JPH0245068Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、進行方向に対してエンジンのクラン
ク軸を横向きに振つた前輪駆動形式の車両におい
て、エンジンから左右の操舵車輪にそれぞれドラ
イブシヤフトを介して動力伝達を行う操舵車輪の
動力伝達機構に関する。

一般に、車体の前端部にエンジンを搭載した前
輪駆動形式の車両では、エンジンルームのスペー
ス等によるレイアウト上の問題からクランク軸を
車両の進行方向に対して横向きに振つた横置き形
式のものが多く採用されてている。

このような横置き形式のエンジンを搭載した車
両の動力伝達機構の一例を表す第１図に示すよう
に、横置きエンジン１の図示しない駆動軸に接続
するデイフアレンシヤルギヤ（以下、デフと呼称
する）２には、それぞれ左右の操舵車輪３，３ａ
がドライブシヤフト４，４ａを介して連結されて
いる。これらドライブシヤフト４，４ａとデフ２
及び操舵車輪３，３ａとの連結箇所には、等速ジ
ヨイント５，５ａ，５ｂ，５ｃがそれぞれ介装さ
れており、従来ではこれら等速ジヨイント５，５
ａ，５ｂ，５ｃがすべて同一形式のものか、若し
くは操舵車輪３，３ａ側とデブ２側とで相互に異
なる二種類の形式のものを用いていた。

ところで、横置き形式のエンジンを搭載した車
両の場合、第１図からも明らかなように、デフ２
の位置が車体の中心から左右何れかに偏つている
ため、２本のドライブシヤフト４，４ａは、それ
ぞれ長さの異なつたものとなつている。これに伴
つて、デフ２の出力軸及び操舵車輪３，３ａの車
軸と左右のドライブシヤフト４，４ａとのなす角
（以下、これを折角と呼称する）も当然相違する。
又、ドライブシヤフト４，４ａの長さが異なつて
いるため、これらの固有振動数も別々な値とな
り、例えば長い方のドライブシヤフト４ａの固有
振動数が数千ヘルツ程度と比較的低く、通常運転
域におけるエンジンの回転数によつては、共振す
る場合がある。しかも、エンジン直下に配置され
る等速ジヨイント５ａは、他の等速ジヨイント
５，５ｂ，５ｃと比較すると、エンジンからの熱
的影響を非常に大きく受けることが予想される。

このようなことから、デフ２の出力軸及び操舵
車輪３ａと長い方のドライブシヤフト４ａとを連
結する等速ジヨイント５，５ａと、デフ２の出力
軸及び操舵車輪３と短い方のドライブシヤフト４
とを連結する等速ジヨイント５ｂ，５ｃとでは、
車両の走行中における振動や熱的影響等が多少な
りとも異なつて来る。

従来では、等速ジヨイント５，５ａ，５ｂ，５
ｃに対してそれぞれ異なる振動や熱的影響等が作
用することについてほとんど考慮せず、経験的に
これらの選択を行つていたため、一方側にのみ比
較的大きな振動騒音が発生したり、或いは摩擦熱
の発生による潤滑油不足が原因と思われる摩耗が
著しく発生したりする結果を生じていた。

そこで、本考案は上述したような不具合を解消
し、すべての等速ジヨイントに対してそれぞれ異
なる振動や熱的影響等の条件に充分対応でき、一
様な長寿命化と騒音低減等が図れる操舵車輪の動
力伝達機構を提供することを目的とする。

かかる目的を達成する本考案の操舵車輪の動力
伝達機構は、デイフアレンシヤルギヤの第一出力
軸から左右何れか一方の操舵車輪に短いドライブ
シヤフトを介して連結されると共に前記デイフア
レンシヤルギヤの第二出力軸から左右何れか他方
の操舵車輪に長いドライブシヤフトを介して連結
される操舵車輪の動力伝達機構において、前記一
方の操舵車輪と前記短いドライブシヤフトとの間
及び前記他方の操舵車輪と前記長いドライブシヤ
フトとの間に固定型等速ボールジヨイントをそれ
ぞれ設け、前記第一出力軸と前記短いドライブシ
ヤフトとの間にボールを介して前記第一出力軸に
沿つて相互に摺動自在なスライド型等速ボールジ
ヨイントを設け、更に前記第二出力軸と前記長い
ドライブシヤフトとの間に環状の転動体を介して
第二出力軸に沿つて相互に摺動自在なスライド型
等速ローラジヨイントを設けたことを特徴とする
ものである。

以下、本考案による操舵車輪の動力伝達機機構
を車体の前端部にエンジンを搭載した前輪駆動形
式の車両に適用した一実施例について、図面を基
に詳細に説明する。

第１図に示した短いドライブシヤフト４及び長
いドライブシヤフト４ａと操舵車輪３，３ａとを
接続する等速ジヨイントとしては、ハンドル操作
による大きな折角に対応できる固定型のものが適
している。そこで、これらドライブシヤフト４，
４ａと操舵車輪３，３ａとの間には、ツエツパ型
継手と同様の機能を有するバーフイールド・ベル
型継手（固定型ボールジヨイント）５，５ｃが本
実施例では取り付けられている。第２図及び第３
図に示すように、このバーフイールド・ベル型継
手５，５ｃはボールを介して相対的に折れ曲がり
自在となるものであり、最大折角を非常に大きく
取ることのできる等速ジヨイントである。従つ
て、車体の前端部にエンジンを搭載した前輪駆動
形式の車両におけるドライブシヤフトと操舵車輪
とを接続する等速ジヨイントとしてバーフイール
ド・ベル型継手５，５ｃを適用した場合、ハンド
ル操作にも何ら支障なく対応できる利点がある。

このように、本実施例ではドライブシヤフト
４，４ａと操舵車輪３，３ａとの間にバーフイー
ルド・ベル型継手５，５ｃを採用したが、ツエツ
パ型継手を用いても同様な効果を得ることができ
る。

一方、デフ２とドライブシヤフト４，４ａとを
接続する等速ジヨイントとしては、バーフイール
ド・ベル型継手５，５ｃでは捕えない機能を有す
る等速ジヨイント、つまり車両の走行中における
これらデフ２とドライブシヤフト４，４ａとの相
対的な接近離反移動を吸収する機能を有するもの
が必要である。

そこで、第２図に示す折角の大きい短い方のド
ライブシヤフト４とデフ２との間には、上記条件
を満たすと共に比較的大きな折角に対しても寿命
の低下が少ないバーフイールド・ダブルオフセツ
ト型継手（スライド型等速ボールジヨイント）５
ｂが本実施例では取り付けられている。このバー
フイールド・ダブルオフセツト型継手５ｂの断面
構造を表す第４図に示すように、ドライブシヤフ
ト４に連結される内輪６とデフ２の出力軸（第１
出力軸）７と一体化される外輪８との間には、ケ
ージ９によつて保持されたボール１０が介装され
ており、外輪８の内周のボール１０が摺接する部
分には、出力軸７と平行な案内溝１１が形成され
ている。従つて、外輪８と内輪６とはボール１０
を介して図中、左右に摺動自在自在且つ折れ曲が
り自在となつている。

又、折角が比較的小さい長い方のドライブシヤ
フト４ａとデフ２とを接続する等速ジヨイントと
しては、エンジンと共振し易いこの長いドライブ
シヤフト４ａに対して共振しにくく、しかもエン
ジンの直下に位置することから自己発熱の少ない
耐熱性に優れたものが適しており、そこで本実施
例ではトリポージヨイント（スライド型等速ロー
ラジヨイント）５ａがドライブシヤフト４ａとデ
フ２との間に取り付けられている。このトリポー
ジヨイント５ａの断面構造を表す第５図に示すよ
うに、ドライブシヤフト４ａに連結される内輪１
２から等間隔で放射状に突設された三つの円柱状
の支持突起１３には、多数の針状ローラ１４を介
して環状の転動体１５が回転自在に取り付けられ
ており、更にデフ２の出力軸（第２出力軸）７ａ
に接続する外輪１６には、前記転動体１５をドラ
イブシヤフト４ａと共にデフ２の出力軸７ａに沿
つて図中、左右方向に転動させるための案内溝１
１ａが形成されている。

従つて、エンジンと共振し易い長い方のドライ
ブシヤフト４ａの振動は、このドライブシヤフト
４ａの共振周波数と合致しない低い固有振動数の
トリポードジヨイント５ａの使用によつて妨げら
れる。又、トリポージヨイント５ａにはエンジン
からの熱が大きく作用するが、このトリポージヨ
イント５ａは自己発熱が元々少ないことから、耐
熱性や耐久性に関しては何ら問題とはならず、潤
滑油切れ等の不具合を招くような虞はない。一
方、短い方のドライブシヤフト４とデフ２の出力
軸とを、バーフイールド・ダブルオフセツト型継
手５ｂを介して連結したことにより、比較的大き
な折角に対しても支障なく軸方向の相対移動を吸
収でき、それぞれの継手に無理が生じない。又、
ドライブシヤフト４，４ａと操舵車輪３，３ａと
の間に設けられたバーフイールド・ベル型継手
５，５ｃは、大きな最大折角を有するため、ハン
ドル操作に充分追従できる。

以上、詳細に説明したように、本考案の操舵車
輪の動力伝達機構によると、エンジンのデイフア
レンシヤルギヤ及び操舵車輪と、短いドライブシ
ヤフト及び長いドライブシヤフトとの四つの連結
箇所に、それぞれ振動や熱的影響等の異なる条件
に対応した三つの相互に異なる形式の等速ジヨイ
ントを選択的に取り付けたので、全体的に等速ジ
ヨイントの寿命を延ばすことができ、しかも振動
が生じ易い箇所からの振動騒音を防ぐことができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は横置き形式のエンジンを搭載した車両
における動力伝達機構の概念図である。又、第２
図〜第５図は本考案を車体の前端部にエンジンを
搭載した前輪駆動形式の車両に適用した一実施例
にかかり、第２図は短い方のドライブシヤフトに
取り付けた等速ジヨイントの断面図、第３図は長
い方のドライブシヤフトに取り付けた等速ジヨイ
ントの断面図、第４図は第２図中のＡ−Ａ矢視断
面図、第５図は第３図中のＢ−Ｂ矢視断面図であ
る。 更に、図中の符号で１は横置きエンジン、２は
デイフアレンシヤルギヤ、３，３ａは操舵車輪、
４は短いドライブシヤフト、４ａは長いドライブ
シヤフト、５，５ｃは固定型等速ボールジヨイン
ト、５ａはスライド型等速ローラジヨイント、５
ｂはスライド型等速ボールジヨイント、７は第１
出力軸、７ａは第２出力軸である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. デイフアレンシヤルギヤの第１出力軸から左右
   何れか一方の操舵車輪に短いドライブシヤフトを
   介して連結されると共に前記デイフアレンシヤル
   ギヤの第２出力軸から左右何れか他方の操舵車輪
   に長いドライブシヤフトを介して連結される動力
   伝達機構において、前記一方の操舵車輪と前記短
   いドライブシヤフトとの間及び前記他方の操舵車
   輪と前記長いドライブシヤフトとの間に固定型等
   速ボールジヨイントをそれぞれ設け、前記第１出
   力軸と前記短いドライブシヤフトとの間にボール
   を介して前記第１出力軸に沿つて相互に摺動自在
   なスライド型等速ボールジヨイントを設け、更に
   前記第２出力軸と前記長いドライブシヤフトとの
   間に環状の転動体を介して前記第２出力軸に沿つ
   て相互に摺動自在なスライド型等速ローラジヨイ
   ントを設けたことを特徴とする操舵車輪の動力伝
   達機構。