JPH0220416Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は直列多気筒エンジンのクランク軸の軸
受潤滑構造に関する。

〈従来の技術〉 一般に多気筒エンジンに於ては、シリンダブロ
ツクのクランクケースに一体的に形成される複数
のジヤーナル壁と、該ジヤーナル壁に結合ボルト
により結合される軸受キヤツプとによりクランク
軸を回転自在に支承している。

近年、エンジンの高速回転化、及び低燃費化が
要求されてきており、その支持剛性の低下を招く
ことなく、クランク軸を軽量化し得るように、ジ
ヤーナル壁を気筒毎に設けている。また、エンジ
ンの低燃費化のためにはエンジンの重量を低減す
ると良く、特にエンジンの重量の大きな要素であ
るシリンダブロツクの軽量化が効果的である。こ
のシリンダブロツクの軽量化のためには、ジヤー
ナル壁を極力薄くしてエンジンのクランク軸方向
寸法を短くすると良く、エンジンの小型化ともな
り得るため極めて効果的である。

しかしながら、多気筒エンジンに於けるクラン
ク軸の軸受部には、ピストンの慣性力及び爆発力
によるピストン推力が加わり、特に直列４気筒エ
ンジンに於ては、クランク軸方向中央のジヤーナ
ル壁を境に両側のピストンが互いに同位相で運動
するため、クランク軸方向中央の軸受部及びその
軸受部に多大な応力を発生させ、同部分の強度が
問題となり得る。このような多気筒エンジンに於
ては、クランク軸の軸受部の強度及び剛性を十分
高くしなければならないが、前記したように高速
回転化及び低燃費化に対応するためにシリンダ壁
を薄肉に形成する傾向が一般的になつており、ク
ランク軸の軸受部の幅も比較的小さくなり、上記
した問題が一層顕著となる。

〈考案が解決しようとする問題点〉 このような従来技術の問題点に鑑み、本考案の
主な目的は、クランク軸の各軸受部の剛性低下を
招くことなくエンジン全体としての軽量化をなし
得る多気筒エンジンのクランク軸の軸受潤滑構造
を提供することにある。

〈問題点を解決するための手段〉 このような目的は、本考案によれば、シリンダ
ブロツクのクランクケースに一体的に形成された
複数のジヤーナル壁と、クランク軸を回転自在に
支承する複数の軸受部を形成するべく前記ジヤー
ナル壁のそれぞれに結合された軸受キヤツプと、
前記軸受部に潤滑油を導く通路とを有する直列多
気筒エンジンのクランク軸の軸受潤滑構造であつ
て、前記複数の軸受キヤツプを互いに一体的に連
結するべくブリツジ部材が設けられ、該ブリツジ
部材内に、潤滑油の流通するオイルギヤラリと、
前記軸受部内面に向けて前記軸受キヤツプ内に穿
設された給油路と前記オイルギヤラリとの間を互
いに連通する分岐油路とが形成されており、更
に、クランク軸の軸線方向中央部に位置する前記
軸受部に至る前記給油路と前記分岐油路との接続
部がＯリングにてシールされ、その他の部分に位
置する前記軸受部に至る前記給油路と前記分岐油
路との接続部には中空の位置決めピンが同軸的に
介設されていることを特徴とする直列多気筒エン
ジンのクランク軸の軸受潤滑構造を提供すること
により達成される。

〈作用〉 このように、軸受キヤツプをブリツジ部材と一
体的にクランクケースのジヤーナル壁へ結合する
ことにより、互いに隣接する軸受キヤツプ同士が
一体的に連結されるので、軸受部の特にクランク
軸方向についての剛性を高めることが可能とな
る。

更に、比較的負荷の軽い軸受に於ては、ブリツ
ジ部材を軸受キヤツプへ位置決めする位置めピン
を潤滑油の通路と同軸的に設けて位置決めするこ
とにより、位置決めピン自体を細径化して同ジヤ
ーナル壁の肉厚を最小限に設定し、比較的負荷の
大きい軸受に関しては、位置決めピンを潤滑油の
通路から離して設けることにより潤滑油の通路回
りの肉厚を十分確保し得るため、負荷に応じたジ
ヤーナル壁の適正肉厚の設定が可能となる。従つ
て、クランク軸の各軸受部の剛性を好適に高める
ことが可能となる。

〈実施例〉 以下に添付の図面を参照して本考案を特定の実
施例について詳細に説明する。

第１図及び第２図に、本考案に基づく潤滑構造
が適用された直列４気筒エンジンの全体図を示
す。

シリンダブロツク１は直列に４本配置される略
同一の構造からなるシリンダ２と、該シリンダ２
の下部を一体的に結合するクランクケース３とに
より構成されている。前記シリンダ２の上端には
図示されていないシリンダヘツドが固着される。
またシリンダ２にはシリンダライナ５が内設され
ており、シリンダ２壁にはシリンダライナ５を囲
繞するようにウオータジヤケツト６が形成されて
いる。

クランクケース３には、クランク軸７の軸線方
向に所定の間隔をおいて５つのジヤーナル壁８が
一体的に垂設されている。

第２図に良く示されているように、ジヤーナル
壁８の下面は平坦に形成されており、各下面の中
央部にはクランク軸７を支承するための半円状の
軸受半部９が凹設されている。ジヤーナル壁８に
結合する軸受キヤツプ１０はジヤーナル壁８の下
面に接合する平坦な上面を有し、その上面の中央
部には前記軸受半部９に対応する軸受半部１１が
凹設されている。このようにして両軸受半部９，
１１により軸受部１２が形成され、該軸受部１２
にて軸受メタル１３を介してクランク軸７が回転
自在に支承されている。

尚、第２図に於て左側に設けられている連通管
１６は、クランクケース内のオイルレベルを検出
するオイルレベルゲージの挿入管である。

軸受キヤツプ１０の下面は平坦に形成されてお
り、これら軸受キヤツプ１０の下面が、アルミ合
金などの軽合金からなるブリツジ部材１４により
連結されている。即ち、ブリツジ部材１４の下面
より、各軸受キヤツプ毎に左右一対の結合ボルト
１５がブリツジ部材１４及び軸受キヤツプ１０を
貫通しており、この結合ボルト１５をジヤーナル
壁８に螺着することにより、ブリツジ部材１４と
軸受キヤツプ１０とが共締めによりジヤーナル壁
８に固着される。

軸受キヤツプ１０の下面に固着されたブリツジ
部材１４は、第１図に良く示されているように、
クランク軸７の軸線方向に延びる主部分１４ａと
各軸受キヤツプ１０に対応して該主部分１４ａに
一体的に立設された脚部分１４ｂとにより構成さ
れている。主部分１４ａ内にはクランク軸方向に
貫通するオイルギヤラリ２１が形成されており、
また脚部分１４ｂにはオイルギヤラリ２１から分
岐した分岐油路２２が上方に延びて穿設されてい
る。軸受キヤツプ１０の分岐油路２２と整合する
位置には給油路２３が穿設されており、該給油路
２３の上端は軸受部１２の軸受面にて開口してい
る。

更に、５つの軸受部１２のうち中央部の軸受部
１２以外の４つの軸受部１２に於ては、分岐油路
２２と給油路２３との接続部に位置決めピン３０
がそれぞれ介設されており、該位置決めピン３０
によりブリツジ部材１４を軸受キヤツプ１０に位
置決め可能としている。尚、この位置決めピン３
０は中空に形成されており、分岐油路２２と給油
路２３とを連通可能にしている。このように、結
合ボルト１５よりも小径の両油路２２，２３に位
置決めピン３０を設けるものとしたので、これら
に対応する各ジヤーナル壁８の肉厚を最小限に設
定できる。

また、中央部の軸受部１２に対応する分岐油路
２２と給油路２３との間には位置決めピンは設け
られていずにＯリング２８が介設されている。従
つて、分岐油路２２及び給油路２３の回りの肉厚
が十分確保されるため、特に応力条件の厳しい中
央部の軸受部の剛性及び強度が高められることに
なる。

尚、中央部の軸受部１２に於ける軸受キヤツプ
１０とブリツジ部材１４との位置決めには、第２
図に良く示されているように軸受キヤツプ１０と
ブリツジ部材１４との間に、一方の結合ボルト１
５の挿通孔２４に結合ボルト１５と同軸的に介設
された円筒型の位置決めピン２５と、オイルフイ
ルタ２９からクランク軸の軸受部１２の潤滑のた
めに潤滑油を流通させる潤滑油通路２６に同軸的
に介設された円筒型の位置決めピン２７が用いら
れている。

〈考案の効果〉 このように本考案によれば、各軸受部のうちの
中央部に位置する軸受に作用する荷重を受けるよ
うに軸受幅を大きくとつて剛性を確保し、かつ軸
受キヤツプとブリツジ部材との両油路の連結部を
Ｏリングにてシールすることにより同部分に充分
な肉厚を確保できる。そしてその他の部分は、結
合ボルトに比してより小径の油路部分に位置決め
ピンを設けることにより、ジヤーナル部の肉厚の
増大を最小限に抑制し得る。従つて、クランク軸
の軸受部の剛性を各軸受部ごとに好適に高めその
重量を軽減し得るため、エンジンの高速回転化及
び低燃費化を図ることが可能となる。更に、ブリ
ツジ部材と軸受キヤツプとに潤滑油の通路を設け
ることにより潤滑油の通路の加工を容易にする効
果もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に基づく潤滑油構造が適用され
た直列４気筒エンジンの要部縦断面図である。第
２図は第１図の−線について見た横断面図で
ある。 １……シリンダブロツク、２……シリンダ、３
……クランクケース、５……シリンダライナ、６
……ウオータジヤケツト、７……クランク軸、８
……ジヤーナル壁、９……軸受半部、１０……軸
受キヤツプ、１１……軸受半部、１２……軸受
部、１３……軸受メタル、１４……ブリツジ部
材、１４ａ……主部分、１４ｂ……脚部分、１５
……結合ボルト、１６……連通管、２１……オイ
ルギヤラリ、２２……分岐油路、２３……給油
路、２４……挿通孔、２５……位置決めピン、２
６……潤滑油通路、２７……位置決めピン、２８
……Ｏリング、２９……オイルフイルタ、３０…
…位置決めピン。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 シリンダブロツクのクランクケースに一体的に
   形成された複数のジヤーナル壁と、クランク軸を
   回転自在に支承する複数の軸受部を形成するべく
   前記ジヤーナル壁のそれぞれに結合された軸受キ
   ヤツプと、前記軸受部に潤滑油を導く通路とを有
   する直列多気筒エンジンのクランク軸の軸受潤滑
   構造であつて、 前記複数の軸受キヤツプを互いに一体的に連結
   するべくブリツジ部材が設けられ、該ブリツジ部
   材内に、潤滑油の流通するオイルギヤラリと、前
   記軸受部内面に向けて前記軸受キヤツプ内に穿設
   された給油路と前記オイルギヤラリとの間を互い
   に連通する分岐油路とが形成されており、更に、
   クランク軸の軸線方向中央部に位置する前記軸受
   部に至る前記給油路と前記分岐油路との接続部が
   Ｏリングにてシールされ、その他の部分に位置す
   る前記軸受部に至る前記給油路と前記分岐油路と
   の接続部には中空の位置決めピンが同軸的に介設
   されていることを特徴とする直列多気筒エンジン
   のクランク軸の軸受潤滑構造。