JPH0415757B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (a) 発明の技術分野 本発明は熱転写記録用インクシートに係り、特
に飽和転写濃度が高く、かつ中間調記録に適した
熱転写記録用インクシートに関する。

(b) 技術の背景 コンデンサ紙のような基材上にポリエステル樹
脂のような中間接着層を形成し、この中間接着層
の上に染料、低融点剤、充填剤からなるインク層
を設けてインクシートを形成し、このインクシー
トの基材側より印字情報により選択的に加熱素子
が加熱されているサーマル印字ヘツドを押圧する
とともに、記録紙を加圧することで記録紙上にイ
ンクシートの常温では固相のインクを溶融して充
填剤の間よりしみ出すことで、この溶融したイン
クを記録紙上に転写記録する熱転写記録方法は周
知である。

(c) 従来技術と問題点 第１図はこのような熱転写記録用インクシート
の断面図で、図示するようにコンデンサ紙のよう
な基材１上に、ポリエステル樹脂のような中間接
着層２が設けられ、その上に染料、脂肪酸アミド
のような低融点剤およびカーボンブラツクのよう
な充填剤３を混合したインク層４が設けられてい
る。このインクシートを用いて記録紙上に印字を
熱転写記録する場合について第２図の模式図を用
いて説明する。図示するようにインクシート１１
のインク層側に記録紙１２を重ね、インクシート
１１の基材側よりライン状のサーマル印字ヘツド
１３を押圧するとともに、記録紙１２側より加圧
ローラ１４で記録紙１２を加圧することで、記録
紙１２上にインクシート１１のインクを転写した
のち、分離ローラ１５で記録紙１２上にインクシ
ート１１のインクを転写記録している。

このような熱転写記録用インクシートとして、
本出願人は以前に特開昭58−132060号、特開昭57
−160691号および特開昭56−89984号に於いて、
繰り返し転写可能なインクシートを提案してい
る。

この特開昭58−132060号に於いて提案したイン
クシートは、色素として黒色染料と、熱融解性材
料として蜜ろうとカルナバろうと、粉末状インク
保持体として分散剤処理を施したカーボンブラツ
クと、前記色素と前記熱溶解性材料を均一に混合
させるための界面活性剤と、前記色素と熱融解性
材料との混合物に可塑性を付与する流動パラフイ
ンとを、エチルアルコールとトルエンとアセトン
とを溶媒として混合してこれをコンデンサ紙に塗
布して形成している。

また特開昭57−160691号に於いて提案したイン
クシートは、色素として黒色染料、低融点剤とし
てポリエチレングリコール、インク保持体として
カーボンブラツク、溶媒としてイソプロピルアル
コールとトルエンの混合物を用いたインク組成物
を有する。

また他の実施例として、色素として黒色染料、
低融点剤としてポリエチレングリコール、インク
保持体として酸化亜鉛、溶媒としてイソプロピル
アルコールとトルエンの混合物を用いたインク組
成物を提案している。

また他の実施例として色素として青色染料、低
融点剤としてポリエチレングリコールアルキルフ
エニルエーテル、インク保持体としてカーボンブ
ラツク、溶媒としてトルエンを用いたインク組成
物を提案している。

また上記低融点剤としてポリエチレングリコー
ルおよびソルビタン脂肪酸エステルを用いたイン
クシート、或いはカルナバワツクスとロジンの混
合物を用いたインクシートを提案している。

また特開昭56−89984号に於いて提案したイン
クシートは、染料として青色分散染料、低融点剤
としてエチルセルロース、モノニトロナフタレ
ン、インク保持体として酸化亜鉛粉末、溶媒とし
てアセトンを用いたインク組成物を有する。

また他の実施例として、染料として油溶性顔
料、低融点剤のバインダとしてニトロセルロー
ス、低融点剤として安息香酸フエニル、インク保
持体として酸化アルミニウム、溶媒としてアセト
ンを用いたインク組成物を提案している。

また他の実施例として色素に青色染料、低融点
材料としてモノニトロナフタレン、溶媒としてア
セトンを用いたインク組成物を提案している。

ところで、最近、このような熱転写記録におい
ても、黒“１”と白“０”の２値の中間の濃度の
多階調の中間調の記録が望まれるように成つてい
る。このような中間調記録を実現するために、サ
ーマル印字ヘツドに印加する印加電力の値や、印
字電圧のパルス幅を制御することで得ようとして
いる。

ここで中間調記録を実現するために、濃度の低
い印字を均質な濃度で得ようとすると、インク層
内に占める充填剤の量を多くし、充填剤の結着強
度を高め、この充填剤によりあたかも緻密な石垣
状の構造をインク層内に形成し、この充填剤の間
より溶融したインクを記録紙上にしみ出させて記
録すると良いとされている。

然し、インク層内に占める充填剤の割合を増加
させると、転写された印字の転写濃度は減少する
傾向にあり、従つて飽和転写濃度（サーマル印字
ヘツドに印加する印加電力、或いは印加パルス幅
を増加させて転写した場合、有る一定の値に到達
して飽和する転写濃度のこと）が所望の値に到達
しない問題点がある。

そこで本発明者等はインク層内に占める染料の
割合を増加させて飽和転写濃度を向上させようと
したが、このようにすると中間調記録を得るため
に低濃度の印字を転写した時の転写像が均質な濃
度で得られない問題がある。

つまりインク層内に含有される染料の量が、イ
ンクを記録紙に転写する際の転写特性に大きい影
響を持つ。

中間調記録が可能であると言う意味は、中間調
記録濃度で鮮明な画質が得られることである。そ
のためには、充分に高い飽和転写記録濃度と、イ
ンクを転写する際のサーマル印字ヘツドに印加す
る電力の変動に対応してゆるやかな記録濃度の傾
きを有することが必要となる。

このことより、本出願人が以前に特開昭58−
132060号に於いて提案したインクシートは、熱融
解性材料として蜜ろうとカルナバろうを用いてお
り、これらの材料は染料を溶解させる割合が、脂
肪酸アミドワツクスに比較して低く、そのため充
分な転写記録濃度が得られない問題がある。

また特開昭57−160691号に於いて提案したイン
クシートは、低融点剤としてカルナバワツクス、
脂肪酸エステル等を用いているが、これらの低融
点剤も染料を溶解させる割合が、脂肪酸アミドに
対して低く、従つて充分な転写記録濃度が得られ
ない問題がある。

また特開昭56−89984号に於いて提案したイン
クシートは、インク成分の結合剤としてエチルセ
ルロース、ニトロセルロース、ラテツクス、ポリ
カーボネイトおよびシリコーン樹脂等を用いてい
るが、これらはインクとともに剥がれて転写され
る傾向にあり、均一な中間調記録、つまりサーマ
ル印字ヘツドの印加電力の変動に対応して転写濃
度が緩やかな濃度勾配を呈しない問題がある。

(d) 発明の目的 本発明は上記した問題点を解決し、飽和転写濃
度が高く、かつ優れた中間調記録が得られるよう
な新規な熱転写記録用インクシートの提供を目的
とする。

(e) 発明の構成 かかる目的を達成する本発明の熱転写記録用イ
ンクシートは、基材上に中間接着層を設け、該中
間接着層の上に染料および低融点剤を含むインク
成分と充填材とを混合したインク層を設けて成る
熱転写記録用インクシートであつて、 前記低融点剤を一種、または融点の異なる二種
以上の脂肪酸アミドとし、前記染料の重量と前記
染料を除いたインク成分の重量との比を0.05〜
6.0の範囲とし、かつ中間調記録が可能なことを
特徴とするものである。

(f) 発明の実施例 以下、本発明の実施例につき図面を用いて詳細
に説明する。

インク層を形成する染料、低融点剤、インク層
の粘度を低下させるための補助剤、充填剤のう
ち、染料、低融点剤、補助剤で構成されるインク
成分より染料を除いた重量に対して染料の重量比
（β）を種々変動させてインクシートを形成し、
このβの値と記録紙上に転写された転写像の転写
濃度の関連について実験した。

即ち、厚さ8μmのコンデンサ紙よりなる基材上
に厚さ3μmの中間接着層を形成し、この上にβの
値を種々変動させた厚さ7μmのインク層を有する
インクシーートを多数枚用意し、これ等のインク
シートのインク層側に記録紙を重ね、サーマルフ
アクシミリ装置に設置し、サーマル印字ヘツドの
印加電力を10W／mm²とし、印加パルス幅を4msと
した状態で記録紙上に、これ等のインクシートの
インクを転写した。

この結果を第３図に示す。第３図の横軸はβを
示し、縦軸は記録紙に転写された飽和転写濃度
（0.D.）を示す。図示するように飽和転写濃度は
βに依存し、β＜0.05の条件では転写濃度が0.90.
D.以下となつて実用上好ましくなく、またβが
増加するにつれて飽和転写濃度が減少し、また転
写像の濃度の均質性も悪くなつた。

このことはβが増加するとインクの粘度が上昇
するため、所定の電力をサーマル印字ヘツドに印
加しても、溶融したインクの粘度が大きいため、
充填剤の間よりこの溶融したインクが充分しみ出
さないためと考えられる。

このような結果をβをパラメータとして図示す
ると第４図のようになる。第４図の横軸はサーマ
ル印字ヘツドの印加電力を10W／mm²とした時のパ
ルス幅（ms）を示し、横軸は記録紙上に転写さ
れる転写像の転写濃度（0.D.）を示す。

図の曲線２１に示すようにβが２の時には、転
写濃度が1.00.D.の程度の値を示し、パルス幅を
短くするにつれて転写濃度は徐々に低下する。そ
してパルス幅が1msの時には、転写濃度が略
0.2.0.D.の中間調の記録が得られる。また図の曲
線２２に示すようにβが８の時には、パルス幅を
4msと長くした時にも、転写濃度は0.50.D.程度の
値しか成らず、飽和転写濃度が低い。

また図の曲線２３に示すようにβが0.03の時に
は、βが８の時と同様にパルス幅を4msと長くし
た時にも、転写濃度は0.4.0.D.程度の値しか成ら
ず、飽和転写濃度が低い。

このことより本発明者等は第(1)式で定義される
βが第(2)式の値を満足する時、飽和転写濃度が充
分満足でき、かつ良好な中間調記録が得られるこ
とを実験的に確かめた。

β＝染料／（低融点剤＋補助剤） ＝染料／インク成分−染料 ……(1) 0.05≦β≦6.0 ……(2) 更に具体的に材料名を挙げて実施例を詳述す
る。

前記した第１図に示すように厚さ8μmのコンデ
ンサ紙より成る基材１上にアセトンの溶媒に溶解
したポリエステル樹脂の溶液をバーコータ塗布装
置で塗布後、乾燥器にて乾燥させて厚さ3μmの中
間接着層２を形成する。次いでこの上に染料とし
てのカヤセツトブラツク（日本化薬社製）を４重
量部、低融点剤としての脂肪酸アミド（日本油脂
社製、融点77℃）を1.3重量部、インク層の粘度
を低下させるためのパラフインワツクス（日興フ
アインケミカル社製）を0.7重量部、充填剤とし
てのカーボンブラツク（日本化薬社製）を2.5重
量部、それぞれアセトンを溶媒として溶解した
後、この溶液をバーコータ塗布装置により塗布し
た後、乾燥して7μmのインク層を形成した。

このように形成したインクシートは、βの値が
2.0と成り、このインクシートのインク層側に記
録紙を重ね、サーマルフアクシミリ装置に設置
し、10W／mm²の印加電力で、パルス幅を変化させ
ながら記録紙上にべた転写を行つた。この結果を
第５図に示す。

図の縦軸は記録紙上に転写された印字の転写濃
度（0.D.）を示し、横軸はサーマル印字ヘツドの
印加電力を0W／mm²とした時のパルス幅（ms）を
示す。

図示するようにパルス幅を4msと長くした時に
は、0.D.が1.1の飽和転写濃度を有する鮮明な印
字が得られ、また中間調記録を得るためにパルス
幅を1.0msと短くした時には、0.D.が0.2の均質な
低濃度の中間調記録が得られた。

またパルス幅を1msより4msと増加するにつれ
て、転写濃度も徐々に増加するため、パルス幅の
値を制御することで、中間調記録が再現性良く得
られる。ちなみに本発明の実施例と比較するため
にβの値が0.03と成るようなインク層の組成比を
有するインクシートを形成し、これを前記した装
置を用い、同様な方法で記録紙上に転写された転
写像を検査したところ、パルス幅を4msと長くし
た時でも、0.D.が0.4の転写像しか得られず、飽
和転写濃度の低い印字しか得られなかつた。

またβの値を10として染料比を増加した処、パ
ルス幅を4msと長くした時でも、0.D.が0.4の転写
像しか得られなかつた。このことは前記したよう
に染料の量を増加させると、インク層内の粘度が
上昇する働きを有するためである。

また前記した本発明の実施例の変形例として、
本発明者等は中間調記録特性を向上させるため
に、低融点剤を融点の異なる二種類の材料を混合
した場合に於いても、前記した本実施例に示した
ようにβの値を第(2)式に示す範囲とすることで良
好な中間調記録が実現できることを実験的に確か
めた。

即ち、前記した本発明の実施例の低融点剤の代
わりに、融点が77℃と70℃の二種類の脂肪酸アミ
ド（日本油脂社製）を、それぞれ0.7重量部、0.6
重量部混合した低融点剤を用い、他の染料、補助
剤、充填剤の割合はβの値が２と成るように配合
してインクシートを形成する。このインクシート
のインク層側に記録紙を重ね、サーマルフアクシ
ミリ装置に設置し、印加電力を10W／mm²とし、パ
ルス幅を変化させて記録紙上にベタ転写を行い、
この印字を検査した結果を第６図に示す。

図示するようにパルス幅を4msと長くした時に
は、0.D.が1.1の鮮明な転写像が得られ、次いで
中間調記録を得るためにパルス幅を0.7msと短縮
した時には、0.D.が0.15の低濃度の印字が均質な
濃度で得られた。

つまり融点の異なる脂肪酸アミドを２種以上混
合して用いることにより、低エネルギー（短いパ
ルス幅）では低エネルギーで溶融する低融点の脂
肪酸アミドが転写記録に関与し、高エネルギー
（長いパルス幅）では、高エネルギーで溶融する
高融点の脂肪酸アミドが転写記録に与かるため
に、第６図に示すようにパルス幅（エネルギー）
に対する転写濃度の傾きを緩やかにすることがで
き、中間調の良好な印字記録をすることができる
ことになる。

(g) 発明の効果 以上述べたように本発明の熱転写記録用インク
シートによれば、インクシートのインク層を形成
するインク成分のうちの染料の配合比が適切な割
合に保たれているので、飽和転写濃度が所定の値
に保たれ、かつインクの粘度も適切な値に保たれ
るので、中間調の低濃度の印字でも印字の濃度が
均質な状態で得られる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はインクシートの断面図、第２図はイン
クシートを用いた熱転写記録装置の模式図、第３
図はβと転写濃度との関係図、第４図はβをパラ
メータとした時のパルス幅と転写濃度との関係
図、第５図は本発明の実施例のインクシートを用
いた際のサーマル印字ヘツドのパルス幅と転写濃
度との関係図、第６図は本発明の他の実施例のイ
ンクシートを用いた際のサーマル印字ヘツドのパ
ルス幅と転写濃度との関係図である。 図において、１は基材、２は中間接着層、３は
充填剤、４はインク層、１１はインクシート、１
２はインク層、１３はサーマル印字ヘツド、１４
は加圧ローラ、１５は分離ローラ、２１，２２，
２３はβの値が異なつたインクシートを用いた際
のサーマル印字ヘツドのパルス幅と転写濃度との
関係曲線を示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 基材１上に中間接着層２を設け、該中間接着
   層の上に染料および低融点剤を含むインク成分と
   充填剤とを混合したインク層４を設けて成る熱転
   写記録用インクシートであつて、 前記低融点剤を一種、または融点の異なる二種
   以上の脂肪酸アミドとし、前記染料の重量と前記
   染料を除いたインク成分の重量との比を0.05〜
   6.0の範囲とし、かつ中間調記録が可能なことを
   特徴とする熱転写記録用インクシート。