JPH0310415Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 Ａ 考案の目的 (1) 産業上の利用分野 本考案は、直列もしくはＶ型多気筒内燃機関の
クランク軸支持装置に関する。

(2) 従来の技術 従来の多気筒内燃機関において、シリンダブロ
ツクの、クランクケースに一体に形成される複数
のジヤーナル壁と、それらに連結ボルトにより結
合される軸受キヤツプによつてクランク軸を回転
自在に支承し、それらの軸受キヤツプをブリツジ
部材により一体に連結してクランク軸の支持部の
剛性を高めるようにしたものは公知である（例え
ば特公昭55−26282号公報参照）。

(3) 考案が解決しようとする課題 ところが前記従来のものは、シリンダブロツ
ク、軸受キヤツプ及びブリツジ部材の三者を連結
ボルトにより共締めしているので、重量軽減を図
るべくブリツジ部材を軽合金製にした場合には、
該ブリツジ部材の剛性不足により前記連結ボルト
に十分な締付トルクを付与することが困難になつ
てクランク軸受部に所期の剛性を保有させること
ができなくなる不都合があり、そのため、軸受キ
ヤツプをその剛性アツプを図るべく例え鉄合金製
としたところで、その軸受キヤツプの軸受面とク
ランク軸外周面間のクリアランスを適正に保ち得
なくなつてクランク軸の回転摩擦抵抗の増加等を
来たす虞れがある。

また上記従来のものにおいて、シリンダブロツ
ク及びブリツジ部材が熱膨張特性の全く相違する
２つの材料、例えば鉄合金と軽合金でそれぞれ構
成される場合には、その両者のクランク軸方向の
熱膨張差に起因して、その両者及びその間を一体
に連結する各軸受キヤツプの各部に大きな熱歪や
変形が生じ、これまた軸受キヤツプの軸受面とク
ランク軸外周面間のクリアランスを狂わせる原因
となる。

本考案は、上記に鑑み提案されたものであり、
ブリツジ部材を軽合金製としても上記問題がな
く、しかも全体として軽量で且つメンテナンスの
容易な、多気筒内燃機関のクランク軸支持装置を
提供することを目的とする。

Ｂ 考案の構成 (1) 課題の解決するための手段 上記目的を達成するために本考案は、軽合金製
シリンダブロツクのクランクケースに形成される
複数のジヤーナル壁に、それと同数の鉄合金製軸
受キヤツプをそれぞれ重合すると共に第１の結合
ボルトを以てそれぞれ締着し、前記複数のジヤー
ナル壁と軸受キヤツプとでクランク軸を回転自在
に支承し、前記複数の軸受キヤツプの下面には、
軽合金より形成されてクランク軸の軸線に沿つて
延びる単一のブリツジ部材を当接させると共に、
そのブリツジ部材を、前記第１の結合ボルトから
独立した第２の結合ボルトを以て前記複数の軸受
キヤツプにのみ締着して、複数の軸受キヤツプ相
互を該ブリツジ部材を介して一体に結合し、前記
各軸受キヤツプには、該キヤツプの軸受面及び下
面間を連通させる給油路を、また前記ブリツジ部
材には、その長手方向に延びるメインギヤラリ
と、そのメインギヤラリより分岐して対応する給
油路に直接連通する複数の分岐油路とをそれぞれ
穿設し、前記第２の結合ボルトが、各軸受キヤツ
プ毎に一対宛設けられると共に、対応する前記給
油路及び分岐油路の両側に配置されることを特徴
とする。

(2) 作用 剛性の大なる鉄合金製軸受キヤツプは、それの
みがジヤーナル壁に第１の結合ボルトによる大き
な締付トルクで堅固に固着されることになり、従
来のもののように比較的剛性の低いブリツジ部材
を共締めすることによる締付トルクの低下を防止
することができるから、その締付トルク低下に起
因した、軸受キヤツプ軸受面とクランク軸外周面
間のクリアランスの狂いを未然に防止することが
できる。

また第２の結合ボルトを弛めてブリツジ部材を
軸受キヤツプより単に分離するだけで、該ブリツ
ジ部材内のメインギヤラリや分岐油路を軸受キヤ
ツプより簡単に切り離すことができるから、該ブ
リツジ部材自身が軽合金製で軽量であることと相
俟つてメインギヤラリ等のメンテナンスが頗る容
易であり、またそのようにしてブリツジ部材を軸
受キヤツプより分離した状態においても各軸受キ
ヤツプは第１の結合ボルトによりジヤーナル壁に
確実に留めることができて便利である。

また特にブリツジ部材及びシリンダブロツクを
両方とも軽合金製としたことにより、該ブリツジ
部材及びシリンダブロツク相互のクランク軸方向
の熱膨張差を少なくすることができて、その熱膨
張差に起因した、ブリツジ部材や軸受キヤツプ各
部における熱歪や変形が極力抑えられるから、そ
の熱歪等に因る上記クリアランスの狂いも効果的
に防止することができる。

更に各軸受キヤツプ毎に対をなす第２の結合ボ
ルトの締付けにより、各軸受キヤツプが対応する
ジヤーナル壁に極めて強固に固着される上、その
両結合ボルトの中間に位置する給油路及び分岐油
路間の接続部におけるシール性が高められる。

(3) 実施例 以下、図面により本考案の一実施例について説
明すると、内燃機関のシリンダブロツクＢは、ア
ルミ合金製であつて、相互にＶ字型に配置される
２つのシリンダ１₁，１₂と、それらのシリンダ１
_１，１₂の集合下部を一体に結合するクランクケー
ス２より構成される。

シリンダ１₁，１₂は、それぞれ傾斜したシリン
ダ軸線L₁−L₁，L₂−L₂を有し、それぞれ３つの
シリンダボア３₁，３₂が直列に配設され、シリン
ダ１₁，１₂壁には、シリンダボア３₁，３₂を囲繞
するように水ジヤケツト４₁，４₂が形成される。

前記クランクケース２には、クランク軸Sc方
向に沿つて相対峙する一対の左、右スカート壁５
_１，５₂が一体に垂設され、これらのスカート壁５
_１，５₂の下端には取付フランジ６₁，６₂が一体に
形成され、これらの取付フランジ６₁，６₂にオイ
ルパンPoが固着される。

またクランクケース２には、クランク軸Sc方
向に間隔をおいて四つのジヤーナル壁７…が一体
に形成される。各ジヤーナル壁７は、前記左、右
スカート壁５₁，５₂にも及んでおり、その下面中
央部にはクランク軸Scを支承するための半円状
の軸受半部８が形成される。

前記各ジヤーナル壁７の下面には、後述する軸
受キヤツプ１１を嵌合するための凹部１０が形成
され、この凹部１０の両側部内面上部にはそれぞ
れ第１嵌合雌面１２，１２が形成され、さらにそ
の内面下部には間隔をあけて第２嵌合雌面１３，
１３が形成される。そして前記第１嵌合雌面１
２，１２は前記第２嵌合雌面１３，１３よりも内
側、すなわちクランク軸Sc寄りに段差をもつて
形成される。

前記ジヤーナル壁の凹部１０には鉄合金よりな
る軸受キヤツプ１１が嵌合される。この軸受キヤ
ツプ１１は前記ジヤーナル壁７の下面に接合する
平坦な上面を有し、この上面の中央部に、前記軸
受半部８に対応する他の軸受半部９が形成され
る。また軸受キヤツプ１１の、クランク軸Sc方
向に沿う両側面の上部には、前記第１嵌合雌面１
２，１２に嵌合する第１嵌合雄面１４，１４が形
成される。そしてそれらの第１嵌合雌、雄面１
２，１４は後述するように相互に嵌合して第１嵌
合部E₁を構成する。

さらに前記両側面の下部には、前記第２嵌合雌
面１３，１３に嵌合する第２嵌合雄面１５，１５
が形成される。そしてそれらの第２嵌合雌、雄面
１３，１５は後述するように相互に嵌合して第２
嵌合部E₂を構成する。

而して前記第１嵌合雌面１２と第１嵌合雄面１
４間の嵌合代は小さく設定されて前記第１嵌合部
E₁は密嵌合であり、また前記第２嵌合雌面１３
と第２嵌合雄面１５間の嵌合代は大きく設定さ
れ、前記第２嵌合部E₂は遊嵌合である。軸受キ
ヤツプ１１は、その下面も平坦に形成され、前記
左、右スカート壁５₁，５₂の下面と面一である。

前記軸受キヤツプ１１には、その軸受半部９の
両側において、その下面よりそれぞれ第１の結合
ボルトとしての２本の主結合ボルト１６，１７お
よび１６，１７を挿通し、それらをジヤーナル壁
７に螺着することにより、軸受キヤツプ１１はジ
ヤーナル壁７に締着される。

複数の軸受キヤツプ１１…の下面には、それら
の軸受キヤツプ１１…に跨つて、アルミ合金より
継ぎ目無く一体に形成された単一のブリツジ部材
１９が位置決め固定される。すなわち前記ブリツ
ジ部材１９はクランク軸Sc方向にのびる主部分
１９₁と、この主部分１９₁よりも前記複数の軸受
キヤツプ１１に対応して一体に立設される複数の
脚部分１９₂…とより構成される。前記複数の脚
部分１９₂…の上面は、軸受キヤツプ１１の平坦
な下面に橋渡し接合される。この場合軸受キヤツ
プ１１とジヤーナル壁７の左右中央部間には、油
路を兼ねる位置決めピン１８が嵌合され、それら
の相対的位置決めが行われる。

ブリツジ部材１９の下面より、該ブリツジ部材
１９を通して第２の結合ボルトとしての左右一対
の結合ボルト２０が軸受キヤツプ１１に螺着さ
れ、これによりブリツジ部材１９は軸受キヤツプ
１１に締着される。

前記ブリツジ部材１９の主部分１９₁には、そ
の長手方向に延びオイルポンプ（図示せず）の吐
出側に連なるメインギヤラリ２１が形成されてお
り、また複数の脚部分１９₂…には、前記メイン
ギヤラリ２１から分岐した複数の分岐油路２２…
が上方に延びており、各分岐油路２２は前記位置
決めピン１８内の油路を通つて、軸受キヤツプ１
１に穿設され且つ該キヤツプ１１下面に下端が開
口する給油路２３に直接連通され、この給油路２
３の上端は前記軸受半部９の軸受面に開口してい
る。而して前記各分岐油路２２及び給油路２３
は、前記左右一対の結合ボルト２０の中間に配設
されている。

ジヤーナル壁７と軸受キヤツプ１１に形成した
軸受半部８，９…とにより複数の軸受孔２４…が
形成され、これらの軸受孔２４…に軸受メタル２
５を介してクランク軸Scのジヤーナル軸部が回
転自在に支承される。

なお、図中２６はバツフルプレートである。

次に本考案の実施例の作用について説明する。

前記シリンダブロツクＢを使用した内燃機関が
運転された際に、シリンダボア３₁，３₂内のピス
トンに作用する爆発圧力は、左、右シリンダ１₁，
１₂の傾斜したシリンダ軸線L₁−L₁，L₂−L₂に沿
つてクランク軸Scにかかり、クランク軸Scには、
上下および横方向の曲げ力、捩じり力等の外力が
作用するが、クランク軸Scの軸受部は、ジヤー
ナル壁７と、そこに高締付トルクを以て堅固に締
着される鉄合金製軸受キヤツプ１１とよりなり、
きわめて剛性が高く、クランク軸Scは常に振動、
騒音が少なく円滑、軽快に回転される。

また機関の運転によりシリンダブロツクＢ、軸
受キヤツプ１１およびブリツジ部材１９はともに
高温に加熱されて熱膨張されるが、アルミ合金製
シリンダブロツクＢに複数の鉄合金製軸受キヤツ
プ１１が個々に固着され、さらにそれらの軸受キ
ヤツプ１１はアルミ合金製ブリツジ部材１９で一
体に連結されることにより、シリンダブロツクＢ
と軸受キヤツプ１１との間に熱膨張率の比較的大
きな差異があつても軸受キヤツプ１１を一体に連
結するブリツジ部材１９はシリンダブロツクＢと
同質材料であるため、シリンダブロツクＢと軸受
キヤツプ１１間の熱膨張差による歪みはきわめて
小さく、それによるクランク軸Scの回転摩擦抵
抗の増加、軸受メタル２５の焼付、シリンダブロ
ツクＢの変形等を生じるおそれはない。

Ｃ 考案の効果 以上のように本考案によれば、軽合金製シリン
ダブロツクのクランクケースに形成される複数の
ジヤーナル壁に、それと同数の鉄合金製軸受キヤ
ツプをそれぞれ重合すると共に第１の結合ボルト
を以てそれぞれ締着し、前記複数のジヤーナル壁
と軸受キヤツプとでクランク軸を回転自在に支承
し、前記複数の軸受キヤツプの下面には、軽合金
より形成されてクランク軸の軸線に沿つて延びる
単一のブリツジ部材を当接させると共に、そのブ
リツジ部材を、前記第１の結合ボルトから独立し
た第２の結合ボルトを以て前記複数の軸受キヤツ
プにのみ締着して、複数の軸受キヤツプ相互を該
ブリツジ部材を介して一体に結合し、前記各軸受
キヤツプには、該キヤツプの軸受面及び下面間を
連通させる給油路を、また前記ブリツジ部材に
は、その長手方向に延びるメインギヤラリと、そ
のメインギヤラリより分岐して対応する給油路に
直接連通する複数の分岐油路とをそれぞれ穿設し
たので、剛性の大なる鉄合金製軸受キヤツプは、
それのみがジヤーナル壁に第１の結合ボルトによ
る大きな締付トルクで堅固に固着されることにな
り、従来のもののように比較的剛性の低いブリツ
ジ部材を共締めすることによる締付トルクの低下
を防止することができるから、その締付トルク低
下に起因した、軸受キヤツプ軸受面とクランク軸
外周面間のクリアランスの狂いを未然に防止する
ことができ、従つて、軸受キヤツプ自体を鉄合金
製としてその剛性を高め軸受孔の変形等を回避し
得るようにした効果と相俟つてクランク軸に対す
る支持が極めて的確に行われるようになり、クラ
ンク軸を常に円滑軽快に回転させることができ
る。しかも軸受キヤツプとは別体に成形したブリ
ツジ部材に上記メインギヤラリ及び分岐油路を穿
設したことにより、そのメインギヤラリ等を比較
的大型且つ構造複雑なシリンダブロツクに直接形
成する場合に比べて加工が容易であり且つスペー
ス上も有利であり、その上、第２の結合ボルトを
弛めてブリツジ部材を軸受キヤツプより単に分離
するだけで、メインギヤラリや分岐油路を軸受キ
ヤツプより簡単に切り離すことができるから、該
ブリツジ部材自身が軽合金製で軽量であることと
相俟つてメインギヤラリ等のメンテナンスが頗る
容易であり、またそのようにしてブリツジ部材を
軸受キヤツプより分離した状態においても各軸受
キヤツプは第１の結合ボルトによりジヤーナル壁
に確実に保持しておくことができるから、上記メ
ンテナンスの一層の作業能率向上を図ることがで
きる。

また特にブリツジ部材及びシリンダブロツクを
両方とも軽合金製としたことにより、機関本体全
体の大幅な重量軽減を図り得ることは勿論、該ブ
リツジ部材及びシリンダブロツク相互のクランク
軸方向の熱膨張差を少なくすることができて、そ
の熱膨張差に起因した、ブリツジ部材や軸受キヤ
ツプ各部における熱歪や変形を極力抑えることが
できるから、その熱歪等に因る上記クリアランス
の狂いも効果的に防止することができ、その結
果、クランク軸に対する支持剛性が一層強化さ
れ、クランク軸を一層スムーズに回転させること
ができる。

更に前記第２の結合ボルトは、各軸受キヤツプ
毎に一対宛設けられると共に、対応する前記給油
路及び分岐油路の両側に配置されるので、その両
第２の結合ボルトの締付けにより、各軸受キヤツ
プを対応するジヤーナル壁に極めて強固に固着す
ることができる上、その両結合ボルトの中間に位
置する前記給油路及び分岐油路間の接続部におけ
るシール性を効果的に高めることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すもので、第１図
はその縦断面図、第２図は第１図−線断面図
である。 Ｂ……シリンダブロツク、Sc……クランク軸、
２……クランクケース、７……ジヤーナル壁、１
１……軸受キヤツプ、１６，１７……第１の結合
ボルトとしての主結合ボルト、１９……ブリツジ
部材、２０……第２の結合ボルトとしての結合ボ
ルト、２１……メインギヤラリ、２２……分岐油
路、２３……給油路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 軽合金製シリンダブロツクＢのクランクケース
   ２に形成される複数のジヤーナル壁７に、それと
   同数の鉄合金製軸受キヤツプ１１をそれぞれ重合
   すると共に第１の結合ボルト１６，１７を以てそ
   れぞれ締着し、前記複数のジヤーナル壁７と軸受
   キヤツプ１１とでクランク軸Scを回転自在に支
   承し、前記複数の軸受キヤツプ１１の下面には、
   軽合金より形成されてクランク軸Scの軸線に沿
   つて延びる単一のブリツジ部材１９を当接させる
   と共に、そのブリツジ部材１９を、前記第１の結
   合ボルト１６，１７から独立した第２の結合ボル
   ト２０を以て前記複数の軸受キヤツプ１１にのみ
   締着して、その複数の軸受キヤツプ１１相互を該
   ブリツジ部材１９を介して一体に結合し、前記各
   軸受キヤツプ１１には、該キヤツプ１１の軸受面
   及び下面間を連通させる給油路２３を、また前記
   ブリツジ部材１９には、その長手方向に延びるメ
   インギヤラリ２１と、そのメインギヤラリ２１よ
   り分岐して対応する前記給油路２３に直接連通す
   る複数の分岐油路２２とをそれぞれ穿設し、前記
   第２の結合ボルト２０は、各軸受キヤツプ１１毎
   に一対宛設けられると共に、対応する前記給油路
   ２３及び分岐油路２２の両側に配置されることを
   特徴とする、多気筒内燃機関のクランク軸支持装
   置。