JPH0314360Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、パツド印刷機に備えられて版面上を
摺動することにより該版面上の余分なインキを除
去するドクターブレードの支持装置に関し、該ド
クターブレードの摺動方向に対する角度を調節可
能としたものである。

（従来技術） 各種の印刷に用いられるパツド印刷機は、版面
の凹刻溝に保持されたインキをシリコーンゴム等
でなる柔軟なパツドに転写すると共に、このパツ
ドを被印刷物に押し付けることにより、上記版面
に描かれた文字や図形等でなる印刷パターンを被
印刷物に印刷するものであるが、この種のパツド
印刷機には、上記版面にインキを塗布した時に凹
刻溝からはみ出した余分なインキを除去するドク
ターブレードが備えられる。このドクターブレー
ドは、版面にインキが塗布された後に該版面上を
摺動することにより余分なインキを除去するもの
であるが、従来においては、該ブレードの摺動方
向に対する角度が直角固定されていたため、次の
ような不具合を生じることがあつた。つまり、第
６図に示すように、印版Ａの上面（版面）Ｂに設
けられて印刷パターンを構成する凹刻溝の一部に
ドクターブレードＣの摺動方向ａに直交する方向
の比較的長い直線状凹刻溝Ｄが存在する場合、ド
クターブレードＣの摺動中に該ブレードＣの刃先
がこの凹刻溝Ｄに一致することになるが、その
時、該ブレードＣは多少の可撓性を有するので、
第７図に示すように刃先C′が直線状凹刻溝Ｄ内に
突入することになる。そのため、この溝Ｄ内に保
持されていたインキＥが掻き出されて、ドクター
ブレードＣが通過した後においては、該溝Ｄ内に
おけるインキＥの液面が版面Ｂより窪んだ状態と
なる。そして、このような事態が生じると、版面
Ｂにパツドを押し付けた時に上記直線状凹刻溝Ｄ
内におけるインキＥの液面とパツドとの間に隙間
が生じて、印刷パターンにおける該溝Ｄに対応す
る部分に完全にインキが転写されていない箇所が
生じ、また上記隙間内の空気がパツドの押し付け
によつて溝Ｄ内から押し出される時に該溝Ｄ内の
インキを持ち出すため、パツドに転写されたパタ
ーンにインキが滲んだ箇所が生じるのであり、そ
の結果、印刷の仕上り状態が著しく悪化するので
ある。

この問題に対しては、上記印版Ａをドクターブ
レードＣの摺動方向ａに対して傾斜させることに
より、該ブレードＣが直線状凹刻溝Ｄに一致しな
いようにすることが考えられるが、印版Ａはイン
キの塗布や余分なインキの除去等が行われるイン
キ皿内に固定しなければならないため自由に傾け
ることができず、またインキ皿自体を傾けること
も、インキの塗布作業等に支障を来たすのであ
る。

（考案の目的） 本考案はパツド印刷機における上記のような実
情に対処するもので、版面にドクターブレードの
摺動方向に直交する比較的長い直線状凹刻溝が設
けられる場合に、印版或は該印版が設置されるイ
ンキ皿を傾斜させることなく、上記ドクターブレ
ードと直線状凹刻溝とが一致することを回避でき
るようにする。これにより、ドクターブレードが
凹刻溝内に突入してインキを掻き出すことによる
印刷の仕上り不良を防止することを目的とする。

（考案の構成） 即ち、本考案は、ドクターブレードが駆動装置
から垂下された支持軸に支持部材を介して取付け
られる構成において、上記支持部材を支持軸に結
合された上部部材と、ドクターブレード側の下部
部材とで構成すると共に、この下部部材を上部部
材に対して上下方向の軸心回りに回動可能に結合
する。

（考案の効果） このような構成によれば、下部部材を回動させ
ることにより、該部材に直接又は適宜取付部材を
介して取付けられたドクターブレードの摺動方向
に対する角度を一定の範囲内で変更、調節するこ
とが可能となり、従つて、印版の版面にドクター
ブレードの摺動方向と直交する直線状の凹刻溝が
設けられている場合に、該溝の上方をドクターブ
レードを適度な角度をもつて通過させることがで
きるようになる。これにより、ドクターブレード
が凹刻溝内に突入して該溝内のインキを掻き出す
ことによる印刷の仕上り不良が防止されることに
なる。

（実施例） 以下、図に示す本考案の実施例について説明す
る。

先ず、第１図によりパツド印刷機の全体構成を
説明すると、該印刷機１は架台２上に立設された
逆Ｌ字状のフレーム３を有し、該フレーム３内に
はその上辺部に沿つて前後方向（図面の左右方
向）に移動可能とされたスライダ４が備えられて
いると共に、該スライダ４から垂下された支持軸
５，６，７には夫々転写パツド８、ドクターブレ
ード９及びインキプレート１０が取付けられてい
る。また、上記架台２上における転写パツド８、
ドクターブレード９及びインキプレート１０の下
方位置には内部に印版１１が収納されたインキ皿
１２が設置され、更に該インキ皿１２の前方には
被印刷物Ｘの載置台１３が備えられている。ここ
で、上記スライダ４はシリンダ（図示せず）によ
つて前後動されるようになつていると共に、その
前後動により転写パツド８が実線で示す印版１１
の上方位置と鎖線で示す被印刷物Ｘの上方位置と
の間で往復動し、またドクターブレード９及びイ
ンキプレート１０が実線で示すインキ皿１２の後
部位置と鎖線で示す該インキ皿１２の前部位置と
の間で往復動するようになつている。また、上記
転写パツド８は、シリンダ（図示せず）によつて
印版１１の上方位置（後退端）と被印刷物Ｘの上
方位置（前進端）とで下動されるようになつてい
ると共に、ドクターブレード９は、カムやソレノ
イド等（図示せず）の作動によつて前進時には印
版１１の上方を通過し且つ後退時には若干量下動
して先端が印版１１の上面（版面）１１ａに摺接
するようになつている。更に、インキプレート１
０は、前進時にインキ皿１２の後部におけるイン
キ溜め部１２ａ内から該インキ皿１２の底面及び
印版１１の上面１１ａに沿つて移動するようにな
つている。そして、上記フレーム３の側面には、
転写パツド８の後退端及び前進端における下動量
を設定する調節部材１４，１５と、上記ドクター
ブレード９の後退時における印版１１との摺接範
囲を調節する調節部材１６，１７とが設けられて
おり、更に該フレーム３の側面には各種の操作部
材を配置した操作パネル１８が設けられていると
共に、上記架台２にはスライダ４の前後動用シリ
ンダ及び転写パツド８の上下動用シリンダに供給
するエアの圧力計１９が備えられている。

然して、上記ドクターブレード９は、スライダ
４から垂下された支持軸６にブレード支持装置２
０を介して取付けられており、次にこの装置２０
の構成を説明する。

第２〜５図に示すように、ブレード支持装置２
０は、上記スライダ４から垂下された３本の支持
軸６₁，６₂，６₃の下端に連結された支持ブロツ
ク２１と、該支持ブロツク２１の下部に上部が重
ね合され且つ前方からネジ部材２２が螺締される
ことによつて該支持ブロツク２１に連結された補
助ブロツク２３と、該補助ブロツク２３の下端部
に連結されたブレードブラケツト２４とを有す
る。このブレードブラケツト２４は、第５図に明
かなように、前面部２４ａと左右の側面部２４
ｂ，２４ｃとで平面形状がコ字状とされ、両側面
部２４ｂ，２４ｃ間に上記補助ブロツク２３の下
端部が係合されて横方向にピン部材２５が挿通さ
れていることにより、該ピン部材２５を中心とし
て第２図に示すｂ−ｂ方向に摺動可能とされてい
る。そして、該ブレードブラケツト２４の前面部
２４ａにはボルト２６，２６を用いてブレードホ
ルダ２７が取付けられているが、このブレードホ
ルダ２７はボルト２８，２８によつて結合された
第１ホルダ２７₁と第２ホルダ２７₂とでなり、両
ホルダ２７₁，２７₂間に上記ドクターブレード９
が挾持されている。ここで、この実施例において
は、上記ブレードブラケツト２４の一方の側面部
２４ｃに上方に突出するギヤ部２４ｄが設けられ
ていると共に、該ブラケツト２４が連結された補
助ブロツク２３の側面２３ａにはボルト２９を用
いてコ字状のラツク部材３０が取付けられてい
る。このラツク部材３０の下端面には下方に突出
する爪３０ａが設けられ、該ラツク部材３０を上
記ボルト２９によりスプリング３１に抗して補助
ブロツク２３の側面２３ａに締め付けた時に、上
記爪３０ａがブレードブラケツト２４におけるギ
ヤ部２４ｄのいずれか一つの歯底部に係合するよ
うになつている。

然して、上記３本の支持軸６₁，６₂，６₃に結
合された支持ブロツク２１は、上部部材２１₁と
下部部材２１₂とに分割されていると共に、上部
部材２１₁は、両端部がボルト３２，３２によつ
て上記３本の支持軸６₁〜６₃のうちの両側に位置
する支持軸６₁，６₂の下端部に固着され、且つ中
間に位置する支持軸６₃の下端部に設けられたオ
ネジ部６₃′が該上部部材２１₁の中央部に螺合さ
れている。そして、この上部部材２１₁に対して、
下部部材２１₂がその両端部においてボルト３３，
３３によつて固着されているが、該下部部材２１
_２におけるボルト３３，３３の挿通穴２１ａ，２
１ａはボルト３３，３３の軸径に対して十分大径
とされていると共に、該下部部材２１₂の中央部
上面と上部部材２１₁の中央部下面とには円形状
凹部２１ｂと円形状凸部２１ｃとが夫々設けら
れ、該凹部２１ｂと凸部２１ｃとが相対回転可能
に嵌合されている。ここで、上記ボルト挿通穴２
１ａ，２１ａが大径とされていることに伴つてボ
ルト３３，３３の頭部に大径のワツシヤ３４，３
４が装着されており、また下部部材２１₂の中央
部には上記円形状凹部２１ｂに続く貫通孔２１ｄ
が設けられて、上記支持軸６₃の下方への突出部
を収納するようになつている。

尚、支持ブロツク２１の上部部材２１₁が連結
された３本の支持軸６₁〜６₃のうち、両側に位置
する２本の支持軸６₁，６₂はガイド軸であつて、
第１図に示すスライダ４に対して上下動自在に嵌
挿されている。これに対して中央に位置する支持
軸６₃はカムやソレノイド等の駆動部材に連結さ
れた駆動軸であつて、この支持軸６₃を介してブ
レード支持装置２０ないしドクターブレード９が
上下動されるようになつている。ここで、上記ボ
ルト挿通穴２１ａ，２１ａは円形状凹部２１ｂと
円形状凸部２１ｃとの嵌合部を中心とする円弧状
長穴としてもよい。

次に、上記実施例の作用を説明する。

先ず、パツド印刷機１の印刷動作を説明する
と、第１図に示す状態において先ず転写パツド８
が下動して下方に位置する印版１１の上面の版面
１１ａに押し付けられることにより、該版面１１
ａに設けられた凹刻溝内のインキが転写パツド８
に転写される。次に該転写パツド８が元の位置に
上動された後、スライダ４が前進して該パツド８
が被印刷物Ｘの上方に移動されると共に、この位
置で再び下動して被印刷物Ｘに押し付けられるこ
とにより、該パツド８に転写されていたインキが
更に被印刷物Ｘに転写されることになり、これに
より印版１１の版面１１ａに上記凹刻溝によつて
描かれているパターンが被印刷物Ｘに印刷される
ことになる。一方、転写パツド８の前進時にはド
クターブレード９及びインキプレート１０もイン
キ皿１２の後部位置から前部位置に前進するが、
この時、インキプレート１０によつて該インキ皿
１２の後部のインキ溜め部１２ａ内のインキが印
版１１の版面１１ａ上に塗布される。そして、上
記転写パツド８による被印刷物Ｘへの印刷が終了
した後、スライダ４の後退に伴つて該パツド８、
ドクターブレード９及びインキプレート１０が後
退するのであるが、その途中でドクターブレード
９が若干量下動されることにより、該ブレード９
の先端が印版１１の版面１１ａに摺接される。こ
れにより、上記インキプレート１０によつて版面
１１ａに塗布されたインキのうちの凹刻溝からは
み出した余分なインキが除去されることになる。

然して、第４図に示すように版面１１ａにドク
ターブレード９の摺動方向ａに直交する直線状凹
刻溝１１ｂが存在する場合において、ドクターブ
レード９がその摺動方向ａに対して直角の方向に
固定されていると、該ブレード９が版面１１ａ上
を摺動する時に刃先部が上記直線状凹刻溝１１ｂ
内に突入することになる（第７図参照）。しかし、
該ドクターブレード９の摺動方向ａに対する角度
は、一定範囲内で任意に調節することができるの
である。つまり、該ドクターブレード９の支持装
置２０における支持ブロツク２１は上部部材２１
_１と下部部材２１₂とに分割されていると共に、両
部材２１₁，２１₂の中央部に設けられた円形状凸
部２１ｃと円形状凹部２１ｂとが相対回転可能に
嵌合されており、且つ両部材２１₁，２１₂を結合
するボルト３３，３３の挿通穴２１ａ，２１ａが
十分大径とされているから、該ボルト３３，３３
を弛めれば、上記凸部２１ｃと凹部２１ｂとの嵌
合部を中心として下部部材２１₂を回転させるこ
とができるのである。これにより、該下部部材２
１₂に補助ブロツク２３、ブレードブラケツト２
４及びホルダ２７介して結合されたドクターブレ
ード９の摺動方向ａに対する角度が任意に調節さ
れることになる。そして、この角度を例えば第４
図に示すように適度な角度αに設定して、上記ボ
ルト３３，３３を締付けることによりドクターブ
レード９を固定すれば、該ブレード９が版面１１
ａ上を摺動する時に上記直線状凹刻溝１１ｂの上
方を上記角度αで交わりながら通過することにな
る。これにより、該ブレード９の刃先が凹刻溝１
１ｂ内に突入して該溝１１ｂ内のインキを掻き出
すといつたことが防止され、これに伴つて常に良
好な印刷の仕上り状態が得られることになる。

尚、この実施例によれば、補助ブロツク２３の
側面に備えられたラツク部材３０とブレードブラ
ケツト２４に設けられたギヤ部２４ｄとの係合を
解除することによりブレードブラケツト２４をピ
ン部材２５を中心として揺動させることができ、
これによりドクターブレード９の版面１１ａに対
する摺接角度β（第２図参照）をインキの粘度等
に応じて最適の角度に調節することができるよう
になつている。そして、このドクターブレード９
の摺動角度βの調節に伴う該ブレード９の先端と
版面１１ａとの上下方向の位置関係の狂いに対し
ては、支持軸６₃の支持ブロツク２１（上部部材
２１₁）に対する螺合量を調節することによつて
該ブレード９の上下位置を調節することにより対
処できるようになつている。また、ドクターブレ
ード９又は版面１１ａが該ブレード９の幅方向に
傾斜している時は、支持ブロツク２１（下部部材
２１₂）と補助ブロツク２３とを連結しているネ
ジ部材２２を弛めて、第２ブロツク２３ないしド
クターブレード９を第３図に示すｃ−ｃ方向に揺
動させることにより調節できるようになつてい
る。

【図面の簡単な説明】

第１〜５図は本考案の実施例を示すもので、第
１図はパツド印刷機の側面図、第２図は該パツド
印刷機におけるブレード支持装置の拡大側面図、
第３図は第２図−線による同装置の縦断背面
図、第４図は第３図−線による同装置の要部
横断平面図、第５図は同装置の分解斜視図であ
る。また、第６，７図は従来の問題点を示すもの
で、第６図は印版の平面図、第７図は第６図−
線で切断した拡大断面図である。 １……パツド印刷機、６（６₁〜６₃）……支持
軸、９……ドクターブレード、１１……印版、１
１ａ……版面、２０……ブレード支持装置、２１
……支持ブロツク、２１₁……上部部材、２１₂…
…下部部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 版面上を摺動して該版面上の余分なインキを除
   去するドクターブレードが備えられたパツド印刷
   機における上記ドクターブレードの支持装置であ
   つて、該ドクターブレードが駆動装置から垂下さ
   れた支持軸に支持部材を介して取付けられている
   と共に、上記支持部材が支持軸に結合された上部
   部材と、ドクターブレード側の下部部材とで構成
   されており、且つ下部部材が上部部材に対して上
   下方向の軸心回りに回動可能に結合されて、ドク
   ターブレードの摺動方向に対する角度が調節可能
   とされていることを特徴とするパツド印刷機のブ
   レード支持装置。