JPH0238700Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の技術分野 この考案は、糸噛みを有効に防止しうるように
したミシンの回転釜装置に関するものである。

考案の技術的背景及びその問題点 従来、ミシンの回転釜装置においては、各部品
の寸法精度をかなり厳しく製作しているとともに
針及び天秤とのタイミングを正確に定めて組立て
てはいるものの、ややもすると糸噛みが生じて回
転釜の回転不能になることがしばしばある。すな
わち、回転釜と中釜との結合は、回転釜に設けら
れた溝に中釜のツバを嵌合させて行なつているも
のであるが、これらの嵌合状態は、H₇h₇程度の
嵌めあいで、糸が通るに充分な間隙はなく、ツバ
の先端鉤部で上糸ループを引つかけえなかつたと
きに、上糸が溝とツバとの間に圧縮されて食込
み、いわゆる糸噛みの現象が生ずるものである。
このような糸噛みが生じたときには回転釜を回転
させることができず、分解して糸を抜き出さなけ
ればならないが、その分解組立てはきわめて難し
く、一般家庭においてはほとんど行いえない状態
である。

このような欠点を解消するため、中釜のツバを
押えるように回転釜にねじ着されている円弧状の
押え部材、いわゆる三日月を回転釜の軸心方向に
揺動しうるように弾性的に取付け、ツバとの間に
糸が噛込まれたときに三日月を弾発的に移動させ
て余裕をもたせ、回転釜の回転続行を可能にした
ものが存するが、この形式のものにおいても溝と
ツバとの嵌合部分の全体にわたつて余裕をもたせ
ることはできず、とくに、直径方向の余裕をとる
ことができないため完全に糸噛みを防止すること
はできない。

考案の目的 この考案は、このような点に鑑みなされたもの
で、糸噛みを確実に防止しうるミシンの回転釜装
置を得ることを目的とするものである。

考案の概要 この考案は、回転釜の側壁の内周面上端縁に回
転釜の開口方向に向けて次第に拡開するテーパ面
を有する環状切欠きを形成し、回転釜内に収納さ
れる中釜の側壁の外周面に中釜の開口方向に向け
て次第に拡開するテーパ面を有する環状ツバを形
成し、前記回転釜の側壁の上端部に円弧状の押え
部材を回転釜の軸心方向に沿つて移動自在に弾発
的に取付け、環状切欠きと押え部材とによつて環
状ツバを前記テーパ面同志を接合させて挟持状態
に保持することにより、上糸が環状ツバの先端鉤
部に引つかからずに糸噛みが生ずる状態となつた
場合でも、押え部材を弾発的に上方に移動させる
ことによつてテーパ面間に間隙を生じさせるとと
もに押え部材の下面部と環状ツバの上面側との間
にも間隙を生じさせ、これによつて回転釜の回転
を停止させる糸噛みの現象を有効に防止して回転
釜の回転を続行させうるように構成したものであ
る。

考案の実施例 この考案の一実施例を図面に基づいて説明す
る。回転釜１は駆動軸（図示せず）に連結されて
回転するように設けられ、この回転釜１は全体が
カツプ状でその側壁２部分に剣先３が形成されて
いる。そして、前記側壁２の内周面上端縁には回
転釜１の開口方向に向けて拡開するテーパ面４を
有する環状切欠き５が形成され、さらに、前記側
壁２の上端面６には円弧状の押え部材である三日
月７がコイルバネ８（弾発部材）を介装した取付
ネジ９（支持軸）により回転釜１の軸心方向に沿
つて移動自在に弾発的に取付けられている。

しかして、前記回転釜１内にはボビンケース１
０を収納保持するカツプ状の中釜１１が収納され
ており、この中釜１１の側壁１２の外周面には環
状ツバ１３が形成され、この環状ツバ１３の下面
側は中釜１１の開口方向に向けて次第に拡開する
テーパ面１４とされ、環状ツバ１３の上端側は平
坦面１５とされている。そして、この環状ツバ１
３は前記環状切欠き５と三日月７とによりテーパ
面１４を前記テーパ面４に接合させ及び平坦面１
５を三日月７の下面部１６に接合させつつ挟持状
態で保持させている。なお、前記三日月７の下面
部１６には前記テーパ面４，１４の上端部と対向
する位置に環状溝１７が形成されている。

このような構成において、回転釜１を回転させ
ると、一定のタイミングをもつて剣先３が上糸１
８のループをすくいとり、ついでこの上糸１８を
静止している環状ツバ１３の端部に形成された鉤
部１９に引つかけさせる。これにより、上糸１８
は静止している鉤部１９で保持されつつ中釜１１
の前後面にむり分けられ、このふり分けられた上
糸１８を中釜１１がくぐることによつてボビンケ
ース１０に収められた下糸（図示せず）と上糸１
８とがからみ合い、縫作用が進行する。

しかして、上糸１８の性質やタイミングの狂い
によつて上糸１８が鉤部１９にかからない場合が
あり、このようなときは、上糸１８は環状切欠き
５と三日月７とによつて構成される環状の溝２０
と環状ツバ１３との間に噛込まれて糸噛みが生ず
る状態となるが、この上糸１８を噛込むことによ
つて三日月７がコイルバネ８の付勢力に抗して上
方に移動し、テーパ面４とテーパ面１４及び平坦
面１５と下面部１６との間に間隙ができる。この
ため、上糸１８が噛込まれた場合でも糸噛みが生
ずることなく回転釜１の回転が続行される。そし
て、天秤（図示せず）の上昇動作時において上糸
１８に作用する引上げ力により上糸１８は第２図
ａからｅに示すように順次移動し、ｅの状態に至
つて上糸１８の噛込み状態が解消される。

考案の効果 この考案は、上述にように構成したので、環状
切欠きと押え部材とによつて構成される環状の溝
と環状ツバとの間に上糸が噛込まれた場合でも、
その上糸が押え部材を回転釜の軸心に沿つた上方
に弾発的に移動させることによつて溝と環状ツバ
との間に回転釜の軸心方向及び直径方向の間隙を
生じさせることができ、したがつて、回転釜の回
転を停止させる糸噛み現象を防止して回転釜の回
転を続行させることができ、さらに、天秤から上
糸に作用する引上げ力により溝と環状ツバとに間
に噛込まれた上糸が押え部材を弾発的に押上げつ
つ環状ツバと溝との間の間隙を移動して引上げら
れ、上糸の噛込み状態を自動的に解消できるため
に円滑な縫作用を継続することができる等の効果
を有するものである。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示すもので、第１
図は平面図、第２図は回転釜による中釜の保持状
態を断面にして示すとともに溝と環状ツバとの間
に噛込まれた上糸がその噛込み状態を解消する状
態をａないしｅにおいて順次示した説明図であ
る。 １……回転釜、２……側壁、４……テーパ面、
５……環状切欠き、６……上端面、７……三日月
（押え部材）、１１……中釜、１２……側壁、１３
……状ツバ、１４……テーパ面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. カツプ状の回転釜とこの回転釜内に収納保持さ
   れるカツプ状の中釜とを設け、前記回転釜の側壁
   の内周面上端縁にこの回転釜の開口方向に向けて
   次第に拡開するテーパ面を有する環状切欠きを形
   成し、前記中釜の側壁の外周面にこの中釜の開口
   方向に向けて次第に拡開するとともに前記テーパ
   面に接合されるテーパ面を有する環状ツバを形成
   し、前記環状切欠きとの間で前記環状ツバを挟持
   状態で保持する円弧状の押え部材を設け、この押
   え部材に固定されて前記回転釜にその軸心方向に
   摺動可能に取付けられる支持軸と前記押え部材を
   前記中釜方向へ付勢する弾発部材とを設けたこと
   を特徴とするミシンの回転釜装置。