JPH0357003Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この考案は、負極に亜鉛缶を用いる乾電池に関
し、特に、その封口部分に塗着する粘性質の封口
剤の改良に関する。

《従来の技術》 周知のように、通常の円筒形乾電池において
は、有底円筒形の亜鉛缶の内面にセパレータが密
着して配置され、その内部に正極合剤が装填され
ている。正極合剤の上面には鍔紙が配置され、ま
た正極合剤の中心には正極集電体としての炭素棒
が挿入されている。亜鉛缶の開口部は合成樹脂の
封口ガスケツトで塞がれ、この封口ガスケツトの
中心孔を上記炭素棒が貫通している。この炭素棒
の上端突出部および封口ガスケツトの上面側にハ
ツト形の正極端子板が被せられ、この正極端子板
の上面周辺部が絶縁ワツシヤーを介して外装缶の
上端カール部で押え付けられている。

この構造の乾電池において、亜鉛缶の開口端と
封口ガスケツトの接合部分や、封口ガスケツトの
中心孔と炭素棒との境界部分、正極端子板と封口
ガスケツトとの接触部分や、亜鉛缶の外周を被覆
する樹脂チユーブの縁部と封口ガスケツトおよび
正極端子板と接触部分が、電池の耐漏液性および
気密性維持の面で重要な部分である。

これらの接触部分に粘着性の封口剤を塗着し、
これによつて接触部分の微小隙間を埋め、この部
分を気密および液密にシールする。

従来、この種の乾電池用封口剤としては、ピツ
チ，ワツクス，ポリブテン，ポリイソブチレン，
液状シリコンゴムなどの各種の粘着性材料が使用
されている。

《考案が解決しようとする問題点》 従来の乾電池用封口剤のうち、ポリブテンとポ
リイソブチレンとが基本的な封口性能の面で特に
優れている。これ以外の封口剤は常温での粘度が
高すぎて、ある程度低温で電池を保存しておいた
場合、封口剤と電池構成要素との接触面に隙間が
生じたり、封口剤自体にひび割れが生じたりし、
これらの空隙を通つて外部の酸素が電池内に侵入
する。これが電池の性能劣化の原因となり、保存
後の開路電圧の低下というかたちで顕著に観察で
きる。

ポリブテンとポリイソブチレンは良好な封口性
能を示すが、ポリブテン単独では高分子量のもの
でも流動点が約20℃と比較的低く、電池を高温下
で保存した場合などに、流動しやすくなつた封口
剤がそれらの塗着個所から外部に漏出してしま
う。封口剤が漏出すると、電池の外表面を汚すだ
けでなく、その後の封口性能が著しく低下してし
まう。

また、ポリイソブチレン単独では、流動点は比
較的高いが、塗布する個所によつては、同様に外
部漏出の可能性があるとともに、溶融粘度が高い
ため塗布作業も困難である。

この考案は上述した従来の問題点に鑑みなされ
たので、その目的は、ポリブテンまたはポリイソ
ブチレンの持つ良好な封口性能を生かしつつ、な
おかつ、これらの高温下での不都合点を解消した
総合特性に優れた乾電池用封口剤を提供すること
にある。

《問題点を解決するための手段》 そこでこの考案では、ポリブテンまたはポリイ
ソブチレンを主成分とし、これに結晶性ポリオレ
フイン系樹脂を２重量％以上添加することで、流
動点を単独のものより、上げて調剤した。

《作用》 ポリブテン，ポリイソブチレン，これらの混合
物に２重量％以上のポリオレフイン系樹脂を添加
すると、その流動点が35℃以上になり、このよう
な流動点を有していれば、60℃程度の高温下で電
池を保存していても、封口剤はそれほどの流動性
を示さないが、外部への漏出や封口性能の低下と
言つた不都合は生じなくなる。

また、ポリブテンもしくはポリイソブチレンを
主体としているため、５℃程度の低温下で電池を
保存していても、封口剤はそれほど硬くならず、
封口剤と電池構成要素との接触面や封口剤自身の
ひび割れ等による空隙は殆ど発生せず、良好な封
口性能を保つことができる。

《実施例》 ポリブテンまたはポリイソブチレンの主成分に
対し、これに少量添加する副成分としては、ポリ
エチレン，ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフ
イン系樹脂が用いられる。

好ましい一実施例として、平均分子量1350のポ
リブテンに６重量％のポリエチレンを添加混合し
た。このように調剤した封口剤は、粘度が約約
200cp／140℃，流動点は約90℃であつた。

ポリエチレンを全く混合していないポリブテン
単独では流動点は20℃前後であり、常温でも非常
に流動しやすい性質のものであつた。これにポリ
エチレンを混合することにより、流動点は90℃と
高められ、60℃程度の高温下でも当該封口剤はそ
れほどの流動性を示さない。また、ポリエチレン
の添加量が６重量％と少量であり、この程度であ
ればポリブテン単独のものと封口性能は全く変ら
ず、これの塗着作業性にも何ら問題はない。添附
図に一般的な乾電池の封口構造を示している。有
底円筒形の亜鉛缶１０の内面にセパレータ１２が
密着して配置され、その内部に正極合剤１４が装
填されている。正極合剤１４の上面には鍔紙１９
が配置され、また正極合剤１４の中心には炭素棒
１８が挿入されている。亜鉛缶１０の開口部は合
成樹脂の封口ガスケツト４０で塞がれ、この封口
ガスケツト４０の中心孔を炭素棒１８が貫通して
いる。亜鉛缶１０の外周から封口ガスケツト４０
の上面にかけてが、熱収縮性の樹脂チユーブ２４
によつて被覆されている。また炭素棒１８の上端
突出部および封口ガスケツト４０の上面側に正極
端子板２６が被せられ、この正極端子板２６の上
面周辺部が絶縁ワツシヤー２８を介して外装缶３
０の上端カール部３０で押え付けられている。

この封口構造において、上述した本考案の封口
剤を次の箇所の一部または全部に塗着あるいは充
填する。

炭素棒１８と封口ガスケツト４０との接触部
Ａ、およびこの部分の上方凹部Ｂ、あるいは接触
部Ａの直下の空間Ｃ、正極端子板２６の下面と封
口ガスケツト４０との接触部Ｄあるいは隙間Ｅ、
亜鉛缶１０と封口ガスケツト４０との接触部Ｆ、
樹脂チユーブ２４と封口ガスケツト４０との接触
部Ｇ、樹脂チユーブ２４と正極端子板２６との接
触部Ｈなどが封口剤の塗着、充填箇所になる。

なお、好ましい塗着、充填個所および封口剤と
しては、上記Ａ，Ｃについてはポリブテンを主成
分とし、上記Ｄ，Ｆ，Ｇ，Ｈについてはポリイソ
ブチレンを主成分とし、残りのＢ，Ｅについては
副成分の材料、添加量によりポリブチン，ポリイ
ソブチレンのどちらかを主成分としてもよい。

《考案の効果》 以上詳細に説明したように、この考案に係る乾
電池用封口剤はポリブテンまたはポリイソブチレ
ンを主成分とし、これに結晶性ポリオレフイン系
樹脂を２重量％以上添加することで、流動点を単
独のものより上げて調剤したものであるから、ポ
リブテンまたはポリイソブチレンの優れた封口性
能を十分に生かしつつ、高温下での流動性の増加
を制御することができ、これを使用することで乾
電池の保存性能、特に高温下での保存性能が従来
より向上する。

【図面の簡単な説明】

図はこの考案の封口剤を使用する乾電池の封口
構造の一例を示す断面図である。 Ａ〜Ｈ……封口剤を塗着あるいは充填する部
分。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ポリブテンまたはポリイソブチレンまたはその
   混合物を主成分とし、これに結晶性ポリオレフイ
   ン系樹脂からなる副成分を２重量％以上添加した
   ことを特徴とする乾電池用封口剤。