JPH0141879Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はセラミツク製ヘツドを有する内燃機関
用ピストンの構造に関し、更に詳しくは金属製の
ピストン本体とセラミツク製ピストンヘツドとの
結合一体構造の改良に関する。

従来から内燃機関用ピストンのヘツド部にセラ
ミツク製熱遮弊材と金属ピストン本体とを複合し
て、燃焼効率を高め、出力を向上せしめ、ハイド
ロカーボン濃度及び燃費を低減せしめる等の試み
がなされていた。このセラミツク製熱遮弊材を複
合するに於ては、セラミツク材を鋳造により一体
とするか、或はピストン本体に対しビス等の止具
により機械的に取着する等の方法が提案されてい
る。斯かるピストンは、複合されたセラミツク材
の低熱伝導性に基づく熱遮弊作用によつて、上記
効果をもたらすもので、排ガス規制や省資源化が
叫ばれる昨今においては極めて意義深いものであ
る。然し乍ら鋳造によりセラミツク材を一体とす
る場合は、複合時の熱衝撃や鋳造金属の冷却固化
時の残留圧縮応力等によつてセラミツク材にクラ
ツクを生じるという問題があり、一方ビスにより
セラミツク材を取着する場合は、ピストンの軸線
に沿つてヘツドの上面より一本のビスを螺入して
セラミツク製ヘツドと金属製本体とを一体とする
為、ヘツドと本体との熱膨張差による応力がネジ
部周辺のセラミツク材に集中し、これに螺入の際
の捻じり応力が付加され、ピストン作動時の急激
な熱衝撃によつてセラミツク材にやはりクラツク
が生じたりビスが金属である為、熱遮断性が充分
でないといつた問題があつた。従つて、セラミツ
ク製のヘツドを有する内燃機関用ピストンは種々
の利益をもたらすにもかかわらず未だ実用化され
ていないのが実情であつた。

本考案は上記に鑑みなされたもので、塑性流動
性金属によるリング状若しくはセグメント状結合
部材を金属製ピストン本体とセラミツク製ピスト
ンヘツド部材とのクリアランスに楔着させること
によつて、両者を強固に係着させると共に熱膨張
差による応力の集中や捻じり応力を取除いてセラ
ミツク材のクラツク発生を未然に防止し、もつて
上記ピストンの実用化を図らんとするものであ
る。

本考案の実施例を添付図面に基づき説明する
と、第１図は本考案によるピストンの一例を示す
部分切欠斜視図、第２図は他の実施例の同様図で
ある。即ち、本考案は金属製ピストン本体１と、
該本体１の頂部に同軸的に嵌挿されたセラミツク
製ピストンヘツド部材２と、該ヘツド部材２の側
壁と上記本体１とのクリアランスに楔着された本
体１とヘツド部材２とを相互に係着せしめる塑性
流動変形性金属によるリング状若しくはセグメン
ト状結合部材３とより成り、前記ヘツド部材２の
側壁及びピストン本体１の対応部位に周溝２１，
１１１が凹設され、前記クリアランスに圧入され
た結合部材３が、その塑性変形により上記対向周
溝２１，１１１による空所を含むクリアランス内
に密嵌的に楔着されて成ることを特徴とするセラ
ミツク製ヘツドを有する内燃機関用ピストンの構
造である。第１図のピストンはその外形が通常の
筒形ピストンと略同形であることを示す。金属製
ピストン本体１の頂部には鍋形のセラミツク製ピ
ストンヘツド部材２が嵌挿されて居り、該ヘツド
部材２が燃焼室（不図示）に対面して爆発による
機械的・熱的衝撃力を直接受止する主体とされて
いる。このヘツド部材２に用いられるセラミツク
材料としては、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等
の焼結体或いはこれらの一つを主成分として若干
の金属もしくは金属酸化物を含有せしめた複合焼
結体、更にはこれら相互の複合焼結体などの如き
熱膨張率小にして耐熱衝撃強度及び熱間強度大
で、更に熱伝導度小なるものが採用される。該ヘ
ツド部材２の外側周壁には後記する結合部材３の
変形を許容し得る周溝２１，２１が凹設されてい
る。一方、ピストン本体１はその頂部に上記ヘツ
ド部材２を嵌挿し得る凹所１１を有し、この凹所
１１の内周壁には上記周溝２１，２１に対応する
部位に同じく結合部材３の変形を許容し得る周溝
１１１，１１１が凹設されている。ピストン本体
１の凹所１１にピストンヘツド部材２を同軸的に
嵌挿したときは、両者の間には僅かな間隙の
（1.0〜10mm）リング状クリアランスを有するが、
両者の係着一体関係は上記対向周溝２１，２１，
１１１，１１１により形成された空所を含むクリ
アランスに楔着された結合部材３によつて維持さ
れる。この一体化を達成する要領を略述するに、
ピストン本体１の凹所１１に上記ヘツド部材２を
嵌挿させた後、コバール等、Ni−Co系合金、銅
或いはアルミニウム等の塑性流動変形性金属によ
る結合部材用リング（不図示）を上記クリアラン
スに嵌入させ、プレスにてこれを押圧することに
よつてその変形を促し、上記クリアランスの隅々
（上記周溝１１１，２１による凹所も当然含む）
に至らしめて本体１とヘツド２との間に楔着され
たリング状の結合部材３を形成せしめる。なお、
この場合プレス時に加熱を行なうと良好な加工性
が得られる。この結合部材３の投錨効果によつて
ヘツド部材２は本体１に対し係着一体とされる。
尚、図における12……及び１３は夫々ピストンリ
ング及びピストンピンである。

上記構成のピストンは、ピストンヘツド部材２
にセラミツクス材が充当されているから、その低
熱伝導性に基づく熱遮弊効果によつて、燃焼室か
らピストン本体１への熱の伝導が抑制され、所謂
メルテイングピストンの現象が防止される。従つ
て、セラミツク材の優れた耐熱性を利用して燃焼
室の温度を高くすることが出来、これにより燃焼
効率が高められて出力が向上し、更にハイドロカ
ーボン濃度及び燃費の低減化を図ることが出来
る。しかもセラミツク製ピストンヘツド部材２は
ピストン本体１とは別個に製せられるから、鋳造
により複合一体とする場合の如く、複合時の熱衝
撃や鋳造金属の冷却固化時の残留圧縮応力等によ
つてクラツクが生じると云つた問題は生じない。
亦、ヘツド部材２はリング状の結合部材３の楔着
によつて本体１に一体とされているから、ヘツド
部材２と本体１との熱膨張率差による応力が分散
してその集中が回避されると共に捻り応力等が生
起されず、これらが原因したクラツク等の発生が
有効に防止される。更に、結合部材３は塑性流動
変形性金属より成り、上記クリアランスに圧入さ
れた時、その塑性変形により対向周溝２１，２
１，１１１，１１１による空所内部にまで至り、
ピストン本体１とヘツド部材２との間に契合状態
で楔着一体とされる。従つて、ヘツド部材２はピ
ストン本体１に安定的に係着一体とされ、ピスト
ンの激しい往復運動によつても離脱する危惧がな
い。

第２図は他の実施例を示すもので、結合部材３
がセグメント状に分割された複数の単位部材３１
……によつて構成され、上記第１の実施例と同様
にピストン本体１とヘツド部材２との間のクリア
ランスに楔着されている。この場合、両者のクリ
アランスは上記単位部材３１……に対応するよう
本体１側に隔設されているが、ヘツド部材２側に
このクリアランスを確保することを除外するもの
ではない。その他の構成は上記と同様で、従つて
対応符号はそのまま採用した。本実施例において
は、結合部材３が複数の単位部材３１……に分割
されているから、ヘツド部材２と本体１との熱膨
張率差による応力の分散性が稍々劣ることになる
が、上記と略同様の効果を奏することには変りは
ないので望ましく採用される。

尚、上記各実施例ではヘツド部材２の形状を鍋
形としたが、これを中実体とすることも除外する
ものではない。結合部材３を楔着させる際ヘツド
部材２には求心方向に相当な押圧力が付与される
為、この圧力に抗する為には寧ろ中実体の方が望
ましい。これらは燃焼室の燃焼効率等を勘案して
適宜選定されるものである。亦、ピストンの外形
状も本考案を逸脱しない限り他の形状が採用可能
であることも自明である。

周溝１１１及び２１は上記実施例ではいづれも
二本としたが、夫々の条件に応じてその数は適宜
変更し得るものである。更に亦、図例は結合部材
３をピストンの上面より圧入させているが、これ
をピストンの下方より、即ちピストン側より圧入
させることも自由である。加えて、本体１とヘツ
ド部材２との間に空間が存するが、これは上記の
断熱効果をより高めると共に両者の熱応力を緩和
するのに効果を有するもので好ましく採用され
る。

叙述の如く、本考案のピストンの構造は、ピス
トンヘツド部材としてセラミツク材を採用し且つ
該ヘツド部材を塑性流動変形性金属による結合部
材の楔着によつてピストン本体に係着せしめてい
るから、熱衝撃によるセラミツク材のクラツク発
生の懸念を一掃し、これによつて燃焼効率が高
く、出力が大で且つハイドロカーボン濃度及び燃
費の低減化が図られる。亦、ヘツド部材とピスト
ン本体との間のクリアランスには塑性流動変形性
金属による結合部材が圧入楔着され、しかも該結
合部材は圧入時の塑性変形により対向周溝による
空所を含むクリアランス内に密嵌的に楔着一体と
され、これによりヘツド部材とピストン本体とは
安定的に係着一体とされる。本考案は、斯かるピ
ストン本体及びヘツド部材の安定一体化と、上記
高性能・高出力の特性とが相俟つて理想的な内燃
機関の実現を約束するものであり、その社会的価
値は極めて大である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案によるピストンの一例を示す部
分切欠斜視図、第２図は他の実施例の同様図であ
る。 符号の説明、１……金属製ピストン本体、２…
…セラミツク製ピストンヘツド部材、３……結合
部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 金属製ピストン本体と、該本体の頂部に同軸的
   に嵌挿されたセラミツク製ピストンヘツド部材
   と、該ヘツド部材の側壁と上記本体とのクリアラ
   ンスに楔着され本体とヘツド部材とを相互に係着
   せしめる塑性流動変形性金属によるリング状若し
   くはセグメント状結合部材とより成り、前記ヘツ
   ド部材の側壁及びピストン本体の対応部位に周溝
   が凹設され、前記クリアランスに圧入された結合
   部材が、その塑性変形により上記対向周溝による
   空所を含むクリアランス内に密嵌的に楔着されて
   成ることを特徴とするセラミツク製ヘツドを有す
   る内燃機関用ピストンの構造。