JPH0371612B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は建造物等の床を温水循環用パイプを用
いて床暖房する温水式床暖房構造の施工方法に関
する。

〔従来の技術とその課題〕

近年、特に温水輻射床暖房（以下、温水式床暖
房と称する）の快適性、経済性は高く評価され、
新しい省エネルギー型の暖房システムとして寒冷
地を中心に発展してきている。

従来の温水式床暖房構造の施工方法に、現場施
工方法がある。この方法は温水循環用パイプを収
設するための蛇行状溝を有する断熱材、温水循環
用パイプ、放熱板及び床仕上材等を現場まで運搬
し、組立てる方法であるので、設備に必要な部品
点数が極めて多く、現地での作業は長時間を必要
とし、部品管理、工事手順、施工管理等に大きな
労力を要するといつた課題があることは勿論、温
水循環用パイプの蛇行状賦形・収設作業及び放熱
板の接着作業を必要とするばかりでなく、パイプ
を保護する床仕上材が制約を受けるという課題が
ある。

また、最近では断熱材にパイプを組込み放熱板
を一体化したいわゆるパネルタイプの温水式床暖
房構造を施行する方法も開発され、施行作業の簡
素化を図つているが、運搬性、作業性等の点から
１枚の大きさに限度（通常１畳程度）があるた
め、パネル相互の接続作業はもちろんのこと温水
循環用パイプ相互の接続作業が必要であり、施行
ミスによる漏水事故の発生は避けがたいものとさ
れている。しかも１枚当たりのパネル価格が高価
であり大型建造物はもとより一般住宅への普及す
ら困難なものとされている。

〔課題を解決するための手段〕

本発明方法は上記の課題を解決するため、図示
のように断熱材８をその下に組み込んで形成した
断熱床構造体１０の床材９上に、予め蛇行状に賦
形した温水循環用パイプ３を敷設し、木毛繊維板
からなる床暖房用芯材１の下面には該パイプ３を
収設するための溝２を蛇行状に設けると共に当該
床暖房用芯材１の上面には加熱板４を密着してな
る床構成材５を、敷設した温水循環用パイプ３が
下面の蛇行状の溝２に嵌合するように上から被
せ、更にその上に床仕上材１２を施設することを
特徴とする。

〔作用〕

このような構成とすることにより断熱床構造体
１０、予め蛇行状に賦形された温水循環用パイプ
３、床構成材５及び床仕上材１２を現場まで運搬
し、床材９上に予め蛇行状に賦形した温水循環用
パイプ３を敷設する作業、このパイプ３が蛇行状
の溝２に嵌合するように床構成材５を被せる作業
及びその上に床仕上材１２を施設する作業だけで
温水式床暖房構造を施工することができ、使用部
品点数の低減と運搬性の改善、現場での温水循環
用パイプ３の蛇行賦形・収設作業及び放熱板４の
接着作業並びにパイプ３の接続作業を不要にでき
ることによる作業性の向上、施工時間の短縮、設
備コストの低減、パイプ３の施行ミスによる漏水
事故防止及び部品管理、工事手順、施工管理等の
簡素化等を図ることができ、安価に実施できるこ
とになる。また、床暖房用芯材１によりパイプ３
を充分に保護できるため床仕上材１２が制約され
ることはない。更に温水式床暖房に必要な放熱量
は床仕上材１２より効果的に得られるので、一層
快適な省エネルギーの優れた床暖房設備の提供に
寄与することができる。

〔実施例〕

以下図面によつて本発明方法の一実施例を詳細
に説明する。

まず、本発明方法で使用する部品構造について
記述する。

第１図は本発明における床構成材の一例を示す
斜視図を示し、１は床暖房用芯材である。この芯
材１の下面には温水循環用パイプ３を蛇行状に収
設するための溝２を設けると共に、芯材１の上面
には床表面温度を均一にするための放熱板４を芯
材１と放熱板４間に空気層が生じないように接着
剤、木ネジ等により完全に密着して床構成材５を
構成する。３は溝２内に高温部と低温部が互いに
入り込んで蛇行状に収設された温水循環用パイプ
であり、予め蛇行状に賦形されている。

床構成材５は一枚の芯材１と一枚の放熱板４を
密着してなるものでもよいが、第１図示のように
温水循環用パイプ３の屈曲部に用いる芯材部１ａ
と放熱板部４ａよりなる床構成材５ａと、温水循
環用パイプ３の直線部に用いる芯材部１ｂと放熱
板部４ｂよりなる床構成材部５ｂと、温水循環用
パイプ３の屈曲部及び接続部に用いる芯材部１ｃ
と放熱板部４ｃよりなる床構成材部５ｃとで構成
してもよい。

芯材１は上部からの荷重を支える荷重受板とし
て家具、ピアノ、冷蔵庫等の集中荷重に対し、窪
みや座屈等を生じない耐荷重強度を有し、しかも
溝加工性の優れたものであることが必要である。

従つて、芯材１としては木毛繊維板（パーテイ
クルボード）を用い、例えば厚さ20mmの木毛繊維
板を使用する。温水循環用パイプ３の直上部の芯
材１の厚さはできる限り薄肉化することが好まし
いが、上部からの集中荷重を考慮し材質に応じて
適当な厚さとし、例えば最も薄肉の部分の厚さを
２mmとする。

芯材１の下面に設けられた溝２は第２図ａ〜ｅ
に示すようにトンネル状、三角形状、山形形状、
四角形状、突山形形状等の溝にすることができ、
溝２の幅Ｄや深さＨは温水循環用パイプ３の外径
に応じて調整される。溝２の幅Ｄと深さＨの関係
は溝係数α＝Ｈ／Ｄによつて表され、0.8＜α＜
1.2の範囲が温水式床暖房の放熱上好ましく、0.8
以下の場合、温水循環用パイプ３の座屈、床構成
材と床面に隙間が発生する等の問題が生じ、1.2
以上の場合、温水循環用パイプ３と溝上部の間に
空気層ができ空気の断熱高価により所定の放熱量
が得られないという問題が生じる。

第２図ａのトンネル状の溝の場合、溝上部の半
径Ｒの面は温水循環用パイプ３の外半径と等しい
か若干大きめであることが隙間防止上好ましい。
また第２図ｃの山形形状の溝とした場合、即ち第
２図ａのトンネル状の溝において開口部を広げ角
度θをもつて拡開した場合には温水循環用パイプ
の施工作業の効率化を図ることができるので好ま
しい。広げ角度θは、温水循環用パイプとの隙間
をなくす意味から５度＜θ＜45度の範囲が好まし
いが、施工作業上さらに広い角度であつてもよ
い。

また芯材１には、その下面に溝２に平行にある
いは直角方向に、適宜の幅と深さのスリツトを数
条刻設しておき、床面の凹凸に対する追従性を付
与しておくことが好ましい。

温水循環用パイプ３としては錆びない材質で作
られたものが使用され、プラスチツク、銅、アル
ミニウム、ステンレス等のパイプを用いることが
できる。

また放熱板４としては熱伝導性の良い材質のも
のが使用され、亜鉛鉄板、銅、アルミニウム、ス
テンレス等の金属板を用いることができ、例えば
厚さ0.6mmの亜鉛鉄板を使用する。

１０は断熱床構造体である。これは、通常の住
宅等の床下断熱におけると同様に、第３図示のよ
うに床裏面材６上に所定間隔を置いて配置された
根太７と根太７の間にポリオレフイン系、ポリス
チレン系合成樹脂の如き有機系発泡体、ガラスバ
ルーン、ガラスフアイバー等の無機系断熱材等の
断熱材８を組込み、この断熱材８と根太７の上面
に合板製等の床材９を施設して断熱床構造体１０
とする。更に、この床材９上に必要に応じて防水
シート１１を敷いた構成としてもよい。

本発明方法は、第３図示のように断熱床構造体
１０の床材９上または防水シート１１を敷いた場
合はこの防水シート１１上に予め蛇行状に賦形し
た温水循環用パイプ３を敷設する。次に床構成材
５を、敷設した温水循環用パイプ３が下面の蛇行
状の溝２に嵌合するように上から被せ、更にその
上に床仕上材１２を施設する。

このように本発明方法は、予め蛇行状に賦形さ
れた温水循環用パイプ３、床構成材５及び床仕上
材１２を現場まで運搬し、断熱床構造体１０の床
材９上に、予め蛇行状に賦形した温水循環用パイ
プ３を敷設する作業、このパイプ３が蛇行状の溝
２に嵌合するように床構成材５を被せる作業及び
その上に床仕上材１２を施設する作業だけで温水
式床暖房構造を施工することができる。

次に本発明方法の具体例について述べる。

床構成材５の大きさを１畳分の大きさとし、か
つ３つの床構成材５ａ〜５ｃより構成した。各床
構成材５ａ〜５ｃは厚さ20mmの木毛繊維板を芯材
部１ａ〜１ｃとし、この芯材部１ａ〜１ｃの下面
に溝係数α＝1.0、広げ角度θ＝20度、温水循環
用パイプ３の直上部の芯材の厚さ２mmとする溝２
を設けると共に、芯材部１ａ〜１ｃの上面に厚さ
0.6mmの亜鉛鉄板を放熱板４ａ〜４ｃとして密着
させた構成とした。

上記の如き断熱床構造体１０の床材９上に防水
シート１１を敷き、その上に予め蛇行状に賦形し
た温水循環用パイプ３を配置し、この温水循環用
パイプ３に各床構成材部５ａ〜５ｃを被せ、更に
その上に床仕上材１２を施設した。

その結果、一般、戸建住宅（33坪）の規模で、
温水式床暖房構造に要する施工時間は従来法に比
較し約30％短縮することが可能であることを確認
し、設備費、施工費も大幅な低減ができることも
確認した。さらにボイラーより温水循環用パイプ
３に50℃の温水を通水し床暖房性能を試験したと
ころ、床表面温度は従来のもので３〜５℃の温度
むらを生じたが、本発明方法により施工した温水
式床暖房構造では、わずか１〜２℃の温度むらに
すぎないことを確認した。これは輻射床暖房の快
適性の面で極めて有意義な結果である。放熱量に
ついては従来のものと比較し約20％も高く、逆に
床下側への損失熱量は約10％軽減できることを確
認した。この結果は省エネルギーの観点から重要
なことである。

本発明実施方法によれば、断熱床構造体１０の
防水シート１１上に、予め蛇行状に賦形した温水
循環用パイプ３を敷設し、温水循環用パイプ３の
屈曲部に用いる芯材部１ａと放熱板部４ａよりな
る床構成材部５ａと、温水循環用パイプ３の直線
部に用いる芯材部１ｂと放熱板部４ｂよりなる床
構成材部５ｂと、温水循環用パイプ３の屈曲部及
び接続部に用いる芯材部１ｃと放熱板部４ｃより
なる床構成材部５ｃとで構成した床構成材５を、
敷設した温水循環用パイプ３が下面に蛇行状の溝
２に嵌合するように上から被せ、更にその上に床
仕上材１２を施設するようにしたので、使用部品
点数の低減と施工時間の短縮、設備コストの低減
を図ることができるばかりでなく、温水循環用パ
イプ３より輻射暖房に必要な熱を放熱板４に効率
よく伝達できるため、床表面温度の温度むらを低
減でき、一層快適な省エネルギー性の優れた温水
式床暖房設備の提供に寄与することができる。ま
た床構成材５の下面に断熱床構造体１０を施設し
ておくことにより床下方向への損失熱量を低減で
き、一層省エネルギー化を図ることができると共
に、温水循環用パイプ３を一連の蛇行状に賦形し
ておくことによりパイプ相互の接続を回避し、施
工ミス等による漏水事故を防止できる。

〔発明の効果〕

上述のように本発明方法によれば、断熱材８を
その下に組込んで形成した断熱床構造体１０の床
材９上に、予め蛇行状に賦形した温水循環用パイ
プ３を敷設し、木毛繊維板からなる床暖房用芯材
１の下面には該パイプ３を収設するための溝２を
蛇行状に設けると共に当該床暖房用芯材１の上面
には放熱板４を密着してなる床構成材５を、敷設
した温水循環用パイプ３が下面の蛇行状の溝２に
嵌合するように上から被せ、更にその上に床仕上
材１２を施設することを特徴とするので、予め蛇
行状に賦形された温水循環用パイプ３、床構成材
５及び床仕上材１２を現場まで運搬し、断熱床構
造体１０の床材９上に、予め蛇行状に賦形した温
水循環用パイプ３を敷設する作業、このパイプ３
が蛇行状の溝２に嵌合するように床構成材５を被
せる作業及びその上に床仕上材１２を施設する作
業だけで温水式床暖房構造を施工することがで
き、使用部品点数の低減と運搬性の改善、現場で
の温水循環用パイプ３の蛇行賦形・収設作業及び
放熱板４の接着作業並びにパイプ３の接続作業を
不要にできることによる作業性の向上、施工時間
の短縮、設備コストの低減、パイプ３の施行ミス
による漏水事故防止及び部品管理、工事手順、施
工管理等の簡素化等を図ることができ、安価に実
施できる。

また、床暖房用芯材１によりパイプ３を充分に
保護できるため床仕上材１２が制約されることは
ないばかりでなく、温水式床暖房に必要な放熱量
は床仕上材１２より効果的に得られるので、一層
快適な省エネルギーの優れた床暖房設備の提供に
寄与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明における床構成材の一例を示す
斜視図、第２図ａ〜ｅは本発明における温水循環
用パイプを収設するための溝の各種形状例を示す
説明図、第３図は本発明方法により施工した温水
式床暖房構造の一例を示す断面図である。 １……床暖房用芯材、２……溝、３……温水循
環用パイプ、４……放熱板、５……床構成材、６
……床裏面材、７……根太、８……断熱材、９…
…床材、１０……断熱床構造体、１１……防水シ
ート、１２……床仕上材。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 断熱材をその下に組込んで形成した断熱床構
   造体の床材上に、予め蛇行状に賦形した温水循環
   用パイプを敷設し、木毛繊維板からなる床暖房用
   芯材の下面には当該パイプを収設するための溝を
   蛇行状に設けると共に当該床暖房用芯材の上面に
   は放熱板を密着してなる床構成材を、敷設した温
   水循環用パイプが下面の蛇行状の溝に嵌合するよ
   うに上から被せ、さらにその上に床仕上材を施設
   することによりなる温水式床暖房構造の施工方
   法。