JPH038621Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、２種類の物質の化学反応時の発熱作
用を利用して、例えば飲料あるいはインスタント
食品などを加熱する際に使用する加熱用容器セツ
トに関するものである。

（従来技術） 野山あるいは海岸などの電気とかガスとかの熱
源がない場所において、インスタント食品（例え
ばインスタントラーメン）を調理したり又は湯を
沸かしたりする際には携帯用ガスボンベあるいは
石油などを熱源とした携帯用コンロが重宝される
が、このような従来の携帯用ガスコンロ又は石油
コンロは、金属製で且つ比較的大型となつている
ため、重量が重くしかも持ち運び時、保管時など
に大きなスペースが必要となつてその取扱いが不
便となるとともに、製造コストが高くつくという
問題があつた。

ところで、本考案者等は、２種類の物質を混合
して両物質を相互に化学反応させ、その化学反応
時に生じる発熱作用によつて、飲料あるいはイン
スタント食品などを加熱することができるように
した装置などを鋭意研究・開発し、既にそのいく
つかについて特許又は実用新案登録出願を行つて
いるが、使い易さあるいはコストなどの面でなお
改良の余地を有するものであつた。

（考案の目的） 本考案は、上記した事情に鑑み、持ち運び時あ
るいは保管時などにコンパクトにできるととも
に、使い勝手が良好で、しかも簡易且つ安価に製
作できる加熱用容器セツトを提供することを目的
とするものである。

（目的を達成するための手段） 本考案の加熱用容器セツトは、内部で水と該水
と化学反応して発熱作用を起こす発熱剤とを混合
せしめ得る如くした反応容器と、内部に被加熱物
を収容でき且つ前記反応容器内で発生する反応熱
によつて加熱される紙製の被加熱容器と、有底袋
状で前記被加熱容器の下面側から該被加熱容器の
外側にかぶせることができ且つ前記反応容器内で
発生する反応熱によつて収縮して前記被加熱容器
の外面を密着被覆し得るフイルム状の熱収縮性包
材とを組合せて構成したことを特徴としている。

（作用） 本考案の加熱用容器セツトは、次のような作用
を有する。

(1) 反応容器の内部で２種類の物質相互間の化学
反応により発熱作用を発生せしめ得る如くして
いるので、火を使用する場合（例えばガスコン
ロ又は石油コンロ）に比べて、反応容器又は被
加熱容器などを安価な材料で製作することがで
きる。特に被加熱容器は紙製としているので安
価となる。

(2) 被加熱容器の外側にかぶせられ且つ反応容器
内で発生する熱によつて収縮して被加熱容器の
外面を密着被覆し得る熱収縮性包材を有してい
るので、被加熱容器を吸水性を有する紙製とし
ても、反応容器内で発生する蒸気（水分）が被
加熱容器内に浸透しなくなる。

(3) 上記熱収縮性包材は、この加熱用容器セツト
の使用時に被加熱容器に装着しておけば、反応
容器内での発熱作用時に自動的に被加熱容器の
外面に密着するようになり、熱収縮性包材を予
め被加熱容器の外面に密着させておく必要がな
くなる。

（実施例） 第１図ないし第７図を参照して本考案のいくつ
かの実施例を説明すると、第１図ないし第４図に
は本考案第１実施例、第５図には同第２実施例、
第６図及び第７図には同第３実施例の加熱用容器
セツトが示されている。

第１図ないし第４図に示す第１実施例の加熱用
容器セツトは、内部で２種類の物質を混合して化
学反応（発熱反応）を起こさせることができる反
応容器１と、被加熱物を収容できる紙製の被加熱
容器２と、該被加熱容器２の外側にかぶせること
ができ且つ反応容器１内で発生する反応熱によつ
て収縮する性質を有するフイルム状の熱収縮性包
材３とをセツトにして構成されている。

反応容器１は、袋を開いたときに自立可能なス
タンドパツク式に構成されている。この反応容器
１は、この実施例ではアルミ箔の表裏両面をそれ
ぞれ樹脂コーテイングしてなる薄膜状の可撓性材
料が使用され、該可撓性材料からなる２枚の側面
材１ａ，１ｂ及び１枚の底面材１ｃをその各外周
縁部においてヒートシール（符号５）することに
よつて内部を密封した袋状に形成されている。

この反応容器１の材料としては、上記したアル
ミ箔の表裏両面を樹脂コーテイングしたものの外
に、例えば紙の内面側あるいは両面にアルミニウ
ムを蒸着したもの、又はラミネートプラスチツク
フイルム等のものが使用可能であるが、可撓性を
有するものであつてもいわゆる「腰」の強い材料
を使用することが好ましい。即ち、後述するよう
に反応容器１を開いて自立させ、その開口縁部６
に被加熱容器２（内部に水Ｗなどが収容されて比
較的大重量となる）を載せたとき（第３図、第４
図参照）に、該被加熱容器２の荷重によつて反応
容器１がつぶれたり又は折曲したりしないようす
ることが必要であり、そのために反応容器１の材
料としていわゆる「腰」の強いもの使用するのが
好ましいのである。尚、反応容器１の材料として
比較的「腰」の弱いものを使用するときには、そ
の材料の厚さを厚くして強度を大きくしたり、あ
るいは上下方向に強度をもたせるための何らかの
補強手段を施したりする必要がある。この第１実
施例の反応容器１では、比較的「腰」の強い上記
材料（アルミ箔の表裏両面を樹脂コーテイングし
たもの）を使用し、しかも両側辺部をそれぞれ適
宜幅Ｔづつヒートシール（符号５ａ）することに
よつて縦方向の強度を大きくしている。

又、この第１実施例では、反応容器１内に、水
Ａと化学反応して発熱する発熱剤Ｂを予め密封収
納している。このように予め反応容器１内に発熱
剤Ｂを密封収納しておくと、該発熱剤Ｂが湿気を
吸収しなくなるとともに、持ち運び時あるいは使
用時の取扱いが簡便となる。

上記発熱剤Ｂとしては、例えば酸化カルシウム
と炭酸水素ナトリウムと石こうとを適宜量づつ混
合したものを使用する。尚、酸化カルシウムは主
発熱剤となるものであり、炭酸水素ナトリウムは
酸化カルシウムと水とを混合した際にその両者の
反応開始時刻を遅らせる作用をするものであり、
石こうは酸化カルシウムと水とを混合したときの
両者の反応速度を緩和する（いわゆる遅延効果）
とともに反応後の反応済物質をいくらか固化する
作用をするものである。この発熱剤Ｂは透水性の
あるナイロン製の不織布などの中に充填されてい
る。尚、上記発熱剤の各成分の好適な配合割合
は、酸化カルシウムが250重量部に対して炭酸水
素ナトリウムが10重量部、石こうが22重量部であ
る。

この反応容器１を使用するときには、第１図に
示すように密封状態から上端部１ｄ付近を適宜小
幅だけ切除して開放させる。

被加熱容器２は、一般に市販されている紙コツ
プなどの比較的安価な紙製容器が使用されてい
る。この被加熱容器２は、開口部側が大径で底部
側が小径となつたテーパ付有底円筒状に成形され
ている。又被加熱容器２の上端外周長さは、前記
反応容器１の開口縁部６の内周長さよりやや大き
くしており、被加熱容器２を反応容器１の開口部
内に差し込んだときに、被加熱容器２の中段部が
反応容器１の開口縁部６に掛止されるようになつ
ている。

この被加熱容器２に使用されるような紙製容器
では、一般に内面側は防水処理が施されていて、
内部に液体を収容しても容易に型崩れしないよう
になつているが、外面側は防水処理が施されてい
ないのが通例である。従つてこの種の紙製容器で
は、外面側に水分が接触すると、該外面側から水
分が浸透して紙製容器の「腰」が弱くなるという
性質があり、このような市販の紙製容器では、安
価ではあるがそのまま被加熱容器２として使用す
るには問題がある。尚、上記の紙製容器の外面側
にも別途防水処理を施して、その防水処理済みの
紙製容器を被加熱容器として使用することが考え
られるが、その場合には別途防水処理を施す作業
が面倒となる。尚、紙製容器に対する防水処理方
法としては、一般にパラフイン系の防水剤を表面
に塗布することが多いが、このようなパラフイン
系防水剤による防水処理方法では熱に弱いため、
被加熱容器として使用するときにはあまり効果が
あがらない。

熱収縮性包材３は、上記の如く被加熱容器２を
紙製容器として場合の問題点を改善するためのも
のであり、例えば塩化ビニルなどの熱収縮性を有
するフイルムで袋状に成形したものを使用してい
る。この熱収縮性包材３は、第３図に示すように
被加熱容器２の下面側から該被加熱容器２の外側
にかぶせることができるような大きさを有してい
る。尚、この熱収縮性包材３は、その深さを深く
して、被加熱容器２にかぶせる際に、第３図に鎖
線３′で示すように被加熱容器２の上部も包み込
むようにすることもできる。

上記発熱剤Ｂと混合する反応用の水Ａは、該発
熱剤Ｂの量に応じて予め適量だけパツク状に封入
しておけば使用時に分量調節が不要となり便利で
ある。又、上記反応用の水Ａは、適宜濃度の塩水
としておくと、冬期などにおいても凍結し難くな
る。

次にこの第１実施例の加熱用容器セツトを使用
して例えばお湯を沸かす場合における該加熱用容
器セツトの使用法並びにその作用を説明する。

使用に際しては、まず反応容器１の上端部付近
を切除した後、該開封された反応容器１を第２図
及び第３図に示すようにできるだけ円筒形になる
ように開いた状態で床面（地面）上に自立させて
おく。他方、被加熱容器２の底部には予め熱収縮
性包材３をかぶせておく。そして、次に、被加熱
容器２内に加熱すべき水Ｗを注ぎ込んだ後、反応
容器１内に反応用の水Ａを注ぎ込み、続いて被加
熱容器２を熱収縮性包材３とともに素早く反応容
器１の開口縁部６に掛止させれば湯沸かしのため
の操作は完了する。尚、被加熱容器２の上部には
必要に応じて蓋７がかぶせられる。

反応容器１内において、反応用の水Ａと発熱剤
Ｂとを混合すると、両者間に化学反応が起こつて
発熱作用が開始され、反応用の水Ａから高温の蒸
気Ｖ（微小水滴混じり）が発生するようになる。
すると、まずその高温蒸気によつて反応容器１内
にある熱収縮性包材３が加熱されて収縮し、第４
図に示すように該熱収縮性包材３が被加熱容器２
の底面及び側周面全体に密着して被覆するように
なる。このように熱収縮性包材３が被加熱容器２
の底面及び側周面に密着すると、反応容器１内で
発生する蒸気Ｖが被加熱容器２の外面に直接接触
することがなく、従つて被加熱容器２の材料中に
水分が浸透しなくなる。尚、熱収縮性包材３はフ
イルム状で且つ被加熱容器２の外面に密着するの
で、該熱収縮性包材３が熱を遮断する作用はほと
んどない。

反応容器１内での発熱作用が進むと、被加熱容
器２の底部及び側周部が加熱されて該被加熱容器
２内の水Ｗが沸かされる。そして該被加熱容器２
内でお湯が沸けば、そのお湯を、お茶、コーヒー
などに利用することができる。

尚、本考案者等の実験によれば、反応用の水Ａ
を100ml、前記配合割合で形成した発熱剤Ｂを200
ｇ用意し、両者を混合してそのときの反応熱で15
℃の水400mlを、５分間で約93℃まで高めること
ができた。

尚、反応容器１、被加熱容器２及び発熱剤Ｂな
どは使い捨てにされるもので、使用後は所定の廃
棄場所に捨てればよい。

第５図に示す第２実施例は、反応容器の変形例
を示しており、この第２実施例の反応容器１１
は、折畳み式箱状のものが採用されている。尚、
この反応容器１１の開口縁には第１実施例と同様
に下面側から袋状の熱収縮性包材１３をかぶせた
被加熱容器１２が掛止される。

第６図及び第７図に示す第３実施例では、反応
容器２１は、自立性のある筒形で且つ周方向に柔
軟な材料で形成されたケース２１Ａと、該ケース
２１Ａ内に収容される薄膜状の袋２１Ｂとで構成
されている。ケース２１Ａには段ボールなどの安
価な材料が使用され、又袋２１Ｂには安価で且つ
比較的耐熱性のあるシート材（例えばポリエチレ
ン製）が使用される。この第３実施例の加熱用容
器セツトでは、パツケージングするときには、ケ
ース２１Ａ及び袋２１Ｂは小さく折畳まれる。
又、この反応容器２１は、使用時にはケース２１
Ａを筒状に開いて自立させた後、該ケース２１Ａ
内に袋２１Ｂを開いた状態で差し込めばよい。
尚、この第３実施例の加熱用容器セツトでは、第
７図に示すように乾燥麺Ｙを加熱調理するのに使
用されており、まず反応容器２１の袋２１Ｂ内に
発熱剤Ｂを投入し、続いて被加熱容器２２内に乾
燥麺Ｙと水Ｗとを収容した後、反応容器２１の袋
２１Ｂ内に反応用の水Ａを注ぎ込み、さらに該反
応容器２１の上部に被加熱容器２２を素早く載せ
れば調理操作は完了する。尚、第７図において符
号２４は段ボールなどの材料からなる下敷材で、
必要に応じて敷設されるものである。

（考案の効果） 本考案の加熱用容器セツトは、次のような効果
がある。

(1) 反応容器の内部で２種類の物質相互間の化学
反応により発熱作用を発生せしめ得る如くして
いるので、火を使用する場合（例えばガスコン
ロ又は石油コンロ）に比べて、反応容器又は被
熱処理容器などを安価な材料で製作することが
でき、コストダウンを図ることができる。特に
被加熱容器は紙製としているのでより一層安価
となる。

(2) 被加熱容器の外側にかぶせられ且つ反応容器
内で発生する熱によつて収縮して被加熱容器の
外面を密着被覆し得る熱収縮性包材を有してい
るので、被加熱容器を吸水性を有する紙製とし
ても、反応容器内で発生する蒸気（水分）が被
加熱容器内に浸透することがなく、使用上の問
題は起こらない。

(3) 上記熱収縮性包材は、この加熱用容器セツト
の使用時に被加熱容器に装着しておけば、反応
容器内での発熱作用時に自動的に被加熱容器の
外面に密着するので、熱収縮性包材を被加熱容
器の外側に密着被覆させるための特別な加工、
操作などが不要となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例にかかる加熱用容
器セツトの非使用時の斜視図、第２図は第１図の
加熱用容器セツトの使用方法説明図、第３図は第
２図の−断面図、第４図は第３図の状態変化
図、第５図は本考案の第２実施例にかかる加熱用
容器セツトの使用状態を示す斜視図、第６図は本
考案の第３実施例にかかる加熱用容器セツトの使
用状態を示す斜視図、第７図は第６図の−断
面図である。 １，１１，２１……反応容器、２，１２，２２
……被加熱容器、３，１３，２３……熱収縮性包
材、Ａ……水、Ｂ……発熱剤。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 内部で水Ａと該水Ａと化学反応して発熱作用を
   起こす発熱剤Ｂとを混合せしめ得る如くした反応
   容器１，１１，２１と、内部に被加熱物Ｗ，Ｙを
   収容でき且つ前記反応容器１内で発生する反応熱
   によつて加熱される紙製の被加熱容器２，１２，
   ２２と、有底袋状で前記被加熱容器２，１２，２
   ２の下面側から該被加熱容器の外側にかぶせるこ
   とができ且つ前記反応容器１，１１，２１内で発
   生する反応熱によつて収縮して前記被加熱容器
   ２，１２，２２の外面を密着被覆し得るフイルム
   状の熱収縮性包材３，１３，２３とを組合せてな
   る加熱用容器セツト。