JPH0346416B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、流動層焼成炉を別に設置することな
く、サスペンシヨンプレヒータ、噴流層炉、冷却
装置からなり、種核クリンカ供給せずに、粒径の
揃つたセメントクリンカを効率よく製造すること
ができる、熱効率の優れたセメントクリンカの製
造装置に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、セメントクリンカの製造装置として、第
５図に示すように、流動焼成炉１、冷却装置２、
電気予熱器３、熱交換サイクロン４、集じん機５
を組み合わせた装置が知られている。

第５図に示す装置では、種核クリンカが必要で
あるので、セメントクリンカ粒生成の種核とし
て、細粒クリンカを種核クリンカ循環ライン６に
より循環されている。このため、種核クリンカの
循環による熱損失が大きく、また焼成クリンカの
有する顕熱を有効に回収できず、熱効率が低く、
熱消費量の節滅が望めないなどの問題点があつ
た。

上記の問題点を解決すべく、本出願人は特公昭
60−13738号公報に示すような、種核クリンカを
用いないセメントクリンカの製造装置を提案して
いる。この装置は、複数のサイクロンを組み合わ
せたサスペンシヨンプレヒータ、噴流層造粒炉、
流動層焼成炉、冷却装置などからなり、噴流層造
粒炉の下部と流動層焼成炉の上部とが排ガスダク
トで接続されたセメントクリンカの製造装置であ
る。

この装置においては、サスペンシヨンプレヒー
タからの予熱原料を、冷却装置と噴流層造粒炉と
を連絡する導管内に投入し、冷却装置から抽気し
た高温の冷却済空気と混合、熱交換せしめながら
噴流層造粒炉に搬送することを特徴としている。
このため冷却装置と噴流層造粒炉とを連絡する導
管の内壁面に原料の溶融成分が粘着、成長してコ
ーチングとなるというトラブルは発生することは
なく、かつセメントクリンカの冷却装置からの回
収熱量をきわめて有効に利用することができると
いう効果を有している。

〔発明が解決しようとする課題〕

上記の特公昭60−13738号公報に記載された装
置において、噴流層造粒炉内は約1250〜1350℃程
度の液相生成温度範囲に保持されていが、噴流層
造粒炉のバーナは造粒炉の直胴部側壁に設けられ
ており、さらに仮焼原料を含む冷却装置からの抽
気された比較的低温の燃焼空気が、噴流層造粒炉
内壁面付近を覆うように導入されているため、バ
ーナからの燃料によつて噴流層内に層周辺部との
温度差が大きい局部高温領域が形成されない。し
たがつて噴流層内の温度分布はほぼ均一となる。
噴流層内に局部高温領域が形成されず、ほぼ均一
温度であるために、セメント原料粉の一部が溶融
した液相成分の生成量が少ない。その結果、造粒
物は小粒径のものしか製造されず、しかもセメン
ト原料粉の造粒速度が遅く、さらに粒径の不揃い
のものができやすい。一方、液相成成量を増すた
めに、噴流層の層温度を上昇させれば、層温度が
均一に上昇するために、噴流層がアグロメレーシ
ヨン（粒子の集塊化）を起こし、安定した噴流層
は形成できない。

高温の造粒物粒子表面は、粘性を帯びており、
噴流層内では粒子が激しく動いているために、噴
流層壁面等に造粒物が付着しないが、噴粒層炉か
らの排出シユート内では、高温造粒物粒子が充填
層を形成するために、粒子の壁面への付着及び相
互付着が起こり、排出シユートが閉塞する。そこ
で、その対策として、噴流層炉から排出する高温
粒子を、空冷等により所定の温度まで冷却して排
出することが考えられる。流動層焼成炉を設置し
た装置においても、噴流層炉からの粒子の排出に
際しては、上述のような冷却を行う必要があり、
この冷却された造粒物を、流動層炉で焼成するの
で、造粒物を冷却した分は熱損失となる。

本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、流
動層焼成炉を設けることなく、噴流層炉のみで造
粒・焼成を行うことができ、しかも種核クリンカ
を用いないで、造粒粒径を大きい、しかもその粒
径の揃つた、セメントクリンカを効率よく、しか
も迅速かつ安定的に製造することができる、熱効
率の優れたセメントクリンカの製造装置を提供す
ることを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するために、本願の第１の発
明のセメントクリンカの製造装置は、図面を参照
して説明すれば、セメント原料粉を予熱するサス
ペンシヨンプレヒータ１１と、このサスペンシヨ
ンプレヒータに接続され、予熱セメント原料粉を
造粒・焼成する噴流層炉１０と、この噴流層炉に
接続され、造粒・焼成物を冷却する冷却装置１６
とからなり、噴流層炉１０の層内に局部高温域２
７が形成されるように、噴流層炉１０の下部に複
数本のバーナ２５を設置し、局部高温域２７のや
や上側にサスペンシヨンプレヒータ１１からの予
熱セメント原料粉を投入する予熱原料粉投入シユ
ート２８を設け、局部高温域２７の側部に造粒・
焼成物排出シユート３０を設けたことを特徴とし
ている。

また本願の第２の発明の装置は、セメント原料
粉を予熱するサスペンシヨンプレヒータ１１と、
このサスペンシヨンプレヒータに接続され、予熱
セメント原料粉を造粒・焼成する噴流層炉１０
と、この噴流層炉に接続され、造粒・焼成物を冷
却する冷却装置１６とからなり、噴流層炉１０の
層内に局部高温域２７が形成されるように、噴流
層炉１０の下部に複数本のバーナ２５を設置し、
局部高温域２７のやや上側にサスペンシヨンプレ
ヒータ１１からの予熱セメント原料粉を投入する
予熱原料粉投入シユート２８を設け、局部高温域
２７の側部に造粒・焼成物排出シユート３０を設
け、噴流層炉１０の上部に少なくともセメント原
料粉の一部を投入するセメント原料粉投入シユー
ト３１を接続したことを特徴としている。

さらに本願の第３の発明の装置は、セメント原
料粉を予熱するサスペンシヨンプレヒータ１１
と、このサスペンシヨンプレヒータに接続され、
予熱セメント原料粉を造粒・焼成する噴流層炉１
０と、この噴流層炉に接続され、造粒・焼成物を
冷却する冷却装置１６とからなり、噴流層炉１０
の層内に局部高温域２７が形成されるように、噴
流層炉１０の下部に複数本のバーナ２５を設置
し、局部高温域２７のやや上側にサスペンシヨン
プレヒータ１１からの予熱セメント原料粉を投入
する予熱原料粉投入シユート２８を設け、局部高
温域２７の側部に造粒・焼成物排出シユート３０
を設け、この造粒・焼成物排出シユート付近に冷
却空気導入管３４を接続したことを特徴としてい
る。

また本願の第３の発明において、冷却空気量
を、冷却後のセメントクリンカ温度がある一定値
以下になるよう制御するように構成する場合もあ
る。

〔作用〕

上記のように構成された装置において、噴流層
炉１０下部のスロート流速を適正に選定すれば、
噴流層炉の層温度が1300〜1400℃となり、スロー
ト部直上層内には1400〜1550℃の局部高温域２７
が形成される。この局部高温域２７に予熱された
セメント原料粉が投入され、セメント原料は種核
クリンカを供給することなく造粒（自己製造）
し、焼成される。この場合、温度が高いので、造
粒・焼成温度は速く、しかも造粒粒径が大きくか
つ粒径の揃つた造粒・焼成物（粒径２〜３mm程
度）が形成される。

〔実施例〕

以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を
詳細に説明する。ただしこの実施例に記載されて
いる構成機器の形状、その相対配置などは、とく
に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそ
れらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる
説明例にすぎない。

実施例 １ 第１図〜第３図において、セメント原料粉は噴
流層炉１０の燃焼排ガスによつてサイクロンC₁，
C₂，C₃，C₄からなるサスペンシヨンプレヒータ
１１で予熱されながら、サイクロンC₄→C₃→C₂
→C₁と順次移送され、二重フラツプダンパ１２
を経て噴流層炉１０に投入されて造粒・焼成され
る。１３はフラツプダンパ、１４は誘引フアンで
ある。

噴流層炉１０内で造粒されなかつたセメント原
料粉は、サイクロンC₁を経由して再び噴流層炉
１０内に戻される。噴流層炉１０内で滞留成長し
焼成された造粒・焼成物は、造粒・焼成物のマテ
リアルシールを用いたＬ型の気密装置１５（以
下、Ｌバルブ１５という）によつて流動層クー
ラ、充填層クーラなどの冷却装置１６に排出され
て冷却され、気密装置（シールバルブ）１７を介
して製品として取り出される。

一方、押込みフアン１８によつて冷却装置１６
に供給された冷却空気は、焼成クリンカと熱交換
し、噴流層炉１０に燃焼空気として供給される。
冷却装置１６からの余剰空気は、除塵器（図示せ
ず）を介して系外に放出される。

噴流層炉１０に導かれた燃焼空気は、噴流層炉
１０の下部のバーナの燃焼空気として使用され、
噴流層炉１０の上部から燃焼排ガスとして排出さ
れ、サスペンシヨンプレヒータ１１内でサイクロ
ンC₁→C₂→C₃→C₄と順次、流通しながらセメン
ト原料粉を予熱した後、誘引フアン１４で除塵器
（図示せず）を介して大気に排気される。２０は
噴流層炉１０の下部と冷却装置１６の上部とを接
続する排ガスダクトである。

噴流層炉１０は第２図および第３図に示すよう
に、直胴部２１およびコーン部２２からなり、上
部に排ガス出口ダクト２３が、下部に排ガスダク
トに接続されるスロート部２４を有している。ま
た炉下部のコーン部２２とスロート部２４との接
続部付近に、複数本（図面では一例として２本の
場合を示している）のバーナ２５を対向して先端
が斜め上方を向くように設け、噴流層２６内にお
いて、バーナ２５の先端の上側に噴流層周辺層温
度より100〜150℃高い局部高温域２７が形成され
るように構成している。予熱原料粉投入シユート
２８は、コーン部２２と直胴部２１との接続部の
やや上側に設けられ、また造粒・焼成物排出シユ
ート３０は、コーン部２２と直胴部２１との接続
部のやや下側に設けられている。

上記のように構成された噴流層炉１０におい
て、スロート流速を適正に選定すれば、噴流層２
６の層温度が1300〜1400℃となり、局部高温域２
７の温度は1400〜1550℃となる。この局部高温域
２７に粉状の予熱されたセメント原料を投入する
と、粉状の原料は急速に溶融し、噴流層２６内に
浮遊状態で滞留している間に自己造粒し焼成され
る。したがつて、別途、種核スリンカを噴流層２
６内に供給する必要はなく、また流動層焼成炉を
別に設置する必要もない。

セメント原料粉の造粒・焼成物は、造粒・焼成
物排出シユート３０から排出され、冷却装置１６
に供給される。

実施例 ２ 本例は実施例１の装置において、第１図に示す
ように、噴流層炉１０の上部に、少なくともセメ
ント原料粉の一部を投入するセメント原料粉投入
シユート３１を接続したものである。このセメン
ト原料粉シユート３１は、サイクロンC₂の予熱
セメント原料粉が投入されるように接続される。
したがつて、投入された原料粉により、半溶融状
態の粒子の温度を下げ、噴流層炉１０の上部にお
いて、粒子の付着を防止することができるという
利点がある。また予熱セメント原料粉が噴流層炉
１０の上部空間で脱炭酸されるため、セメント原
料粉が予熱原料投入シユート２８を介して局部高
温域２７に投入されても、局部高温域２７の温度
を高く保持できる。その結果、造粒・焼成温度は
速く、しかも造粒・焼成物としての粒径の揃つた
大きなものが得られる。

実施例 ３ 本例は実施例１の装置において、第４図に示す
ように、造粒・焼成物排出シユート３０の上部入
口付近に、一例としてジヤケツト３２を設け、こ
のジヤケツト３２内において、シユート３０に多
数の小孔３３を穿設し、このジヤケツト３２に冷
却空気導入管３４を接続して、小孔３３からシユ
ート３０内に冷却空気を供給するように構成した
ものである。冷却空気導入管３４のダンパ３５に
は、モータ３６を介して演算器３７が接続され、
この演算器３７と冷却後のセメントクリンカの温
度を検出する温度計３８とを連結して、冷却空気
により、セメントクリンカの焼成物を1350℃から
1200℃まで急冷して品質を良好に維持するととも
に、急冷後のセメントクリンカの温度が1200℃以
下になるように冷却空気量を制御する。冷却空気
導入管３４は、一例として、第１図に示すよう
に、押込みフアン１８の出口ラインから分岐して
取り出される。

〔発明の効果〕

本発明は上記のように構成されているので、つ
ぎのような効果を有している。

(1) 噴流層炉の層内に局部高温域を形成させるこ
とにより、造粒と焼成が同時に行われ、従来の
ように流動層焼成炉を別に設置する必要がなく
なるとともに、セメントクリンカ粒生成の種核
クリンカが不要となり、種核クリンカ循環によ
る熱損失がなくなる。

(2) 焼成クリンカ顕熱を有効に回収できるので、
熱効率が向上する。

(3) 焼成クリンカの粒径が、ロータリーキルン焼
成のものと比較して小さいので、仕上工程の粉
砕動力が小さくなる。

(4) 噴流層炉内の局部高温域で焼成されるので、
セメントクリンカの品質が向上する。

(5) 焼成温度1350℃から1200℃まで急冷する場合
は、品質が一層向上する。

(6) 流動層焼成炉を設置することなく、噴流層炉
の後流側が冷却装置に接続されているので、噴
流層炉からの排出の際の造流・焼成物の冷却が
熱損失となることはない。つまり、排出シユー
トは冷却装置の一部として機能することにな
る。また、流動層焼成炉を設置しない分、放熱
損失が低減される。ゆえに、熱効率が優れてお
り、さらに、流動層焼成炉を設置しない分、電
力消費量も低減することができる。

(7) セメントクリンカの品質については、比較的
低温で焼成されるセメントクリンカ品種の場
合、「流動層焼成炉を設置した装置」と比較し
ても、遜色がないことを確認されている。した
がつて、本発明の装置は、比較的低温で焼成さ
れるセメントクリンカ品種を製造する場合に、
品質の優れた製品を高い熱効率で製造すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のセメントクリンカの製造装置
の一例を示すフローシート、第２図は第１図にお
ける噴流層炉の一例を示す断面説明図、第３図は
第２図におけるＡ−Ａ線断面図、第４図は第１図
における噴流層炉の他の例を示す断面説明図、第
５図は従来のセメントクリンカの製造装置の一例
を示す説明図である。 １……流動焼成炉、２……冷却装置、３……空
気予熱器、４……熱交換サイクロン、５……集じ
ん機、６……種核クリンカ循環ライン、１０……
噴流層炉、１１……サスペンシヨンプレヒータ、
１２……二重フラツプダンパ、１３……フラツパ
ダンパ、１４……誘引フアン、１５，１７……気
密装置、１６……冷却装置、１８……押込みフア
ン、２０……排ガスダクト、２１……直胴部、２
２……コーン部、２３……排ガス出口ダクト、２
４……スロート部、２５……バーナ、２６……噴
流層、２７……局部高温域、２８……予熱原料粉
投入シユート、３０……造粒・焼成物排出シユー
ト、３１……セメント原料粉投入シユート、３２
……ジヤケツト、３３……小孔、３４……冷却空
気導入管、３５……ダンパ、３６……モータ、３
７……演算器、３８……温度計。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ セメント原料粉を予熱するサスペンシヨンプ
   レヒータ１１と、このサスペンシヨンプレヒータ
   に接続され、予熱セメント原料粉を造粒・焼成す
   る噴流層炉１０と、この噴流層炉に接続され、造
   粒・焼成物を冷却する冷却装置１６とからなり、
   噴流層炉１０の層内に局部高温域２７が形成され
   るように、噴流層炉１０の下部に複数本のバーナ
   ２５を設置し、局部高温域２７のやや上側にサス
   ペンシヨンプレヒータ１１からの予熱セメント原
   料粉を投入する予熱原料粉投入シユート２８を設
   け、局部高温域２７の側部に造粒・焼成物排出シ
   ユート３０を設けたことを特徴とするセメントク
   リンカの製造装置。 ２ セメント原料粉を予熱するサスペンシヨンプ
   レヒータ１１と、このサスペンシヨンプレヒータ
   に接続され、予熱セメント原料粉を造粒・焼成す
   る噴流層炉１０と、この噴流層炉に接続され、造
   粒・焼成物を冷却する冷却装置１６とからなり、
   噴流層炉１０の層内に局部高温域２７が形成され
   るように、噴流層炉１０の下部に複数本のバーナ
   ２５を設置し、局部高温域２７のやや上側にサス
   ペンシヨンプレヒータ１１からの予熱セメント原
   料粉を投入する予熱原料粉投入シユート２８を設
   け、局部高温域２７の側部に造粒・焼成物排出シ
   ユート３０を設け、噴流層炉１０の上部に少なく
   ともセメント原料粉の一部を投入するセメント原
   料粉投入シユート３１を接続したことを特徴とす
   るセメントクリンカの製造装置。 ３ セメント原料粉を予熱するサスペンシヨンプ
   レヒータ１１と、このサスペンシヨンプレヒータ
   に接続され、予熱セメント原料粉を造粒・焼成す
   る噴流層炉１０と、この噴流層炉に接続され、造
   粒・焼成物を冷却する冷却装置１６とからなり、
   噴流層炉１０の層内に局部高温域２７が形成され
   るように、噴流層炉１０の下部に複数本のバーナ
   ２５を設置し、局部高温域２７のやや上側にサス
   ペンシヨンプレヒータ１１からの予熱セメント原
   料粉を投入する予熱原料粉投入シユート２８を設
   け、局部高温域２７の側部に造粒・焼成物排出シ
   ユート３０を設け、この造粒・焼成物排出シユー
   ト付近に冷却空気導入管３４を接続したことを特
   徴とするセメントクリンカの製造装置。 ４ 冷却空気量を、冷却後のセメントクリンカ温
   度がある一定値以下になるよう制御するようにし
   た特許請求の範囲第３項記載のセメントクリンカ
   の製造装置。