JPH029167B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、主として自動車のエンジンに適用さ
れる始動装置に関するものである。

［従来技術］ ガソリンエンジンは、その始動時に特に濃厚な
混合気が必要とされるから、その始動装置として
チヨーク機構を装備しているのが一般的である。
ところが、チヨーク機構は、気化器内にチヨーク
バルブを介設するとともに、このバルブを手動ま
たは自動操作で開閉させるためのリンク機構等の
機械的構成を付帯することが不可欠となる。その
ため、燃料供給系統における構造の複雑化を免れ
ず、エンジン全体としての構造の簡易化を図る上
での障害となつている。

このような不都合に対処すべく開発された始動
装置の先行技術として、先に出願した特願昭58−
237631号に示されるものがある。すなわち、この
ものは、噴射指令信号に対応する量の燃料を吸気
系に供給する燃料噴射手段と、エンジンの回転数
を検出する回転数検出手段と、この回転数検出手
段からの検出信号を入力情報として作動し前記燃
料噴射手段に向けて噴射指令信号を出力する制御
手段とを具備してなる始動装置であつて、前記制
御手段は、前記エンジン回転数に基いてエンジン
が始動前であるか始動完爆完了後であるかを判別
し、この判別されたエンジンの状態毎に前記冷却
水温に関連させて予め記憶させてある供給パター
ンで前記噴射指令信号を出力するように構成して
ある。

［発明が解決しようとする課題］ ところが、かかる先行技術のものは、エンジン
始動前と始動完爆完了後とを区別してスロツトル
バルブの閉止位置を制御するようにはなつていな
いため、きめの細かい空燃比制御が不可能であ
り、種々の運転状態を勘案すると前述した燃料噴
射量の供給パターンをリツチ目に設定しておかざ
るを得ない。そのため、空燃比が濃厚になりすぎ
る場合があり、燃料経済性が悪化するという問題
がある。

本発明は、このような問題点を解消することを
目的としている。

［課題を解決するための手段］ 本発明は、以上のような目的を達成するため
に、チヨーク機構を廃止した気化器に設けられた
前述の燃料噴射手段に加え、開閉指令信号に応じ
てスロツトルバルブの閉止位置を移動させるバル
ブ開度調整手段を設けておき、制御手段を、前記
エンジン回転数に基いてエンジンが始動前、クラ
ンキング中、または、始動完爆完了後のいずれで
あるかを判別し、この判別されたエンジンの状態
毎に、前記冷却水温に関連させて予め記憶させて
ある供給パターンにより前記噴射指令信号を出力
するとともに、前記スロツトル開度が、始動前に
は固定値にセツトされ、始動完爆完了後には水温
に応じたイニシヤルスロツトル開度にセツトされ
た後に水温に応じた目標回転数にエンジンを収束
させる位置に制御されるように前記開閉指令信号
を出力し得るように構成したことを特徴とする。

［実施例］ 以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明
する。

第１図は、本発明に係るエンジンの始動装置の
説明図である。この装置は、既存の加速燃料増量
装置と一体に構成されており、図中１は自動車用
エンジンの気化器、２はこの気化器１のスロツト
ルバルブ、３はフロート室である。また、４はチ
ヨーク機構を廃止した気化器１に設けられ噴射指
令信号ａに対応する量の燃料を吸気系５に供給す
る燃料噴射手段、６は開閉指令信号ｂに応じて前
記スロツトルバルブ２の閉止位置を移動させるバ
ルブ開度調整手段、７はエンジンの冷却水温を検
出する水温検出手段たる水温センサ、８はエンジ
ンの回転数を検出する回転数検出手段たるイグニ
ツシヨン装置、９はエンジンの電気系統を断続す
るイグニツシヨンスイツチ、１０は前記スロツト
ルバルブ２の開度を検出する開度検出器である。
また、１１は、前記水温センサ７、前記イグニツ
シヨン装置８、前記イグニツシヨンスイツチ９お
よび前記開度検出器１０からの信号ｃ，ｄ，ｅ，
ｆを入力情報として作動する制御手段たるマイク
ロコンピユータである。

詳述すれば、燃料噴射手段４は、機械的な加速
ポンプの代替要素として前記気化器１に付設した
電磁式の燃料噴射ポンプ１２を主体にして構成さ
れている。しかして、この燃料噴射ポンプ１２
は、ポンプ室１３を形成するシリンダ１４内にピ
ストン１５を収容し、このピストン１５をスプリ
ング１６の付勢力とソレノイド１７の電磁吸引力
とによつて進退させてポンプ機能を営み得るよう
になつている。また、このポンプ１２は前記ポン
プ室１３にそれぞれ連通する入口１８と出口１９
とを備えており、その入口１８を逆止弁２１を有
したインレツト通路２２を介して気化器１のフロ
ート室３に連通させるとともに、出口１９を逆止
弁２３を有したアウトレツト通路２４を介して気
化器１の吸気通路２５内に開口させている。

また、前記バルブ開度調整手段６は、DCサー
ボモータ２６により作動子２７を突没させて前記
スロツトルバルブ２の支軸２ａから突設したアー
ム２８の係止位置を移動させ得るように構成され
ている。

そして、このバルブ開度調整手段６と、前記燃
料噴射手段４とを前記マイクロコンピユータ１１
により制御するようにしている。マイクロコンピ
ユータ１１は、中央演算処理装置３１と、記憶装
置３２と、インターフエイス３３，３４とを具備
してなるもので、前記インターフエイス３３に
は、前記水温センサ７、前記イグニツシヨン装置
８、イグニツシヨンスイツチ９および開度検出器
１０から信号ｃ，ｄ，ｅ，ｆがそれぞれ入力され
るようになつている。そして、前記記憶装置３２
には、加速燃料増量用のプログラムと、始動用プ
ログラムとが内蔵させてある。

加速燃料増量用のプログラムは、次のようであ
る。すなわち、前記開度検出器１０からの検出信
号ｆを逐次読込むとともに読込んだスロツトルバ
ルブ２の位置情報を時間で２階微分してスロツト
ルバルブ２の開成方向の加速度を算出する。そし
て、その算出値を設定値と比較することによつて
前記スロツトルバルブ２が一定以上の加速度で開
成したと判定した場合に前記燃料噴射ポンプ１２
に向けて加速用燃料を吐出すべき旨の信号を出力
する。具体的には、前記燃料噴射ポンプ１２のソ
レノイド１７に所定回数のパルス電圧を印加する
ようになつている。

一方、始動用のプログラムは、第２図に概略的
に示すようなものである。すなわち、まず、ステ
ツプ101でイグニツシヨンスイツチがONになつ
た旨を確認した場合には、ステツプ102で水温セ
ンサ７からの信号ｃに基いて冷却水温を検知し、
この冷却水温に応じた燃料供給量とバルブ開度と
を記憶装置３２から引き出す。つまり、前記記憶
装置３２には、第３図に示すように、始動前に供
給すべき最適な燃料供給量（SAP回数）と冷却
水温との関係がテーブルとして格納してあり、検
出した実際の冷却水温に対応するSAP回数を選
択的に引き出すわけである。また、始動前として
最適なスロツトル開度値（例えば、６度）を前記
記憶装置３２に記憶させておき、このスロツトル
開度値をこの段階で引き出すわけである。次い
で、ステツプ103において、前記のSAP回数とス
ロツトル開度値に対応する副射指令信号ａおよび
開閉指令信号ｂを出力し、前記燃料噴射ポンプ
（SAP）およびバルブ開度調整手段（ISC）を駆
動させる。そして、ステツプ104でイグニツシヨ
ン装置８からの信号ｄ（Igパルス）がインターフ
エイス３３に入力されるまでの間待機し、Igパル
スｄが入力されたのを確認した時点で、つまり、
クランキングが開始されたと判定した時にステツ
プ105へ移行する。ステツプ105では、クランキン
グに適した燃料吐出量を前記記憶装置３２から引
き出し、その値に対応した噴射指令信号ａを前記
燃料噴射ポンプ（SAP）１２に向けて出力する。
つまり、前記記憶装置３２には、第４図に示すよ
うにクランキング時に供給すべき最適な時間当り
の燃料供給量と冷却水温との関係がテーブルとし
て格納してあり、前記ステツプ102で検出した実
際の冷却水温に対応する燃料噴射量をこの段階で
引き出すわけである。次いで、ステツプ106にお
いて、前記Igパルスｄに基いて検知されるエンジ
ン回転数が設定値Ｎよりも高いか否か、換言すれ
ば、エンジンが完爆したか否かを判定する。な
お、前記設定値Ｎは、第５図に示すように冷却水
温との関連でテーブル化され前記記憶装置３２に
格納されている。このステツプ106において、エ
ンジン回転数が設定値Ｎに達していないと判定し
た場合には、ステツプ105に戻つてクランキング
時用の燃料を噴射する。一方、エンジン回転数が
前記設定値Ｎを上まわつたと判定した場合には、
ステツプ107に移行し、エンジン始動完爆完了後
の制御を開始する。エンジン完爆後の制御は、エ
ンジン水温を検出し、その水温に応じた燃料噴射
量を記憶装置３２に格納した第６図に示すような
テーブルから読み出す。そして、その値に対応す
る噴射指令信号ａを前記燃料噴射ポンプ１２に向
けて出力する。また、同時に、前記冷却水温に対
応したスロツトルバルブ２のイニシヤル開度を記
憶装置３２に格納した第７図に示すようなテーブ
ルから引き出してスロツトルバルブ２の閉止位置
を初期設定するとともに、エンジンのアイドル回
転数が目標回転数（例えば、550×FIrpm）にな
るようにフイードバツク制御を行なう。すなわ
ち、前記記憶装置３２には、前記補正値IFと冷
却水温との関係を示す第８図に示すようなテーブ
ルが記憶させてあり、このテーブルから検出した
冷却水温に対応する補正値FIを引き出して、前
記目標回転数を決定する。そして、エンジン回転
数がこの目標回転数に収束する方向に前記バルブ
開度調整手段６のDCモータ２６を作動させて調
整する。そして、一定時間毎にエンジンの冷却水
温を検出し、その検出の度毎に前記燃料噴射量お
よび前記補正値を更新して暖機運転を行なう。

このような構成のものであれば、エンジン始動
前と、クランキング中と、始動完爆完了後とを判
別し、その判別したエンジンの状態毎に、冷却水
温に関連させて予め記憶させてある供給パターン
により噴射指令信号ａが出力される。また、始動
前とクランキング中には、エンジンの閉止位置が
所定値（例えば、６度）に調整されるとともに、
エンジンの完爆後は、アイドリング回転数が冷却
水温に関連した目標回転数（例えば、550×
FIrpm）に収束するようにスロツトルバルブ２の
閉止位置が自動調整される。

したがつて、本装置によれば、構造の複雑なチ
ヨーク機構を廃止しても、エンジンの適切な始動
および暖機を行なうことができる。しかも、この
ものは、燃料の増量制御だけでなく、スロツトル
開度をも、始動前と始動完爆完了後とに分けて各
別に制御するようにしている。そのため、予め設
定した供給パターンに基いて燃料の増量制御のみ
を行なうようにしたものに比べて、よりきめの細
かい空燃比制御を行なうことができる。したがつ
て、燃料の供給パターンをより厳密にリーン側に
設定しておくことが可能となり、燃料経済性を有
効に向上させることができる。

なお、前記実施例では、加速燃料増量システム
と組み合わせた場合について説明したが、本発明
は必ずしもこのようなものと限定されるものでは
ない。

［発明の効果］ 本発明は、補助燃料供給用の燃料噴射手段を設
け、それを指令制御手段により、始動前とクラン
キング時と、完爆後とに別けて各別に制御し得る
ようにしているので、チヨーク機構を廃止して気
化器の機械的な構造を簡素化することが可能にな
る。

しかも、本発明は、前記燃料噴射手段に加え
て、バルブ開度調整手段を設け、スロツトルバル
ブ閉止位置をエンジンの始動前と始動完爆完了後
とに分けて各別に制御するようにしているので、
チヨーク機構を廃止することをねらいとして開発
された前述の先行技術が有している問題点を解消
することができるものである。

すなわち、前述した先行技術のものは、エンジ
ンの始動前と始動完爆完了後とを区別してスロツ
トルバルブの閉止位置を制御するようにはなつて
いないため、種々の運転状態を勘案して燃料噴射
量の供給パターンをリツチ目に設定しておかざる
を得ないという不具合がある。これに対して、本
発明によれば、スロツトルバルブの閉止位置を、
エンジンの回転数及び冷却水温に関連させて移行
させることにより、きめの細かい制御を行い得る
ようになつているため、補助燃料の供給パターン
を可及的にリーン側に設定することが可能とな
り、燃料の増量値を最小限に抑えて、燃料経済性
を有効に向上させることができるという格別な効
果を得ることができる。すなわち、本発明によれ
ば、非常にきめの細かい空燃比制御を行なうこと
ができ、チヨーク機構を廃止した気化器において
も、燃料経済性を損ねることなしに、円滑なエン
ジン始動を行なわせることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示し、第１図は装置
の概略説明図、第２図はフローチヤート図、第３
図〜第８図は制御手段の記憶装置内に格納したテ
ーブルの内容を説明するための説明図である。 １……気化器、２……スロツトルバルブ、４…
…燃料噴射手段、５……吸気系、６……スロツト
ル開度調整手段、７……水温検出手段（水温セン
サー）、８……回転数検出手段（イグニツシヨ装
置）、９……イグニツシヨスイツチ、１０……開
度センサ、１１……制御手段（マイクロコンピユ
ータ）、１２……燃料噴射ポンプ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ チヨーク機構を廃止した気化器に設けられ、
   噴射指令信号に対応する量の補助燃料を吸気系に
   供給する燃料噴射手段と、開閉指令信号に応じて
   スロツトルバルブの閉止位置を移動させるバルブ
   開度調整手段と、エンジンの冷却水温を検出する
   水温検出手段と、エンジンの回転数を検出する回
   転数検出手段と、この回転数検出手段および水温
   検出手段からの信号を入力情報として作動し前記
   燃料噴射手段および前記バルブ開度調整手段に向
   けて指令信号を出力する制御手段とを具備してな
   るエンジンの始動装置であつて、前記制御手段
   は、前記エンジン回転数に基いてエンジンが始動
   前、クランキング中、または、始動完爆完了後の
   いずれであるかを判別し、この判別されたエンジ
   ンの状態毎に、前記冷却水温に関連させて予め記
   憶させてある供給パターンにより前記噴射指令信
   号を出力するとともに、前記スロツトル開度が、
   始動前には固定値にセツトされ、始動完爆完了後
   には水温に応じたイニシヤルスロツトル開度にセ
   ツトされた後に水温に応じた目標回転数にエンジ
   ンを収束させる位置に制御されるように前記開閉
   指令信号を出力するように構成してあることを特
   徴とするエンジンの始動装置。