JPH029110Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はベーン型回転圧縮機に関するものであ
り、特にロータの外周がカムリングの内周に最も
近接する位置近傍で起こるベーンの衝突音の発生
を抑止できるようにしたものである。

ベーン型回転圧縮機は一般に第１，２図に示し
たように回転軸１と、回転軸１を介して回転され
るロータ２と、ロータ２に略半径方向に出没自在
に取り付けられている多数のベーン３……３と、
ベーン３……３を取り付けたロータ２を収容して
いるカムリング４と、カムリング４を挟持して該
カムリング４の内周にポンプ室５を形成するフロ
ント側とリヤ側のサイドプレート６，７と、これ
らサイドプレート６，７乃至ロータ２を収容して
いるハウジング８を備えていて、ロータ２を回転
させると該ロータ２に取り付けられているベーン
３……３がカムリング４の内周面に押し付けられ
ながら摺動し、そのときの各ベーン３，３間の容
積変化によつて図外の作動ガスを吸入通路９を介
してポンプ室５内に導入，加圧して吐出通路１０
を介して外部に吐出させると共に前記吐出通路１
０に連なるオイル溜１１のオイルをガス吐出圧に
よつてサイドプレート７に設けたオイル通路１
３、前記回転軸１とサイドプレート７の間に取り
付けた絞りリング１４およびラジアルベアリング
１５を介してロータ２のベーン受孔２ａ……２ａ
の底部溝２ｂ……２ｂに供給し、ベーン３に所定
の背圧をかけ、該背圧でベーン３……３をカムリ
ング４の内周面に押し付けるようになつている。
１６はスラストベアリングである。

ところで上記のような構成のベーン型回転圧縮
機にあつてはガス吐出圧が低く、このため低圧の
ガス吐出圧に付勢されたオイル溜のオイルをその
ままベーン受孔の底部溝に供給して背圧を保持し
たい始動時においても否応なく前記絞りリング１
４で絞られて、背圧が低下してしまうという不具
合があつた。

そこで上記不具合を解消するため第３，４図に
示したようにガス吐出圧と吸入圧の差圧が所定値
以下の時に開き、所定値以上の時に閉じるチエツ
クバルブ１７を有するオイル供給路１２を介し
て、始動時にオイル溜１１のオイルを、直接ベー
ン受孔２ａ……２ａの底部溝２ｂ……２ｂに供給
するようにした過給型の回転圧縮機も開発される
に至つたが、従来のこの種の圧縮機はすべてのベ
ーン受孔２ａ……２ａの底部溝２ｂ……２ｂが環
状溝１２ａによつて互いに連通されていたため次
に述べるような欠点があつた。

(1) 始動時においても特に高い背圧を必要としな
い吸入部即ち、ロータ２の外周面がカムリング
４の内周面から最も離間するカムリング４の大
円弧近傍のベーン受孔にも高い背圧を掛けるこ
とになり、ベーン３……３の損耗を来す。

(2) 前記(1)項で述べたように高い背圧を掛ける必
要のないベーン受孔にも背圧を供給するため、
真に高い背圧を必要とする吐出部即ちロータ２
の外周面がカムリング４の内周面に最も接近す
るカムリング４の小円弧近傍のベーン受孔に充
分な背圧が掛る迄の時間が長くなり、その間に
騒音つまりベーン３……３とカムリング４の衝
突音が発生する。（騒音の発生する原因はロー
タ２の外周面がカムリング４の内周面に最も接
近するカムリング４の小円弧近傍でポンプ室５
の圧力が最も高く、従つて該部においてベーン
３に働く押込力が最大となり、該押込力に較べ
てベーン３に働く飛出力（背圧）が小さいとベ
ーン３の先端はカムリング４の内周面から離
れ、前記小円弧近傍を通過して押込力が減少し
たときにカムリング４の内周面に衝突するから
である。） 本考案は上記従来の欠点を解消することを目的
として為されたものであり、その要旨とする構成
は一方のサイドプレートのロータとの摺接面に、
ロータの外周面がカムリングの内周面に接近する
小円弧近傍のベーン受孔の底部にのみ連通する過
給溝を設け吸入圧と吐出圧の差圧で作動するチエ
ツクバルブを備えたオイル供給路の前記チエツク
バルブが開いているときに、前記オイル供給路を
通つて供給されるオイルを、前記過給溝を介して
該小円弧近傍のベーン受孔の底部にのみ導くよう
にすると共に、チエツクバルブが閉じたときにも
絞り部を介してオイル溜のオイルをベーン受孔の
底部に導入するオイル通路を形成したことにあ
る。

次に本考案のベーン型回転圧縮機を第５図以下
の図面に基づいて説明する。

第５〜８図は本考案の第１実施例を示す。図に
おいて１７はチエツクバルブであり、該チエツク
バルブ１７はカムリング４とサイドプレート６，
７を軸方向に貫通して吸入通路９からオイル溜１
１に至る貫通孔内にピストン１７ｂを摺動可能に
嵌挿して貫通孔内を吸入通路９側の低圧導入室１
８ａとオイル溜１１側のオイル還流路１８とに隔
成すると共に、該ピストン１７ｂをオイル溜１１
側に付勢するピストンスプリング１７ａを低圧導
入室１８ａ側に設ける一方、オイル還流路１８に
はボール弁１７ｃを配設して、これをセツトスプ
リング１７ｄで低圧導入室１８ａ側に付勢するこ
とによつて構成されている。そして圧縮機の停止
時においてはピストンスプリング１７ａのばね力
によつてピストン１７ｂとボール弁１７ｃは図中
右方に押されて移動し、また圧縮機を始動させ
て、ガス吐出圧と吸入圧の差圧が上昇すると、該
差圧によつてボール弁１７ｃとピストン１７ｂは
ピストンスプリング１７ａのばね力に抗して図中
左方に移動するようになつている。１９は前記オ
イル還流路１８から分岐されていて、回転軸１の
後部室を経て、その先端部が夫々の小円弧近傍の
ベーン受孔２ａの底部溝２ｂに開口するオイル供
給路であり、該オイル供給路１９の基端部は前記
オイル還流路１８のリヤ側サイドプレート７部分
に開口されていて、圧縮機の停止時および始動直
後はボール弁１７ｃが右方に移動しているので、
前記オイル還流路１８を介してオイル溜１１と連
通しており、始動後所定時間が経過してガス吐出
圧と吸入圧の差圧が設定値を超えた定常運転域に
なると前記差圧で図中左方に移動して来たボール
弁１７ｃによつて閉塞されてオイル溜１１との流
通を遮断されるようになつている。２０は一端が
前記オイル還流路１８のリヤ側サイドプレート７
部分に開口し、他端がリヤ側サイドプレート７と
回転軸１の摺接面に開口するオイル通路であり、
該オイル通路２０はチエツクバルブ１７の作動に
関係なく常にオイル還流路１８を介してオイル溜
１１と連通していて、ガス吐出圧により付勢され
たオイル溜１１のオイルをリヤ側サイドプレート
７と回転軸１の微少クリアランスＣで適当な値に
低させて、一部はリヤ側サイドプレート７の後部
からオイル供給路１９を通つて小円弧近傍のベー
ン受孔２ａに、他は前記小円弧近傍以外のベーン
受孔２ａ……２ａの底部溝２ｂ……２ｂに導くよ
うになつている。２１は小円弧近傍以外のベーン
受孔２ａ……２ａを連通させるためのリヤ側サイ
ドプレート７に形成された扇形の連通孔、２２は
前記連通孔２１と非連通状態にリヤ側サイドプレ
ート７に形成された過給溝であり、該過給溝２２
の直径の範囲内で前記オイル供給路１９のオイル
は小円弧近傍のベーン受孔２ａの底部溝２ｂにの
み供給されるようになつている。２３はフロント
側サイドプレート６のロータ２側々面に形成され
た環状溝であり、該環状溝２３は小円弧近傍のベ
ーン受孔２ａを、該ベーン受孔２ａに取り付けら
れているベーン３によつて他のベーン受孔２ａ…
…２ａと独立に保つべく、ベーン受孔２ａ……２
ａの底部溝２ｂ……２ｂよりもやや外周側に形成
されている。２４は一端が前記環状溝２３内に、
他端がフロント側サイドプレート６と回転軸１の
間に開口するオイル導出孔である。

次に、その作用について説明する。

(1) 圧縮機の停止時 ガス吐出圧と吸入圧は略等しいためピストンス
プリング１７ａのばね力によつてピストン１７ｂ
とボール弁１７ｃは押されて図中右方に移動し、
オイル供給路１９とオイル通路２０は開かれた状
態に維持されている。

(2) 圧縮機の始動時 圧縮機を始動してからガス吐出圧と吸入圧の差
圧が設定値を超えるまでオイル供給路１９とオイ
ル通路２０は開かれた状態に維持されているの
で、すべてのベーン受孔２ａ……２ａの底部溝２
ｂ……２ｂには前記オイル通路２０およびリヤ側
サイドプレート７と回転軸１の微少クリアランス
Ｃを介してガス吐出圧以下に圧力ダウンされたオ
イルが供給されると共に小円弧近傍のベーン受孔
２ａの底部溝２ｂにはオイル供給路１９を介して
ほぼガス吐出圧そのままのオイルが過給される。
一方、小円弧近傍のベーン受孔２ａに取り付けら
れているベーン３はカムリング４により押し下げ
られて、その下端部で前記フロント側サイドプレ
ート６に形成された環状溝２３を塞いで、小円弧
近傍のベーン受孔２ａが他のベーン受孔２ａ……
２ａと連通するのを阻止して、該小円弧近傍のベ
ーン受孔２ａに供給されたオイルが他のベーン受
孔２ａ……２ａに逃げるのを防いでいる。

(3) 圧縮機の定常運転時 圧縮機を始動してから所定時間を経過してガス
吐出圧と吸入圧の差圧が設定値を超えた定常運転
域になると前記差圧によつてボール弁１７ｃとピ
ストン１７ｂはピストンスプリング１７ａのばね
力に抗して図中左方に移動してオイル供給路１９
を閉じるので、該オイル供給路１９を介しての小
円弧近傍のベーン受孔２ａへの、ガス吐出圧と略
等しい圧力のオイルの過給は停止され、すべての
ベーン受孔２ａ……２ａにはオイル通路２０およ
びリヤ側サイドプレート７と回転軸１の微少クリ
アランスＣを介してガス吐出圧以下に圧力ダウン
されたオイルが供給されることになる。

第１０〜１３図は本考案の第２実施例を示し、
該第２実施例においては回転軸１とリヤ側サイド
プレート７の間に絞りリング１４とラジアルベア
リング１５および第２絞りリング２５を取り付
け、始動時には該第２絞りリング２５とラジアル
ベアリング１５の間に設けた通路２６および該通
路２６に連なる過給溝２７を介してオイル供給路
１９から小円弧近傍のベーン受孔２ａの底部に略
ガス吐出圧のオイルを供給すると共に、前記小円
弧近傍以外のベーン受孔２ａ……２ａの底部溝２
ｂ……２ｂには、絞りリング２５，２６とリヤ側
サイドプレート７との間隙を介してガス吐出圧以
下に圧力ダウンさせたオイルを弧状溝２９に導
き、該弧状溝２９を介して供給するようになつて
いる。一方、定常運転時には、オイル供給路１９
が閉じられるので、オイル溜１１のオイルは通路
２８からリヤ側サイドプレート７の後部に導か
れ、絞りリング１４，２５で圧力ダウンされて通
路２６に導入される。該通路２６内に導入された
オイルは、直接過給溝２７に、又は更に第２絞り
リング２５を介して弧状溝２９に、それぞれ導か
れ、各ベーン受孔２ａ……２ａに導入される。な
お他の部分は前記第１実施例と同一であるので同
一符号を付して重複する説明を省略する。

以上説明したように本考案は回転軸と、回転軸
を介して回転されるロータと、ロータに略半径方
向に出没自在に取り付けられている多数のベーン
と、ベーンを取り付けたロータを収容しているカ
ムリングと、カムリングを挟持して該カムリング
の内周にポンプ室を形成する一対のサイドプレー
トと、サイドプレート乃至ロータを収容している
ハウジングを備えていて、ロータを回転させると
該ロータに取り付けられているベーンがカムリン
グの内周面に押し付けられながら摺動し、そのと
きの各ベーン間の容積変化によつて作動ガスを吸
入通路を介してポンプ室内に導入、加圧して吐出
通路を介して外部に吐出させると共に前記吐出通
路に連なるオイル溜のオイル等を、ガス吐出圧と
吸入圧の差圧が設定値以下の時に開き、設定値以
上の時に閉じるチエツクバルブを有するオイル供
給路を介して、始動時にベーン受孔の底部に直接
供給するようになつているベーン型回転圧縮機に
おいて、前記一方のサイドプレートのロータとの
摺接面に、ロータの外周面がカムリングの内周面
に接近する小円弧近傍のベーン受孔の底部にのみ
連通する過給溝を設け、前記チエツクバルブが開
いているときに前記オイル供給路を通つて供給さ
れるオイルを、前記過給溝を介して前記小円弧近
傍のベーン受孔の底部にのみ、導くようにすると
共に、チエツクバルブが閉じたときにも絞り部を
介してオイル溜のオイルをベーン受孔の底部に導
入するオイル通路を形成したので次に述べるよう
な効果がある。

(1) 始動時において真に強い背圧を必要とする小
円弧近傍のベーン受孔にのみ強い背圧を掛け、
特に高い背圧を必要としない他のベーン受孔に
は高い背圧を掛けないので、これらベーン受孔
のベーンの不必要な損耗を防ぐことができる。

(2) 小円弧近傍のベーン受孔を他のベーン受孔と
独立させて、該小円弧近傍のベーン受孔にのみ
集中的に略ガス吐出圧のままのオイルを供給す
るようにしたので従来の如く、すべてのベーン
受孔にガス吐出圧のままのオイルを供給する場
合に較べて小円弧近傍のベーン受孔に必要な背
圧が掛かる迄の時間が短縮され、圧縮機の始動
時におけるベーンとカムリングの衝突音を減少
させることができる。

(3) 小円弧近傍以外にあるベーンのベーン受孔の
底部には絞り部を備えたオイル通路を介して吐
出圧を減圧したオイルを導入しているので圧縮
機が高出圧で作動しているときでも、ベーン背
部に過剰な押圧力を作用しないので、ベーン摩
耗を小さくすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は基本的なベーン型回転圧縮機の第２図
の−線断面図、第２図は第１図の−線断
面図、第３図は従来の過給型の回転圧縮機の縦断
面図、第４図は第３図の−線断面図、第５図
は本考案のベーン型回転圧縮機の縦断面図、第６
図はチエツクバルブの拡大断面図、第７図は第５
図の−線断面図、第８図はフロント側サイド
プレートの正面図、第９図はリヤ側サイドプレー
トの正面図、第１０図は本考案の他の実施例の縦
断面図、第１１図はリヤ側サイドプレートの正面
図、第１２図は第１１図のXII−XII線断面図、第１
３図は第１１図の−線断面図である。 １……回転軸、２……ロータ、２ａ……ベーン
受孔、３……ベーン、４……カムリング、５……
ポンプ室、６……フロント側サイドプレート、７
……リヤ側サイドプレート、８……ハウジング、
９……吸入通路、１０……吐出通路、１１……オ
イル溜、１７……チエツクバルブ、１９……オイ
ル供給路、２０……オイル通路、２２，２７……
過給溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転軸と、回転軸を介して回転されるロータ
   と、ロータに略半径方向に出没自在に取り付けら
   れている多数のベーンと、ベーンを取り付けたロ
   ータを収容しているカムリングと、カムリングを
   挟持して該カムリングの内周にポンプ室を形成す
   る一対のサイドプレートと、サイドプレート乃至
   ロータを収容しているハウジングを備えていて、
   ロータを回転させると該ロータに取り付けられて
   いるベーンがカムリングの内周面に押し付けられ
   ながら摺動し、そのときの各ベーン間の容積変化
   によつて作動ガスを吸入通路を介してポンプ室内
   に導入、加圧して吐出通路を介して外部に吐出さ
   せると共に、前記吐出通路に連なるオイル溜まり
   のオイル等を、ガス吐出圧と吸入圧の差圧が設定
   値以下の時に開き、設定値以上の時に閉じるチエ
   ツクバルブを有するオイル供給路を介して、始動
   時にベーン受孔の底部に直接供給するようになつ
   ているベーン型回転圧縮機において、前記一方の
   サイドプレートのロータとの摺接面に、ロータの
   外周面がカムリングの内周面に接近する小円弧近
   傍のベーン受孔の底部にのみ連通する過給溝を設
   け、前記チエツクバルブが開いているときに前記
   オイル供給通路を通つて供給されるオイルを、前
   記過給溝を介して前記小円弧近傍のベーン受孔の
   底部にのみ導くようにすると共に、チエツクバル
   ブが閉じたときにも絞り部を介してオイル溜のオ
   イルをベーン受孔の底部に導入するオイル通路を
   形成したことを特徴とするベーン型回転圧縮機。