JPH0137135Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） この考案は、クランク室に配置された小型エン
ジンのブリーザ装置に関する。

（従来の技術） ４サイクルエンジンのクランク室には、ブロー
バイガスが漏出し、これをそのまま蓄積すれば、
内圧が上昇してトラブルの原因になるので、クラ
ンク室内を大気開放するブリーザ孔が設けられて
いる。ところが、クランク室内にはクランクやト
ランスミツシヨン機構のギアなどの潤滑用オイル
が収容され、微粒子状に浮遊しているので、ブリ
ーザ孔からオイルが流出する不具合がある。この
オイル流出を防ぐため、第１図に示すようなブリ
ーザ装置が用いられる。クランク室ａ内の上壁に
沿つて多数の膨脹室ｂが列設され、各小室ｂは通
孔ｃにより連通され、最終端の膨脹室ｂにブリー
ザ孔ｄが開口する。クランク室ａ内の空気が各膨
脹室ｂを通つてブリーザ孔ｄから放出されると
き、減圧、減速されて空気中に浮遊する微粒子状
のオイル分が落下し、室底に溜つて通孔ｃから戻
されるようにしたものである。

上記のような構造のブリーザ装置は、その機能
をより効果的にするためには、膨脹室ｂの容積と
室数を増す必要があり、構造が複雑で、クランク
室内に充分なスペースを確保できない小型エンジ
ンのブリーザ装置としては不向きであつた。

また実公昭51−43345号公報に示されるように、
ブリーザ室にスポンジなどの多孔性物質を収めて
オイル分を捕捉するようにしたものがある。しか
し、このままでは、捕捉したオイルを積極的に追
い出す作用がなく、消極的に流下を待つものであ
るから、スポンジ内にオイルが充満することがあ
り、さらにブリーズ作用が続くことによつて、オ
イルがブリーザ孔へ押し出されることがあり、長
期的には不充分であつた。

（考案が解決しようとする課題） この考案は、上記の点を考慮して、ブリーザ室
および収容された多孔性物質の形状を特定し、多
孔性物質に膨縮作用を行なわせて、捕捉したオイ
ルがクランク室側へ戻りやすくすることによつ
て、構造簡潔で小容量のブリーザ室を使用して、
ブリーザ管へのオイルの流出を長期に亘つて防ぐ
ことができる小型エンジンのブリーザ装置を提供
することを目的とする。

〔考案の構成〕

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、この考案の小型エン
ジンのブリーザ装置は、クランク室上壁室に、横
断面がほぼ台形で、その台形の頂辺中央部にブリ
ーザ孔が開口し、底辺中央部にクランク室との通
孔が開口したブリーザ室が備えられ、ブリーザ室
内にはスポンジピースが収められたものであつ
て、このスポンジピースはほぼ台形で、ブリーザ
室に対して、両側面および上下面がスライド自在
に弾接する寸法に設定され、かつ台形底辺部両側
に切欠きが設けられ、下面に両切欠きと前記通孔
とを結ぶ第１凹溝と両切欠きから台形頂辺部両側
に至る第２凹溝が設け られた構成になる。

（作用） このように構成したので、クランク室の内圧が
高いときにブリーザ孔から放出される空気は、通
孔からブリーザ室底辺部に入り、第１凹溝を介し
て切欠き部へ導かれてから、さらに第２凹溝を通
つて頂辺部へ抜ける迷路形状および途中の膨脹室
形状によつて油気分離作用があり、また多孔によ
る吸い取り作用および圧入作用によつてスポンジ
ピースにオイル分が捕捉され、ブリーザ孔からの
オイル流出がない。

同時にスポンジピースは圧力により次第に頂辺
側へ移行して体積を絞られることにより、多孔や
凹溝の断面積が縮小し、最終的には第２凹溝の下
流端がブリーザ室壁によつて塞がれることによ
り、圧出される空気はより多くスポンジピースの
多孔を抜けることになつて、流速がますます低下
し、オイル捕捉性能が上がる。

クランク室内圧が低下し、またはエンジン停止
時の温度低下により負圧になると、スポンジピー
スはその弾力も手伝つて底辺側へ戻つて膨脹し、
多孔や凹溝が拡大して溜つたオイルが滴下しやす
くなる。同時に空気の逆流によつてパージする作
用があり、次の正圧時の上記作用が保証される。

強い負圧が作用すると、スポンジピースは底辺
側へ圧縮され、切欠き部に溜つたオイルは積極的
に押し出される。

さらに単気筒エンジンなどでクランク室に脈動
がある場合、スポンジピースの存在によつて減衰
作用があり、通孔部に必要とされる逆止弁を省略
できる。

（実施例） 第２図以下はこの考案の実施例を示す。

符号１で示したのはクランク室２内の上壁に接
して形成されたブリーザ室で、第３図に示すよう
に横断面形状がほぼ台形になつている。その台形
の頂辺中央部にブリーザ孔３が開口し、底辺部に
クランク室２内に通じる通孔４が開口する。

ブリーザ室１内には、ほぼ同様の台形の横断面
形状をなし、多孔通気性で条軟性のあるスポンジ
ピース５がスライド自在に弾装されている。台形
頂辺部と底辺部の中央部にそれぞれ切欠６，７が
設けられ、ブリーザ孔３および通孔４が塞がない
ようになつている。また底辺部両側に切欠８があ
り、さらにスポンジピース５底面には、切欠７か
ら切欠８へ通じる第１凹溝９、切欠８から台形頂
辺両側部に通じる第２凹溝１０が設けられる。

以上の構成により、クランク室２内は、通孔
４、ブリーザ室１、ブリーザ孔３を介して大気と
通じている。ブリーザ室１内ではスポンジピース
５の通気性多孔および第１、第２凹溝９，１０を
空気が流通する。

クランク室２内圧が大気圧より高いとき、ブリ
ーザ孔３へ抜ける空気中に混るオイル分は、スポ
ンジピース５の多孔内に捕捉される。また一部第
１凹溝９を抜けて切欠８が構成される空室１１内
に入り、続いて第２凹溝１０から頂辺部へ流れる
空気中のオイル分は、減速、減圧されることと迷
路形状になつていることで、分離して空室１１に
溜り、ブリーザ孔３への流出が防がれる。この
間、第４図に示すように、クランク室２内圧によ
つてスポンジピース５が台形頂辺方向へ移動し圧
縮されて密度を増し、オイル分はさらに捕捉が促
進され、最終的には第２凹溝１０の上流端がブリ
ーザ室１壁で防がれるので、ブリーザ孔３からの
オイル流出は完全に防止される。

クランク室２内圧が大気圧より低いときは、ス
ポンジピース５が弾力によつて台形底辺方向に動
き、多孔が膨脹する。多孔内に捕捉されたオイル
分が解放されやすくなつて、順次流下し、空気の
逆流があればパージされ、クランク室２に負圧が
発生した場合は、第５図に示すように、底辺側に
圧縮され、空室１１が縮小され、中に溜つたオイ
ルが第１凹溝９を通つて吐き出される。

〔考案の効果〕

以上の通り、この考案に係る小型エンジンのブ
リーザ装置は、クランク室上壁部に、横断面がほ
ぼ台形で、その台形の頂辺中央部にブリーザ孔が
開口し、底辺中央部にクランク室との通孔が開口
したブリーザ室が備えられ、ブリーザ室内にはス
ポンジピースが収められたものであつて、このス
ポンジピースはほぼ台形で、ブリーザ室に対して
両側面および上下面がスライド自在に弾接する寸
法に設定され、かつ台形底辺部両側に切欠きが設
けられ、下面に両切欠きと前記通孔とを結ぶ第１
凹溝と両切欠きから台形頂辺部両側に至る第２凹
溝が設けられたもので、スポンジピースがオイル
分に対する逆止弁のような働きをしながら、油気
分離作用が行なわれ、ブリーザ孔よりオイルを流
出させず、またブリーザ室に入つたオイルは遅滞
なくクランク室に戻り、小容積のブリーザ室を設
けるだけで済み、したがつてクランク室内のスペ
ースを無理なく利用することができ、ブリーザ室
の出口、入口の形状の制約が少なくなると同時に
構造が簡素化されて、コスト低減ができ、コンパ
クト化を望まれる小型エンジンに利用して極めて
効果的である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来型のブリーザ装置を例示したクラ
ンク室の縦断面図、第２図はこの考案の実施例を
示すクランク室の縦断面図、第３図は第２図Ａ−
Ａ矢視によるブリーザ室の拡大した横断平面図、
第４図は第３図のブリーザ室のクランク室正圧時
の横断平面図、第５図は第３図のブリーザ室のク
ランク室負圧時の横断平面図である。 １……ブリーザ室、２……クランク室、３……
ブリーザ孔、４……通孔、５……スポンジピー
ス。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランク室上壁部に、横断面がほぼ台形で、そ
   の台形の頂辺中央部にブリーザ孔が開口し、底辺
   中央部にクランク室との通孔が開口したブリーザ
   室が備えられ、ブリーザ室内にはスポンジピース
   が収められたものであつて、このスポンジピース
   はほぼ台形で、ブリーザ室に対して、台形高さ方
   向の前後巾がブリーザ室の前後巾より小さく、両
   側面および上下面がスライド自在に弾接する寸法
   に設定され、かつ台形底辺部両側に切欠きが設け
   られ、下面に両切欠きと前記通孔とを結ぶ第１凹
   溝と両切欠きから台形頂辺部両側に至る第２凹溝
   が設けられたことを特徴とする小型エンジンのブ
   リーザ装置。