JPH0424124Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は内燃機関の断熱ピストンに関するもの
である。

［従来の技術］ 内燃機関の燃焼室の壁部に、耐熱性と断熱性に
優れたセラミツクスを用いれば、外部から冷却す
る必要がなくなり、燃焼ガスを高温の状態で排気
ターボ過給機へ供給して熱エネルギを回収し、機
関の出力増加と熱効率向上を図ることができる。

このため、ピストンについても普通の金属製の
スカート部の上面にセラミツク製のピストン冠部
を結合してなる断熱ピストンが提案されている。

実開昭59−184345号公報に開示される断熱ピス
トンでは、アルミニウムなどの金属製のスカート
部の上面中心に軸穴を設け、セラミツクスではな
いが耐熱合金製のピストン冠部の中心に形成した
軸部を、スカート部の軸穴へ挿通し、ピストン冠
部の下面とスカート部の上面との間にセラミツク
ス製の断熱板を、スカート部の軸穴とピストン冠
部の軸部との間に同じ断熱筒をそれぞれ介装し、
ピストン冠部の軸部の下端にナツトを締結してい
る。

しかし、上述の断熱ピストンは、断熱板と断熱
筒により、ピストン冠部からスカート部への伝熱
量を抑え、スカート部の熱負荷を軽減できるとい
う利点はあるものの、ピストン冠部から大径の軸
部が直接スカート部の内部へ突出し、突出部を油
で冷却するものであるから、燃焼室の断熱化を図
り、外部への無駄な放熱を抑えるという鑑点から
すると、好ましいものとは言えない。また、ピス
トン冠部の高さ（厚さ）が低く、この点でもピス
トンの周壁側からスカート部へ逃げる伝熱量は無
視できないものとなる。

特開昭59−213938号公報に開示される断熱ピス
トンでは、金属製のスカート部の中心に柱を設け
る一方、柱の高さ分だけ長い円筒壁を、セラミツ
ク製のピストン冠部の外周側下半部に一体に設け
たことにより、前述のもとよりもピストン冠部の
周壁側からスカート部へ逃げる伝熱量を抑えるこ
とができる。また、ピストン冠部の下半部の円筒
壁とスカート部の柱との間に環状の断熱空部を形
成したことにより、ピストン冠部とスカート部と
の断熱性が向上される。

しかし、上述の断熱ピストンでは、断熱空部を
密封するものは、スカート部の上面と円筒壁の下
面との間に介装したシール部材だけである。燃焼
室の燃焼ガスはピストンの周壁とシリンダとの隙
間を経て、円筒壁の下面とスカート部の上面との
隙間へ浸入するので、シール部材が次第に劣化す
ると、断熱空部の断熱性と密封性が損われ、機関
の圧縮比が小さくなり、機関の出力が低下すると
いう問題がある。

［考案が解決しようとする問題点］ 本考案の目的は上述の問題に鑑み、セラミツク
ス製のピストン冠部の外周側下半部に円筒壁を設
けてピストン冠部を高くし、かつスカート部の柱
とピストン冠部の円筒壁との空部へ、燃焼ガスが
浸入するのを阻止し、これにより断熱性と圧縮比
を維持する、断熱ピストンを提供することにあ
る。

［問題点を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案の構成はス
カート部の上面中央に柱を一体に形成し、ピスト
ン冠部の外周側下半部に柱よりも大径の円筒壁を
一体に形成し、スカート部の柱の上面に断熱ガス
ケツトを挟んでピストン冠部の下面を重ね合せて
ボルトにより結合し、円筒壁と柱との間の空部に
軟質カーボンからなる環状の断熱部材を隙間なく
嵌装したものである。

［作用］ スカート部の柱とピストン冠部の円筒壁との間
の空部に装着した軟質カーボンからなる断熱部材
は、円筒壁の内周面と柱の外周面とによく密着す
るから、軟質カーボンのもつ断熱性により、ピス
トン冠部からスカート部への伝熱を抑える。

スカート部の柱とピストン冠部の円筒壁との間
の空部に断熱部材を隙間なく嵌装してあるので、
スカート部の上面とピストン冠部の円筒壁との間
のシール部材のシール性が損われても、ピストン
の外周側から円筒壁とスカート部の上面との隙間
へ浸入する燃焼ガスは僅かなものであり、圧縮比
には影響しない。

［考案の実施例］ 第１図に示すように、普通に用いられる金属製
のスカート部７の上面中央に中空の柱１０が設け
られ、柱１０の上面１０ａに断熱ガスケツト１９
を挟んで、セラミツクス製のピストン冠部３の下
面３ａが重ね合され、重合せ部を貫通するボルト
１８に皿ばね１７を外挿し、ナツト１６を締め付
けて結合される。スカート部７の上面７ａとピス
トン冠部３の外周側下半部に一体に形成した円筒
壁１３の下面１３ａとの間にシール部材３２が装
着され、また円筒壁１３と柱１０との間に環状の
空部が形成される。

本考案によれば、円筒壁１３と柱１０との間の
空部へ燃焼ガスが浸入するのを防ぎ、かつ断熱効
果を維持するために、軟質カーボンからなる環状
の断熱部材２２が前記空部に隙間なく嵌装され
る。

第２図に示すように、スカート部７の上面７ａ
と柱１０の上面１０ａと周面に、セラミツクスコ
ーテイング層２４を形成すると、ピストン冠部３
とスカート部７との間の断熱性はさらに向上す
る。

第３図に示すように、断熱部材２２のコーナ部
分、特にスカート部７の上面７ａと円筒壁１３に
隣接する部分の型崩れを抑えるために、断熱部材
２２に金属などの補強リング２３を埋め込んで成
形すれば、円筒壁１３の内部に隙間が生じる恐れ
がない。

本考案は上述のように、スカート部７の柱１０
とピストン冠部３の円筒壁１３との間の空部に、
断熱部材２２を装着したから、空部のままとする
場合に比べてやや断熱性は劣るものの、ピストン
冠部３から断熱部材２２を経てスカート部７への
伝熱が抑えられる。

断熱部材２２は軟質カーボンであるから、円筒
壁１３の内周面と柱１０の外周面とスカート部７
の上面７ａとによく密着し、仮にスカート部７の
上面７ａと円筒壁１３の下面１３ａとの間のシー
ル部材３２のシール性が損われても、ピストンの
外周側から浸入する燃焼ガスの量は僅かなもので
ある。

断熱部材２２は軟質で密着性がよいので、断熱
部材２２を装着しても、ピストン冠部３に無理な
力が作用することはない。

セラミツクス製のピストン冠部３の外周側下半
部を円筒壁１３としたことにより、ピストンの周
壁における燃焼室とスカート部７との間隔が広く
なり、断熱性が向上する。また、ピストン冠部３
の肉厚を全体としてほぼ均等なものにでき、材料
を節約し、熱歪を少なくできる。

スカート部７の柱１０を中空とすることによ
り、ボルト１８とスカート部７のピストンピンと
の間に十分な隙間が得られる。

［考案の効果］ 本考案によれば、スカート部の上面中央に柱を
一体に形成し、ピストン冠部の外周側下半部に柱
よりも大径の円筒壁を一体に形成し、円筒壁と柱
との間の空部に軟質カーボンからなる環状の断熱
部材を隙間なく嵌装したことにより、ピストン冠
部とスカート部との間の断熱性を維持でき、同時
にピストン冠部の円筒壁とスカート部の上面との
間に隙間があつても、燃焼ガスの浸入量は極く僅
かなものとなり、機関の圧縮比の低下を抑えるこ
とができる。

スカート部の柱の上面に断熱ガスケツトを挟ん
でピストン冠部の下面を重ね合せたから、燃焼室
から柱への伝熱量を抑えることができる。

空部の断熱部材は軟質で壁面との密着性ないし
追随性に優れているので、爆発荷重や慣性荷重に
より、ピストン冠部とスカート部との間隔が変化
しても隙間が生じることなく、燃焼ガスが浸入す
ることもない。

軟質カーボンからなる断熱部材は、空部によく
馴染んで密接するので、締付荷重が小さくても、
ピストン冠部とスカート部のボルトによる安定し
た結合が得られる。

ピストン冠部の円筒壁とスカート部の上面との
間に隙間を設けることにより、円筒壁からスカー
ト部への伝熱量を抑え、熱歪を吸収できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る断熱ピストンの要部を拡
大して示す正面断面図、第２図は同断熱ピストン
の一部変更実施例に係る正面断面図、第３図は断
熱部材の断面図である。 ３……ピストン冠部、７……スカート部、１０
……柱、１３……円筒壁、１８……ボルト、２２
……断熱部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. スカート部の上面中央に柱を一体に形成し、ピ
   ストン冠部の外周側下半部に柱よりも大径の円筒
   壁を一体に形成し、スカート部の柱の上面に断熱
   ガスケツトを挟んでピストン冠部の下面を重ね合
   せてボルトにより結合し、円筒壁と柱との間の空
   部に軟質カーボンからなる環状の断熱部材を隙間
   なく嵌装したことを特徴とする断熱ピストン。