JP5065661B2 - グリース組成物 - Google Patents
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特に、ギヤードモータの減速機のように、負荷の大きい部分に使用されるグリースには、耐摩耗性だけでなく、高荷重や衝撃荷重に耐えうる極圧性をも要求される。また、近年、ギヤードモータでは小形化・高トルク化の要求が一層高まり、ギヤ歯面の面圧やすべり速度が大きくなり、運転中の歯面温度も高まる傾向にある。
このような用途に使用されるグリースには、従来、硫黄−りん系添加剤、ジチオフォスフェート(DTP)系添加剤、金属ジチオカーバメート(DTC)系添加剤等を加えることで極圧性を付与してきた。
極圧性を付与されたグリース組成物として、例えば、特許文献1および2には、有機モリブデン化合物(MoDTC)を含有した耐摩耗性に優れるグリース組成物が開示されている。また、ギヤードモータ用としては、例えば、特許文献3に、超高分子量ポリオレフィン粉末を添加して消音性を付与したグリース組成物が開示されている。
そこで、本発明の目的は、優れた耐摩耗性および極圧性を有するとともに、熱によって硬化する可能性が低く、熱の発生しやすいギヤードモータ等に使用した場合にも寿命の長いグリース組成物を提供することである。
このような構成によれば、極圧剤として、さらにチアジアゾール系化合物およびジベンジルジサルファイドの少なくともいずれか一方を含有するので、グリース組成物がより良好な極圧性を示す。
このような構成によれば、極圧剤として、亜鉛ジチオカーバメートおよびチアジアゾール系化合物を共に含有するので、グリース組成物が、より優れた耐摩耗性および極圧性を有するとともに、熱によって硬化する可能性が低く、熱の発生しやすいギヤードモータ等に使用した場合にも寿命が長くなる。
このような構成によれば、増ちょう剤が、ギヤの発熱に伴う劣化が少ない複合リチウム石けんであるから、一般的で安価な増ちょう剤を用いて優れた特性を備えたグリース組成物を提供することができる。
このような構成によれば、基油の40℃での動粘度が、100mm2/s以上であるので高温時にも潤滑油膜を形成しやすく、グリースからの離油も少ない。また、ちょう度番号が1号以下であると、ギヤボックス内での流動性に優れ、歯面へのグリース供給がスムーズに行なえるので、優れた潤滑性が得られる。
本発明のグリース組成物は、上述のような構成を備え、優れた耐摩耗性および極圧性を有するとともに、熱によって硬化する可能性が低いので、モータまたは発電機が一体となった変速機、例えば、小型かつ負荷が大きく発熱しやすいギヤードモータに用いた場合でも、従来のグリース組成物のように熱で硬化するおそれが少なく、長期間継続的に使用することができる。
本発明のグリース組成物は、上述のような構成を備え、優れた耐摩耗性および極圧性を有するとともに、熱によって硬化する可能性が低いので、モータまたは発電機が一体となった変速機であって、変速機の変速比が1:10以上でより発熱が起こりやすい変速機に用いた場合でも、従来のグリース組成物のように熱で硬化するおそれが少なく、長期間継続的に使用することができる。
本実施形態のグリース組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、基油と、増ちょう剤と、所定の極圧剤と、を含有する。
基油は、鉱油や合成系基油のいずれでもよく、これらの混合油でもよい。
基油として用いられる鉱油としては、従来公知の種々のものが使用可能であり、例えば、パラフィン基系鉱油、中間基系鉱油、ナフテン基系鉱油等が挙げられる。
具体例としては、溶剤精製または水素精製による軽質ニュートラル油、中間ニュートラル油、重質ニュートラル油またはブライトストック等を挙げることができる。
これらの基油は、単独で、あるいは二種以上組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油とを組み合わせて使用してもよい。
なお、基油の40℃における動粘度は300mm2/s以上であることがより好ましく、グリース組成物のちょう度は、0〜000号であることがより好ましい。
石けん系増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、複合リチウム、複合カルシウム、複合アルミニウム等の石けんを用いることができる。これらのうち複合石けんが好ましく、特に、複合リチウム石けんが好適に用いられる。歯面からの発熱に伴う軟化・硬化が少なく、耐熱性に優れる特長があるからである。
ウレア化合物としては、従来、増ちょう剤として使用されているウレア化合物の中から、任意のものを用いることができる。このウレア化合物には、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などがある。これらの増ちょう剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジチオカーバメートとしては、メチレンビスジエチルジチオカーバメート、メチレンビスジブチルジチオカーバメート、メチレンビスジアミルジチオカーバメート、メチレンビスジアリールジチオカーバメート、チオカーバメート誘導体等が挙げられる。
亜鉛ジチオカーバメートとしては、亜鉛ジアミルジチオカーバメート、亜鉛ジアリールジチオカーバメート、亜鉛オキシサルファイドジチオカーバメート、亜鉛サルファイドジチオカーバメート等が挙げられる。特に、広く市販されており入手が容易な亜鉛ジアミルジチオカーバメートが好適である。
これらの化合物は、1種単独で用いても良いし、2種以上を複合的に用いても良い。
リン酸エステルとしては、アリールホスフェート、アルキルホスフェート、アルキルアリールホスフェート、アラルキルホスフェート、アルケニルホスフェート等があり、例えば、トリフェニルホスフェート、アルキル化トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスホロチオエート等を挙げることができる。
以上のりん系極圧剤の中で、酸化安定性や熱安定性に優れるアルキル化トリフェニルホスフェートが好適である。
チアジアゾール系化合物としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールおよびその重合体、2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール ポリスルフィド、2,5−ビス(アルキルジチオカルバメート)−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。特に、酸化安定性に優れ、グリースの硬化も防げる2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブタンジチオ)−1,3,4−チアジアゾールが好適である。
なお、本組成物は、上述の各種極圧剤のうち、特に、酸化安定性に優れるため、亜鉛ジチオカーバメートと、チアジアゾール系化合物と、を共に含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、これらは、通常0.05〜2質量%の割合で使用される。
防錆剤としては、亜硝酸ナトリウム、石油スルホネート、ポリオキシエチレンソーヤアミン、ソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
以上のような各種添加剤は、単独で、または数種組み合わせて配合してもよく、本発明の潤滑油添加剤はこれらの効果を阻害するものではない。
実施例および比較例の各グリース組成物を、以下の表1に示す配合で調製し、各種の特性を評価した。
基油2:出光興産株式会社製ダイアナフレシアP−150
増ちょう剤:表1中に個別に記載
酸化防止剤:ジオクチルジフェニルアミン
防錆剤:Caスルホネート
DTC2:ジチオカーバメート(メチレンビスジブチルジチオカーバメート)
りん系極圧剤1:トリクレジルフォスフェート
りん系極圧剤2:アルキルアシッドフォスフェートアミン塩
硫黄系極圧剤1:2,5ビス−(1,1,3,3−テトラメチルブタンジチオ)−1,3,4−チアジアゾール
硫黄系極圧剤2:ジベンジルジサルファイド
SP系極圧剤:Lubrizol社製、ANGLAMOL99
MoDTC:モリブデンジブチルジチオカーバメート
メラミンシアヌレート:三菱化学(株)製、MCA グレードC1
(1)表1に示す配合量の1/3の質量の基油、12−ヒドロキシステアリン酸4.08質量%およびCaスルホネート1.0質量%を反応釜中で、撹拌しながら加熱溶解させた。
(2)水酸化リチウム(一水和物)0.84質量%を、水酸化リチウムの5倍(質量比)の水に溶解し、さらにテレフタル酸1.08質量%を溶解させた。この水溶液を(1)のグリース組成物に添加し、加熱混合した。グリース組成物の温度が205℃に達した後、5分間保持した。
(3)次に、残りの基油を添加した後、50℃/1時間で80℃まで冷却し、表1に示すように、酸化防止剤、極圧剤、(実施例5については)固体潤滑剤を添加混合した。
(4)さらに、室温まで自然放冷した後、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行ってグリース組成物を得た。
12−ヒドロキシステアリン酸を2.72質量%、水酸化リチウム(一水和物)を0.56質量%、テレフタル酸を0.72質量%とした以外は、上記の各実施例、比較例と同様にしてグリース組成物を得た。
[比較例3]
増ちょう剤としてLi石けんを配合する市販のグリース組成物である。ジチオカーバメートおよび亜鉛ジチオカーバメートは含有していない。
[比較例4]
増ちょう剤としてウレアを配合する市販のグリース組成物である。ジチオカーバメートおよび亜鉛ジチオカーバメートは含有していない。
酸化安定性:JIS K2220.12の酸化安定性試験により評価した。温度のみ125℃に変更した。
潤滑性:ASTM D2714に規定される試験機を用いたブロックオンリング試験により評価した。H−60のブロックと、S−10のリングを使用し、定量ポンプを用いて0.2cc/gの流速でグリース組成物をリングに供給した。6分間のならし運転(100Lbs、500rpm、)の後、150Lbs、500rpmの条件で15分間の本試験を行った。本試験後のブロック中心部の温度、摩耗幅を計測した。
上記の各評価の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例1〜4に対し、実施例1〜5のグリース組成物は、優れた耐摩耗性、極圧性および酸化安定性を有し、熱硬化も起こりにくい。
Claims (3)
- 基油および増ちょう剤を含み、モータまたは発電機が一体となった変速機に用いられるグリース組成物であって、
前記基油は、40℃での動粘度が100mm2/s以上であり、
前記増ちょう剤は、複合リチウム石けんであり、
極圧剤として、
硫黄分換算で0.01〜1質量%(組成物全量基準)のジチオカーバメートおよび亜鉛ジチオカーバメートの少なくともいずれか一方と、
りん量換算で150〜4000質量ppm(組成物全量基準)のりん系極圧剤と、
硫黄分換算で10〜9000質量ppmのチアジアゾール系化合物およびジベンジルジサルファイドの少なくともいずれか一方とを含有する
ことを特徴としたグリース組成物。 - 請求項1に記載のグリース組成物であって、
該グリース組成物のちょう度番号が、1号以下である
ことを特徴としたグリース組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のグリース組成物であって、
前記変速機の変速比は、1:10以上である
ことを特徴としたグリース組成物。
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