JPH0321242Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本考案は医薬品用容器に嵌合し得るゴム栓にお
いて、ゴム栓の薬液に接する内側に注射針刺しに
適する、円形状の凹なる段差を２段に設けること
による針刺し性、針保持性及び針抜き時での液洩
れ性を改善し、さらに表面の消毒操作を容易とし
た輸液製剤用ゴム栓に関するものである。本考案
の輸液用ゴム栓は第10改正「日本薬局方」41、
「輸液用ゴムせん試験法」の試験規格を適用され
るゴム栓として用いることは勿論のこと、その外
に医療用ゴム栓で注射針刺しして用いるゴム栓に
総てに利用し得るものである。 〔従来の技術〕 医薬用ゴム栓は内容物である薬品を、製造時か
ら使用時迄の長期間、高品位のまま保持、保管す
る医薬品容器の一部である。第１０，１１図に従
来のゴム栓の一例を示す。図中Ｉはゴム栓Ａの針
入部位における厚みを示す。この容器中の薬液を
人体に投与する媒体として注射器具が使用されて
いる。 上記注射器具の注射針の種類は、 人体への注射に用いられる針（第７図、等参
照） ゴム栓へのみ刺通する針（第８，９図等参
照） 人体及びゴム栓に共用の針（第７図等参照） の３種類に大別される。 このうちのゴム栓へのみ刺通する針の特徴と
しては、輸液用であるが故に、100ml〜1000mlと
いう大容量の投与が必要な為、他の用途の注射針
に比べて太い約６mm以下針が用いられる。 又、針先部の形状には、カツト針（第７図）、
つぼみ針（第８図）等があり、材質としては金属
針と樹脂針があるが、近年は樹脂針が多用されて
いる。金属針の場合針先部は鋭利な刃物状である
為、ゴム栓の刺通時は切れ味が鋭い為、容易に刺
通（刺通抵抗が小さい）でき且つゴムをきれいに
切りながらゴム中を進行するので微少ゴム片の発
生（コアリング）はほとんど無い。 〔考案が解決しようとする問題点〕 しかしながら樹脂針の場合金属針に比して切れ
味が大変鈍くその上太い。その為刺通時での刺通
抵抗が大きくなり、且つ、ゴムを引き裂いて貫通
するので、その引裂き時に、ゴム片が発生する場
合もある。それを解決する方法として第１０、１
１図のゴム栓Ａの針入部の厚みＩを薄くして貫通
断面を少なくして刺通抵抗を小さく且つコアリン
グを防止する方法もある。医薬品用ゴム栓として
は、耐薬品性、無菌性、無溶出性等30項目にわた
る多岐な品質が要求されている。その中で針刺性
での必要条件は以下の４点となる。 (1) 耐コアリング性 (2) 刺通性 (3) 自己密封性 (4) 針保持性 耐コアリング性は前述のごとくゴム片の落下の
無いことであり、刺通性は針をゴム栓へ刺通する
ことの容易さである。自己密封性は、倒立させた
薬液容器から薬液が残存する状態で、針を抜いて
も薬液が洩れない性質をいい、針保持性は容器を
倒立状態で針を刺しその針及びそれに連結されて
いる回路が自重で脱落しない性質をいう。コアリ
ング対策として前記のごとくゴム貫通部を薄くす
ると良好であり且つ刺通性も改善される。しかし
ながらゴム貫通部を薄くすると、自己密封性及び
針保持性はかえつて悪くなるという相反する特性
がある。この相反する特性を併立させる対策とし
て、第１２図に示すようにゴム栓Ａの天面１にて
針入部のみ深い凹を設けて針入部の厚みＩは、薄
く且つその周辺は厚くする手段をとることによ
り、上記４点の特性は改善されるようになつた。
しかしながら、注射薬を実際に使用する際は、ゴ
ム栓表面をアルコール拭きで消毒するが、凹部が
深いと拭き、清浄問題がある。従つて、天面にあ
まり深く凹部を設けることは実用において好まし
くない。本考案は以上のような現状に鑑み、これ
らの問題点を解決すべく考案されたものである。
すなわち本考案は、医薬用ゴム栓として用いる注
射針が樹脂針であれ金属針等であれ、その材質、
形状にかかわらず耐コアリング性、刺通性、自己
密封性、針保持性及びゴム栓表面消毒容易性を改
善されたものを提供せんとするものである。 〔問題点を解決するための手段〕 本考案は、容器口と嵌合し得る足部を有するゴ
ム栓において、上記容器内の薬液に接する面に第
一の凹部を設け、該第一の凹部の一部に更に第二
の凹部を設け、該ゴム栓天面の上記第二の凹部に
対応する位置に針刺用印を例えばリング状に設け
てなる医薬品輸液用ゴム栓である。 医薬品輸液用ゴム栓の試験項目は約30項目があ
り、これらの全てを満足せねばならないが、これ
らの項目中、本考案は上記の構成により特に刺通
性、針保持性、耐コアリング性、自己密封性及び
ゴム栓表面の消毒操作性を改善したものである。 すなわち、本考案の医薬品輸液用ゴム栓は上記
のようにゴム栓の薬液に接する足部の内側に形成
される第一の凹部の一部にさらに第二の凹部を設
けて針入部の厚さを薄くして刺通性と耐コアリン
グ特性を改善すると共に、第一の凹部の残部の厚
みによつて針保持性と自己密封性を保持すること
ができる。したがつて、第二の凹部のように深い
凹部は天面上面には設ける必要がなくなり消毒操
作性も合わせて改善される。 以下、図面を参照して本考案を具体的に説明す
る。 第１図は本考案の実施態様を説明する図であつ
て、輸液用ゴム栓Ａを、薬液Ｆを充填した容器Ｂ
に打栓し、アルミニウムキヤツプＣを巻き締めし
た製品に、注射針Ｅを使用に当り刺す場合を示し
ている。容器口に嵌合する足部５を有するゴム栓
Ａの薬液Ｆに接する内側２は足部５で外周を囲ま
れているので凹面状（第一の凹状部）となつてお
り、ゴム栓天面１には針刺しリング印３を設け、
ゴム栓の内側で該針刺し印に対応した位置には上
記第１の凹部２に、さらなる第２の凹部４を設け
てある。針刺し印は図のように位置を示す外周を
囲む浅い突起によつてもよいし、天面をごく浅く
凹状としたものでもよい。 第２図は針刺し部分近辺の拡大図である。図中
Ｉは針入部のゴムの厚み、Ｈは針入部位置に対応
した凹部４の深さ、Ｄは同じく凹部４の直径であ
る。Ｄは好ましくは２〜６mmφ、Ｈは好ましくは
0.5〜７mmとすると、針入部のゴム厚さＩは、他
の部位の厚みには関係なく、１〜６mmの範囲の任
意の厚さに設計することが可能である。 このように設計したゴム栓においては、針入部
の厚みＩはコアリングを防止し刺通容易な程度に
充分小さいが、第１の凹部２と第２の凹部４によ
り形成される肩部（段差）の厚みがあるので、針
保持性、自己密封性は保証され、また天面の針刺
用円形凹部、また凸起にして、囲まれた部分は浅
くてもよいので、本考案の目的とする前述の５項
目につき、いずれについても矛盾なく満足し、最
適な結果を得ることができる。 第３図ないし第６図に本考案の別の実施態様を
示す。第３図及び第４図は第２の凹部４を３個設
けたものの断面図及び平面図（底面）であり、第
５図及び第６図は第２の凹部４を２個設けたその
うち１個７はエアー管８付きに構成したものの断
面図及び平面図（底面）である。 本考案のゴム栓に用いる材料は、例えばブタジ
エンゴム（BR）、イソプレンゴム（IR）、スチレ
ンブタジエンゴム（SBR）、イソブレン・イソブ
チレンゴム（IIR）、ハロゲン化ブチルゴム
（B11R、C11R）、熱可塑性エラストマーを単独又
は複合体にてさらに加硫剤、加硫促進剤、補強
剤、加工助剤、充填剤等を配合したもので、これ
をゴム配合用二本ロール等で配合し、分出し、金
型にて加圧・加熱して成形加硫する。 〔実施例〕 第３図及び第５図の構成において、凹部４の直
径Ｄ（mm）、深さ（mm）、針入部ゴム栓厚さＩ（mm）
を表に示す寸法として本考案のゴム栓を作製した
（例No.１，２）。また比較のために第１０図及び第
１１図の構成においてもＩを表に示す寸法とした
ゴム栓を作成した（例No.３〜６）。いずれのゴム
栓も組成は同一で重量％でSBR（SOLPR
ENE1204）70.5％、IR（NIPOL IR2205）14.0％、
有機過酸化物架橋剤0.7％のものにつき加硫条件、
温度165℃ 15分間で処理したものを用いた。 得られた各ゴム栓について、薬液充填容器500
mlに打栓し、アルミキヤツプを巻き締めして製品
とする。薬液の使用に際しては天面１のアルミキ
ヤツプ箔を除きアルコール清拭した後第９図に示
す形状の樹脂針又は第８図に示す形状の金属針を
刺通し、その時の抵抗力（Kg）をテンシヨン形引
張試験機にて測定した。次に、その針刺し薬液瓶
を倒立し、針の脱落変化を２時間観察して針保持
性を調べた。次に倒立のまま薬液を抜き、残在薬
液を100mlに達した時速やかに針を抜いて、この
時の液洩れを測定した（自己密封性）。又、刺通
時薬液中の微少ゴム片の発生を測定した（コアリ
ング）。以上の試験を10回行なつた結果をもまと
めて表に示す。

〔考案の効果〕

本考案の医薬品輸液用ゴム栓は次のように優れ
た効果を有する。 (1) ゴム天面部の針入位置のアルコール消毒清拭
が完全に且つ容易にできる。 (2) 針の形状及び材質に関係なく、刺通抵抗力が
小さく、コアリングがなく、自己密封性及び針
の保持性等が優れている。 従つて本考案のゴム栓はブドウ糖、生理食塩
液、注射用蒸留水特に高カロリー輸送等の医薬品
輸液用ゴム栓として用いて有利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の医薬品輸液用ゴム栓の実施態
様を説明する図、第２図は本考案のゴム栓の針入
部付近を拡大した断面図、第３図及び第４図は本
考案のゴム栓の別の実施態様で凹部を３個設けた
ものの断面図及び底面（薬液に接する側）の平面
図、第５図及び第６図は本考案の別の実施態様で
２個の凹部とエアー管付きに構成したものの断面
図及び底面の平面図、第７図〜第９図は注射針
で、カツト針、つぼみ針及び樹脂針の概念図、第
１０図及び第１１図は従来のゴム栓の例を示す断
面図、第１２図は従来のゴム栓の他の例を示す断
面図である。第１図ないし第１２図において、 １：ゴム栓天面、２：薬液側内面、３：針刺し
印、４：針刺位置に対応して設けた凹部、５：足
部、６：エアー針刺し印、７：エアー管用の凹、
８：エアー管、Ａ：ゴム栓本体、Ｂ：容器、Ｃ：
アルミキヤツプ、Ｄ：凹部４の直径、Ｅ：注射
針、Ｆ：薬液、Ｈ：凹部４の深さ、Ｉ：針入部の
ゴム厚さ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 容器口と嵌合し得る足部を有するゴム栓におい
   て、上記容器内の薬液に接する面に第一の凹部を
   設け、該第一の凹部の一部に更に第二の凹部を設
   け、該ゴム栓天面の上記第二の凹部に対応する位
   置に針刺位置を数えるための針刺用印を設けてな
   る医薬品輸液用ゴム栓。