JPH0432877B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は疲労寿命改良潤滑剤に関し、詳しくは
潤滑基剤に特定の物質を添加することによつて歯
車、軸受等の機械部品の疲労寿命を延長し、かつ
腐食防止能を付与する潤滑油組成物に関する。 歯車、軸受等には高い圧力に耐えるために、耐
スコーリング性に優れた潤滑剤が用いられてい
る。ところが、使用実態を調べてみると、スコー
リングの発生は極めて少なく、むしろピツチング
等の疲労損傷によるトラブルの方が多いことが明
らかとなつた。 このような実情に鑑み、本出願人は特定のイオ
ウ化合物を配合した疲労寿命改良潤滑剤を開発
し、提案した（特開昭59−11397号）。本発明者ら
は、さらに研究を重ねた結果、一層疲労寿命を延
長させ、しかも腐食防止能をも兼ね備えた潤滑油
組成物を見出し、本発明を完成したのである。 すなわち本発明は、(a)ジチオカルバミン酸エス
テルおよび／またはアルキルチオカルバモイル化
合物0.01〜10重量％と、(b)１，３，４−チアジア
ゾール化合物0.005〜１重量％を配合してなる疲
労寿命改良潤滑剤（以下、「潤滑剤」と称す
る。）を提供すると共に、(a)ジチオカルバミン酸
エステルおよび／またはアルキルチオカルバモイ
ル化合物0.05〜５重量％と、(b)１，３，４−チア
ジアゾール化合物0.005〜１重量％および(c)硫化
オレフイン、硫化油、硫化オキシモリブデンオル
ガノホスホロジチオエート、硫化オキシモリブデ
ンジチオカーバメートおよびリン酸エステルより
からなる群から選ばれた少なくとも１種の物質
0.05〜10重量％を添加してなる疲労寿命改良潤滑
剤（以下、「潤滑剤」と称する。）を提供するも
のである。 本発明の潤滑剤およびにおいて用いる潤滑
基剤としては通常の潤滑油、グリースなどがあ
り、特別な制限なく各種のものを使用できる。潤
滑油は鉱油に限らず合成油であつてもよく、また
これらの混合物でもよい。 次に、(a)成分ジチオカルバミン酸エステルは下
記一般式（）で表わされる化合物である。 （式中、R¹、R²およびR⁵は炭素数１〜18のアル
キル基を示し、R³は水素または−COOR⁵を示し、
R⁴は水素またはメチル基を示す。） 具体的には次の化合物を例示することができる。 また、他の(a)成分であるアルキルチオカルバモ
イル化合物は下記一般式（）で表わされる化合
物である。 （式中、R⁶、R⁷、R⁸およびR⁹は炭素数１〜20の
アルキル基を示し、R⁶とR⁷またはR⁸とR⁹が環を
形成してもよく、(A)はＳ，Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ、
Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−
Ｓ−Ｓ−Ｓ−ＳまたはＳ−（CH₂）_o−Ｓを示し、
ｎは１〜３の整数を示す。） 一般式（）で表わされる化合物の具体例とし
ては、メチレンビス（ジブチルジチオカーバメー
ト）、ビス（ジメチルカルバモイル）モノスルフ
イド、ビス（ジブチルチオカルバモイル）モノス
ルフイド、ビス（ジメチルカルバモイル）ジスル
フイド、ビス（ジブチルカルバモイル）ジスルフ
イド、ビス（ジブチルチオカルバモイル）ジスル
フイド、ビス（ジアミルカルバモイル）ジスルフ
イド、ビス（ジアミルチオカルバモイル）ジスル
フイド、ビス（ジオクチルカルバモイル）ジスル
フイド、ビス（ジオクチルチオカルバモイル）ジ
スルフイド、テトラアミルチオカルバモイルスル
フイド、ビス（ジアミルチオカルバモイル）モノ
スルフイド、ジ（ペンタメチレンチオカルバモイ
ル）ヘキササルフアイドなどがある。 上記(a)成分の配合量は潤滑剤中0.01〜10重量
％、好ましくは0.05〜５重量％が適当である。(a)
成分を添加しないと、疲労寿命の伸びが期待でき
ない。 さらに、(b)成分の１，３，４−チアジアゾール
化合物は下記一般式（）で表わされる化合物で
ある。 （式中、R¹⁰およびR¹¹は炭素数１〜30のアルキ
ル基を示す。）でこの化合物の具体例としては次
の化合物などがある。 上記(b)成分の配合量は潤滑剤中0.005〜１重量
％、好ましくは0.05〜0.5重量％である。(b)成分
を添加しない場合は、腐食防止能が悪く、疲労寿
命の延長も不十分である。 上記(a)成分と(b)成分を含む潤滑剤は無添加の
鉱油と比較し疲労寿命は約２倍延長する。 潤滑剤は上記(a)成分および(b)成分のほかに(c)
成分を含有するものである。 (c)成分の硫化オレフインとしては種々のオレフ
インまたはポリオレフインの硫化物を使用でき
る。例えば炭素原子が16〜18のオレフインの硫化
物、分子量600前後のポリブデンの約40重量％の
硫黄を含有する硫化物などがある。硫化油として
は例えば硫化ラード、硫化オレイン酸オレイル、
硫化オレイン酸ミリスチルなどがある。硫化オキ
シモリブデンオルガノホスホロジチオエートとし
ては例えば硫化オキシモリブデンジイソプロピル
ホスホロジチオエート、硫化オキシモリブデンジ
イソブチルホスホロジチオエート、硫化オキシモ
リブデン（２−エチルヘキシル）ホスホロジチオ
エート、硫化オキシモリブデン（Ｐ−tert.−ブチ
ルフエニル）ホスホロジチオエート、硫化オキシ
モリブデン（ノニフエニル）ホスホロジチオエー
トなどがある。硫化オキシモリブデンジチオカー
バメートとしては例えば硫化ジエチルジチオカル
バミン酸モリブデン、硫化ジプロピルジチオカル
バミン酸モリブデン、硫化ジブチルジチオカルバ
ミン酸モリブデン、硫化ジアミルジチオカルバミ
ン酸モリブデン、硫化ジ−（２−エチルヘキシル）
ジチオカルバミン酸モリブデン、硫化ジラウリル
ジチオカルバミン酸モリブデン、硫化ジ（ノニル
フエニル）ジチオカルバミン酸モリブデン、硫化
ジ（シクロヘキシル）ジチオカルバミン酸モリブ
デンなどがある。また、リン酸エステルとしては
ブチルアシツドホスフエート、２−エチルヘキシ
ルアシツドホスフエート、ラウリルアシツドホス
フエート、オレイルアシツドホスフエート、ジブ
チルハイドロゲンホスフアイト、ジラウリルハイ
ドロゲンホスフアイト、ジステアリルハイドロゲ
ンホスフアイト、ジオレイルハイドロゲンホスフ
アイト、ジフエニルハイドロゲンホスフアイト、
モノブチルアシツドホスフエート、モノ２−エチ
ルヘキシルアシツドホスフエート、モノラウリル
アシツドホスフエート、モノオレイルアシツドホ
スフエート、ジブチルハイドロゲンホスフアイト
のジエチルアミン塩などが挙げられる。ここでい
うリン酸エステルはアミン化合物との反応生成物
をも含む。 上記(c)成分は単独で使用してもよく、あるいは
２種以上を組合せて用いてもよい。(c)成分の配合
量は潤滑剤中0.05〜10重量％である。 上記(a)成分、(b)成分および(c)成分を含む潤滑剤
は潤滑剤よりも疲労寿命が延長し、さらに耐
スコーリング性の向上も達成される。 本発明の潤滑剤においては、上記各成分以外に
必要に応じて酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、
消泡剤などを適宜添加することができる。 本発明の潤滑剤、を歯車、軸受等の各種機
械部品の表面に塗布、噴霧、浸漬等の手段により
付着せしめることにより、これらの部品の疲労寿
命を著しく延長することができる。さらに、本発
明の潤滑剤は腐食防止能も優れており、潤滑剤
は耐スコーリング性や耐摩耗性能においても極め
て優れている。 したがつて、本発明の潤滑剤はギヤー油、軸受
油などの潤滑油として、あるいは各種用途のグリ
ースとして広く利用することができる。 次に、本発明を実施例により詳しく説明する。 実施例１〜10および比較例１〜４ 第１表に示す組成の潤滑剤について下記の性質
の評価を行なつた。結果を第１表に示す。 (1) 疲労寿命 ２円筒試験機（特開昭59−11397号参照）を
用い、２円筒（駆動側試験片と被駆動側試験
片）をころがり、すべり接触を繰返して疲労寿
命の差を評価した。なお、試験片の性状、実験
条件および疲労寿命の判定方法は下記の通りで
ある。 試験片の性状 材質：SCM−３（駆動側、被駆動側共に） 径×幅：60mm×20mm（駆動側、被駆動側共
に） 硬度（HB）：350（駆動側）、300（被駆動側） 粗さ（R_nax）：3μｍ（駆動側、被駆動側共
に） 実験条件 回転数：1500r.p.m. すべり率：−18％ すべり速度：0.7ｍ／秒 接触圧力（H_nax）：75Kg／mm² 疲労寿命の判定方法 運転後に３時間毎に停止して肉眼観察し、被
駆動試験片に0.5mm以上の損傷が10個発生する
までの接触回数（回転数×時間）を疲労寿命と
した。この値をワイプル分布曲数によつて損傷
発生率50％の寿命L₅₀を求めた。パラフイン系
基油の場合、寿命（L₅₀）は4.7×10⁶であつた。
各潤滑剤について同様の方法により測定し、そ
の寿命を上記基油の寿命に対する相対値として
求めた。 (2) 腐食防止能 銅板腐食試験（JIS Ｋ−2513）により測定 (3) 耐スコーリング性 テイムケン試験（ASTM D2782）により測定 表から明らかなように、(a)成分と(b)成分を含む
場合、疲労寿命が鉱油の約２倍に延長し、(a)、
(b)、(c)の３成分を含む場合は、疲労寿命がさらに
延長し、また耐スコーリング性も向上する。(b)成
分を含まないものは腐食防止能が悪く、疲労寿命
の延長も不十分である。また、(a)成分を含まない
ものは疲労寿命の延びが期待できない。

【表】

【表】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ (a)ジチオカルバミン酸エステルおよび／また
   はアルキルチオカルバモイル化合物0.01〜10重量
   ％と、(b)１，３，４−チアジアゾール化合物
   0.005〜１重量％を配合してなる疲労寿命改良潤
   滑剤。 ２ (a)成分のジチオカルバミン酸エステルが下記
   一般式（）で表わされる化合物であり、 （式中、R¹、R²およびR⁵は炭素数１〜18のアル
   キル基を示し、R³は水素または−COOR⁵を示し、
   R⁴は水素またはメチル基を示す。） アルキルチオカルバモイル化合物が下記一般式
   （）で表わされる化合物 （式中、R⁶、R⁷、R⁸およびR⁹は炭素数１〜20の
   アルキル基示し、R⁶とR⁷またはR⁸とR⁹が環を形
   成してもよく、(A)はＳ，Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ
   −Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ
   −Ｓ−Ｓ−ＳまたはＳ−（CH₂）_o−Ｓを示し、ｎ
   は１〜３の整数を示す。） である特許請求の範囲第１項記載の疲労寿命改良
   潤滑剤。 ３ (b)成分の１，３，４−チアジアゾール化合物
   が下記一般式（）で表わさる化合物 （式中、R¹⁰およびR¹¹は炭素数１〜30のアルキ
   ル基を示す。）である特許請求の範囲第１項記載
   の疲労寿命改良潤滑剤。 ４ (a)ジチオカルバミン酸エステルおよび／また
   はアルキルチオカルバモイル化合物0.01〜10重量
   ％、(b)１，３，４−チアジアゾール化合物0.005
   〜１重量％および(c)硫化オレフイン、硫化油、硫
   化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエー
   ト、硫化オキシモリブデンジチオカーバメートお
   よびリン酸エステルよりなる群から選ばれた少な
   くとも１種の物質0.05〜10重量％を添加してなる
   疲労寿命改良潤滑剤。 ５ (a)成分のジチオカルバミン酸エステルが下記
   一般式（）で表わされる化合物であり、 （式中、R¹、R²およびR⁵は炭素数１〜18のアル
   キル基を示し、R³は水素または−COOR⁵を示し、
   R⁴は水素またはメチル基を示す。） アルキルチオカルバモイル化合物が下記一般式
   （）で表わされる化合物 （式中、R⁶、R⁷、R⁸およびR⁹は炭素数１〜20の
   アルキル基示し、R⁶とR⁷またはR⁸とR⁹が環を形
   成してもよく、(A)はＳ，Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ
   −Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ−Ｓ、Ｓ−Ｓ−Ｓ
   −Ｓ−Ｓ−ＳまたはＳ−（CH₂）_o−Ｓを示し、ｎ
   は１〜３の整数を示す。） である特許請求の範囲第４項記載の疲労寿命改良
   潤滑剤。 ６ (b)成分の１，３，４−チアジアゾール化合物
   が下記一般式（）で表わさる化合物 （式中、R¹⁰およびR¹¹は炭素数１〜30のアルキ
   ル基を示す。）である特許請求の範囲第４項記載
   の疲労寿命改良潤滑剤。