
と、閉塞するという。かかる障害の原因は明確に
は解明されていないが、種々の研究に於いて、お
そらく移植片を通る血液の流速の低さに関係して
いるのであろうということが示唆されている。こ
のことは、大動脈−冠状動脈バイパス移植片内の
流速を高くする努力がされるべきであることを示
唆するものである。

合成血管移植片が、Liebigによつて米国特許第
3096560号、第3805301号及び第3945052号明細書
に開示されている。これらの移植片はポリエステ
ル・フアイバのような織糸から作られた細長いニ
ツト編組チユーブである。Dardikは米国特許第
3894530号明細書中で血管移植片について臍帯を
使用することを開示している。Holman他は米国
特許第4240794号明細書中で血管置換物として使
用するための人間及び他の動物の臍帯を準備する
方法を開示している。編組チユーブ及び臍帯は、
伏在静脈移植片に代わるものとして用いられてき
た。これらのチユーブ及び帯の端は動脈の疾患範
囲をバイパスするべく動脈の端に吻合される。こ
れらが動脈の疾患部分に置き換えられることとな
る。

発明の開示 血管再構成についての外科的処置の目的は、動
脈硬化症、外傷及び他の疾患のような先天性欠陥
又は後天性障害により血管の完全性が損われてし
まつている臓器及び組織に血液を有効に供給する
ことである。本発明は、身体内の（任意の）臓器
及び組織に血液を供給するための移植片及びそれ
を用いる方法に係る。

本発明の移植片の一つの態様としては、移植片
は、霊長類の心臓内の一つ又はそれ以上の冠状動
脈枝に血液を供給するのに用いられる。心臓は大
静脈及び肺静脈から血液を受け入れる二つの心房
を有し、また心臓から、圧力により、血液を輸送
する大動脈に接続されている。移植片は、大動脈
から心房若しくは低圧の血管へ血液を輸送する連
続的な長手方向の通路を有する細長く構成された
管状手段を含んでいる。この管状手段は、大動脈
へ吻合可能な入口端を有しており、該入口端が大
動脈に吻合されることによつて、圧力の作用によ
り血液が大動脈から通路内へ流れ、また出口端を
通じて大動脈よりも低い平均圧力を有する心房又
は他の血管内へ吐出されることとなる。管状手段
の出口端は心房と連通している開口部分の周りに
於て心臓組織に吻合されている。管状手段は血液
を一つ又はそれ以上の冠状動脈又は冠状動脈枝に
与えるのに用いられる一つ又はそれ以上の開口を
有する。冠状動脈又は冠状動脈枝は、かかる管状
手段内の開口を介して管状手段に縫合され、これ
により、前記の通路を流れる血液が冠状動脈枝内
へ流れるようになる。通路内の血液の流量、流速
及び圧力は、管状手段の入口端から離れて配置さ
れた絞り手段によつて該通路が絞られることで制
御される。管状手段の出口端の近傍に於いて、前
記通路は、その直径の1/2よりも小さい直径を有
するように絞られており、所謂絞り通路を形成す
る。この絞り通路により、管状手段の通路内の血
液の流量、流速及び圧力が制御できるようになる
のである。この絞り通路の直径は管状手段の出口
端付近の通路よりも小さい。管状手段はほぼＵ字
状であり、また、大動脈で始まり、右心房、左心
房若しくは肺動脈で終る心臓の問題となつている
領域を包囲する。大動脈と心房との間の圧力差に
よつて、血液が血栓症を抑制する量及び速度にて
連続的に流れ、また管状手段に接続された動脈へ
所望の圧力にて血液が連続的に供給されることと
なる。

本発明のもう一つの態様によれば、血管のよう
な一つ又はそれ以上の血液を受け入れる器官へ血
液を供給するための移植片が提供される。この移
植片は、血液を供給する（ことのできる）器官か
ら、圧力により、一つ又はそれ以上の血液を受け
入れる器官へ血液を輸送するための連続的な通路
を有する第一の管状手段を含んでいる。この管状
手段は血液を輸送するのための第一の通路（これ
は、絞られていない通路を指す。ここでは、以下
に説明する絞られた通路と区別する意味で第一の
通路を呼ぶこととする。）をなす主幹を有する。
この主幹は一つ又はそれ以上の開口を有してお
り、これらの開口を通じて、血液の供給を必要と
する少なくとも一つの血管へ接続され、血液を該
少なくとも一つの血管へ供給する。この主幹は入
口端を有しており、この入口端が、圧力が作用す
る状態で、血液を供給する器官に接続されるよう
構成されている。このことにより血液は第一の通
路内へ流れ、更にまた第一の通路から血管内へ流
れることとなる。第一の通路内の血液の流れとそ
の圧力は、入口端から離れた主幹の遠位側に接続
された絞られた第二の通路を有する第二の管状手
段により制御される。第一及び第二の管状手段
は、各々の有している通路が連通するする接続さ
れ、一体となつた管状手段を構成する。出口端
が、絞られた第二の通路を有する第二の管状手段
を血液を受け入れる器官に接続する。血液を供給
する器官と血液を受け入れる器官との間の圧力差
によつて、第一及び第二の通路を通じて所望の圧
力及び速度の連続的且適切な血液の流れが保た
れ、また主幹に取付けられた血管に対して連続的
に血液が供給されることとなる。

本発明の一つの実施例では、管状手段はポリテ
トラフルオロエチレン・チユーブ、Dacronチユ
ーブ又は他の生体適合性合成材料のチユーブのよ
うな細長い合成チユーブである。チユーブは連続
的であり、またその遠位端、即ち出口端の付近に
直径が減ぜられている区間を有する。直径が減ぜ
られている区間は、管状手段の通路内の血液の流
れを制御し且その圧力を維持するために絞られた
絞り通路をなす。また、かかる絞り通路は管状手
段の出口端を通つて移動する血液の流れ及び速度
を制御することとなる。

本発明のもう一つの実施例では、管状手段とし
て人間の臍帯又は他の任意の起原の組織（テイシ
ユー）チユーブを利用する。臍帯は直線又は心臓
の問題となつている領域を取囲むことのできる形
状にすることができる。臍帯の出口端の近傍の区
間、即ち遠位端の近傍の区間は臍帯を通る血液の
流れを抑制する通路をなすように減ぜられた直径
を有する。選択された動脈が臍帯の主幹に吻合さ
れると共に、その選択された動脈に開口が設けら
れ、これにより臍帯の腔からの血液が動脈内へ流
れ込むことが可能となる。

本発明の更にもう一つの実施例では、管状手段
は適切な血液の流れを保証するのに十分大きい内
径を有する自原的伏在静脈を含んでいる。この静
脈は大動脈から心臓を取囲み、心房へ延在するこ
ととなる。静脈の遠位端の近傍の区間、即ち出口
端の近傍の区間に於いて、静脈の通路が適当に絞
られ、その横断面積を減ずることができるように
なつており、調節可能に血液の流れを絞ることが
できるようになつている。上記の如く絞られた通
路は、所望の圧力の血液の連続的な流れを維持し
つつ、静脈通路内の血液の流れを制御する。静脈
中の選択された部分が冠状動脈へ血液の連続的な
流れを与えるべく冠状動脈に吻合されている。

本発明の更にもう一つの実施例によれば、一つ
又はそれ以上の血管へ血液を供給するための移植
片が提供される。移植片は血液を圧力の作用によ
り血液供給源から一つ又はそれ以上の血管へ輸送
すると共に、血液を受け入れる器官へ輸送するた
めの連続的な通路（第一の通路）を有する細長い
第一の管状手段を含んでいる。連続的な通路内の
血液の流量、流速及び圧力は、入口端から離れた
第一の管状手段の遠位側の部分に接続された第二
の管状手段により制御される。第一の管状手段と
第二の管状手段とは、接続されて一体となつた管
状手段を構成する。この第二の管状手段は、絞ら
れた絞り通路（第二の通路）をなし、更に補強が
施されている。かかる絞られた通路を有する第二
の管状手段に補強が施されていることにより、そ
の絞られた絞り通路の横断面及び縦寸法が、より
長い期間維持されることとなる。補強する手段
は、絞り通路の形状及び寸法を維持するべく主幹
を包囲する環状の補強スリーブを有する。この絞
り通路の形状及び寸法を保証するべく管状手段を
補強するのに他の手段も用いることもできる。補
強する手段は、絞り通路を包囲する厚く構成され
た管状手段の壁又は管状手段を包囲する糸又はテ
ープであつて良い。出口端部分が、絞り通路を有
する補強された管状手段を、血液を受け入れる器
官へ接続する。出口端部分は、心房又は低圧血管
内へ流れる血液の速度及び圧力を減ずるように、
絞り通路よりも大きい出口通路を有する。血液を
供給する器官と血液を受け入れる器官との間の圧
力差により、通路を通じて所望の圧力での連続的
且適切な血液の流れが維持され、また長期間に亙
り、細長く構成された管状手段に取付けられてい
る血管に対しての連続的に血液を供給する機能を
果たすこととなる。

細長く構成される管状手段は、自原的血管、又
はポリテトラフルオロエチレン・チユーブ、
Dacronチユーブ又は他の生体適合性材料のチユ
ーブのような合成チユーブであつて良い。チユー
ブは連続的であり、またその遠位端、即ち出口端
の近傍に横断面積が減ぜられている区間、言い換
えれば、絞り区間（のど状の区間）を有するよう
構成されている。細長い環状スリーブが補強材料
として機能し得る物質から構成され、絞り区間を
通る絞られた通路の横断面積を維持するべく、そ
の絞り区間を包囲している。補強材料は、繊維プ
ラスチツク、繊維メツシユ、カーボン・管状部材
又は金属管状部材であつて良く、これらは、絞り
区間の外側に取付けられることとなる。繊維には
金属、プラスチツク又はカーボンの複数本の実質
的に非可塑性の相互接続された撚糸又はワイヤ部
材等が含まれる。補強材料は、絞り区間の物質の
中に組み込まれても良く、絞り区間の周りに巻か
れた糸又はテープであつてよい。成型されたプラ
スチツク、金属又はカーボンのような剛固な材料
のスリーブが、絞り区間の周りに配置されていて
もよい。絞り区間の壁厚がその補強の目的で厚く
構成されていてもよい。いずれにしても、横断面
積が減ぜられている区間が管状手段の第一の通路
内の血液の流れを制御し且その圧力を維持するた
めに絞られた通路をなすということが重要であ
る。

本発明の更にもう一つの実施例は、血液を血管
へ輸送するための管状手段として、人間の臍帯又
は自原的血管を利用する。臍帯の出口端、即ち遠
位端の近傍の寸法は減ぜられており、従つてこの
寸法が減ぜられている部位は、臍帯を通る血液の
流量、流速及び圧力を制御するべく絞られた絞り
通路を構成する。絞り通路の寸法は、臍帯に補強
材料から成る環状スリーブを取付けることにより
維持される。補強材料は、臍帯の遠位区間を包囲
する繊維プラスチツク、テープ、カーボン・管状
部材或いは、金属管状部材である。選択された動
脈が臍帯の主幹に設けられた開口を介して該主幹
へ吻合され、臍帯の腔からの血液が動脈内へ流れ
るようになつている。

本発明は、霊長類の冠状動脈の如き一つ又はそ
れ以上の血液を受け入れる脈管へ連続的に所望の
圧力で血液の流れを供給するのに用いることがで
きる。移植片は、その遠位側となる領域に血液の
流れを絞るべく絞られた通路を有し、近位側とな
る部分が大動脈等に吻合される。移植片は心臓に
隣接して置かれ、従つてその移植片の幾つかの部
分が選択された冠状枝動脈の近くに配置される。
移植片の幾つかの選択された部分が冠状動脈に吻
合される。移植片の遠位端は心房若しくは血液循
環系の低血圧の器官に吻合される。大動脈と心房
との間に実質的な血圧差が存在するので、圧力の
作用により血液は連続的に大動脈から移植片内へ
流れる。通路に於ける前記の血液の流れを絞る部
位は、血液の流れが過剰になることを阻止し、移
植片の通路内の血圧を大動脈血圧と実質的に同一
に維持し、また移植片から低圧血管又は心房に流
れ出る血液の圧力及び速度を制御する。かくして
冠状動脈は十分な量の血液で潅流されることとな
る。

発明を実施するための最良の形態 第１図、第２図及び第３図を参照すると、参照
符号１０にて人間の心臓の前面の図が概ね示され
ている。心臓１０は、右心房１１、右心室１２、
左心房１３及び左心室１４を有する。身体からの
血液は大動脈１６を通じて右心房１１内へ流れ
る。右心房１１内の血液の圧力は、血液が右心房
１１内へ流れるにつれて低くなる。心臓弁膜１７
は右心房１１から右心室１２内への血液の流れを
制御する。血液は右心室１２から弁１８を通じ
て、肺に接続されている肺動脈１９内へ圧送され
る。血液は肺から肺静脈２０を経て左心房１３へ
戻る。血液は左心房１３から心臓弁膜２１を通じ
て左心室１４内へ流れ、また左心室１４から弁２
２を通じて大動脈２３内へ圧送される。大動脈２
３と右心房１１との間の圧力差はほぼ90mmHgで
ある。心臓の筋肉組織は二つの冠状動脈２４及び
２６か血液の供給を受けている。左冠状動脈２４
は大動脈２３から心臓の左側に沿つて尖２７に向
かつて延びている。冠状動脈２４は多数の枝２
８，２９，３０及び３１を有し、これらが筋肉組
織へ血液を供給する。左冠状動脈２４は枝２８〜
３１内へ二叉状又は三叉状に分かれる短い共通の
幹を有する。一つの枝３１、前面室間枝、は下方
へ前面室間溝に移動し、また尖２７のすぐ右へ心
臓の急縁を回り、また後面室間溝へ短い距離だけ
上昇する。枝３１の部分は右冠状動脈からの枝と
吻合している。これらの枝は正常な心臓内では非
常に小さい。それらは、冠状動脈枝が閉塞又は瘉
着状態になつてしまう冠状動脈硬化症に羅患して
いる人間内では、著しく拡大することがある。右
冠状動脈２６は、即ち、交叉２７に向かつて心臓
の右側の下へ延びている。動脈２６は心臓の組織
に血液を供給する多数の枝３２，３３，３４及び
３５を有する。

右冠状動脈２６は大動脈２３の右前面の洞から
立ち上がり、また右房室溝に沿つて走る。それは
急縁を回り、交叉に到達する。この右冠状動脈２
６は前面右心室壁への多数の枝３２〜３５を有す
る。右冠状動脈２６の右前面の枝は右冠状動脈か
らその出発個所の少し後で出発し、また右心房の
前中位の壁に沿つて上昇する。動脈２４及び２６
の枝分かれパターンは、人によつて異つているの
が普通である。約67％のケースでは、右冠状動脈
２６が優性であり、左心室壁及び心室中隔の一部
分に血液を供給する。15％のケースでは、左冠状
動脈１９が優性であり、左心室壁及び心室中隔の
すべてと、右心室壁の一部分とへ血液を供給す
る。約18％のケースでは、冠状動脈２４と２６の
両方が交叉２７に到達する。右冠状動脈２６の第
一、第二及び第三の枝は親動脈からではなく右洞
から独立に出発するのが一般的である。本発明の
移植片はこれらの動脈に血液の適切な供給を行う
のに用いることができる。

第４図乃至第８図を参照すると、参照符号３６
に本発明の血管移植片が概ね示されている。移植
片３６は血液を輸送するための連続的な通路を有
するほぼＵ字形状の細長い管状部材３７である。
管状部材３７は連続的な円筒状の壁３８を有し、
壁３８は、細長い長手方向の通路４０を郭定する
内側表面３９を有する。管状部材３７は大動脈側
に近位端、即ち、入口端４１と、心房側に遠位
端、即ち、出口端４２とを有している。ほぼＵ字
状の主幹４３が入口端４１から絞られた（即ち、
直径を減ぜられた）区間４４へ延びている。絞ら
れた区間４４は遠位端区間４６に接続されてい
る。好ましくは、絞られた区間４４は、心臓組織
に取付けられた状態で出口端４２から約２〜５cm
に位置する。第５図〜第７図に示されているよう
に、絞られた区間４４には、主幹４３の円筒状の
壁３８及び遠位（心房に近い側）端区間４６と一
体となつた円筒状の壁４７が形成されている。壁
４７はのど状通路４８（絞り通路）を包囲してい
る。こののど状通路４８は、通路４０の横断面積
よりも実質的に小さい横断面積を有する。通路４
０の横断面積は好ましくはのど状通路４８の横断
面積よりも４倍以上大きい。円筒状の壁４７は、
円錐状壁部分４９により壁３８に接続されてい
る。円錐状壁部分４９の形状は、のど状通路４８
への血液の流れの向きに収歛する形状である。壁
４７の反対側の端は、遠位端区間４６の一部分を
形成することとなる発散した形状の円錐状壁部分
５１に接続されている。円錐状壁部分５１は出口
端４２に通ずる出口通路５２を包囲している。出
口通路５２の横断面積は主幹４３の通路４０の横
断面積と実質的に同一である。この出口通路５２
の横断面積は通路４０の横断面積よりも大きくて
もよい。円錐状壁部分４９及び５１は各々、血液
の流れ内の乱流を最小化するべく緩やかな滑らか
なテーパを構成するような長手方向の長さと内側
壁面を有する。のど状通路４８を包囲する円筒状
の壁４７の長手方向の長さは、円錐状壁部分４９
及び５１の長手方向の長さよりも短いのが好まし
い。かかる長さ及び寸法に関しては、前記の如く
でなくてもよい。絞られた区間４４の長さが長い
ほど、のど状通路４８に与えられた横断面積に対
して血液圧力降下は大きくなる。出口通路５２
は、血液が心臓の心房内へ流れる前に血液の流速
及び圧力を減ずるように作用するチヤンバを構成
している。遠位端区間４６は心臓の組織或いは、
血液を受け入れる脈管に容易に取付けられるよう
な寸法である。

管状部材３７の全体は好ましくは人間の臍帯か
ら作られた管状体構造である。臍帯は、処理され
て、予め湾曲され且テーパをつけられて、所望の
絞られた区間４４を形成することとなる。管状体
構造は、牛の頸動脈、羊の皮下のマンドレル成長
（mandrel grown）管状体部材、猫の食道及び猫
の腸を含む（ただしこれらに限定されない）他の
組織から作ることもできる。ポリテトラフルオロ
エチレン・チユーブ又は他の合成チユーブのよう
な他の管状体構造も血管移植片３６に用いること
ができる。

第３図を参照すると、血管移植片３６は心臓１
０に隣接して配置されている。主幹４３は心臓の
前表面上の中位部分に向かつて下降し、次いで後
表面までを取囲み、又、右心房に向かつて上昇す
る。絞られた区間４４及び遠位端区間４６は心房
１１に隣接して配置されている。第９図に示され
ているように、管状部材３７の近位端４１は大動
脈口５３内へ移植されて、それに縫合５４により
吻合されている。第１０図に示されているよう
に、遠位端区間４６は心房１１に開いた心臓１０
内の口５６内へ移植されて、それに縫合５７によ
り吻合されている。血液は、大動脈２６と心房１
１との間の血液の圧力差により管状部材３７の通
路４０を通つて連続的に流れる。のど状通路４８
は、通路４０を通る血液の流れが過剰になるのを
阻止する。管状部材３７の遠位端区間４６は左心
房１３に吻合することもできる。これにより血液
は大動脈２３から通路４０及びチユーブ３７を通
つて左心房１３内へ流れることとなる。

移植片３６の主幹４３は冠状枝２８〜３１及び
３２〜３５のうちの一つ又はそれ以上に隣接して
配置されている。外科医は移植片３６の経路に沿
つて選択的に冠状枝の一つ又はそれ以上を吻合
し、従つて潅注することができるようになる。第
１１図を参照すると、移植片３６は、縫合５８に
より冠状枝３５に吻合されている。円筒状の壁３
８には、血液が通路４０から冠状動脈通路６１内
へ流れる得るように開口５９が設けられている。
移植片の出口端に隣接するのど状通路４８は、冠
状動脈が大動脈血液圧力の数mmHg以内の圧力で
十分な量の血液により潅注されることを許す。の
ど状通路４８を通る血液の流れは層流であり、出
口通路５２を通つて心房１１内へ層流として連続
的に流れ込む。移植片３６内の血液の乱流は最小
である。管状部材３７の内側表面３９は平滑且連
続的であり、又、血液の停滞及び凝固を生じる可
能性のある窒素化合物（nitrics）を全く有してい
ない。

移植片の通路４０を通る血液の適切な流れ、約
2500ml／minが大動脈の吻合５３の直径により保
証されている。実験によれば、大動脈の流量を約
6000ml／min、圧力を100mmHgとして、５mm直径
の管状体の移植片を用いて、シミユレートする
と、約500ml／minが２mmに絞られたのど状通路
４８を通つて右心房内へ流れることが示された。
心臓摶出量は静脈冠流量によつてのみ制限される
ので、左心室は約８％の追加的な負荷を課せられ
ることになる。血液を供給される各冠状動脈が適
切に潅流されるためには、約50〜150ml／minの
血液を必要とする。絞りなしの５mmの移植片を
6000ml／minで血液が流れる大動脈に吻合する
と、その移植片には、十分に2000ml／minを超過
する血液の流れるので、10個までの冠状枝に対し
て適切な血液供給を行うことができることとな
る。その際各々の冠状枝には、150ml／minの血
液が輸送される。のど状通路４８を通る血液の流
れを計算すると、レイノルズ数が500と1000との
間になることが示された。血液の流れは通路４０
及び４８内で層流である。

ある場合には、外科医は、合成移植片３６の代
わりに臍帯ではなく、ここに説明されるように、
自原的伏在静脈の使用することを選択することが
できる。第１２図〜第１７図を参照すると、参照
符号７０にて自原的伏在静脈のセグメントが概ね
示されている。この伏在静脈は細長い管状部材７
１を含む。管状部材７１は、血液を流すための通
路、即ち、腔７３を包囲する連続的な円筒状の壁
７２を有する。管状部材７１の入口端、即ち近位
端７４は開口７５を有する。伏在静脈７０は、第
３図に示されている移植片３６と同様に、心臓の
周りの経路をたどり、閉塞された動脈へ到達す
る。腔７３は大動脈に接続される入口端７４から
出口端、即ち、遠位端７６までほぼ均一な直径を
有する。

静脈の遠位端７６には、参照符号７７にて概ね
示されている血液流を絞る機能を行う管状セグメ
ントが吻合されている。管状セグメント７７は絞
り区間（のど状の区間）８１を挟んで入口側区間
７８及び出口側区間７９を有する。入口側区間７
８には腔７３と縦方向に整合された入口通路８２
が在る。入口通路８２は、絞り区間８１内の絞り
通路８３と連通している。絞り通路８３は出口側
区間７９内の出口通路８４へ開いている。出口通
路８４の横断面積は入口通路８２の横断面積と実
質的には同一である。絞り通路８３の寸法は入口
通路８２の寸法に対して相対的に変化し得る。好
ましくは、入口通路８２の直径は絞り通路８３の
直径の２倍以上である。つまり、入口通路８２の
横断面積は絞り通路８３の横断面積の４倍以上で
ある。絞り通路８３は、一つ又はそれ以上の冠状
動脈が潅流され得るように血液が管状部材７１内
にて所望の血液圧力で腔７３を通つて連続的に流
れることを許す。心房に近い側にある遠位側区間
（出口側区間）７９は、その区間７９が心臓の心
房に吻合された状態で、血液が心臓の心房内へ流
れることを許す開いた出口８６を有する。

使用にあたり、外科医は患者の足から伏在静脈
の一部分を採取する。所望の寸法に絞られた絞り
通路８３を有する管状セグメント７７が管状部材
７１の遠位端（出口端）７６に縫合８７より取付
けられる。大動脈側の入口端７４は大動脈２３に
吻合される。管状部材７１は、管状セグメント７
７の出口側区間７９が心房１１に隣接して配置さ
れるように、心臓を囲繞する。出口側区間７９
は、血液の連続的且適切な流れが管状部材７１及
び管状セグメント７７を通じて維持されるよう
に、心臓の心房の一部に吻合されている。血液の
圧力は、一つ又はそれ以上の冠状動脈が潅流され
得るような所望の値である。外科医は、第１１図
に示されているように、管状部材７１の経路に沿
つて一つ又はそれ以上の冠状動脈をその管状部材
７１へ吻合することができる。このことにより、
圧力の作用により、腔７３から冠状動脈の腔内へ
血液が連続的に流れることとなる。

第１８図〜第２２図を参照すると、人間の心臓
に於ける一つ又はそれ以上の冠状動脈に血液を連
続的に供給するのに使用することのできる管状の
移植片が参照符号９０に概ね示されている。移植
片９０は、連続的な円筒状の壁９２を有するほぼ
Ｕ字状の細長い管状部材９１を有する。壁９２は
ほぼ均一な直径の通路９３を形成する。管状部材
９１は、大動脈から連続的に血液の供給を受ける
ための入口開口９６を有する近位端９４を有す
る。血液は、通路９３を通つて、出口開口９８を
有する遠位端９７へ流れる。遠位端９７は心臓の
心房の一部或いは、心房から血液を受ける静脈に
吻合されるのに適している。

第１８図〜第２２図に示されているように、参
照符号９９にて概ね示されている調節可能な血液
流絞り部材が、一つ又はそれ以上の冠状動脈が潅
流され得るように、所望の圧力の血液の連続的且
適切な流れを維持しつつ、遠位端９７内への血液
の流れを絞るため、遠位端９７に隣接して管状部
材９１に取付けられている。また、血液流絞り部
材９９は絞られた絞り通路１０６を形成すると共
に管状部材を補強する。血液流絞り部材９９は、
一対のセルフ・ロツキングねじ１０３及び１０４
で、第一の部材１０１と第二の部材１０２とを調
節可能に結合するよう構成された締付けユニツト
である。部材１０１は外方に湾曲された中心部１
０１Ａを有し、この中心部が管状部材９１の円周
上に配置されている。第二の部材１０２は上記の
中心部１０１Ａと反対向きに外方に湾曲された中
心部１０２Ａを有し、この中心部も管状部材９１
の反対側の円周上に配置されている。ねじ１０３
及び１０４は、絞り通路１０６の寸法を調節する
べく、第一の部材１０１及び第２の部材１０２を
互いに近接又は離隔させるように調節することが
でき、これにより通路９３を通る血液の流量を調
節し、且通路９３内の血液の圧力を調節する。所
望の横断面積を有する円筒状マンドレルが、絞ら
れる通路の寸法又は横断面積を所望の大きさに形
成するのに用いられる。このマンドレルは管状部
材９１の遠位側区間内へ差込まれる。血液流絞り
部材９９が遠位端付近に置かれ、管状部材９１上
に締付けられる。湾曲された中心部１０１Ａ及び
１０２Ａが互いに近接して、マンドレルの周りの
管状部材９１の壁へ力を加える。次いで、このマ
ンドレルが管状部材９１から取外される。血液流
絞り部材９９は、第２２図に示されているよう
に、絞り通路１０６の設定された横断面積を維持
する。

第２３図を参照すると、参照符号２１０にて人
間の心臓の前面の図が概ね示されている。心臓２
１０は右心房２１１、右心室２１２、左心房２１
３、左心室２１４を有する。身体からの血液は大
動脈２１６を通つて右心房２１１内へ流れる。右
心房２１１内の血液の圧力は、血液が右心房２１
１内へ流れるにつれて低くなる。心臓弁膜は右心
房２１１から右心室２１２内への血液の流れを制
御する。血液は右心室２１２から弁を通じて肺内
へ圧送され、肺から肺静脈を経て左心房２１３へ
戻る。血液は左心房２１３から心臓弁膜を通じて
左心室２１４内へ流れ、左心室２１４から弁を通
じて大動脈２２３内へ圧送される。心臓の筋肉組
織は二つの冠状動脈２２４及び２２６から血液の
供給を受ける。左冠状動脈２２４は大動脈２２３
から心臓の左側に沿つて尖２２７へ向かつて延び
ている。冠状動脈２２４は血液を筋肉組織に供給
する多数の枝２２８，２２９，２３０及び２３１
を有する。左冠状動脈２２４は枝２２８〜２３１
内へ二叉状又は三叉状に分れる短い共通の幹を有
する。一つの枝２３１、前面室間枝、は下方へ前
面室間溝に移動し、又尖２２７のすぐ右へ心臓の
急縁を回り、また後面室間溝へ短い距離だけ上昇
する。枝２３１の部分は右冠状動脈からの枝と吻
合する。これらの枝は正常な心臓内では非常に小
さい。それらは、冠状動脈枝が閉塞又は癒着状態
になつてしまう冠状動脈硬化症に罹患している人
体内では、著しく拡大する場合がある。右冠状動
脈２２６は尖、即ち、交叉２２７に向かつて心臓
の右側の下へ延びている。動脈２２６は心臓の組
織に血液を供給する多数の枝２３２，２３３，２
３４及び２３５を有する。

第２４図乃至第２８図を参照すると、参照符号
２３６に本発明の補強された血管移植片が概ね示
されている。移植片２３６は血液を輸送するため
の連続的な通路を有するほぼＵ字形状の細長い管
状部材２３７である。管状部材２３７は連続的な
円筒状の壁２３８を有し、壁２３８は、細長い長
手方向の通路２４０を郭定する内側表面２３９を
有する。管状部材２３７は大動脈側に近位端、即
ち、入口端２４１と、心房側に遠位端、即ち、出
口端２４２とを有している。主幹２４３が入口端
２４１から絞られた（即ち、直径を減ぜられた）
区間２４４（以下絞り区間とする。）へ延びてい
る。この絞り区間２４４は、遠位端区間２４６に
接続されている。好ましくは、絞り区間２４４
は、心臓の組織に取付けられた状態で出口端２４
２から約２〜５cmに位置する。第２５図〜第２７
図に示されているように、絞り区間２４４には、
主幹２４３の円筒状の壁２３８及び遠位端区間２
４６と一体となつて円筒状の壁２４７が形成され
ている。壁２４７は絞り通路２４８を包囲してい
る。この絞り通路２４８は、通路２４０の横断面
積よりも実質的に小さい横断面積を有する。通路
２４０の横断面積は好ましくは絞り通路２４８の
横断面積よりも４倍以上大きい。円筒状の壁２４
７は、円錐状壁部分２４９により壁２３８に接続
されている。円錐状壁部分２４９の形状は、絞り
通路２４８内への血液の流れの向きに収歛する形
状である。壁２４７の反対側の端は、遠位端区間
２４６の一部分を形成することとなる発散した形
状の円錐状壁部分２５１に接続されている。円錐
状壁部分２５１は出口端２４２に通ずる出口通路
２５２を包囲している。出口通路２５２の横断面
積は主幹２４３の通路２４０の横断面積と実質的
に同一である。円錐状壁部分２４９及び２５１は
各々、血液の流れ内の乱流を最小化するべく緩や
かな滑らかなテーパを構成するような長手方向の
長さと内側壁面を有する。絞り通路２４８を包囲
する円筒状の壁２４７の長手方向の長さは、壁部
分２４９及び２５１の長手方向の長さよりも短い
のが好ましい。かかる長さ及び寸法に関しては、
前記の如くでなくてもよい。絞り区間２４４の長
さが長いほど、絞り通路２４８に与えられた横断
面積に対する血液圧力降下は大きい。出口通路２
５２は、血液が心臓の心房内へ流れる前に血液の
流速及び圧力を減ずるように作用するチヤンバを
なしている。遠位端区間２４６は心臓の組織又は
血液を受け入れる脈管に容易に取付けられるよう
な寸法である。

血管移植片２３６は、生体的に不活性であり且
長期間に亙り身体内で劣化しない合成材料の細長
いチユーブである。適当な材料の例はポリテトラ
フルオロエチレン及びDacronプラスチツクスで
ある。他の材料及びそれらの組合わせも血管移植
片２３６に用いることができる。絞り区間２４４
は、スリーブ２４５により補強されており、絞り
通路２４８の横断面積及び長さが長期間に亙り維
持されることを保証するように構成されている。
壁２４７の材料は、スリーブ２４５により補強さ
れると、使用中に膨張せず、これにより絞り通路
２４８の寸法及び長さは、血管移植片２３６の使
用中に於て実質的に一定に保たれることとなる。
スリーブ２４５は、長期間に亙り絞り通路２４８
の所望の寸法を維持するように、壁２４７の拡張
又は膨張、収縮及び伸長を抑制する補強構造であ
る。これは血管移植片２３６を通過する血液の連
続的且制御された流れを保証し、また主幹２４３
に取付けられた冠状枝を潅注する通路２４０内の
血液の圧力を所定の値に維持する。スリーブ２４
５は、網として形成された金属、プラスチツク又
はカーボン繊維の管状繊維部材であつて良く、か
かる網構造が、絞り区間２４４を包囲する。スリ
ーブ２４５を形成するのにテープ及び糸を用いて
も良い。スリーブ２４５は絞り区間２４４の外側
表面に接着又は他の方法で取付けられ得ることが
できる。かかる補強構造は絞り区間２４４の材料
内へ一体的に組み込まれていても良い。絞り区間
の壁の厚みをかかる区間を強化するように厚くし
ても良い。スリーブは、絞り区間の周りに配置さ
れるべく構成された剛固なプラスチツク、カーボ
ン又は金属の管状部材であつても良い。

第２４図、第２６図、第２９図及び第３１図に
示されているように、スリーブ２４５は、壁２４
７とそれに接続された円錐状壁部分２４９及び２
５１とを包囲している。スリーブ２４５は、収歛
する円錐状壁部分及び発散する円錐状壁部分の双
方を補強し、絞られた絞り通路２４８を形成する
ように、円錐状壁部分２４９から円錐状壁部分２
５１まで連続した構造を有している。

血管移植片２３６全体は、人間の臍帯から作ら
れた管状構造であつても良い。臍帯は矯正され、
また所望に絞られた絞り区間２４４を形成するよ
うにテーパを付けられる。絞り区間２４４は前記
のような機械的補強手段により補強される。かか
る絞られ且補強された区間を有する他の形式の血
管及び組織チユーブも移植片として用いることが
できる。

第２３図を参照すると、血管移植片２３６は心
臓２１０に隣接して配置されている。主幹２４３
は心臓の前表面上の中位部分に向かつて下降し、
次いで後表面まで取囲み、また右心房に向かつて
上昇する。絞り区間２４４及び遠位端区間２４６
は心房２１１に隣接して配置されている。第３０
図に示されているように、管状部材２３７の近位
端２４１は大動脈の口２５３内へ移植されて、そ
れに縫合２５４により吻合されている。第３１図
に示されているように、出口端２４６は、心房２
１１に開いた口２５６の周りに於て心臓３０に取
付けられ、縫合２５７により吻合されている。血
液は大動脈２２３と心房２１１との間の血液圧力
差によつて管状部材２３７の通路２４０を通つて
連続的に流れることとなる。絞り通路２４８は、
通路２４０を通る血液の流れが過剰になることを
阻止する。スリーブ２４５で補強された絞り区間
２４４は絞り通路２４８を通る血液の制御された
流れを維持する。絞り通路２４８の横断面積及び
長さは、補強するスリーブ２４５と壁２４７との
共同作用により長い使用期間に亙つて保たれる。
管状部材２３７の遠位端区間２４６は、左心房２
１３に吻合することができる。これにより血液は
大動脈２２３から通路２４０，２４８及び２５２
を通つて左心房２１３内へ流れ込むこととなる。

移植片２３６の主幹２４３は冠状枝２２８〜２
３１及び２３２〜２３５のうちの一つ又はそれ以
上に隣接して配置されている。外科医は、移植片
２３６の経路に沿つて選択的に冠状枝の一つ又は
それ以上を吻合し、従つて潅注することができる
ようになる。第３１図を参照すると、移植片２３
６は、縫合２５８により冠状枝２３５に吻合され
ている。円筒状壁２３８には、開口２５９が設け
られ血液が通路２４０から冠状動脈の通路２６１
内へ流れることができるようになつている。絞ら
れた絞り通路２４８は、移植片の心房に近い側に
隣接して設けられ、従つて、冠状動脈が大動脈の
血液の圧力の数mmHg以内の圧力で十分な量の血
液により潅注されることとなる。絞られた絞り通
路２４８を通る血液の流れは層流であり、通路２
５２を通つて心房２１１内へ層流として連続す
る。出口通路２５２が絞り通路２４８よりも大き
いので、血液が心房２１１内へ流入する前に、そ
の血液の圧力及び速度が減ぜられる。移植片２３
６内の血液の乱流は最小である。管状部材２３７
の内側表面２３９は平滑且連続的である。それは
血液の停滞及び凝固を生じさせ得る窒素化合物は
全く含まれていない。

本発明の移植片を、下肢の周辺の再血管形成処
置に於ても血液を輸送するものとして用いること
もできる。例えば、移植片は最遠位動脈吻合と、
膝窩静脈若しくはその主要枝の一つとの間に挿入
されることとなる。血液を供給する器官は大腿動
脈であり、また吻合は膝窩動脈及び（又は）その
遠位枝、前脛骨、後脛骨又は腓骨動脈内でなされ
よう。これらの動脈と移植片の遠位端との間に配
置された絞り通路又はのど状通路が移植片を通る
血液流を制御する。血液流を制御することにより
前記の動脈に適切な血液圧力の潅注を行うことが
でき、また同時に移植片の開存を維持するべく連
続的な血液流を保証することとなる。

本発明の移植片の好ましい実施例と一つ又はそ
れ以上の動脈に連続的な血液流を供給する方法と
を図示し説明してきたが、移植片の材料、寸法、
長さ及び配置の変更が本発明の範囲内で当業者よ
り行なわれ得ることは理解されよう。本発明の範
囲は下記の請求の範囲により定められている。

【図面の簡単な説明】

第１図は人間の心臓の前面の図である。第２図
は第１図の心臓の解図的縦断面図である。第３図
は本発明の移植片を有する人間の心臓の前面の図
である。第４図は第３図の移植片を拡大して且部
分的に断面図で示す平面図である。第５図は第４
図の線５−５に沿う拡大断面図である。第６図は
第４図の線６−６に沿う拡大断面図である。第７
図は第４図の線７−７に沿う拡大断面図である。
第８図は第４図の線８−８に沿う拡大断面図であ
る。第９図は第３図の線９−９に沿う拡大断面図
である。第１０図は第３図の線１０−１０に沿う
拡大断面図である。第１１図は第３図の線１１−
１１に沿う拡大断面図である。第１２図は本発明
の移植片として使用可能な伏在静脈及びその遠位
側に吻合された管状セグメントを部分的に断面図
で示す平面図である。第１３図は第１２図の線１
３−１３に沿う拡大断面図である。第１４図は第
１２図の線１４−１４に沿う拡大断面図である。
第１５図は第１２図の線１５−１５に沿う拡大断
面図である。第１６図は第１２図の線１６−１６
に沿う拡大断面図である。第１７図は第１２図の
線１７−１７に沿う拡大断面図である。第１８図
は移植片及びそれに対する調節可能な血液流絞り
部材を部分的に断面図で示す平面図である。第１
９図は第１８図の線１９−１９に沿う拡大断面図
である。第２０図は第１８図の線２０−２０に沿
う拡大断面図である。第２１図は第１８図の線２
１−２１に沿う拡大断面図である。第２２図は第
１８図の線２２−２２に沿う拡大断面図である。
第２３図は本発明の補強された血管移植片を有す
る人間の心臓の前面の図である。第２４図は第２
３図の血管移植片を拡大して且部分的に断面図で
示す平面図である。第２５図は第２４図の線２５
−２５に沿う拡大断面図である。第２６図は第２
４図の血管移植片の遠位端を拡大して示す図であ
る。第２７図は第２６図の線２７−２７に沿う拡
大断面図である。第２８図は第２６図の線２８−
２８に沿う拡大断面図である。第２９図は第２６
図の線２９−２９に沿う拡大断面図である。第３
０図は第２６図の線３０−３０に沿う拡大断面図
である。第３１図は第２６図の線３１−３１に沿
う拡大断面図である。第３２図は第２６図の線３
２−３２に沿う拡大断面図である。 １０…心臓、１１…右心房、１２…右心室、１
３…左心房、１４…左心室、１６…大静脈、１７
…心臓弁膜、１８…弁、１９…肺動脈、２０…肺
静脈、２１…心臓弁膜、２２…弁、２３…大動
脈、２４…左冠状動脈、２６…右冠状動脈、２７
…尖、交又、２８，２９，３０，３１，３２，３
３，３４，３５…冠状動脈枝、３６…移植片、３
７…管状部材、３８…壁、３９…内側表面、４０
…通路、４１…入口端（近位端）、４２…出口端
（遠位端）、４３…主幹、４４…絞られた区間、４
６…遠位端区間、４７…円筒状の壁、４８…絞り
通路（のど状通路）、５２…出口通路、４９，５
１…円錐状壁部分、５３…大動脈口、５４…縫
合、５６…心臓内の口、５７，５８…縫合、５９
…開口、７０…伏在静脈、７１…管状部材、７２
…壁、７３…腔、７４…入口端（近位端）、７５
…開口、７６…管状部材７１の出口端（遠位端）、
７７…管状セグメント、７８…入口側区間、７９
…出口側区間、８１…のど区間、８２…入口通
路、８３…絞り通路、８４…出口通路、８６…出
口、９０…移植片、９１…管状部材、９２…壁、
９３…通路、９４…近位端、９６…入口開口、９
７…遠位端、９８…出口開口、９９…血液流絞り
部材、１０６…絞り通路、１０１…第一の部材、
１０２…第二の部材、１０３，１０４…ねじ、２
１０…心臓、２１１…右心房、２１２…右心室、
２１３…左心房、２１４…左心室、２１６…大静
脈、２２３…大動脈、２２４…左冠状動脈、２２
６…右冠状動脈、２２７…尖、交又、２２８，２
２９，２３０，２３１，２３２，２３３，２３
４，２３５…冠状動脈枝、２３６…移植片、２３
７…管状部材、２３８…円筒状の壁、２３９…内
側表面、２４０…通路、２４１…入口端、２４２
…出口端、２４３…主幹、２４４…絞り区間、２
４５…スリーブ、２４６…遠位端区間、２４７…
壁、２４８…絞り通路、２４９，２５１…円錐状
壁部分、２５２…出口通路、２５３…大動脈の
口、２５４…縫合、２５６…心房に開いた口、２
５７，２５８…縫合、２５９…開口。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少くとも一つの血管へ血液を供給するための
   移植片であつて、 血液を輸送する連続的な通路と、圧力の作用に
   より血液を供給する器官から前記通路内へ血液が
   流れ込むように前記血液を供給する器官に取付け
   ることのできるよう構成された入口端と、前記血
   液を供給する器官の血圧よりも低い血圧を有する
   血液を受入れる器官へ前記通路内にて輸送されて
   きた血液を吐出すべく該器官に取付けることので
   きる出口端と、少なくとも一つの開口とを有し、
   前記少なくとも一つの血管へ前記開口を介して取
   り付けられ、血液が前記開口を通して前記血管の
   各々へ流れ込むよう構成された管状手段を含み、 前記出口端の近傍に於いて前記通路内の血液の
   流れを絞り且その圧力を維持し前記血管への血液
   の連続的な流れを維持するよう前記通路が絞られ
   ていることを特徴とする血管移植片。