JPH0224958Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はベーン型圧縮機に関するもので、例え
ば、自動車用空調装置の冷媒圧縮機として用いて
有効である。

〔従来の技術〕

従来のベーン型圧縮機の横断面図を第７図に示
す。ハウジング１０１には筒状のシリンダ面１０
２が形成されており、このシリンダ面１０２には
ベーン１０３が差し込まれた円筒状のロータ１０
４が配設されている。前記ハウジング１０１の図
中上方には吐出室カバー１０５がボルト１０６に
よつて固定されている。この吐出室カバー１０５
は内部に吐出室１０５ａを形成しており、この吐
出室１０５ａ内には吐出孔１０７より圧縮流体が
吐出される。そして、前記吐出室カバー１０５に
は前記吐出室１０５ａ内の作動流体の温度や圧力
を検知する検知手段（例えば温度スイツチ）が固
定されており、この検知手段の検知信号に基づき
電磁クラツチを断続するなどして圧縮機の回転を
制御している。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、上述のような従来の圧縮機では
次のような問題がある。すなわち、吐出室カバー
１０５をボルト１０６によつてハウジング１０１
に固定する際、そのボルト１０６の締付け力によ
つてシリンダ面１０２が歪んでしまうという問題
がある。特にハウジング１０１の肉厚が薄い部分
の歪みが大きい。このシリンダ面１０２のプロフ
イールは予め計算され、高精度に形成されている
ものであり、微小な歪みでも圧縮機の性能に影響
を及ぼしてしまう。そこで、シリンダ面１０２を
仕上げる前に、吐出室カバー１０５をハウジング
１０１に固定し、その後でシリンダ面１０２を仕
上げる方法が考えられる。しかしながら、この方
法だとシリンダ面１０２を加工する時に吐出室カ
バー１０５が作業の邪魔になるといつた問題や、
シリンダ面１０２の加工後、吐出室カバー１０５
を取りはずしてバリ取り、洗浄を行い、そして再
び吐出室カバー１０５を取付けなければならない
ので、作業工程が煩雑化するといつた問題があ
る。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案では上記問題点を解決するために、次の
ような手段を構じた。すなわち、少なくともハウ
ジングの肉厚が最も薄くなる位置に対向するハウ
ジングと吐出カバーとの接合面においては、吐出
室カバーとハウジングとを所定距離だけ離間せし
めたのである。

〔作用〕

従つて、吐出室カバーをハウジングに締結手段
によつて固定するときの締結力は、少なくとも最
も歪みを生じやすいハウジングの最薄肉部には伝
達されず、シリンダ面が歪むのを防いでいる。

〔考案の効果〕

本考案のベーン型圧縮機を用いれば、吐出室カ
バーをハウジングに固定してもシリンダ面が歪む
ことはないので、シリンダ面を形成した後に吐出
室カバーを取付けることができ、組付作業性が格
段に向上する。

〔実施例〕

次に、本考案の一実施例を図に基づいて説明す
る。

第２図は本実施例の縦断面図、第３図は第２図
の−断面図である。これらの図において１は
ハウジングで特殊プロフイールのシリンダ面２１
を有し内部に圧縮室Ｒを形成している。２はシヤ
フトで図示しない自動車走行用エンジンからの駆
動力を電磁クラツチを介して受けて回転する。３
はシヤフト２と一体形成されたローター、４はこ
のローター３内に摺動自在に支持されたベーン
で、このベーン４の先端はシリンダ面２１を摺接
する。５，６はハウジング１の両開口端に配設さ
れたエンドプレートである。

前記圧縮室Ｒはシリンダ面２１、ローター３外
面、エンドプレート５，６内面およびベーン４に
より区画成形される。そしてハウジング１のうち
圧縮室Ｒの容積が最も減少する部位には吐出孔１
８が開口している。また、前記シヤフト２は軸受
１０，１１を介してエンドプレート５，６に回転
自在に支持される。

７はフロントカバーでフロントエンドプレート
５の前方側に配設され、フロントエンドプレート
５との間に吸入室８を形成する。９はフロントカ
バー７内に配設された軸封装置で、シヤフト２を
伝わつて吸入室８内の冷媒が漏洩するのを防止す
る。フロントエンドプレート５には吸入孔２３が
開口しており吸入室８と圧縮室Ｒの容積増加部位
とを連通する。

１３はリヤカバーで、リヤエンドプレート６の
後方側に配設され、リヤエンドプレート６との間
にオイルセパレータ室１４を形成する。このリヤ
カバー１３には吐出通路１５が開口しており、冷
凍サイクルの図示しない凝縮器に連通している。
１６は吐出室カバーでハウジング１の平面部１ａ
にボルト２２により固定されており、前記吐出孔
１８と連通する吐出室２８を内部に形成してい
る。１９は吐出リード弁で吐出孔１８の吐出室２
８側に配設される。２０は吐出リード弁１９の押
え板で、吐出リード弁１９とともにボルト２３に
よつてハウジング１に固定されている。２４は吐
出室カバー１６とハウジング１との間のシールを
行うＯリング（シール部材）である。尚、吐出カ
バー１６のＯリング溝は長方形状をしており、こ
の様なＯリング溝に円形のＯリングを嵌めると組
付不良を引き起し、ひいてはシール不良を誘発す
る。そこで本実施例では長方形のＯリング溝に見
合つた長方形状のＯリング２４をあらかじめ成形
し、これが嵌め込まれている。吐出室カバー１６
およびリヤエンドプレート６には吐出連通孔２７
が形成されており、この連通孔２７を介して前記
吐出室２８とオイルセパレータ室１４とは連通し
ている。

前記フロントカバー７とフロントエンドプレー
ト５との間にはガスケツト２９が配設され、フロ
ントエンドプレート５とハウジング１との間には
Ｏリング３０が配設され、ハウジング１とリヤエ
ンドプレート６との間にはＯリング３１が配設さ
れ、更にリヤエンドプレート６とリヤカバー１３
との間にはガスケツト３２が配設され、その状態
でフロントカバー７、フロントエンドプレート
５、ハウジング１、リヤエンドプレート６、リヤ
カバー１３はボルト３３により一体に連結されて
いる。

前記吐出室カバー１６には円筒形状をした保持
部１６ａが形成され、この保持部１６ａの内周面
に外形が段付円柱形状にした温度スイツチ（検知
手段）４０がＯリング４１を介して嵌入され、前
記吐出室２８内に突出している。そして、この温
度スイツチ４０の段部４０ａが前記保持部１６ａ
の内周に設けた係止部１６ｂに係合し、温度スイ
ツチ４０が吐出出口側に落下するのを防止してい
る。また、この温度スイツチ４０には、Ｃ字形状
をしたサークリツプ４２が温度センサ４０の上面
と保持部１６ａの内壁との両方に掛る様にして配
されている。また、前記保持部１６ａの上部外周
には略コツプ形状をした防水キヤツプ４４が配さ
れている。この防水キヤツプ４４は前記温度スイ
ツチ４０から延びるリード線４０ｂのクランパの
役割も担つている。

第１図は前記吐出室カバー１６単体を示すもの
で、第１図ａは正面図、第１図ｂは底面図であ
る。この吐出室カバー１６の底面は略長方形をな
しており、その四隅には前記ボルト２２を通すた
めのボルト孔１６ｄが穿設されている。また、こ
の底面には前記Ｏリング２４を嵌め入れるための
長方形状をしたＯリング溝１６ｃが形成されてい
る。さらに、この吐出室カバー１６をその長辺１
６１が軸方向垂直となるようハウジング１に固定
した場合に、その短辺側の領域１６２のみがハウ
ジング１に当接するよう吐出室カバー１６の底面
にはさぐり５０が形成されている。従つて、ハウ
ジング１と吐出室カバー１６の接合面において少
なくともハウジング１の肉厚が最も薄くなる位
置、つまり第３図において少なくとも符号Ｐで示
す位置においては、前記さぐり５０を形成したこ
とにより吐出室カバー１６とハウジング１が所定
距離だけ離間せしめられている。尚、本実施例で
は前記さぐり５０の深さ（第１図ａ中Ｈで示す）
は0.05〜0.4mm、Ｏリング２４の径はφ2.3〜φ2.5mm
としたが、本考案者等の実験検討によると、さぐ
り５０の深さはＯリング２４のシール特性を維持
するためには0.4mm以下でなくてはならず、また
シリンダ面２１の垂直方向歪みを±10ミクロン以
内に抑えるためには0.05mm以上でなくてはならな
い。シリンダ面２１の垂直方向歪みを±10ミクロ
ン以内に抑えるのは、±10ミクロン以内の歪みで
あれば圧縮機の性能上問題ないことが本考案者等
によつて確認されているからである。さらにま
た、上記さぐり５０の深さはＯリング２４の径が
φ2.3以上であればどの様な径であつても上述の範
囲内を満たしていさえすればよい。

第４〜６図は吐出室カバー１６の底面に形成す
るさぐり５０の変形例を示すもので、第４図にお
いてはＯリング溝１６ｃの内側領域１６３にはさ
ぐり５０を形成せず、短辺側領域１６２と同一平
面とした。また、第５図ではＯリング溝１６ｃの
内側領域１６３のみにさぐり５０を形成した。さ
らに、第６図に示すものでは、さぐり５０を形成
する位置は第１図に示すものと同様であるが、吐
出室カバー１６の正面から見た場合に、さぐり５
０の深さが中心に向うほど深くなる、いわゆる山
なり形状とした。

尚、上述の実施例ではさぐり５０を吐出室カバ
ー１６に形成して吐出室カバー１６とハウジング
１との間に所定距離を設けたが前記ハウジング１
に軸直角方向にさぐりを形成して吐出室カバー１
６とハウジング１とを所定距離だけ離間せしめて
もよい。また、吐出室カバー１６の短辺側１６２
にもさぐり５０を形成してもよい。

本実施例では、吐出室カバー１６はシリンダ内
面２１を仕上げた後ボルト２２によりハウジング
１に固定されている。

次に、本実施例圧縮機の作動を説明する。電磁
クラツチ（省図示）を介して自動車走行用エンジ
ンの駆動力がシヤフト２に伝わるとシヤフト２は
回転し、同時にローター３もハウジング１内を回
転する。この回転により圧縮室Ｒの容積が連動
し、容積が増加する部位では冷凍サイクルの蒸発
器より導かれた冷媒が吸入孔より圧縮室Ｒ内に吸
入される。ローター回転に伴つてこの冷媒が圧縮
され、高圧となつた冷媒は吐出孔１８より吐出室
２８に吐出される。その後、通路２７よりオイル
セパレータ室１４に流出し、オイルセパレータ室
１４内で潤滑油を分離した後、通路１５より凝縮
器側に吐出される。

冷媒ガスは冷凍サイクルを循環している際中
に、各ジヨイント部から漏れる可能性があり、冷
媒ガス量が不足してくると冷媒ガス自身による圧
縮機全体の冷却作用の低下や、圧縮比が高くなる
等から吐出温度が上昇してくる。吐出温度が上昇
してくると、摺動部が膨張してそのクリアランス
が小さくなり、焼付く危険性がある。また、冷媒
ガス量不足時の吐出温度は過酷運転時の温度より
はるかに高い。そこで、吐出冷媒ガス温度を温度
スイツチ４０にて検知し、吐出冷媒ガス温度が過
酷運転時の温度よりもはるかに高くなつた時に冷
媒ガスが不足していると見なし、前記電磁クラツ
チを断つ。

【図面の簡単な説明】

第１図は吐出室カバーを示す図で第１図ａは正
面図、第１図ｂは底面図、第２図は実施例の縦断
面図、第３図は第２図の−断面図、第４図、
第５図、第６図は吐出室カバーの他の実施例を示
す正面図、第７図は従来例を示す横断面図であ
る。 １……ハウジング、２……シヤフト、３……ロ
ータ、４……ベーン、１６……吐出室カバー、１
８……吐出孔、２３……吸入孔、２４……Ｏリン
グ（シール部材）、２８……吐出室、４０……温
度スイツチ（検知手段）、５０……さぐり。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 駆動力を受けて回転するシヤフトと、このシ
   ヤフトと一体回転する円筒状のロータと、この
   ロータに形成されたベーン溝と、このベーン溝
   内に摺動自在に配されたベーンと、前記ロータ
   及びベーンを収納するための筒状のシリンダを
   有するハウジングと、このシリンダの内壁、前
   記ロータの外周壁及び前記ベーンによつて区画
   形成され容積変動を繰り返す圧縮室と、この圧
   縮室内に作動流体を吸入するためこの圧縮室の
   容積が増大しつつある位置に開口する吸入孔
   と、前記圧縮室内の作動流体を吐出するため前
   記圧縮室の容積が最小になる位置に開口する吐
   出孔と、締結手段により前記ハウジングに固定
   され前記吐出孔と連通する吐出室を形成する吐
   出室カバーと、前記吐出室内に吐出された作動
   流体の状態を検知するために前記吐出室カバー
   に固定される検知手段とを備え、前記吐出室カ
   バーと前記ハウジングとの接合面にはシール部
   材が介在しており、少なくとも前記ハウジング
   の肉厚が最も薄くなる位置に対向する前記接合
   面においては、前記吐出室カバーと前記ハウジ
   ングとを所定距離だけ離間せしめたことを特徴
   とするベーン型圧縮機。 (2) 前記所定距離は0.05〜0.4mmであることを特
   徴とする実用新案登録請求の範囲第１項記載の
   ベーン型圧縮機。