JPH0416972Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本考案は乾燥状態では、シート状態を保ちなが
ら湿潤状態で容易に分解する育苗用覆土シートに
関するものである。

＜従来の技術＞ 従来より水稲、野菜および花などの育苗のため
に種子を播き、その上に種子の乾燥、流出を防ぎ
かつ発根を促がすために覆土が用いられている。
この覆土として従来、山土や耕土の他に種々の人
工培土が粉体または粒体の状態で使用されてい
る。これらの内で特に山土や耕土が多く使用され
ているが、これら山土や耕土は調達出来る区域が
最近少なくなりつつあり、常に均一で植物の生育
に適した覆土が入手出来るとは限らない。さらに
天然の覆土は重くて運搬が容易でないことが難点
になつている。また一方人工培土として、バー
ク、モミガラ、オガクズ、発泡ポリスチレン粒、
発泡ポリウレタン粉末等を覆土とするものがあ
る。しかしながら覆土は播かれた種子を全て同時
に発芽させるために一定量を均一厚さで種子上に
まかれなくてはならず、上記人工培土を覆土とし
て使用した場合一定量均一厚さにまくという点で
ほとんど不可能に近い。さらに均一厚さとなるよ
う培土をまく労力も多大とならざるを得ない。

人工培土を通常の接着剤によつて均一厚さのシ
ート状物にした場合には上記問題点が解決出来る
が、湿潤状態に於いて粉体、粒体に分解すること
が容易でなく、種子が発芽しても芽がシートを貫
通せずにシートを持ち上げたり、根上り（種子が
持ち上り根が床面に侵入しない状態）するという
新たな問題が生じる。シートが粉体や粒体に速や
かに分解し得る様に接着剤の使用量を減した場合
にはシートが取扱い中にくずれることにより、作
業性に劣ることとなる。すなわち覆土シートは、
湿潤状態で粉体や粒体に分解する迄はシートとし
て十分の強度を有していることが重要である。

＜考案が解決しようとする課題＞ すなわち本考案の第１の目的は作物の育苗作業
に於いて覆土に要する作業を簡略化し労力を軽減
することが出来る育苗用覆土シートを提供するこ
とにある。

さらに本考案の第２の目的は各種作物に覆土性
能すなわち、種子の発芽が容易になるよう均一な
厚さにしてかつ芽が容易に貫通することが出来る
育苗用覆土シートを提供することにある。

さらに本考案はシート内に最適な空隙を設け、
酸素の供給および水分の浸透をよくし、しかも殺
菌されたもので結果として種子の発芽率を向上さ
せ均一で無病の健苗を育てることができるシート
を提供することも目的としており、そして、それ
と同時に湿潤前は十分な強度を有し、かつ湿潤後
に於いては速やかに強度を失い粉体や粒体に分解
し得るシートを提供することも目的としている。

＜課題を解決するための手段＞ 本考案は２〜５重量％の水膨潤性あるいは易溶
性である繊維状物を使用した粉体または粒体等か
らなる育苗用覆土シートである。

すなわち本考案は、粉体または粒体に上記２〜
５重量％の水膨潤性あるいは易溶性である繊維状
物を加えてシート状に成型したものであり、種子
を播種した栽培基材の上にこのシートを敷き散水
すると水膨潤性あるいは易溶性である繊維状物は
容易に水に膨潤あるいは溶解し、シートを構成す
る粉体または粒体は分離してバラバラに分れ覆土
になる。

このような本考案覆土シートにより植物の種子
に応じて、必要とする覆土の素材、厚さ等を適時
調整した育苗用覆土シートの生産が可能になると
ともに、その使用に於ては覆土に要する作業を簡
略化、軽減省力化することを可能にした。

次に本考案の育苗用覆土シートを図によつて説
明する。第１図は育苗用覆土シートの一例を示し
たものであり、Ａの長さ、Ｂの幅、Ｃの厚さを変
えることにより用途に適したサイズに変えること
が可能になる。この場合シートの長さは100cm以
内同じく幅は50cm以内が取扱い性の点から好まし
い。シートの厚さは用いる作物の種子により異な
り２〜20m／ｍの厚さが使用出来るが発芽および
根の活着性から３〜8m／ｍであることが好まし
い。

またシートの見掛比重は根上りを防止するため
には0.2以上であることが好ましく、生産性、生
産コスト、取扱性から1.0以下が好ましいが、望
ましくは健全な発根を促がすために0.2〜0.4が良
い。

またその通気度は、粉体、粒体の分解性と酸素
供給性能から200c.c.／cm²／sec以上が好ましい。

尚上記目的を達成するためには粉体、粒体が10
〜100メツシユであり、水膨潤性あるいは易溶性
の繊維状物の混入率が２〜５重量％が好ましい。

シートを構成する粉体または粒体としては、モ
ミガラ、ソバカス、オガクズ、ピートモス、バー
ク、発泡ウレタン粉末、発泡スチレン粒などの有
機物や山土、耕土、軽石などの無機物が単体また
は混合物として使用が可能である。特にモミガ
ラ、ソバカス、オガクズ、ピートモス、バークな
どの天然物は腐敗して耕土となるため好ましい。
粉体および粒体の大きさは作物の種子に供給され
る酸素供給量および水分の浸透と保水性などを考
慮して構成される空隙率を求め決定する。

その粉末または粒体の粒径としては10〜100メ
ツシユが空隙率の点およびシートを形成する点で
好ましい。とりわけシートの乾燥時の形態安定性
から言えば20〜50メツシユが好ましい。

またシートに使用される繊維状物に要求される
性能として水膨潤性と易溶性がある。その理由は
水中で水を吸収して膨潤することによつて被接着
物との界面破壊を発現させ、また繊維状物が溶解
して被接着物が容易に分解することがこの覆土シ
ートに要求されているためである。この繊維状物
が覆土シートの強度ある形態を保つ働きをしてい
る。尚本考案で言う水膨潤性、水易溶性とは、常
温水中（25℃）で１時間以内に体積が２倍以上に
膨潤することあるいは溶解して形態がなくなるこ
とを意味している。本考案に於いてこのような膨
潤性および溶解性を有する繊維状物であればどの
ようなものでもよいが、例えばポリビニルアルコ
ール、カルボキシメチルセルロース、澱粉等から
なる繊維状物があげられるが乾燥時の形態安定
性、湿潤時の粉体、粒体への分解速度から特にポ
リビニールアルコール系のポリマーが好ましい。
繊維状物としては太さ２〜10デニールで長さが２
〜７mmのものが好ましい。

この繊維状物は覆土シートにおいて接着剤とし
て働くがこれ以外の接着剤が併用されてもよい。
むろん接着剤は乾燥された後に再び水が加わると
水溶化するものでなければならない。

この他にシートの機能性を向上させるために肥
料成分や殺菌剤などを添加してもよいし、さらに
取扱性を向上させるためにフイルム又は紙類を覆
土シートの片面または両面に張り、使用時剥離し
使用してもよい。またシートには取扱性向上の目
的で補強用繊維が添加されていてもよい。もちろ
んこの補強用繊維は前述した水膨潤性あるいは易
溶性を有さないものである。

この補強用繊維は太さが100〜500デニールで繊
維長３〜10mmのものが好ましく、シート内に於け
る配合量としては２〜10重量％が好ましい。具体
的な繊維の例としてはビニロン、レーヨン、ポリ
エステル等が挙げられる。

覆土シートの製造法としては、基材となる粉体
または粒体と接着剤（繊維状の接着剤）を撹拌混
練し、スリツトより押し出した後、シート状にプ
レスして乾燥する方法が代表例として挙げられ
る。

シートを製造する際の水易溶性または水膨潤性
の繊維状物の混入率は分解性から２〜５重量％の
範囲が好ましく特に2.5重量％〜3.5重量％が好ま
しい。

覆土シートは前記方法以外に基材となる粉体ま
たは粒体と補強用繊維および易溶性の繊維状物を
混合撹拌して湿式抄造法でシート状にした後乾燥
することによつても製造可能である。この場合の
乾燥温度は100℃〜130℃が好ましい。

本考案の育苗用覆土シートの使用例を第２図に
示した。１の育苗用覆土シートを２の培土に播種
した種子４の上に敷くだけでよい。シート上より
散水することにより覆土シートは水で膨潤、溶解
して分解し第３図４の種子を固定し３の発芽を促
がし４の発根を容易にする。

覆土に要する作業は極めて簡単で粉体や粒体の
覆土を使用する場合と比べてはるかに労力の省力
が可能となる。第４図は覆土シートが散水による
分解を生じない場合や遅れた場合の図でありこの
場合には種子４が発芽して１のシートを持ち上
げ、４の根は上からの押圧がないために２の培土
に侵入せず根上りの状態になる。

実施例 粉砕したモミガラと易溶性繊維状物、補強用繊
維を混合し湿式製法により育苗用覆土シートを得
た。

条件：粉砕したモミガラ50〜100メツシユ200ｇ
に対し易溶性繊維（ポリビニールアルコール：
2dカツト長３mm）７ｇ、および補強用繊維（ビ
ニロン250d×５〜７mm）10ｇを混合し、湿式製
法（タツピー）でシートを作製した後熱風乾燥機
120℃で30分間乾燥してシートを作製した。

このシートを水稲の育苗用覆土として使用した
ところ、山土、耕土、人工培土と同様な生育が得
られた。作業性は山土、耕土、人工培土に比べは
るかに簡単で労力が省力出来ることが判つた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の育苗用覆土シートの斜視図で
あり、図中Ａは長さ、Ｂは幅、Ｃは厚さを示す。
第２図は、本考案の覆土シートを種子の上に敷い
た状態の断面図である。第３図は本考案の覆土シ
ートを種子の上に敷き、散水した後発芽した状態
の断面図である。第４図は容易に分離しない覆土
シートを使用した場合の断面図である。 これらの図中、１は覆土シート、２は培土、３
は発芽、４は種子、５は根、６は育苗箱を示す。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ２〜５重量％の水膨潤性あるいは易溶性である
   繊維状物により粉体または粒体が固着されたもの
   であり、通気性があり、かつ湿潤状態に於いて粉
   体あるいは粒体に分解しうることを特徴とする育
   苗覆土シート。