JPH0356871B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は金属表面などの研削、研磨仕上げにお
いて、良好な仕上げ面を高能率で得ることがで
き、しかも長時間の使用に耐え得る耐久性をえ
た、砥剤粒子含有モノフイラメントを基体とする
工業ブラシ用毛材に関するものである。 （従来技術） 従来から工業用ブラシなどの分野において、砥
剤粒子を含有する合成樹脂を溶融紡糸して得られ
るモノフイラメントを用いることはよく知られて
おり、たとえば上記モノフイラメントを基材に植
毛して通常のブラシとして使用するか、または上
記モノフイラメントをすだれ状に垂らしてその下
に被研磨物を通過させる方法などの態様で使用さ
れている。 しかるに上記の砥剤粒子含有モノフイラメント
をそのまま基材に植毛したブラシは、モノフイラ
メント自体が細く、ブラシとしての腰に欠けるた
め、研磨性が劣り、良好な研磨面を能率的に得る
ことが困難である。これに対しモノフイラメント
の太さを増大して研磨性を高めようとすると、研
磨性こそ改善されるものの、ブラシ自体の強度が
低下し、折れ易くなつて長時間の使用に耐え得な
くなる。 このような問題を解決し、研磨性を高めること
を目的としたブラシ用毛材としては、たとえばブ
ラシ用毛材の断面を矩形にしたもの（実公昭54−
35920号公報および実公昭56−49728号公報）が挙
げられるが、このブラシ用毛材も研磨性こそ改良
されるものの、折れ易く耐久性に劣るものであ
る。またたとえば数本の細い砥剤粒子含有モノフ
イラメントを撚り合せるか、または束ねて、その
表面をマルチフイラメントなどで被覆したもの
（実公昭49−38637号公報および実公昭56−21294
号公報など）も知られているが、これらは撚り工
程や被覆工程などの加工工程が付加されることに
よつて製造コストが増大し、経済的に好ましくな
いばかりか、研削、研磨作業能率もいまだに改善
の余地がある。 （本発明が解決しようとする問題点） そこで本発明者らは、良好な研削、研磨仕上げ
面を高能率で得ることができ、しかも長時間の使
用に耐える耐久性を備えた、砥剤粒子含有モノフ
イラメントを基体とする工業ブラシ用毛材の取得
を目的として鋭意検討した結果、たとえば砥剤粒
子含有モノフイラメントの溶融紡糸工程におい
て、複数本のモノフイラメント同志を完全融着せ
しめるなどの工業的に容易かつ簡便な手段によつ
て、上記モノフイラメントに特定の異形断面構造
を付与することにより、上記目的に合致した工業
ブラシ用毛材が得られることを見出し、本発明に
到達した。 （問題点を解決するための手段） すなわち本発明は砥剤粒子含有合成樹脂モノフ
イラメントを基体とするブラシ用毛材であつて、
その断面における溝数が３〜５で、かつ平均直径
が0.4〜3.0mmの異形断面を有することを特徴とす
る工業ブラシ用毛材を提供するものである。 本発明で用いる合成樹脂とは、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど
のポリエステル、ナイロン６、ナイロン66、ナイ
ロン12などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのポリオレフイン、ポリ塩化ビニル
などのポリハロゲン化ビニルおよびポリフツ化ビ
ニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデンなどの
溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂である。 本発明で用いる砥剤粒子としては、コークス
粉、ボーキサイト、アルミナ粉などのアルミナ系
研磨剤、白けい石、鋸粉などの炭化けい素系研磨
剤、ダイヤモンド、エメリー、ざくろ石などの天
然物系研磨剤、炭化物系研磨剤、ジルコニア系研
磨剤およびガラス系研磨剤などが挙げられ、これ
らは２種以上併用することができる。これら砥剤
粒子の粒子径はJIS R6001（1956）で規程された
粒度が＃30〜1500、とくに＃60〜500の範囲が好
適であり、粒子径が＃30よりも大きいと紡糸性や
モノフイラメントの強靭性が、また＃1500よりも
小さいと研磨性がそれぞれ低下する場合がある。
これら砥剤粒子の配合量は、合成樹脂に対し３〜
70重量％、とくに10〜50重量％が好適であり、３
重量％未満では望ましい研磨効果が得られず、ま
た70重量％を越えるとモノフイラメントの強靭性
や溶融紡糸性が低下するため好ましくない。 本発明のブラシ用毛材は、上記の合成樹脂に
砥剤粒子を含有せしめ、これを溶融混合して一旦
ペレタイズするか、またはペレタイズを経ずに直
接溶融押出紡糸機に供し、異形断面紡出孔を備え
た紡糸口金から紡出せしめ、必要に応じて延伸す
る方法および通常の紡糸口金から単糸直径0.2
〜1.5mm、とくに0.3〜1.3mmの３〜５本のモノフイ
ラメントとして紡出せしめた後、冷却前のいまだ
にモノフイラメントの表面が溶融状態にある内
に、複数本の砥剤粒子含有モノフイラメント同志
を、接触させて完全融着せしめる方法などにより
得ることができる。 なかでもとくに上記法によれば、簡便で能率
よく、重心が安定した腰の強いブラシ用毛材の取
得が可能である。この法についてより具体的に
説明すれば、所望の孔数を有する紡糸口金におけ
る吐出孔の数を３〜５、吐出孔の間隔を0.2〜0.7
mmとし、かつ冷却浴中に設置する第１冷却ガイド
の位置を調整して、口金から紡出され、冷却され
る前のいまだに溶融状態にある３〜５本の砥剤粒
子含有モノフイラメント同志を接触せしめて、中
央に中空部を残さないようにモノフイラメント同
志を接合させる。ここで紡糸口金の吐出孔の間隔
が0.7mmを越えると単糸間完全融着が不十分とな
り、0.2mm未満では口金の摩耗が激しく、完全融
着せしめたモノフイラメントの断面が円形に近ず
く傾向となるため好ましくない。 次に本発明の工業用ブラシ毛材の断面構造につ
いて、図面にしたがつて説明する。第１図は従来
一般的にブラシ用毛材として用いられている砥剤
粒子含有モノフイラメント単糸の拡大断面図、第
２図は上記法により得た本発明のブラシ用毛材
の拡大断面図、第３図は上記法により、３本の
砥剤粒子含有モノフイラメント単糸を完全融着せ
しめて得た本発明のブラシ用毛材の拡大断面図で
ある。 ここで第１図に見られるように、従来の砥剤粒
子含有モノフイラメント単糸においては砥剤粒子
Ａがモノフイラメントの芯部から外周にかけて合
成樹脂層Ｂ内に均一に微細分散している。 一方第２図および第３図に示したように、本発
明のブラシ用毛材は、その断面に３〜５本の溝Ｃ
を有する砥剤粒子含有異形断面モノフイラメント
からなり、しかもＬで示される平均直径が0.4〜
3.0mmと、通常のブラシ用毛材に比較して太いこ
とを特徴としている。 すなわち本発明のブラシ用毛材は、断面に溝Ｃ
が形成されしかも中実であることに起因して、腰
が強く、ブラシとしての使用時には毛先がナイフ
エツジ状となつて極めてすぐれた研削、研磨効果
が発揮されるのである。ただし溝Ｃの数が２以下
ではブラシとしての強靭性を欠いて作業能率も劣
り、６以上ではモノフイラメントの断面が円形に
近くなり、研磨面が粗くなるばかりか、ブラシの
腰も低下するため好ましくない。また平均直径が
0.4mm未満では研削、研磨性が低下し、3.0mmを越
えると折れ易くなるため好ましくない。 上記の構成からなる本発明の工業ブラシ用毛材
には、従来の工業ブラシで常用されている各種の
処理、たとえばオイリング処理、合成樹脂被覆処
理、マルチフイラメント被覆処理、収束加工処
理、クリンプ加工処理および先球加工処理などを
必要に応じて付与してから実用に供しても差支え
ない。 そして、本発明の工業ブラシ用毛材は、これを
所望の長さに切断し、束にするか、またはブラシ
基体に植毛して、回転あるいは往復運動で駆動さ
れるブラシとするか、またはブラシ用毛材をすだ
れ状に垂らして、その下に被研磨物を通過させる
などの、ブラシとしての実用手段に供される。 （作 用） 本発明の工業ブラシ用毛材を被研磨物の表面研
磨作業の実用に供する場合には、上記したように
毛材の断面に溝Ｃが形成されしかも中実であるこ
とに起因して、毛先がナイフエツジ状となつて極
めてすぐれた研削、研磨効果が発揮されるため、
良好な仕上げ面を高能率で得ることができるばか
りか、腰が強く折れ難いため長時間の使用に耐え
得るすぐれた耐久性が期待できる。 以下実施例により本発明をさらに詳述する。 （実施例） 東レ(株)製ナイロン６チツプ（M1021）に、昭和
電工(株)製炭化けい素砥剤（＃180）を25重量％配
合した組成物を、40mmφ溶融押出機に供して溶融
し、紡糸口金から紡出せしめ、冷却、引取り、延
伸することにより直径0.5mmの断面真円状砥剤粒
子含有モノフイラメントを得た。このモノフイラ
メントを毛材No.１とする。 一方上記組成物を溶融紡糸するに際し、紡糸口
金として第２図に示した形状の異形断面紡出孔を
有する口金を用いる以外は同様にして、平均直径
1.1mmの異形断面砥剤粒子含有モノフイラメント
を製造した。このモノフイラメントを毛材No.２と
する。 さらに上記組成物を溶融紡糸するに際し、孔間
隔0.5mmで３ホールの紡糸口金を用い、口金の下
3.0cmの位置で単糸直径0.5mmの紡出単糸３本を相
互に接触せしめ、さらにノズルの下25cmでかつ第
１冷却浴の中に設置した冷却ガイドを介すること
により３本の砥剤粒子含有モノフイラメントが完
全融着したブラシ用毛材を製造した。この毛材は
平均直径1.1mmで第３図に示した断面形状を有し
ており、これを毛材No.３とする。 同様にして、孔間隔0.5mmで４ホールの紡糸口
金を用い、４本の砥剤粒子含有モノフイラメント
が完全融着した平均直径1.1mmのブラシ用毛材を
製造した。これを毛材No.４とする。 また同様にして、孔間隔0.5mmで２ホールの紡
糸口金を用い、２本の砥剤粒子含有モノフイラメ
ントが完全融着したブラシ用毛材を製造した。こ
れを毛材No.５とする。 さらにまた同様にして孔間隔0.5mmで８ホール
の紡糸口金を用い、８本の砥剤粒子含有モノフイ
ラメントが完全融着した平均直径2.0mmのブラシ
用毛材を製造した。これを毛材No.６とする。 このようにして得た各ブラシ毛材を外径30cm、
軸径20cm、幅40cmの基体に毛丈５cmで密に植毛し
て回転ブラシとなし、これをブラシ回転数1000r.
p.m、ラツプ量５mmの条件で、厚さ0.5mmのアルミ
板表面の研磨作業を行ない、表面鏡度が3Sの研
磨仕上げ面が得られるまでの作業時間を求めた結
果を表−１に示す。 また上記研磨作業を２時間連続して行なつた場
合に折損して基体から落下した毛材の本数を調べ
た結果を表−１に併せて示した。

【表】

【表】 表−１の結果から明らかなように、本発明のブ
ラシ用毛材（No.２〜４）は、すぐれた作業能率で
良好な研磨仕上げ面を得ることができ、毛材の折
損も少なく耐久性にすぐれている。 一方単糸使用（No.１）の場合には、同様の研磨
面を得るまでの作業能率が劣り、折損も多い。 また完全融着本数が２本（No.５）では作業能率
が劣り、完全融着本数が８本（No.６）では折損本
数が増大し、研磨面も粗くなるため好ましくな
い。 （発明の効果） 以上説明したように、本発明のブラシ用毛材
は、簡便かつ容易な手段で製造することができ、
良好な仕上げ面を高能率で得ることができるばか
りか、長時間の使用に耐え得る耐久性を備えてい
るため、金属、木材および石材に代表される各種
被研磨物の表面研削、研磨仕上などの種々の工業
用途に適用が期待される。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来一般的にブラシ用毛材として用い
られている砥剤粒子含有モノフイラメント単糸の
拡大断面図、第２図および第３図は本発明の工業
ブラシ用毛材の拡大断面図である。 Ａ……砥剤粒子、Ｂ……合成樹脂層、Ｃ……
溝、Ｌ……平均直径。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 砥剤粒子含有合成樹脂モノフイラメントを基
   体とするブラシ用毛材であつて、その断面におけ
   る溝数が３〜５で、かつ平均直径が0.4〜3.0mmの
   異形断面を有することを特徴とする工業ブラシ用
   毛材。