JPH0432203B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は、エンジンヘツドのバルブ当接面に使
用するセラミツクバルブシートに関するものであ
る。 （従来の技術） 内燃機関に使用するバルブシートとしては、高
温にさらされるとともにバルブとの繰り返し荷重
による摩耗の問題もあるため、従来耐熱合金が使
われたりセラミツク製のバルブシートの使用が試
みられている。 （発明が解決しようとする問題点） しかしながら、耐熱合金製のバルブシートにお
いては、年々要求が高くなる高温高圧の使用条件
や繰り返し荷重による摩耗条件を満たすことが困
難となり、交換の回数が増す欠点があつた。 また、セラミツク製のバルブシートにおいては
上述した耐熱合金製のバルブシートの欠点を解決
することができるものの、実際の使用時にバルブ
との当接面のエツヂ部において応力集中が発生し
やすく、その結果クラツクが生じたり極端な場合
は破壊してしまう欠点があつた。 本発明の目的は上述した不具合を解決して、破
壊する危険性が少なく、高温、繰り返し荷重に耐
えることができるセラミツクバルブシートを提供
しようとするものである。 （問題点を解決するための手段） 本発明のセラミツクバルブシートは、少なくと
もバルブとの当接面がセラミツクスよりなるセラ
ミツクバルブシートにおいて、該バルブシートが
接する面のエツヂ部を最小曲率半径0.2mm以上の
曲面で丸めたことを特徴とするものである。 （作用） セラミツクバルブシート当接面にバルブが着座
するとバルブとの当接面のエツヂ部を丸めていな
い場合には、接触しているセラミツク部には押し
こまれる方向に面圧が働き非接触部には、力が作
用しない。すなわち、面圧が境界部を境として不
連続に変化するため、その境界部には大きな剪断
力が発生する。本発明のように該セラミツクバル
ブシートのエツヂ部を丸めることによりバルブが
着座した時の接触面の境界部での変化は、緩やか
なものとなるため境界部に発生する剪断力も小さ
くすることができクラツク発生を抑制できる。 応力集中を緩和するためには、丸め部の断面形
状の曲率半径を大きくすることが効果が有るが、
実施例１に述べるように最小曲率半径0.2mm以上
の形状とすることで最大の応力緩和効果が得られ
る。従つて丸めの断面形状の曲率半径は、0.2mm
以上とすることが好ましい。 本発明のセラミツクバルブシートを作るには、
まず所定の形状および表面粗さに加工したセラミ
ツク製リングを従来公知の方法で作製する。次
に、セラミツク製リングの内周面に、使用するバ
ルブの形状に合わせて当接面を形成する。さら
に、この当接面のエツヂ部にＲ加工を施してセラ
ミツクバルブシートを得ている。 丸めの断面形状は、円弧、楕円弧または、任意
の滑らかな曲線を用いることができる。 バルブシートとバルブとの当接面は、表面粗さ
が、粗いほど摩擦係数が高くなるためバルブとの
衝突時に大きな接触応力が発生する。本発明のセ
ラミツクバルブシートでは、当接面の摩擦を低減
するために表面粗さは、小さい値で有ることが好
ましく1.6μｍRa以下が好ましく、特に0.2μｍRa
以下が好ましい。 また、本発明のセラミツクバルブシートとして
は、セラミツク製リングの外周に金属リングを設
けたもの、さらにはシリンダヘツドにセラミツク
当板を設け、このセラミツク当板を加工して一体
的にバルブ当接面を設けたもの等も含む。さら
に、セラミツクスの材料としては、窒化ケイ素、
炭化ケイ素、サイアロン、ジルコニア、アルミナ
のいずれかであると耐熱性、耐摩耗性の点で好適
である。 以下、実際の例について説明する。 実施例 １ 第１図にシリンダヘツド１にバルブ２とともに
組み込んだ形状を示す、セラミツク製リング３の
外周に金属リング４を設けた本発明のセラミツク
バルブシートを以下のように作製してその性能を
比較した。まず、内径24.0mm、外径29.5mm高さ7.0
mmのセラミツク製リング３を窒化ケイ素により常
圧焼結法で作製した。このセラミツクリング３
は、各面を表面粗さの仕上げ記号1.6μｍRaに仕
上げた。また、外径33.0mm、肉厚2.0mm、高さ7.0
mm、表面粗さの仕上げ記号1.6μｍRaにインコロ
イ製金属リング４を加工し、これらを室温にて圧
入して内側が窒化ケイ素外側がインコロイから成
る２層構造の円筒を作製した。該円筒のインコロ
イを時効硬化させるため、該円筒を真空炉内で
720℃、８時間加熱保持したのち、炉温を680℃に
低下させて10時間加熱保持した。 該円筒の高さを4.0mmに仕上げ加工しバルブ２
との当接面５に角度30゜の勾配を付け、この当接
面５のエツヂ部６−１，６−２に0.2mmＲの加工
を施して、本発明のセラミツクバルブシートを得
た。当接面の表面粗さは、0.2μｍRaとした。な
お実際の使用に際しては、得られたバルブシート
をエンジンヘツドへの取り付け穴より0.02mm外径
を大きくして圧入により装着する。 比較のため同一形状でエツヂ部６−１，６−２
に加工を施さないセラミツクバルブシートを準備
し、これと上述した方法により得たセラミツクバ
ルブシートとに対して圧縮試験を行なつたとこ
ろ、エツヂ未加工のセラミツクバルブシートの当
接面のエツヂ部に600Kgの荷重でクラツクが発生
したのに対し、本発明のバルブシートは10tonの
荷重でも破壊せず、未加工品と比較して優れた圧
縮試験特性を示した。なお、圧縮試験は、バルブ
とバルブシート面の当りを模擬した試験でバルブ
シートのエツヂ部にバルブが片当りし応力集中す
る様に加圧治具を設計し、この治具により行なつ
た。さらに、上述した圧縮試験において、エツヂ
部の曲率半径を変化させて圧縮試験を行なつた結
果第１表に示す関係が得られた。曲率半径が、大
きいほど破壊荷重が大きくなり最小曲率半径0.1
mm以上では10倍以上の圧縮荷重となり最小曲率半
径0.2mm以上では10tonの圧縮荷重でもクラツク発
生が起こらなくなる。

【表】 実施例 ２ 第２図にシリンダヘツド１にバルブ２とともに
組み込んだ形状を示す、セラミツク製リング３の
みよりなる本発明のセラミツクバルブシートを以
下のように作製してその性能を比較した。すなわ
ち、実施例１と同様の形状およびエツヂ部６−
１，６−２に最小曲率半径加工を施したジルコニ
ア製リング３のみよりなる本発明のセラミツクバ
ルブシートと、同様にジルコニア製リング３のみ
よりなりエツヂ部に加工を施さない比較例のセラ
ミツクバルブシートとを準備し、両セラミツクバ
ルブシートをエンジンヘツドの取り付け穴より
0.02mm外径を大きくして直接圧入してエンジンヘ
ツドに装着した。セラミツクバルブシートを装着
したシリンダヘツドを台上試験用デイーゼルエン
ジンに組みつけて、回転数2300rpm、BMEP14.0
Kg／cm²の条件で耐久試験を行なつた結果、エツヂ
未加工品では50時間でクラツク発生が認められた
が、本発明の最小曲率径0.2mmのセラミツクバル
ブシートでは50時間の耐久試験においてクラツク
は認められなかつた。 実施例 ３ 第３図に形状を示す、シリンダヘツド１の燃焼
室側の面にシリンダと同径以上の大きさを有する
窒化ケイ素製のセラミツク当板７とバルブシート
が一体的に形成された本発明のセラミツクバルブ
シートを作製してその性能を調べた。セラミツク
当板７のシリンダヘツド１への取り付けは、ヘツ
ド１側の取り付け穴よりセラミツク当板７の外径
を0.25mm大きくして直接圧入した。バルブ２との
当接面５−１，５−２およびエツヂ部６−１，６
−２および６−３，６−４の加工は、実施例１と
同様に行なつた。このセラミツク当板７をシリン
ダヘツド１に組み込んで、エンジン回転数
2300rpmの条件においてモータリング耐久試験を
行なつた結果、50時間の耐久試験においてもクラ
ツクは認められなかつた。 （発明の効果） 以上詳細に説明したところから明らかなよう
に、本発明のセラミツクバルブシートによれば、
バルブとバルブシート当接面のエツヂ部を丸める
ことにより、バルブ衝突時の衝撃力あるいは排気
ガス熱による応力集中を緩和することができ、高
温、繰り返し荷重に耐えクラツクの発生の少ない
セラミツクバルブシートを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のセラミツクバルブシートをシ
リンダヘツドに組み込んだ一例を示す部分断面
図、第２図および第３図は本発明のセラミツクバ
ルブシートをシリンダヘツドに組み込んだ他の例
を示す部分断面図である。 １……シリンダヘツド、２……バルブ、３……
セラミツク製リング、４……金属リング、５，５
−１，５−２……当接面、６−１，６−２，６−
３，６−４……エツヂ部、７……セラミツク当
板。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少なくともバルブとの当接面がセラミツクス
   よりなるセラミツクバルブシートにおいて、該バ
   ルブシートが接する面のエツヂ部を最小曲率半径
   0.2mm以上の曲面で丸めたことを特徴とするセラ
   ミツクバルブシート。 ２ セラミツクバルブシートの材質が窒化ケイ
   素、炭化ケイ素、サイアロン、ジルコニア、アル
   ミナのうち少なくとも一種のセラミツク材料で構
   成される特許請求の範囲第１項または第２項に記
   載のセラミツクバルブシート。