JPH0424552B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明はロータリ式圧縮機に係り、特に、密閉
容器内に、モータ部と圧縮機部とを収納するとと
もに、潤滑油を封入してなるロータリ式圧縮機に
おいて、前記密閉容器内から外部へ吐出される潤
滑油量の低減を志向したロータリ式圧縮機に関す
るものである。

〔従来技術〕

従来のロータリ式圧縮機と、その問題点を、第
１，２図を使用して説明する。

第１図は、従来のロータリ式圧縮機を組込んだ
冷凍サイクルの一例を示すサイクル構成図、第２
図は、第１図におけるロータリ式圧縮機の詳細を
示す部分断面図である。

例えば、ルームエアコンなどの冷凍サイクル
は、第１図に示すように、ロータリ式圧縮機１、
吐出パイプ２、凝縮器３、絞り４、蒸発器５およ
び吸込パイプ６などから構成される。そしてロー
タリ式圧縮機１は、密閉容器７の中に、シリンダ
８、ローラ９、シリンダ８の側端板を兼ねた上軸
受１０、下軸受１１、クランク軸１２を具備した
圧縮機部２４と、エンドコイル１３を持つステー
タ１４と、エンドリング１７（およびこれに取付
けられたバランスウエイト１５）を持つロータ１
６を具備したモータ部２０とを収納するととも
に、潤滑油１８を封入してなるものである。

このように構成した冷凍サイクルにおいて、ロ
ータリ式圧縮機１の運転時には、冷媒は吸込パイ
プ６からシリンダ８に吸込まれ、クランク軸１２
によつて駆動されるローラ９により圧縮され、密
閉容器７内の空間に吐出され、吐出パイプ２から
凝縮器３へ送られ、凝縮し、絞り４で減圧され、
蒸発器５で蒸発し、再び吸込パイプ６からロータ
リ式圧縮機１へ戻る。

この場合、ロータリ式圧縮機１を円滑に運転さ
せるためには、上軸受１０とクランク軸１２、ロ
ーラ９とクランク軸１２、ベーン（図示せず）な
どの摺動部を潤滑する必要があり、そのために密
閉容器７の底部に潤滑油１８を封入し、クランク
軸１２の下端に設けた、例えば偏心ポンプを利用
した給油ピース１９により、クランク軸１２の中
空部１２ａへ潤滑油１８を汲上げて、上軸受１
０、ローラ９その他へ適宜給油し、潤滑を実施し
ているものである。

従来、モータ部２０は、一般に50Hzあるいは60
Hzで運転され、例えば２極のインダクシヨンモー
タの場合には、およそ2900rpmあるいは3400rpm
前後の回転速度で運転され、この回転速度範囲で
最適に潤滑できるように、給油ピース１９や上軸
受１０の内面の螺旋油溝（図示せず）などの給油
機構が設計されている。

しかし、最近は、冷房あるいは暖房などの大幅
に変化する負荷に対して効率よく運転できるよう
に、例えばインバータを利用し、モータ部２０の
電源を約30〜約120Hz程度まで可変にし、回転速
度を最小と最大では１対４程度と大幅に変えるこ
とができるロータリ式圧縮機１が製作されるよう
になつた。

このような機種において、最低速度でも上軸受
１０の上端部まで十分潤滑できるように給油機構
を設計し、それもそのまま高回転速度で運転する
と、潤滑油１８の供給量が多過ぎ、多量の潤滑油
１８が、第２図の二点鎖線の矢線で示すように、
上軸受１０の上端部から溢れ、回転しているクラ
ンク軸１２あるいはロータ１６の下面によつて、
遠心方向に撥ね飛ばされ、エンドリング１７ある
いはバランスウエイト１５の下端から、細かい油
滴となつてエンドコイル１３に衝突する。そして
一部の潤滑油１８は下方に滴下し、シリンダ８に
穿設されたシリンダ通路８ａを通り、再び密閉容
器７の底部へ戻る。しかし、残りの細かい潤滑油
１８の油滴の一部は、そのままステータ１４とロ
ータ１６とのエアギヤツプ２１からモータ部２０
の上部へ行き、残部はステータ１４に設けた連通
孔１４ａから冷媒と共に、モータ部２０の上部に
行き、吐出パイプ２から吐出されてしまう。

このように、ロータリ式圧縮機１の密閉容器７
内から外部へ吐出される潤滑油１８の量が多くな
ると、凝縮器３蒸発器５その他途中の接続パイプ
などに存在する潤滑油量も増加し、その結果、ロ
ータリ式圧縮機１の密閉容器７の底部の潤滑油量
が減少し、甚だしい場合には、潤滑油１８の油面
が給油ピース１９の吸込口近くまでも低下する。
このような状態では、給油ピース１９の回転によ
つてその近傍の潤滑油１８が逃げ、給油ピース１
９から潤滑油１８とともに冷媒ガスを一緒に吸込
むことになり、潤滑性能が低下する。このよう
に、ロータリ式圧縮機１の密閉容器７内に十分な
潤滑油を確保できないで潤滑性能が低下すると、
例えば前記摺動部に焼付き事故が発生するおそれ
があるので、ロータリ式圧縮機１の高速運転時の
信頼性が低下するという欠点があつた。

〔発明の目的〕

本発明は、上記した従来技術の欠点を除去し
て、密閉容器内から外部へ吐出される潤滑油量を
低減させることにより、ロータリ式圧縮機各部の
潤滑を十分行ない、高速運転時でも信頼性の高い
運転を実施することができるロータリ式圧縮機の
提供を、その目的とするものである。

〔発明の概要〕

本発明に係るロータリ式圧縮機の構成は、密閉
容器内に、エンドコイルをもつステータとエンド
リング、バランスウエイトをもつロータとを具備
したモータ部と、シリンダ、ローラ、上軸受、下
軸受ならびに、その下端に給油ピースを取付けた
クランク軸を具備した圧縮機部とを収納するとと
もに、密閉容器底部に潤滑油を封入してなるロー
タリ式圧縮機において、運転中に給油ピースが汲
上げた潤滑油の一部が油滴となつて飛散してくる
ロータ下部を取囲むように形成し、その上端部を
前記部分よりも高い位置に設け、その下部に油抜
き孔を穿設した油滴捕集カバーを、上軸受に装着
したようにしたものである。

〔発明の実施例〕

以下本発明を実施例によつて説明する。

第３〜６図は、それぞれ本発明の第１〜４の実
施例に係るロータリ式圧縮機の要部を示す部分断
面図である。各図において、第２図と同一番号を
付したものは同一部分である。

まず第１の実施例を、第３図を使用して説明す
る。この第３図において、２２は、内側へ曲げた
上端部２２ｂを、エンドリング１７の下端部より
も高くなるように位置せしめ、その下部側面に油
抜き孔２２ａを穿設し、エンドリング１７、バラ
ンスウエイト１５の下端部を取囲むように形成し
た油滴捕集カバーであり、この油滴捕集カバー２
２２は、上軸受１０の軸支部１０ａに嵌入され、
側板部１０ｂにビス（図示せず）で固定されてい
る。

このように構成したので、高速運転時に上軸受
１０の上部から溢れ出る潤滑油が、ロータ１６の
回転により、バランスウエイト１５あるいはエン
ドリング１７の下部から遠心方向に飛散されて来
ても、油滴捕集カバー２２で捕集することができ
るという効果がある。また、このような油滴捕集
カバー２２を設けることにより、モータ部２０の
エアギヤツプ２１への冷媒は、油滴捕集カバー２
２の外側とエンドコイル１３との間を流れるた
め、油滴捕集カバー２２内で油滴が多少飛散して
も、その油滴飛沫が冷媒と一緒にモータ部２０の
上部へ持ち去られることは少ないものである。

なお、油滴捕集カバー２２の内側の油滴は、徐
徐に油滴捕集カバー２２の内面あるいは底面に付
着し、液状になり、油抜き孔２２ａから流出し、
シリンダ通路８ａから密閉容器７の下部に戻り、
再び給油ピース１９から吸込まれ、潤滑に使用さ
れる。

次に第２の実施例を、第４図を使用して説明す
る。この第４図において、１７Ａは、その一部に
空洞１７ａと、これを塞ぐ空洞カバー１７ｂとを
設け、クランク軸１２の軸心を含む平面でロータ
１６の下部を断面したとき、バランスウエート１
５部分も含めて、その外形が全周にわたりほぼ同
一形状になるように形成したエンドリングであ
る。２２Ａは、その上端部２２ｂを、エンドリン
グ１７Ａの下端部よりも高くなるように位置せし
めた油滴捕集カバーであり、この油滴捕集カバー
２２Ａは、エンドリング１７Ａを長くした分だ
け、前記実施例におけるエンドリング１７より高
さ寸法を短くしてもよい。

このように、ロータ１６の下部で、バランスウ
エイト１５をも含めて外形が全周にわたつてほぼ
同一に滑らかな形状に構成すると、油滴捕集カバ
ー２２Ａ内での冷媒ガスの撹乱が少なくなり、こ
のため油滴捕集カバー２２Ａ内で飛散する油滴が
少なくなり、モータ部２０の上部へ持ち出される
油滴が減少し、効果的に油滴を集めることができ
るという利点がある。

第３の実施例を、第５図を使用して説明する。

この第５図において、１７Ｂは、その一部に空
洞１７ａを設け、他の部分に、比重の大きい金属
製のバランスウエイト１５Ａを鋳込み、その先端
に、根元部より細い先端細径部１７ｃを形成した
エンドリングである。比重の大きいバランスウエ
イト１５Ａを鋳込むようにしたため、エンドリン
グ１７Ｂの軸方向寸法を短くすることができ、こ
れによつて、前記先端細径部１７ｃを形成するに
十分なスペースができるものである。

２２Ｂは、その上端部２２ｂを、エンドリング
１７Ｂの先端細径部１７ｃの下端よりも高くなる
ように位置せしめた油滴捕集カバーであり、この
油滴捕集カバー２２Ｂは、前記したようにエンド
リング１７Ｂに先端細径部１７ｃを形成するよう
にしたため、前記第４図における油滴捕集カバー
２２Ａよりもさらに短くなり、且つ小径のものに
なる。

このように構成したものにおいては、油滴がエ
ンドリング１７Ｂの先端細径部１７ｃを離れると
きの周速を小さくすることができるので、その油
滴が油滴捕集カバー２２Ｂに当たるときの速度が
小さく、したがつて飛散する油滴は少なくなり、
モータ部２０の上部へ持ち出される油滴が、前記
第４図に係る実施例よりもさらに減少するという
効果がある。

また、油滴捕集カバー２２Ｂが小形になるので
コスト面でも有利である。加うるに、油滴捕集カ
バー２２Ｂの外側とエンドリング１３との間のス
ペースが、前記第３，４図に係る実施例に比べて
広くとれるため、エアギヤツプ２１への冷媒の流
れがスムーズになるという利点もある。

第４の実施例を、第６図を使用して説明する。

この第６図において、２３は、その下端にフラ
ンジ部２３ａを形成し、その上部をエンドリング
１７の内側へ圧入した油ガイドである。２２Ｂ
は、前記第５図における油滴捕集カバーと同じも
のであり、この油滴捕集カバー２２Ｂの上端部２
２ｂを、油ガイド２３の下端部に係るフランジ部
２３ａよりも高くなるように位置せしめてある。

このように構成したものにおいては、従来のロ
ータ１６のエンドリング１７、バランスウエイト
１５の形状を変更せず、小形の油滴捕集カバー２
２Ｂにより、油滴を効率よく捕集することができ
るという効果がある。前記油ガイド２３は、前述
したようにその下端にフランジ部２３ａを設ける
ことにより、その製作が容易になり、寸法のばら
つきを少なくすることができる。

なお、本実施例においては、油ガイド２３の上
部をエンドリング１７の内側へ圧入するようにし
たが、油ガイドの上端部の内径を小さくして、そ
の部分をクランク軸１２に圧入するようにしても
よい。

第７図は、本発明の第５の実施例に係るロータ
リ式圧縮機の油滴捕集カバーと、その装着状態を
示す部分断面図、第８図は、第７図における上軸
受の断面図、第９，１０図は、それぞれ、第７図
における油滴捕集カバーの平面図、断面図であ
る。

この実施例は、前記第６図に係る実施例の変形
であつて、第６図と同一番号を付したものは同一
部分である。そして、油滴捕集カバー２２Ｃは、
その底部に油抜き孔２２ｃが穿設されており、上
端部２２ｄは内側へ曲げずにストレートになつて
いる。また、上軸受１０Ａの軸支部１０ａの付け
根にはストツパ部１０ｃが設けられており、油滴
捕集カバー２２Ｃは、その底部が、このストツパ
部１０Ｃに当接するようにして軸支部１０ａに圧
入されている。

このように構成したものにおいては、油滴捕集
カバー２２Ｃの、上軸受１０Ａへの装着が容易に
なる。また、油抜き孔２２ｃが底面に設けられて
いるので、上端部２２ｄを内側へ曲げる構造にし
なくても、油滴が油滴捕集カバー２２Ｃから外へ
飛散する量は少ない。

このように本実施例における油滴捕集カバー２
２Ｃは、前記各実施例のものに比べて構造が簡単
で、装着が容易であるという利点がある。

以上説明した実施例によれば、上軸受１０，１
０Ａの上部から溢れ、ロータ１６の回転により飛
散した油滴が、冷媒と一緒にロータリ式圧縮機か
ら多量に持出されるのを防止することができ、ロ
ータリ式圧縮機の密閉容器内に十分な潤滑油を確
保することができるため、高速運転時でも信頼性
の高い運転ができる。

〔発明の効果〕

以上詳細に説明したように本発明によれば、密
閉容器内から外部へ吐出される潤滑油量を低減さ
せることにより、ロータリ式圧縮機各部の潤滑を
十分行ない、高速運転時でも信頼性の高い運転を
実施することができるロータリ式圧縮機を提供す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、従来のロータリ式圧縮機を組込んだ
冷凍サイクルの一例を示すサイクル構成図、第２
図は、第１図におけるロータリ式圧縮機の詳細を
示す部分断面図、第３〜６図は、それぞれ本発明
の第１〜４の実施例に係るロータリ式圧縮機の要
部を示す部分断面図、第７図は、本発明の第５の
実施例に係るロータリ式圧縮機の油滴捕集カバー
と、その装着状態を示す部分断面図、第８図は、
第７図における上軸受の断面図、第９，１０図は
それぞれ、第７図における油滴捕集カバーの平面
図、断面図である。 ７……密閉容器、８……シリンダ、９……ロー
ラ、１０，１０Ａ……上軸受、１１……下軸受、
１２……クランク軸、１３……エンドコイル、１
４……ステータ、１５……バランスウエイト、１
６……ロータ、１７，１７Ａ，１７Ｂ……エンド
リング、１７ｃ……先端細径部、１８……潤滑
油、２０，２０Ａ，２０Ｂ……モータ部、２２，
２２Ａ，２２Ｂ，２２Ｃ……油滴捕集カバー、２
２ａ，２２ｃ……油抜き孔、２２ｂ，２２ｄ……
上端部、２３……油ガイド、２４……圧縮機部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 密閉容器内に、エンドコイルをもつステータ
   とエンドリング，バランスウエイトをもつロータ
   とを具備したモータ部と、シリンダ，ローラ，上
   軸受，下軸受ならびに、その下端に給油ピースを
   取付けたクランク軸を具備した圧縮機部とを収納
   するとともに、密閉容器底部に潤滑油を封入して
   なるロータリ式圧縮機において、運転中に給油ピ
   ースが汲上げた潤滑油の一部が油滴となつて飛散
   してくるロータ下部を取囲むように形成し、その
   上端部を前記部分よりも高い位置に設け、その下
   部に油抜き孔を穿設した油滴捕集カバーを、上軸
   受に装着したことを特徴とするロータリ式圧縮
   機。 ２ 油滴捕集カバーの上端部を、エンドリングの
   下端部より高くなるように位置せしめ、この油滴
   捕集カバーで前記エンドリング，バランスウエイ
   トの下端部を取囲むようにしたものである特許請
   求の範囲第１項記載のロータリ式圧縮機。 ３ クランク軸の軸心を含む平面でロータの下部
   を断面したとき、バランスウエイト部分も含め
   て、その外形が全周にわたりほぼ同一形状になる
   ようにエンドリングを形成し、油滴捕集カバーの
   上端部を、前記エンドリングの下端部より高くな
   るように位置せしめたものである特許請求の範囲
   第１項記載のロータリ式圧縮機。 ４ エンドリングの先端に、このエンドリングの
   外径より細い先端細径部を形成し、油滴捕集カバ
   ーの上端部を、前記先端細径部の下端より高くな
   るように位置せしめたものである特許請求の範囲
   第１項記載のロータリ式圧縮機。 ５ エンドリングに油ガイドを装着し、油滴捕集
   カバーの上端部を、前記油ガイドの下端部より高
   くなるように位置せしめたものである特許請求の
   範囲第１項記載のロータリ式圧縮機。 ６ 油滴捕集カバーを、上軸受の一部に圧入した
   ものである特許請求の範囲第１項記載のロータリ
   式圧縮機。