JPH024829B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明はオイルリング用サイドレールに関する
ものであり、特に内燃機関に適用するのに最適な
オイルリング用サイドレールに関するものであ
る。 （従来の技術） 近年、内燃機関は益々その高性能化が要求され
高出力、高速化の一途をたどり、加えて排ガス対
策をも備えなければならず、内燃機関の馬力低下
の燃費増という問題に対する対策の必要性が増大
してきている。これらの問題に関して、内燃機関
の燃焼室の気密とピストンリングとシリンダー壁
との潤滑油を保持する圧力リングおよびオイルリ
ングは内燃機関の性能に大きな影響を与えるもの
であり、とりわけその対策が必要となつて来てい
る。 内燃機関のオイルリングは従来の鋳鉄製単体の
ものから、サイドレールとスペーサーエキスパン
ダーにより構成される組み合わせリングが現在で
は主流となつている。このオイルリングは摺動す
るピストンリングとシリンダー壁との潤滑油量を
適度に調整して余分な潤滑油を燃焼室に送り込ま
ないようにかき落とす働きをし、内燃機関の高性
能化と共に排ガス対策上でも重要な役割を果たし
ている。 従来オイルリング用のサイドレールには炭素鋼
が用いられていたが高温での強度が小さいため薄
幅化に制約をうける。また耐熱ヘタリ性、耐摩耗
性が不足するため、潤滑油のシーリング性が劣
り、排ガス対策上理想的なオイルコントロールが
できないという問題があつた。 （発明が解決しようとする問題点） 本発明はこれらの問題に鑑みてなされたもので
あり、従来のオイルリング材よりも高温度での強
度、耐熱ヘタリ性および耐摩耗性に優れており、
サイドレールの薄幅化が可能となり良好なシーリ
ング性を維持しながら内燃機関の高出力、高速化
と合わせて排ガス対策を達成できるオイルリング
用サイドレールを提供することを目的とする。 （問題点を解決するための手段） すなわち本発明は合金組成として重量％でC0.4
〜0.7％、Si0.3〜1.0％、Mn0.5〜1.0％、Cr2.0〜
9.0％を含み、残部Feおよび不純物よりなるマル
テンサイト系ステンレス鋼からなり、焼入れ焼戻
し硬さをHRC40〜50にしたサイドレールの少な
くともシリンダー壁と摺動する摺動面にはCrメ
ツキ、窒化等の表面処理層を形成しめ耐摩耗性及
び耐焼付性に優れたオイルリング用サイドレール
である。 （作 用） 以下本発明に係るオイルリングについて述べ
る。 ピストンリングを組み込んだ内燃機関の一部断
面図を第２図に、組み合わせオイルリングの斜視
図を第１図に示す。１はシリンダー、２はピスト
ン、３，４は圧力リング、５はオイルリング、
６，７はサイドレール、８はスペーサーエキスパ
ンダーである。第３図にサイドレールの斜視図
を、また第４図にサイドレールの部分断面図を示
す。９は合口すきま、１０は外周面、１１は外周
面の表面処理層である。 本発明のオイルリング用サイドレール６，７は
後述する成分を有する合成組成のマルテンサイト
系ステンレス鋼であり、サイドレールの表面のう
ち少なくともシリンダー壁と摺動するサイドレー
ルの摺動面である外周面１０に表面処理層１１を
有するものである。 以下本発明オイルリング用サイドレール材の組
成限定理由を述べる。 Ｃ（炭素）は、必要な強度、硬さ、耐摩耗性を
得るために必要な元素である。サイドレールのよ
うに薄巾を呈する製品に、窒化処理等の処理を施
すと、薄巾のため深部まで処理が施されることと
なり脆化を招くことがあり、耐折損性を低下させ
るが、サイドレールとして必要な強度、硬さ、耐
摩耗性を与えて耐折損性を向上させるために炭素
は0.4重量％以上必要である。 一方、炭素が0.7重量％より多くなるとサイド
レールを作るための線材の加工性を害するために
炭素は0.4〜0.7％に設定した。 Si（シリコン）は原材料から、不可避的に含ま
れるものであるが、耐酸化性、熱ヘタリ性の点か
ら0.3重量％以上は必要である。一方、1.0重量％
を越えると材料の加工性を害するため、シリコン
は、0.3〜1.0％に設定した。 Mn（マンガン）は、製鋼時の脱炭剤としても
添加され、強度、硬さの特性向上に有効な元素で
あるが、0.5重量％より少ないと効果がなく、1.0
％より多くなると熱間加工性を害するため、0.5
〜1.0％とした。 Cr（クロム）は炭素と結合して炭化物を形成し
耐摩耗性、耐焼付性の向上に寄与するものである
が、2.0重量％より少ないと効果がない。 一方、9.0重量％より多くなると焼入硬さがで
にくくなり、また靭性も低下するため、クロムは
2.0〜9.0％に設定した。 また、焼入れ焼戻し硬さをHRC40〜50に設定
した理由はHRC40より小さいと目的とする耐摩
耗性が得られないためであり、HRC50以下とす
ることは相手材の摩耗を防止し優れた相対的摺動
を行なわせるためである。 なお本発明では前述した所定量のＣ、Crを含
有させ1000〜1100℃に加熱後、急冷焼入れし550
〜650℃で焼戻しすることにより、面積率で３〜
８％の残留炭化物を確保し、さらに微細な炭化物
を析出させ、硬さをHRC40〜50とすると同時に
耐摩耗性および耐焼付性を必要とするサイドレー
ルの部分、すなわちシリンダー壁と摺動するサイ
ドレールの摺動面には少なくとも硬質でかつ耐焼
付性の良好な表面処理層１１を設けるものであ
る。しかして表面処理としては硬質Crメツキ、
特殊合金の溶射および窒化のほか各種表面処理を
適宜適用することができる。 特に表面処理層を窒化層とした場合、シリンダ
ー壁と摺動するサイドレールの摺動面はカタサが
HV800以上と高くかつ摩擦係数が小さく耐摩耗
性、耐焼付性、耐食性に優れているので、サイド
レールの摺動面としては良好な気密性を発揮す
る。さらに前述した如くサイドレール自体がもつ
優れた耐熱ヘタリ性、高温引張強さ等の特性と相
俟つて作用するため、本発明のサイドレールはサ
イドレールとして優れた機能を発揮するものであ
る。またサイドレール外周面のうち少なくともシ
リンダー壁と摺動する摺動面は表面処理層を有し
ていることが必要であり、従つて外周面と同時に
サイドレールの上下面に表面処理層を設けてもよ
いことは勿論である。 （実施例） 次に本発明の効果を実施例により説明する。 第１表に本発明サイドレールと従来性サイドレ
ールの化学組成を示す。

〔供試機関〕

エンジン：ガソリン機関 型式：水冷４サイクル 内径×行程：85mmφ×1770mm 最高出力：105PS／5400r.p.m 最高トルク：16.5g−ｍ／3600r.p.m 〔運転条件〕 Full／5700r.p.m 200時間連続運転 〔燃 料〕 有鉛ガソリン（3.2gr／usgal） この結果は第５図に示す如くであり、サイドレ
ール内周面のスペーサーエキスパンダとの接触個
所の摩耗及びサイドレール上下面の摩耗は従来の
サイドレールに比し極めて優れた耐摩耗性を発揮
することが確認された。 また、スペーサーエキスパンダの突起部分の摩
耗も本発明のサイドレールと組み合わせたスペー
サーエキスパンダの方が従来のサイドレールと組
み合わせたスペーサーエキスパンダに比し、半分
以下の摩耗量を示し相手材に対しても好ましい性
能を発揮することも合わせて確認された。 （発明の効果） 以上述べた如く本発明のサイドレールは耐熱ヘ
タル性および上下面の耐摩耗性に優れ、サイドレ
ールとしての気密性、耐焼付性、耐折損性等に優
れると同時にサイドレールの軸方向の巾寸法を小
さくでき、シリンダー壁での接触面積を少なくし
摩擦損失を軽減でき内燃機関の効率向上と共に排
ガス対策効果をも可能とするものである。

【図面の簡単な説明】

第１図はサイドレールとスペーサーの組み合わ
せよりなるオイルリングの一部斜視図、第２図は
ピストンリングを組み込んだ内燃機関の一部断面
図、第３図は本発明サイドレールの斜視図、第４
図はサイドレールの部分断面図、第５図は試験結
果を示すグラフである。 符号の説明 １：シリンダー、２：ピストン、
３，４：圧力リング、５：オイルリング、６，
７：サイドレール、８：スペーサーエキスパンダ
ー、９：合口すきま、１０：外周面、１１：表面
処理層。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 重量％でC0.4〜0.7％、Si0.3〜1.0％、Mn0.5
   〜1.0％、Cr2.0〜9.0％、残部Feおよび不純物か
   らなるマルテンサイト系ステンレス鋼からなり、
   焼入れ焼戻し硬さをHRC40〜50にしたサイドレ
   ールの少なくともシリンダー壁と摺動する摺動面
   には表面処理層を形成しめ耐摩耗性および耐焼付
   性に優れたオイルリング用サイドレール。